ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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第三十四章:賢都への便乗旅と訳ありの冒険者の宿

第三十四章:賢都への便乗旅と訳ありの冒険者の宿

 

砂塵の王国エレミアから、大陸最大の大都会にして冒険者の聖地オランへの長大な旅路。普通に馬車を手配すれば莫大な路銀が吹き飛ぶが、「擦り減り銀貨(スクラップ・シルバー)隊」がそんな無駄遣いをするはずがない。

 

彼らは、メリッサが新調したばかりの高品質の羽ペンと羊皮紙のスケッチブックを最大限に活用し、西方調査から帰還する『賢者の学院』の学術キャラバンに「熟練の記録係兼、無血の護衛」として自らを売り込んだのだ。道中、魔物の気配があればシリアが新調した高品質のショートボウを構えて威嚇射撃の構えを見せ、野盗の影があればライシンが陽光に煌めく高品質のマジックブレイドを抜き放ち、歴戦の威圧感だけで敵を退散させる。結果として刃を交えることもポーションを消費することもなく、彼らは完全無料で「賢者の国」の正門をくぐり抜けた。

 

視界を埋め尽くすほどの巨大な城壁と、その奥で威容を誇るエイトサークル城。無数の冒険者と魔術師が行き交うオランの王都は、これまでのどの都市よりも強烈な熱気と野心に満ちていた。

 

「さて、ここが俺たちの新たな、そして恒久的な稼ぎ場になるわけだが……大都会なだけあって、まともな冒険者の宿はどこも目玉が飛び出るほど滞在費が高い」

ロロが目をつけたのは、賢者の学院からほど近い路地裏で細々と営業している、古びた冒険者の宿だった。過去の魔法実験の失敗にのせいで「夜な夜な不可解な音が鳴る呪われた開かずの間」があると噂され、客足が遠のき倒産寸前となっていた訳ありの宿である。

 

「この呪いを解く代わりに、俺たち五人の半永久的な特別室の宿泊費を、スラムの木賃宿以下の底値にする。どうだ?」

藁にもすがる思いの宿主に交渉をまとめたロロの合図で、シリアが薄暗い部屋へと足を踏み入れ、呆れたようにため息をついた。

「……ただの微弱な風の精霊(シルフ)が、建物の隙間風と共鳴して悪戯しているだけね」

彼女がシャーマンの力で精霊を優しく宥めると、長年客室を包んでいた不気味な物音は嘘のように鎮まり返った。さらに、複雑な魔法錠が掛かっていて長年開かなかったという特別室の重厚な鉄扉も、ロロが真新しいコモン・ルーンの指輪(アンロック)をかざしただけで、カチリと小気味よい音を立ててあっさりと開錠されてしまった。

 

「学院にも近い最高の立地で、呪いも解けた極上の特別室。おまけに固定費は極限まで削り落とせたぞ!」

宿主が涙を流して感謝する中、カイルが異国情緒あふれる高品質のリュートで陽気な祝いの曲を奏でる。五人は特別室の真新しい絨毯に座り込み、宿からサービスされた上質な果実水で高らかに祝杯を上げた。大陸最高の知識と冒険が交差するこの大都会の宿を拠点に、擦り減り銀貨隊の「絶対に消耗しない」打算に満ちた新たな冒険が、今ここに幕を開けた。

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