ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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第三十七章:石化の魔眼と絶対死角の居合

第三十七章:石化の魔眼と絶対死角の居合

オランの路地裏にある拠点の宿。その特別室で、ロロは石工ギルドから持ち込まれた依頼書を広げていた。

「今回の舞台は、王都近郊の高級石材の切り出し場だ。数日前から古代の爬虫類型の魔物『バジリスク』が住み着き、石工たちが作業できなくなっている」

その名前を聞いた瞬間、メンバーの顔色が変わった。

「バジリスクって、視線を合わせただけで対象を石に変える『魔眼』を持つ怪物じゃない!」

メリッサが青ざめると、ロロは算盤(そろ盤)を激しく弾いてみせた。

「その通りだ。もし誰か一人でも石化させられてみろ。神殿で『石化解除』の儀式を受けるための寄付金は、最低でも金貨数百枚。今回の討伐報酬が丸ごと吹き飛ぶどころか、生涯をかけた大借金を背負うことになる、超・特大の赤字リスク案件だ」

「だったら、鏡の盾でも買って視線を反射させるかい?」

カイルの提案に、ロロは即座に首を振る。

「そんな高価な特注品を買う経費はない。俺たちの戦術は一つ。奴の魔眼を『一切見ない』まま、完全に首を刎ねる」

一行は石切り場へと赴いた。 複雑に削り出された岩の回廊。メリッサは真新しい高品質の羽ペンを走らせ、羊皮紙のスケッチブックに回廊の緻密な幾何学マップと、音の反響角度を計算して描き出す。

「この丁字路が最適なキルゾーンよ。岩の壁が厚く、視線が完全に遮られているわ」

「任せな」 ロロは丁字路の片側の鉄格子に、コモン・ルーンの指輪(ロック)で魔法錠をかけ、バジリスクの進行ルートを一本道に限定した。 さらにシリアが風の精霊(シルフ)と対話し、微かな空気の淀みから怪物の現在位置を正確に割り出す。

「……来るわ。重い足音。距離、あと三十メートル」

「カイル、誘い込め」

ライシンの短い指示に応え、カイルが高品質のリュートを爪弾く。計算し尽くされた反響音は、まるで丁字路の奥に獲物がいるかのような錯覚を引き起こし、バジリスクを一直線におびき寄せた。

ライシンは丁字路の角――分厚い岩壁の裏側という『完全な死角』に立ち、静かに刀の柄を握りしめていた。 自分からは敵が見えない。当然、敵からもライシンの姿は見えない。つまり、石化の魔眼は絶対に届かない。

「距離、十メートル……五メートル……」 シリアが高品質のショートボウを構え、足音と風の動きだけでカウントダウンを告げる。

「三……二……一、今ッ!」

「……我は刃に魔を宿す者。空間を断ち、遠き敵を討て(リープ・スラッシュ)……!」

ライシンが岩壁の裏から、虚空に向かって高品質のマジックブレイドを抜き放つ。 極限まで研ぎ澄まされた真空の刃は、岩の角をかすめるようにして通路へと飛び出し、丁字路へ足を踏み入れた瞬間のバジリスクの首を、その魔眼が誰かを捉えるよりも早く、横薙ぎに切断した。

ドス、と重い頭部が転がる音が響く。 最後まで壁の裏から一歩も出ず、刃を直接交えることすらなかったライシンは、静かに刀を鞘に収めた。

「よし、石化被害ゼロ! さらに、傷ひとつないバジリスクの無傷の眼球は、魔術師ギルドに特別素材として高値で売れるぞ!」

ロロが歓喜の声を上げる。

TRPGにおける最悪の全滅リスクすらも、擦り減り銀貨隊の「絶対に経費をかけない」という執念と、それを可能にする緻密な連携戦術の前では、ただの安全なボーナス・ステージに過ぎなかった。

 

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