海風が吹き荒れるヤードの西側。到着した偽装トレーラーのコンテナが左右に展開し、四機のヴァンツァーが深夜の工業地帯にその巨大な姿を現した。
「全機、起動完了。これより造船所跡地の制圧を開始する!」
白神の『強警』を先頭に、鉄の巨人たちがコンクリートの地面を砕きながら突進する。錆びついた造船所のシャッターを物理的にぶち破ると、内部では出撃準備を終えた無数の装甲車両(テクニカル)と無人機(ドローン)が、一斉にセンサーの赤い光をこちらへ向けた。
「敵の数はざっと五十……いや、奥からまだ湧いてきます!」
通信越しに鞍馬が警告を発する。
「数は問題じゃねえ。伊達、前衛(ライン)を構築しろ!」
「了解した。ここから先は一歩も通さん!」
伊達の『強盾』が前方に躍り出た。彼が左腕に構える強固な大型シールドに、テクニカルからの重機関銃の掃射が雨霰と降り注ぎ、火花を散らす。しかし伊達は微動だにせず、右腕のマシンガンを掃射した。
「スクラップの時間だ」
貫通(ピアス)属性を持つ徹甲弾が、次々とテクニカルのエンジンブロックを撃ち抜き、走行不能の鉄屑へと変えていく。
地上部隊の足が止まった瞬間、頭上の暗がりから、爆発物を抱えたクアッドコプターの大群が不気味な羽音を立てて急降下してきた。
「虫けらどもが、鬱陶しいわね!」
如月の『炎陽』が前に出る。彼女の機体が装備しているのは、両腕での保持が必須となる大型火器、ハンドグレネードランチャーだ。両手を塞ぐため防御は小型シールドに頼らざるを得ないが、その破壊力は絶大だった。
「まとめて燃えなさい!」
放たれた榴弾が空中で起爆する。炎熱(ファイア)属性の爆風と炎の網が広がり、ドローン群はセンサーを焼かれ、次々と火ダルマになって床へと墜落していった。
『鳴海、敵の自律制御ネットワークにジャミングを仕掛けるわ! 水城、残った地上無人機(UGV)の処理を!』
『了解。射線、クリアです』
後方へ陣取った水城の『陣陽』が、同じく両手保持の大型武器であるライフルを構え、小型シールドの影から冷徹に照準を合わせる。貫通(ピアス)属性の精密狙撃が、煙幕の向こうから突撃してくる無人戦車のメインカメラと駆動系を、寸分の狂いもなく撃ち抜いて沈黙させた。
「見事な連携だ。だが、親玉のお出ましらしいぞ!」
白神の視線の先。造船所の最奥から、他の車両の倍近い装甲を施され、大量の爆薬を満載した巨大な特装テクニカルが、自爆目的で猛スピードで突進してきた。
「伊達の盾でも、あの質量の自爆は防ぎきれねえ……俺が止める!」
白神の『強警』が大型シールドを構えたままブーストを吹かし、正面から迎え撃つ。
激突の直前、白神は右腕のショットガンを至近距離から叩き込んだ。衝撃(ショック)属性の強烈なストッピングパワーが特装テクニカルの装甲を大きく陥没させ、その突進の勢いを強引に殺す。
「トドメだ。大人しくおねんねしな!」
動きの止まった車両に対し、白神はショットガンをマウントに収め、素早くスタンロッド(電磁警棒)を引き抜いた。
装甲の隙間にロッドを突き立て、最大出力の電流を流し込む。炎熱(ファイア)属性を帯びた致死量の高電圧が内部の電子回路を瞬時に焼き尽くし、特装テクニカルは起爆信号を出せないまま、完全に機能を停止した。
「ふぅ……一丁上がりだ」
沈黙したヤードを見渡し、白神が息を吐く。
テロリストたちの無人機による物量作戦は、『鵺』の完璧な戦術と武装の使い分けの前に、一歩も外へ出ることなく水際で粉砕されたのだった。