フロントミッションサードの二次創作   作:シットライヌ

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第10章:臨界のエネルギーベース

第10章:臨界のエネルギーベース

巨大なLNG(液化天然ガス)タンク群と石油コンビナートが林立する新潟東港。

日本海側最大のエネルギー備蓄基地であるこの場所は、今や一触即発の巨大な爆弾と化していた。

 

「……最悪の戦場ね」

 

特務チームを乗せた輸送機が新潟上空に到達した時、モニター越しに現地の光景を見た鷹司冴子が忌々しげに呟いた。

NGM社の高速ホバー輸送艦はコンビナートの中枢に鎮座し、施設から強引に電力を引き込んでM.I.D.A.S.コアの「初期起動シークエンス(チャージ)」を開始していた。

 

「鷹司局員、このエリアでの重火器の使用は極めて危険です。もし流れ弾がタンクに直撃し誘爆すれば……新潟市街の半分が灰になります」

汐見葵が青ざめた表情で被害シミュレーションのデータを共有する。

 

「分かっているわ。……私と汐見は後方支援に回る。『炎陽』のミサイルは封印。汐見の『陣陽』も炸裂弾は禁止、徹甲弾のみで敵機の駆動系だけを狙いなさい」

鷹司が苦渋の決断を下す。圧倒的な火力を誇るミサイラーとガンナーが、その牙を抜かれたに等しい。

 

「要するに、ドンパチは最小限にして、俺たち前衛組がインファイトでカタをつければいいんだろ?」

巽恭平が『強警』の格闘用ロッドを起動させ、不敵な笑みを浮かべた。

 

「言うのは簡単だがな。敵も我々が発砲できないことを計算に入れているはずだ」

榊健吾が『強盾』のマシンガンを単発(セミオート)モードに切り替えながら、油断なく周囲を警戒する。

 

四機のヴァンツァーがコンビナートの敷地内に降下した瞬間、NGM社の精鋭親衛隊が姿を現した。彼らはこれまでの警備部隊とは一線を画す、漆黒に塗装された高機動型のカスタム機体だった。

彼らはタンクを背に陣取り、特務チームの攻撃を牽制するように挑発的な射撃を行ってくる。

 

「卑怯な真似を……! タンクを盾にして撃たせない気か!」

榊の強盾が前へ出て、敵の銃弾をシールドで受け止める。少しでも角度が逸れれば背後のパイプラインに直撃しかねない極限の緊張感の中、榊は精密なタップ撃ちで敵のカメラアイだけを正確に狙い撃っていく。

 

「一尉、ナイスカバーだ! 俺が行く!」

 

巽の強警が、パイプラインの入り組んだ迷路のような空間をスラスターの微細なコントロールで駆け抜ける。火器が使えないのなら、殴り倒すまで。

タンクの陰から飛び出してきたNGM親衛隊機の懐に潜り込み、強警のロッドが唸りを上げて敵機の腕関節を粉砕する。

 

「一機! 次ッ!」

間髪入れず、ショットガンの銃床で敵機のメインカメラを叩き割り、蹴り飛ばして無力化していく巽。彼が警察官として培ってきた、市街地での制圧戦術(CQC)がここへ来て最大限に発揮されていた。

 

「汐見、今よ!」

「見えました……!」

 

鷹司の炎陽が大型レドームで敵の位置を正確に割り出し、データを陣陽へリンクする。汐見の陣陽はタンク群の隙間——わずか数十センチの射線を縫うようにして、徹甲弾を撃ち放つ。発火を伴わない純粋な運動エネルギー弾が、遠距離からNGM機の脚部を正確に貫き、行動不能に陥らせた。

 

「前衛部隊、制圧完了! 鷹司局員、ホバー輸送艦に突入するぜ!」

巽と榊が残存する敵機を沈黙させ、M.I.D.A.S.コアが積載されているはずのホバー輸送艦のメインハッチをこじ開けた。

 

しかし——。

艦内に充満する冷却ガスの向こうにあったのは、抜け殻となった巨大な耐圧カプセルだけだった。

 

「……コアがない! どういうことだ!?」

榊が周囲を見渡す。

 

「やられたわ……! 新潟のエネルギー施設は、コアを起動させるためのものではなかった。ただの『巨大なバッテリー』として利用されただけよ!」

輸送艦のコンソールに接続した鷹司が、歯噛みしながら叫んだ。

 

「充電を終えたM.I.D.A.S.のコアは、すでに別の輸送機に積み替えられている。超音速の大型輸送機……レーダー網を掻い潜り、すでに海上へ飛び去った後よ!」

 

「どこへ向かった!?」巽が問う。

 

「日本海を抜け、津軽海峡を越える気よ。目的地は……北海道・函館市!」

鷹司が展開したモニターには、北の大地へ向けて猛スピードで遠ざかる一つの光点が映し出されていた。

 

「函館……津軽海峡の要衝か。なぜ北海道に?」汐見が訝しむ。

 

「おそらく、O.C.U.から分離独立した『シベリア連合国』と接触するためよ。NGM社単独での兵器運用は不可能と判断し、超大国をパトロンに引き入れる気だわ」

鷹司の声が険しさを増す。

 

「シベリア連合軍がM.I.D.A.S.を接収すれば、もはや我々特務チームだけの手には負えなくなる。軍事衝突……最悪の場合は第三次世界大戦の引き金になりかねない!」

 

「クソッ、逃げ足の速い連中だ! 追うぞ、北の大地へ!」

巽が強警のコクピットで吼える。

 

爆発の危機を回避し、最悪の被害を防いだ特務チームだったが、コアの奪還には一歩及ばなかった。

焦燥感と共に輸送機へと舞い戻った四人は、吹雪が待ち受ける北の玄関口・北海道函館市へと機首を向けた。

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