「本作は株式会社スクウェア・エニックスの『フロントミッション サード』の二次創作小説です。公式とは一切関係ありません」
プロローグ:赫き海都の邂逅
潮風に混じって、焦げた装甲と硝煙のひどく鼻を突く悪臭が漂ってくる。 O.C.U.からの歴史的離脱と、日防軍のクーデター未遂に伴う「自衛隊」への解体再編。激動の1年を経て、かりそめの平穏を取り戻しつつあった日本は、その喉元である横浜で再び炎に包まれていた。
横浜港コンテナターミナル。 本来ならば静寂に包まれているはずの深夜の物流拠点は、所属不明のヴァンツァー部隊による無差別攻撃によって火の海と化していた。
「くそっ、次から次へと……! 県警本部、応援はまだか!」
紅蓮の炎をバックに、白と黒のツートンカラーに塗装されたヴァンツァーが駆動音を唸らせてコンテナの陰から飛び出した。神奈川県警ヴァンツァー警羅隊所属の警察仕様機『強警』だ。 市街地や港湾施設での近接戦闘を想定したファイタータイプの『強警』は、左腕にマウントしたショットガンを放ち、眼前のテロリスト機を牽制する。しかし、相手の装甲は分厚く、散弾では決定打に欠けた。
敵機が重火器の銃口を『強警』に向けたその瞬間、猛烈な銃撃音が海風を切り裂いた。
「こちら陸上自衛隊、第1空挺団所属だ。県警の兄ちゃん、無茶しすぎだぞ!」
横手から猛烈な勢いで突進してきたのは、オリーブドラブに塗装された武骨な機体『強盾』。アタッカータイプであるその機体は、左腕の巨大なシールドで敵の反撃を弾き飛ばすと同時に、右腕のマシンガンで容赦のない弾幕を浴びせかけ、テロリスト機をスクラップに変えた。
「自衛隊……!? なぜ陸自がこんなところに!」
「管轄争いをしてる場合じゃない。連中、ただのテロリストじゃないぞ。動きが統率されすぎている」
陸上自衛官の言葉を証明するように、新たな敵機3機が闇の中から姿を現し、二人の機体を包囲するように展開し始めた。 圧倒的な火力差。2機だけで凌ぎ切るには分が悪いと舌打ちした直後――
ズガァァァン!
遠方からの正確無比な一撃が、敵機の脚部関節を的確に撃ち抜いた。バランスを崩した敵機が轟音を立てて倒れ込む。
『こちら海上保安庁、特殊警備隊 。不審船の追跡中だったけど、どうやら上陸を許してしまったみたいね。援護するわ』
通信機から響く冷静な女性の声。港の対岸、クレーンの影に身を潜めていたのは、長距離狙撃に特化したガンナータイプのヴァンツァー『陣陽』だ。ライフルから放たれる精密射撃が、敵の足を次々と止めていく。
「海保まで……! 一体何が起きてるんだ!」
混乱の声を上げた時、上空からけたたましい飛翔音が降り注いだ。 暗闇を引き裂き、無数のミサイルが尾を引いて飛来する。それは包囲を狭めようとしていた残りのテロリスト機たちを次々と爆炎の中に呑み込んでいった。
『ふふっ、警察に自衛隊、それに海保まで。ずいぶんと賑やかな夜会ね』
爆炎の向こう側から悠然と姿を現したのは、真紅に塗装されたミサイラータイプのヴァンツァー『炎陽』。 両肩に巨大なミサイルランチャーを背負ったその機体から、底知れぬ余裕を含んだ女性の声が響く。
「お前は……所属はどこだ!」
『……国家情報局よ』
警察(強警)、自衛隊(強盾)、海上保安庁(陣陽)、そして国家情報局(炎陽)。 本来交わるはずのない4つの組織のヴァンツァーが、炎上する横浜港で顔を突き合わせた。
「連中の狙いは単なるテロじゃないわ。……彼らが探しているのは、かつて世界を欺いた『悪魔の火』よ」 「悪魔の火……まさか、M.I.D.A.S.だと!?」
国家情報局員の女性の言葉に、三人の機体に緊張が走る。 M.I.D.A.S.の再生産を目論む新興企業。そして、その匂いを嗅ぎつけて暗躍するU.S.N.、O.C.U.、大漢中、ザーフトラ、ECの特殊部隊。
「どうやら、私たちでこの火種を消して回るしかなさそうね」
炎に照らされた4機のヴァンツァーは、背後に迫る巨大な世界的陰謀の影に立ち向かうように、それぞれの武器を構え直した。赫き海都を舞台にした、彼らの長きにわたる戦いが、今ここから始まろうとしていた。
「本作は株式会社スクウェア・エニックスの『フロントミッション サード』の二次創作小説です。公式とは一切関係ありません」