黒煙と熱気が立ち込めるヤード内に、静寂が訪れた。散らばるテクニカルの残骸と焼き尽くされたドローンのパーツを踏みつけ、四機のヴァンツァーがゆっくりと警戒網を解いていく。
「全機、周辺のクリアを確認。……鞍馬、本隊の警察部隊を呼んでくれ。裏で糸を引いていた連中の後始末だ」
白神がコックピットから通信を入れると、即座に鞍馬の頼もしい声が返ってきた。
『了解しました。すでに警視庁の機動隊および海上保安庁の警備艇が、造船所の外囲を完全に封鎖しています。逃げ場はありませんよ』
ヴァンツァーを離れた白神と伊達は、生身の拳銃を手に造船所奥の耐圧コントロールルームへと踏み込んだ。重い鉄扉を蹴り開けると、そこにはモニター群の前で青ざめた顔をして震えるテロ組織の幹部たちの姿があった。
「な、何なんだあいつらは……! 我々の無人兵器の『群れ』が、たった四機の機甲戦力に壊滅させられるなんて……!」
「警察だ。全員、動くな!」
白神が警察手帳を突きつけ、冷ややかに告げる。
「お前らの自慢の『無人兵器』とやらは強固だったが……それを動かす人間(お前ら)の心が随分ともろかったようだな」
翌朝。霞が関の地下会議室。
都内で無事に国際平和シンポジウムが開幕したことを伝えるニュースが流れる中、官房長官の右腕である男性と女性秘書が、並び立つ六人の前で満足そうに頷いていた。
「見事な鮮やかさだ。生身での捜査からヴァンツァーによる排除まで、完璧な手際だった」
男性が低く重厚な声で称えると、女性秘書がタブレットを見ながら淡々と追記する。
「臨海部のテロ計画は水際で完全に封じ込められ、表向きには『老朽化倉庫の爆破事故』として処理されました。ネクサスの残党ルートも一網打尽です。今回の実績をもって、官邸から遊撃班『鵺』への恒久的な予算と行動権限の付与が決定しました」
「へえ、そいつは助かるわ。これで弾薬の請求書で胃を痛めずに済むわね」
如月が胸をなでおろし、水城と伊達も互いに小さく頷き合った。
「諸君、次の指令が下るまではそれぞれの持ち場に戻りたまえ。だが、忘れるな。大国や企業の思惑が蠢く限り、見えざる脅威が消えることはない」
最高責任者の言葉を受け、白神が首の骨を鳴らして不敵に笑う。
「任せてくださいよ。どんな暗雲が垂れ込めようと、俺たちが裏から一蹴して見せますから」
公の日常へと戻っていく六人の背中。組織の壁を越え、闇に潜む悪を打ち払う特務遊撃班『鵺』の戦いは、これからも静かに、しかし確実に続いていく。