フロントミッションサードの二次創作   作:シットライヌ

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第二話

横須賀の市街地を覆っていた爆発の煙が、潮風に流されていく。 スクラップと化したテロリストの無人兵器群を前に、円陣を組んだ四機のヴァンツァーは一時的に銃を下ろした。しかし、各機のセンサーは未だ警戒状態を解いていない。

ローカル通信の回線が開き、雑音混じりの声が響く。

「こちら神奈川県警ヴァンツァー警ら隊、白神慎之介だ。助かった、各機とも。だが、民間人の避難がまだ終わっていない。このエリアの制圧を急ぎたい」

真紅のパトランプを回転させる『強警』のコックピットで、白神は油断なく周囲へカメラを向けながら言った。先陣を切って飛び込んだ彼の機体の大型シールドには、無数の弾痕が刻まれている。

「陸上自衛隊ヴァンツァー教導団、伊達健太だ。……白神と言ったな。県警の勇猛さは評価するが、突出が過ぎる。盾がいくらあっても足りんぞ」

オリーブドラブの『強盾』から、伊達の落ち着いた、しかしどこか呆れたような声が返ってくる。彼は機体の関節部を冷却させながら、左腕のマシンガンの残弾を確認していた。アタッカーとしての計算された立ち回りは、生粋の自衛官のそれである。

「同感です。警察のスタンドプレーは戦線の崩壊を招きます」

冷ややかな声で同意したのは、港湾施設から精確な狙撃を行っていた海上保安官、水城凛だった。彼女の『陣陽』はライフルを携えたまま、周囲の建物の屋上を警戒している。

「海上保安庁ヴァンツァー運用班の水城です。自衛隊の伊達機、県警の白神機、それに……そちらの機体は?」

三人の視線(カメラ)が、飄々とした動きで残骸を蹴り飛ばしている『炎陽』に向けられる。

「んー? ああ、私は如月玲奈。一応、国家情報局所属のヴァンツァー運用員ってことになってるわ。よろしくね、お堅い皆さん」

「国家情報局……? なぜ情報局の人間が横須賀の最前線にいる?」

伊達が怪訝そうに問いただすが、如月は「さあ、たまたまドライブ中だったのかもね」とはぐらかす。

その時、四機の機内モニターに強烈なノイズが走った。 『警告:広域ジャミングを検知。データリンクに障害発生』

「……ドライブの続きは後回しのようね」

如月の声からからかいの色が消えた。 市街地の奥、大通りを塞ぐようにして現れたのは、先程までの急造テクニカルとは次元の違う兵器だった。無人操作に特化して改造された、多脚型の重機動ヴァンツァー。分厚い装甲と、両腕に装備された大口径のガトリング砲が、鈍い光を放っている。その背後からは、新たな自爆ドローンの群れが羽音を立てて湧き上がってきた。

「ジャミング……!? サイバーテロリストめ、本命のお出ましというわけか」

白神は『強警』の右腕に装備したロッドを強く握り直す。

「伊達、水城、如月! 連携の訓練なんてしてる暇はないが、やるしかないぞ!」

「言われるまでもない。私が前衛で弾幕を張り、敵の機動力を削ぐ。白神は遊撃に回れ」

伊達が素早く戦術を構築する。

「後方のドローン群は私が撃ち落とします。如月機は重機動機体の足止めを!」

水城が照準を合わせながら叫ぶ。

「はいはい、人使いが荒いことで。派手にいくわよ!」

如月の『炎陽』がハンドグレネードランチャーに弾を装填した。

即席の小隊が、再び戦場へと歩みを進める。 電子戦の網の目が張り巡らされる中、所属も異なる四人の正義と機体が、再び火花を散らそうとしていた。

大気を揺らす重低音とともに、多脚型重機動ヴァンツァーの両腕に備えられた大口径ガトリング砲が赤く熱を帯びた。

「散れっ!」 伊達の叫びと同時に、猛烈な弾幕が市街地を削り取る。アスファルトが爆破されたように弾け飛び、建物の壁面が蜂の巣になって崩落していく。

白神の『強警』は大型シールドを前面に構え、横滑りするように側方へ回避する。シールド表面を跳弾がけたたましい金属音を立てて削り取っていくが、白神は歯を食いしばり操縦桿を固く握りしめた。

「くそっ、威力が違いすぎる! だが、引きつけてみせる!」

白神はバックパックのブースターを噴射し、あえて敵の視界に入る位置へと躍り出た。サブウェポンの大型ショットガンを引き抜き、多脚機のセンサーユニットに向けて至近距離から散弾を打ち込む。装甲を打ち鳴らす派手な火花が散り、敵の主砲の照準が一瞬、白神へと逸れた。

