カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン
湿気により端々にカビの生えた階段が下へ下へと続いている。
階段を下るたびに薄汚れたコンクリートの壁に歩く音が木霊していた。下っていく人影は一つ、 赤黒いニンジャ装束に「忍」「殺」と刻まれたメンポ《面頬》。ニンジャスレイヤーだ。
ネオサイタマの北西に位置するここは、ソウカイヤの拠点の一つである巨大地下施設。表向きにはただのトーフ工場であるが裏ではソウカイヤが所持する最新サイバネ技術兵器の保管庫である。
カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン カッ
長い階段が終わりコンクリートの床へ足がつく。コンクリートの地下空間に似つかわしくない合金製ショージが目の前に貼り付けたように設置されていた。
無機質なゴシック体で「フツウ開けない」「スゴイカタイ」と書かれた二枚のショージの隣にはパスワード打ち込む開錠装置がある。しかし、それには目もくれず彼はサッカーキックめいて足を引くと合金製ショージにキックした。
常人であれば骨折しているだろうが凄まじいニンジャ脚力によりキックで合金製ショウジはへこんでいった。キックに耐えきれなかった合金製ショウジが勢いよく飛んでいき侵入する、蹴破られた部屋の中はザブトンと長机、毛筆風のミンチョ体で「エンカイジョ」とかかれた掛け軸だけであった。
「どういうことだ、情報が違っていたのか?」事前調査の情報を疑うが、直ぐに冷静さを取り戻す。「ここではなく、隠し扉か、何かあるのだろう。」そうして部屋の中にもう一歩踏み込んだ。その瞬間、高速回転したスリケンがニンジャスレイヤーの背後に襲い掛かる。
突然のアンブッシュ。「イヤーッ!」振り向きざまのキックによってニンジャスレイヤーは迎撃。ワザマエ!
猫めいた動きで空中から降ってきたニンジャがニンジャスレイヤーと距離をとって着地する。
「ドーモ、ハジメマシテ。ニンジャスレイヤー=サン、マウント・キャットです。ここ知られては死んでもらうしかあるまい。」ねっとりとした声で腕を前に合わせ、獲物を見る目をしたまま猫背で曲がった背中でオジギした。
「ドーモ、マウント・キャット=サン。ニンジャスレイヤーです。ソウカイヤの差し金か、死ぬのはオヌシの方だマウント・キャット=サン。」手を合せたオジギのニンジャスレイヤーからはただならぬ殺気があふれていた。
アイサツ、神聖不可侵のイクサの掟にしてニンジャにとって必須の行動。だが、それが終わった今、両者の手からスリケンが投げられる。「イヤーッ!」「イヤァーッ!」スリケンの応酬。数は同じ、だが勢いによってマウント・キャットが押される。
「イヤァーッ!」不利だと判断したマウント・キャットはダイアモンドチタン製の鉤爪を長机に食い込ませニンジャスレイヤーに放る。「イヤーッ!」カラテチョップにより粉砕する。
しかしマウント・キャットがニンジャスレイヤーの懐へ猫のごとく素早くもぐりこんだ。「喰らえ、ニンジャスレイヤー=サン!ここへ来たことをあの世で後悔しな!」
ダイアモンドチタンの爪が体に食い込んだ、そう確信した。だが、ニンジャスレイヤーはカラテチョップをしたのとは反対の右手の小手で防いでいた。「バカなーッ!」口汚く悪態をつくマウント・キャットに左パンチが飛ぶ。
「イヤーッ!」「グワァーッ!」顔面に拳がめり込み、体が”く”の字で吹き飛ばされ部屋の白い壁に激突し蜘蛛の巣めいた亀裂が広がり血に塗られる。
「クソッタレェー!」血まみれの顔からは余裕をなくした怒りが刻まれ、マウント・キャットは両手のダイアモンドチタンの爪を振り回した、ヤバレカバレか?いや違う、これは彼のカラテであるネコカラテの奥義の「ネコヅメ」だ!
