この《団長飯》の儀式は新入団員と団長の絆を永遠不滅のものとする最重要儀式であり、夏合宿の最終日の前日の夜に厳かに行われます。
夜の九時に全員永遠漢堂に集合し、一回生は徳川初代団長の即身仏に向かって横一列に並びます。
その後ろに上級生が全員後ろ手に組んで並びます。
そして時間ぴったりに藤堂団長が厳かに姿を現し 徳川初代団長に一礼をした後、新入団員に向き直ります。
ハイカラーに隠されたそのお顔の表情は伺い知れません。
しかし団長から発せられるオーラによって堂内は激しい緊張感に包まれます。
この時二回生が、白米を盛った一膳茶碗を一回生全員に配ります。
一回生は謹んでその茶碗を持ったまま、一体何が起きるのかわからず息を飲みながら立ちすくんでおります。
藤堂団長は沈黙のまま微動だにしません。
そしてその状態で2時間が経過したのち、突然藤堂団長がお堂全体がビリビリと響くほどの大音声を一回生に向かって発します。
「腹は!減ったか!」
一回生は答えます。
「押忍!」
「腹は!減ったか!」
「押忍!」
この応酬を十度繰り返します。
それが終わると団長が叫びます。
「可愛いお前たちのぉ!飢える姿をぉ!この俺はぁ!見過す事がぁ!出来ないぃ!」
それに合わせて 上級生全員も声を合わせて叫びます。
「見過す事がぁ!出来ないぃ!」
「可愛いお前たちのぉ!飢える姿をぉ!この俺はぁ!見過す事がぁ!出来ないぃ!」
「見過す事がぁ!出来ないぃ!」
これを三度繰り返した後、親衛隊長が進み出て、団長の前に一碗のひびの入った茶碗を床に置きます。
この薄汚れた古い茶碗は《団長茶碗》と呼ばれ、団創設の時より大切に守り伝えられた由緒ある一品であります。
団長は「今こそぉ!我が団の存亡ぉ!この腹に有りぃ!」と叫ぶと、くるりと後ろを向いてかがみます。
そして学ランの裾をめくると、なんと団長の尊い尻がむき出しになっているではありませんか!
団長はその尻を、団長茶碗の上にかざします。
それを合図に上級生一同は、一斉に団歌《団長飯》の唱和を開始致します。
僭越ではありますがこの西郷、《団長飯》を唱和させていただきます!
腹が減っては いくさはできぬ
腹を減らして たたかえぬ
武士はくわねど 高楊枝
しかし負けては 話にならぬ
我が西南の もののふは
今こそ救いを 団長の
腹より出たる ごちそうに
その身を委ね 満たすのだ
それ!
団長飯の ありがたさ
団長飯の ありがたさ
その身を委ね 満たすのだ
それ!
団長飯の ありがたさ
団長飯の ありがたさ
その身を委ね 満たすのだ
それ!
団長飯の…………
上級生によるお堂を揺るがすような大音声による唱和の繰り返しの中、団長は「うむ~~~」ときばります。
するとどうでしょう。
団長の尻より茶褐色の尊いものが出てくるではありませんか!
そしてそれはみるみる団長茶碗を満たします。
これは「御助之団長棒(ごじょのだんちょうぼう)」といいます。
なんですと!
う◯こではないか?ですって!
口をお慎み下さい!
これは団長が団員の為、その腹の中で丹精に練り上げ作り上げた尊いものであります!
そして団長は団長茶碗を持ち、居並ぶ一回生の端から一人ずつ茶碗飯の上に、団長箸にて御助之団長棒を均等に盛り付けて回ります。
これで《団長飯》の完成であります。
そして一回生は上級生の唱和の轟音の中、ありがたく 《団長飯》をいただきます。
むせび泣く者、匂いで気絶する者など、様々おります。
しかし《団長飯》を完全に平らげるまで終わることはできません。
そして完食を成し遂げた時、鋼のような精神と団長との深い絆がその身に宿るのであります。
さて!我が西南海大学応援団についてまだまだ語り尽くせませんが、あとは皆様自身がご入団の上、御体験頂くのが早かろうと存じます。
さあ!ここに入団申込み用紙を御用意しました!
我こそは!と思う方はこちらにお並び……!
え……。何故皆様出て行かれるのですか!
ま、待って下さい!
皆様!お待ち下さい!お願いであります!
今一度自分の話を聞いてほしいであります!
待って!待っ…………。
う……。うう……。
全員出て行ってしまったのであります……。
一人も残らなかったのであります……。
なぜ……?
なぜなのでありますか?
団の素晴らしさを精根込めて語ったはずなのに……。
なぜ分かっていただけなかったのでありますか……?
ううう……。
ひ!
だ、団長!
自分の誠意と熱意が足りませんでした!
すいませんでした!
え!
ま、まさか!
ハキュ~ンでありますか!
ハキュ~ン10連発でありますかァァァ!!!
応援団奇談 ――完――