「今だ、伊達!」

「受け取った!」

その一瞬の隙を見逃さず、伊達の『強盾』が肉薄する。脚部ホバーの滑走音とともに敵の懐へ飛び込むと、左腕のマシンガンを至近距離で連続掃射。さらに間髪入れず、右腕に装備した打撃兵器ナックルを力任せに打ち込んだ。 鋭い破砕音が響き、多脚機の脚部関節フレームが歪む。重量級の巨体が大きく傾いだ。

しかし、空からは無数の自爆ドローンが蜂の巣をつついたように押し寄せてくる。

「追撃させない……!」

遠方のビル陰から、水城の『陣陽』が正確無比な精密射撃を繰り出す。狙撃ライフルから放たれる大口径弾が、白神と伊達の頭上に迫るドローンを次々と撃ち抜いていく。撃墜されたドローンが次々と空中で爆発し、黒煙の幕を作り出した。

「水城、助かった!」

「礼には及びません。ですが、数多すぎます……弾薬の消費が追いつかない!」

「それなら、私が一気に片付けるわ!」

如月の『炎陽』が旋回しながら躍り出た。彼女はハンドグレネードランチャーの全弾装填を確認すると、計算された射撃アングルへと機体を滑り込ませる。

「自爆ドローンの誘導波、パターン把握完了。束になって飛んでくるなら――ここで纏めて逝って!」

『炎陽』の肩部ランチャーから放たれた特殊グレネード弾が、空中で炸裂。広範囲に飛び散った特殊榴弾がドローン群を巻き込み、巨大な爆炎の連鎖を引き起こした。空を埋め尽くしていた無人機の群れが、一瞬にして鉄の雨となって降り注ぐ。

「よし、ドローン群は消えた! あとはあのデカブツだけだ!」

白神が声を張り上げ、『強警』の右腕に装備されたすたんロッドを加圧・展開する。高電圧を帯びたロッドの先端から青白い火花が散った。

「伊達、脚を止めろ!」

「了解! 左脚部ジョイントを破壊する!」

伊達の『強盾』が再び踏み込み、マシンガンの全弾を多脚機の右駆動部に叩き込む。装甲が引き裂かれ、黒いオイルが噴き出した。動きの止まった多脚機に対し、水城の『陣陽』が射撃でセンサーを潰し、如月の『炎陽』が追撃のグレネードで体制を完全に崩させる。

「これで……終わりだぁっ!」

白神の『強警』がシールドを構えて突撃し、渾身の力で過熱したスタンロッドを多脚機の胴体中央、メインコックピット(制御ブロック)へと突き刺した。

激しい放電現象とともに、多脚型重機動ヴァンツァーの内部で連続爆発が起きる。巨大な足が崩れ落ち、横須賀の路上に沈黙が訪れた。

激しい戦闘の余韻の中、四機のヴァンツァーは肩で息をするように排気弁から蒸気を吹き出していた。

「……ふう。どうにか、撃破完了だな」

白神がバイザーを上げ、汗を拭いながら呟く。

「危険な賭けだったがな。……だが、見事な連携だった」

伊達も息を整えつつ、周囲の安全を確認した。

「ですが、これで終わりではないかもしれません」

水城が警戒を解かないまま言った。

「これほどの規模の無人兵器とサイバーテロ……単なる一テロ組織の仕業にしては、兵器の規格が整いすぎています」

「正解」 如月の『炎陽』が、破壊された多脚機の残骸に近づき、その装甲の裏側をカメラでスキャンしていた。

「この多脚機、制御チップの製造元が削り取られてる。……けど、このプロセッサの回路パターン、O.C.U.の軍用規格そのものよ」

「O.C.U.の……? 日本がO.C.U.を離脱して1年。なぜ旧加盟国の最新兵器が、こんなところでテロに使われている?」

白神の顔が引き締まる。

「M.I.D.A.S.事件以降、世界中で水面下の化かし合いが激化してるからね」

如月はどこか冷めた声で呟いた。

「U.S.N.、大漢中、EC、それに新生ロシア……そしてO.C.U.。誰もがこの国の『次の出方』を探ってる。今日のテロは、ほんの挨拶代わりかもしれないわね」

横須賀の港に、重苦しい静寂と冷たい潮風が吹き抜ける。 所属の異なる四人の若き搭乗者たちは、自分たちがすでに、世界規模の巨大な陰謀の渦中に巻き込まれていることを予感していた。

 

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