潮風が火薬の匂いを運んでくる。M.I.D.A.S.事件から一年、O.C.U.を離脱し「日防軍」が「自衛隊」として再編された日本において、とつじ横須賀は新たなテロリズムの時代の最前線と化していた。無人操作のドローン群と、急造の装甲を施したテクニカルが市街地を蹂躙している。サイバーテロリストによる前代未聞の奇襲に対し、初動対応に駆けつけたのは、本来であれば指揮系統の交わるはずのない四機のヴァンツァーだった。
「こちら神奈川県警ヴァンツァー警ら隊、白神! これより市民の避難経路を確保する!」
真紅のパトランプを明滅させた強警が、瓦礫を蹴散らして前線へ躍り出る。熱血漢の警察官、白神慎之介の操縦する機体は、突進してくる自爆ドローンを大型シールドで受け止め、右腕のスタンロッドで容赦なく粉砕した。しかし、路地裏から現れたテクニカルの機銃掃射が強警の装甲を削る。
「熱くなるな、県警。蜂の巣にされるぞ」
通信回線に割り込んだ冷静な声と共に、オリーブドラブに塗装された強盾が強警の前に立ち塞がった。陸上自衛隊ヴァンツァー教導団の伊達健太だ。大型シールドで機銃の雨を弾き返すと同時に、左腕のマシンガンが火を噴き、テクニカルのエンジンブロックを蜂の巣に変える。アタッカーとしての無駄のない挙動だった。
「陸自、県警、射線に入らないでください! 狙撃の邪魔です」
規律を重んじる海上保安官ヴァンツァー支援班、水城凛の澄んだ声が響く。港湾施設に陣取った白と青の陣陽が、ライフルのスコープ越しに次なる脅威を捉えていた。引き金が引かれると同時に、上空で旋回していた大型指揮ドローンのローターが吹き飛び、黒煙を上げて墜落する。
「お見事お見事。でも、まだネズミがいっぱい残ってるわよ」
飄々とした口調で国家情報局ヴァンツァー運用員の如月玲奈が通信に乗る。彼女の乗る炎陽は、建物の陰から軽快に飛び出すと、ハンドグレネードランチャーの銃口を一斉に掃討目標へと向けた。
「まとめて吹き飛んじゃえ」という軽いトーンとは裏腹に、放たれたグレネードは精密な計算軌道を描き、テクニカルの密集地帯の中央で炸裂。凄まじい爆炎が、テロリストの無人兵器群を一網打尽にした。
所属も思惑も異なる四人の操縦者たち。しかし、焼け焦げた横須賀の街の中心で、すたんロッドを構える強警、マシンガンをリロードする強盾、ライフルを構え直す陣陽、そしてグレネードランチャーを下ろす炎陽は、互いの背中を守るように円陣を組んでいた。言葉を交わすまでもなく成立したこのなし崩し的な共闘は、水面下で大国が覇権を争う新たな混沌の時代において、彼らが共に歩むことになる過酷な運命の最初の1ページだった。