「あった」
オカルト部の部室を一人で漁っていると目当ての物を見つけた。
『調査記録 金森優太』
オカルト部に所属していたころの記録だ。
あいつが何か隠しているのならその記録を読み解くのが一番早い。
「……暗いな」
記録が収められていた箱から離れて、窓際による。
太陽光で照らして、中身を読み解いていく。
最初の辺りは当たり障りのない調査記録が続いていた。
気になる記録は高校二年生になってから、『日明之菊花』の名前が出てきてからだ。
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5/○○
放課後に僕がOBの記録を呼んでいると、急にオカルト部の扉が叩かれました。
『助けて、怪奇現象にあったの!』
女子生徒が一人駆け込んできました。名前は確か「日明之菊花」。
とりあえず話を聞くことにしました。
『さっき学校の玄関にいたんだけどそしたら急に周りが地獄みたいな景色に変わったの』
疲れによる幻覚かと思いましたが、そういえばOBの記録に似たような記録があった気がします。
とりあえず後日また会う約束をして、本日は帰ってもらうことにしました。
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どこで金森と知り合ったか気になってたが、そんなことがあったのか。
どうやら俺は本当に何も知らなかったらしい。
それに地獄か……金森が見せてきた記録にそんな記述があったな。あいつやっぱり知っていた上で隠していたらしい。
そこまで考えてから、俺は次のページを捲った。
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5/×
思った通りでした。過去にも似たような記録が起きていたみたいでした。
それも一回ではなく、定期的かつ断続的に発生する怪奇現象でした。しかし、被害者の中に取り返しのつかない事態になった人はいないようです。
そのことを日明之菊花さんに伝えると彼女は不安がりながらも納得した様子で帰って行きました。
しかし、過去に複数回起きていたようですが、いまだに原因や由来の調査はされていないようです。
丁度私も暇していましたので、調べてみることにします。
とりあえず件の現象に遭遇するまでは過去の記録を漁ってみます。
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そこから数週間は当たり障りのないことが書かれているだけだった。
金森は結構まめな性格らしい。何もない日も何もないと律儀に書いてある。
面倒くさくなった俺は「日明之菊花」が出てくるまでパラパラと記録を捲った。
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7/×○
恐ろしいことが起きました。
中々件の現象に遭遇できなかったので日明之菊花さんに実際に遭遇した玄関口で聴き取りをしていました。
すると急に現象が発生して辺りの風景が変化しました。
幻覚の特徴は以下の通りです。
・絵本の地獄を彷彿とさせる光景
・人玉や大蛇が闊歩している。
・実態がある。
いい機会だと思った私は実地調査として蛇や人玉を観察しました。
しかし、その途中で大蛇に気づかれました。
ただの幻覚であれば恐れることはありませんが、蛇が私達の横を通り抜けたときに風圧を感じました。あの大蛇に実態があると判断した私たちは逃走を選択しました。
しかし判断が遅く、逃げ遅れてしまいました。
私を庇って日明之さんが掴まり、大蛇が捕食を試みた寸前で、元の学校に帰還しました。
明らかに過去の記録よりも滞在時間と危険性が上昇していました。
……率直に、多少の怪奇現象を見たことはありましたが、ここまでのものは初めてです。
早急に解決する方法を見つける必要があります。
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8/△
一連の現象は時間がたつごとに実態化時間が伸びていました。それに反比例するように発生件数は低下しています。
数少ない遭遇者の証言や事例を統合するに、あの世界は実態を持っていることは確実である。
長期間の実態化によっていつケガをする人が出ても不思議ではありません。
最悪の場合あの世界がそのまま顕現することも考えられる。
しかし、あの世界の実態はつかみました。
あとはそれをどうコントロールすればよいか、です。
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あの世界の実態……異世界の実態は人々の思いと言っていたな。
金森はどうやってか2年前の時点でそこまで理解していたようだ。
だが、俺が気になるのはどうやってコントロールをしてそして、どんなことをしたら菊花が命を落とす羽目になったのかだ。
俺は次のページを捲った。
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8/16
僕は失敗した。
儀式を進めている最中に長時間実態化が起きて飲み込まれた。
吐き出された時には全てが終わっていた。
日明之菊花さんが僕の代わりにコントロールを行ったらしい。
あとには日明之菊花さんの動かなくなった身体だけが残っていた。
彼女は自死によって自らを生贄にしたらしい。
僕は失敗した。
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な、は?
明らかにページが滑落している。
よく見ると数ページやぶられた痕跡があった。
その儀式ってなんだよ!
なんで生贄になる必要があったんだよ!
肝心なところを破り捨ててるんじゃねえよ!
「金森……お前は何がしたかったんだよ!」
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あれからオカルト部内を調べても目ぼしい情報は見つからなかった。
「結局はこの世界を調べるしかないのか」
黄昏の世界。
もう何かあるとするならここしかないだろう。
幸いアテが無いことはない。
この森の世界には小さなふよふよとした光……キッカ曰く森の精霊が漂っている。
言葉を発することのできない彼らだが、市場での一幕を思い返すあたり意思疎通ができないわけではないはずだ。
近くの精霊を手で呼び止めて、話しかける。
「なぁ、そこの精霊さん。森の中に教室の扉って見たことないか?」
精霊は動かない。
……まぁ異世界の精霊に日本語が通じるわけもないか。
ため息をつきそうになった時、目の前の精霊が突然くるくるとその場で回り始めた。
「なんだ?何が言いたいんだ?」
すると精霊は、スイーっと俺から離れていって……止まった。
その場でくるくると回っている。
まるで俺を待っているみたいに。
「マジか。言葉通じるのか」
俺は精霊の後を追って森の中を一人で掛けていく。
調査は進んでいるはずなのに、なぜか虚しさが心を満たしていた。
ヨスガの調査パートはあと一話くらい続くのでよしなに……