「貴様にこれが見切れるか!ニャハアハハアハ!」顔からは引きつった笑顔、両腕からは残像が出るほど高速に動かされた爪により周りの長机が破砕機に入れられたように粉々になっていっている。
「ニャーッ!」ゴムまりめいた踏み込みでマウント・キャットが飛び掛る。横にステップしてニンジャスレイヤーは避ける、一瞬後に先までいたタタミが円形に抉り取られていた。
「ニャーッ!」タタミが抉り取られる。何度も避け続けていると部屋中タタミが月のクレーターのように無数に穴が空いていった。10回、11回と避け続けたニンジャスレイヤーが突如足を止める。ナムサン!心が折れたのか?負けを確信したのか?否、彼はジュージツの構え、腰を沈め拳を強く握った。
マウント・キャットが目の前に迫った瞬間「Wasshoi!」深い踏み込みから放たれたポン・パンチがニンジャ視力によって見切ったマウント・キャットの爪を砕いた。
「アバーッ!俺の爪が!」マウント・キャットは爪と両手が砕かれ血がダラダラ流れている。「終わりだマウント・キャット=サン、ソウカイヤの兵器はどこだ。言えば楽に殺してやる。」
アイアンクローでマウント・キャットの顔を持ち上げる。何たるニンジャ握力!指が顔面にめり込み血が噴き出る。「グ…何処だと?鈍い奴め、この部屋こそがソウカイヤの時空転送の兵器、流刑地だ!貴様もここで終わりだニンジャスレイヤー=サン!」
マウント・キャットが自身の舌を嚙みちぎり舌に隠してあったスイッチを噛んで押す。「イヤーッ!」心臓を貫かれたマウント・キャットは肉体の限界を迎える「サヨナラ!」爆発四散!殺した。だが、一歩遅かったようだ。合成マイコ音声が警告音声を部屋中に流している。
〈シマルドスエ、シマルドスエ〉合金ショージの上から分厚いシャッターが閉まる。〈キドウスルドスエ、キドウスルドスエ〉ニンジャスレイヤーは出ようとシャッターに攻撃するが傷一つつかない。
「イヤーッ!イヤーッ!」攻撃虚しく、部屋の起動準備が完了した。〈カウントダウンドスエ、3…2…1〉部屋は白い閃光に包まれる。部屋は元の通りに抉れたタタミも千切れたザブトンも切り刻まれた掛け軸さえ整理され、そして部屋には誰もいなくなった。
目が覚める。ニンジャスレイヤーは段ボールで厚みを増したボロ切れの様なフートンの上に寝ていた。「グッ…ここは?」起き上がろうとすると激しい頭痛に苛まれた。ニンジャ装束も解けて下に着ていたシャツとズボンのみになっている。
「おい、アンタ。起きたのか?倒れてたんだし寝ておけ。」声のする方に目を向けると薄汚れたマントをした浮浪者、いや浮浪オートマタがこちらを向いている。オバケ!
自我があるオートマタはネオサイタマには居ない、だからといってアイサツしないのはスゴイシツレイである。「ドーモ、ハジメマシテ。イチロー・モリタです。」座ったまま合掌したオジギだ。「こんな状態なのにえらい丁寧だな、初めましてゲンダーです。」オートマタのゲンダーもアイサツを返した。
幾つか聞きたいことがあり、フジキドは質問する。「ゲンダー=サン。すみません、ここはどこですか?」「ここ?ここら辺はゲヘナだな。といっても自治区の際だけど。」
ゲヘナ?自治区?聞き慣れない単語に首を傾げる。(ゲヘナ?ネオサイタマにそんな所あったか?)
「ゲヘナ、聞き慣れないですがネオサイタマの何処ですか?」「ネオサイタマ?あんたキヴォトスの外から来たのか?そこは知らねぇがここはキヴォトスのゲヘナ自治区だ。」ネオサイタマでない、その言葉に驚き廃材で出来たテントを出て空を見る。
ネオサイタマを覆う厚い雲も磁気嵐も超巨大ビル群も無い。ここはネオサイタマでないことをフジキドはようやく理解した。「どういう…事だ?」(俺はあの時、白い光に包まれて…あの時空転送装置か?どういうところだ?ナラクはどうなった?)混乱したままのフジキドのニューロンが忙しなく動く。
「まあ、なんだ。倒れてたんだし混乱してるんだろ、戻れよ。飯でも食って落ち着け。」ゲンダーの優しい気遣いが身にしみる。
勘のいい読者諸君ならお気づきだろう、ここがネオサイタマでなく、ソーシャルゲーム【ブルーアーカイブ】の舞台、学園都市キヴォトスである事を。
この物語はニンジャスレイヤー、フジキド・ケンジがキヴォトスからネオサイタマへと戻るまでの物語である。
ニンジャはニンジャスレイヤー以外出すつもりは無いです。
誤字報告・忍殺語の誤用があればコメントしていただけると幸いです。
第1話を読んで下さりありがとうございます。合掌!