ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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第二十八章:湖畔の王国への便乗と水辺の抜け道

第二十八章:湖畔の王国への便乗と水辺の抜け道

 

自由都市ロマールでの稼ぎを終え(名物の闘技場に目もくれず)、次なる目的地を「職人たちの王国エレミア」に定めた「擦り減り銀貨(スクラップ・シルバー)隊」。長距離移動において彼らが最も嫌うのは「野営中の魔物襲撃による物資と体力の消耗」である。

 

その問題を解決するため、ロロが見つけてきたのは、ロマールから東の「湖畔の王国ザイン」へと向かう大規模な陸路と水路の合同交易キャラバンだった。

 

「ザイン名物の淡水真珠や湖魚の塩漬けを買い付けに行く商人たちの護衛だ。彼らは荷船と馬車を並走させるから、俺たちは船の方の『見張り役』として乗り込める。つまり、歩かなくていいし、靴底もすり減らない!」

ロロの完璧なプレゼンに、全員が親指を立てて即決した。

 

ロマールからザインへ続く、穏やかな川沿いのルート。

一行を乗せた平底の荷船の甲板で、シリアが川の淀みに目を凝らしていた。

「……前方二百メートルの中州、葦の群生の中にジャイアント・トード(巨大蛙)が数匹潜んでいるわ。馬車ルートの商人たちが狙われている」

 

本来ならここで前衛が武器を抜くところだが、彼らは違う。

「カイル、この前市場で安く買い叩いた『賞味期限切れの干し肉』を出してくれ。それと、強い匂いのする香草もだ」

ロロの指示を受け、カイルが手際よく干し肉に香草を擦り込み、即席の強烈な「匂い餌」を作成する。

 

「そりゃっ!」

カイルが持ち前の器用さと投擲の技術で、その肉の塊を中州とは反対側の川岸、遠く離れた茂みへと力いっぱい投げ込んだ。

強烈な匂いに釣られたジャイアント・トードたちは、商人の馬車には目もくれず、一斉に肉の塊の落ちた茂みへと跳躍していった。

 

「よし、今のうちに船と馬車を進めろ!」

ライシンが御者や船頭に静かに、しかし威圧感たっぷりに指示を出す。剣を抜くことも、魔法でMPを消費することもなく、ただの一片の干し肉(原価・銅貨一枚未満)で魔物との遭遇を完全に回避したのである。

 

「あの巨大な魔物の群れを、戦わずして退けるとは……! あんたたち、本当に手練れの冒険者なんだな!」

商人たちが感動の声を上げる中、メリッサは微笑みながら優雅に紅茶を啜っていた。

 

数日後。美しい湖のほとりに広がる「湖畔の王国ザイン」に到着した一行は、豊かな水源と穏やかな街の空気を満喫しつつ、王都ザインに入った。

 

ザインでの短い小休止の後、彼らはそのままエレミアへ向かう荷馬車隊に「ザインの湖水地方を抜けるまで」という条件で潜り込み、再び安全確実な旅路についた。

 

「武器の摩耗ゼロ、防具の修繕ゼロ、ポーション消費ゼロ。おまけにロマールからエレミアまでの移動費もタダ!」

荷馬車の荷台で、ロロが満足げに帳簿を閉じた。

 

湖畔の風に吹かれながら、彼らの「絶対消耗しない」冒険は、エレミアの地でも確実な黒字を巻き起こそうとしていた。

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