異世界に、脳を焼いた君がいた   作:カユキ

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本当は6月以内に書き終わるつもりだった。
なんか8月になってた。なんで?


こんな奇跡的な出会いあんまりない……そんなことない?

 異世界、最近よく聞く響きだ。

 中世ヨーロッパ風の世界で、そこで見つけた仲間たちと、自由気ままに冒険する。大体こんな感じなはず。

 でも私がいる異世界は全然そんなことないようで、鬱蒼とした木々に永遠に輝く黄昏。そんな世界にポツンと1人。

 そして想像と一番違ったことは私の目の前に現れたキミだった。

 

 憧れて、大好きだったキミ。

 

 異世界に、脳を焼いたキミがいーー

「ぎゃああああああああああ!出たぁあああああああああ!」

「ちょっと、どういう意味!?」

 

 乙女の顔を見て逃げ出すなんてどういう了見かなぁ!?

 

 

ーー異世界に、脳を焼いたキミがいたーー

 

 

「はい、逃げ出してすみませんでした」

「よろしい」

 

 私の前に正座したキミは申し訳なさそうな顔をしている。あの頃に比べてやけに素直になったんだな。

 そう考えると気づくことがあった。彼の服装もあの頃とは変わっていた。

 毎日制服とジャージしか着てなかった男が、ジャケットなんて……!

 私が密かに感動していると、彼がそっと切り出した。

 

「なぁ……本当にキッカ、お前なんだよな?」

「まだそんなことを言うか」

「いやだって未だに信じられなくて」

「まったくもう」

 

私は胸を張って言ってやった。

 

「私は日明野 菊花本人だよ。そういうキミは……名無しの権兵衛君だっけ?」

「俺が悪かったから灰原 夜須賀って呼んでください」

「分かったよゴン」

「権兵衛を略すな」

 

 それで、とキミはぐるりと辺りを見回した。

 

「ここはどんな場所なんだ?到底日本には見えないけど」

 

 私もキミの視線を追っていた。

 暗く高い木々、その間から差し込む夕日、橙に照らされた空を舞う綿。

 少なくとも、住宅地ではない風景だ。

 

「あの夕日もさっきからちっとも沈まない、これはまるで、ゲームにあった、」

「「黄昏の世界」」

「昔誰もがやった、見たことあったそんなゲームの世界にそっくり」

 

 昔あったサンドボックスゲームの有名MODのひとつで、黄昏に落ちた大森林を探検するという内容だ。

 

「でも実際は違う。ちょっとすればまた違った景色が見えてくるよ」

「今度はなんのゲームだ?」

「いやゲームが変わるんじゃなくて、なんだろ、カオス?」

「なんじゃそれ」

「行ってみれば分かるよ。行こう!」

「仕方ないな」

 

 ヨスガはやれやれと言わんばかりに立ち上がった。服装はあの頃とは変わっていたけど、面倒くさがりつつも付き合ってくれるその仕草はやっぱり変わらないヨスガのものだった。

 

 それがどうにも嬉しくってニマニマしてたから、バレてないかだけが心配だった。

 

 

---------

 

 

「じゃーん、市場ー!」

「おー、おー?」

 

 森を歩いて数分で、私たちは市場に出た。

 市場といっても豊洲市場みたいなやつじゃなくて、露店が何個も並んでるタイプのやつ。

 

「市場って割には人も店もいなくないか?」

 

 ヨスガの言う通り、フリーマーケットのようにテントが何個も並んでいるわけではない。

 大き目の獣道の両サイドに切り株が何個もずらと並んでいるだけで、誰かいるというようには見えない。

 

「異世界の市場を舐めちゃあいかんよヨスガくん。ほら見て!」

 

 私が指差した方向には一つの切り株がある。あれが露店になるのだ。

 切り株の露店に一つのふわふわとした白い光が漂ってきた。

 それに応対するようにその向かい側にもう一つ白い光が現れる。

 

「何あれ」

「あの小さな光は精霊って言うの。この世界の住人だよ」

「まさか人間がいないとは思わなかった」

「……異世界だよ?」

「異世界だぜ?」

 

 異世界では常識に囚われてはいけないんです!

 でも気持ちはわかる。

 人がいない異世界は少なかった気がするから。

 でも、『不思議の国アリス』とかもあるからそこまで変ではない……と思いたい。

 

「精霊って何をやりとりしてんだ?」

「普通にモノだよ」

 

 店主の精霊が茶色い団子みたいなものを取り出して、買いに来た精霊は同じように葉っぱを編んだ船を取り出す。

 お互いに物を交換して、取引は終了した。

 

「じゃあ今度は私達もやってみよっか」

「え!?嘘だろ!?」

「いいからいいから♪」

 

 ヨスガを押して、精霊に対面させる。

 

「え~っと……なんかありますか?」

 

 すっと、さっき出てきた団子っぽいものを出してきた。

 

「俺は何を出せばいいわけ?」

「何でもいいよ。お金とかいいんじゃない?」

「俺金欠なんだけど……」

 

 ヨスガが財布から100円玉を取り出して、切り株の上に置いた。

 あれ?あの財布見たことないや。ちょっと材質が良さそうなもの使ってるっぽい。買い替えたのかな?

 

「うわ、俺の100円が消えた」

「これで取引完了だよ!おめでとう」

「ありがとう?」

 

 ヨスガは団子っぽいものを恐る恐る手に取り上げた。

 値踏みするように観察している。

 

「これなんだ?食べれるのか?」

「ああ、それはね。投げると爆発する泥団子だよ」

「危険物じゃねえか!!」

「わぁ、危ないよ!」

 

 ヨスガが反射的に取り落としそうになるのを慌てて抑える。

 投げて爆発するものは当然落としても爆発する。

 

「でも投げなければ爆発しないから大丈夫。ポケットに入れても安全だよ」

「……本当かー?」

「本当本当」

 

 渋々と言った感じにポケットに入れてくれた。

 

「で、この超危険市場でなんか買いたいものあるのか?」

「超危険じゃないよー!たまたまだって」

「じゃあやっぱりこの泥団子危険じゃねえか」

「まぁまぁまぁ。でも面白くない?」

 

 ヨスガは引きつった顔で返した。

 

「まぁ、まぁまぁまぁ」

「よしよし」

「でも次行くなら普通の場所がいいわ」

「それなら私の家とかどう?」

「え"っ!?」

 

 うん、そういえばヨスガの家に行ったことはあっても逆はほとんどなかったな。

 ヨスガも泥団子を置いておく場所が欲しいだろうしいいんじゃないかな。

 

「じゃあ早速出発進行!」

「ちょちょちょ待てって置いていくなよ!」

 

 思えば私は浮かれていたように思う。

 それが間違いとは言わないけど、もう少し落ち着きを持った方が良かったように思うんだ。




新シリーズです。
この対照的な二人の冒険をしばしの間お楽しみ下さい。
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