『無職転生 if ― もしシルフィが嫉妬したら ―』 作:takuya丸
そんな妄想から書いてみました。
好きな人から、自分ではない女性について恋愛相談をされるシルフィ。
フィッツとして相談に乗るのか。
それとも、シルフィとして自分の気持ちを伝えるのか。
嫉妬と葛藤の中で揺れる、シルフィエットsideのお話です。
※本編とは関係のない個人的なif妄想SSです。
「フィッツ先輩、相談があります」
放課後。
研究室でナナホシと話していたルーデウスが、突然フィッツのところへやってきた。
「フィッツ先輩」
「どうしたの?」
「ちょっと相談したいことがあるんですが……」
「恋愛相談?」
「……なんでわかったんですか?」
「えっ」
シルフィの心臓が跳ねた。
――恋愛?
――ルディが?
「いや、その……最近ちょっと気になる人がいて」
「……へえ」
なんとか平静を装う。
「どんな人?」
「同じ学校の人です」
「……そう」
シルフィの胸がざわつく。
まさか。
いや。
もしかして。
「その人とは、よく話すの?」
「はい。かなり」
「……誰?」
思わず食い気味に聞いてしまった。
「ナナホシです」
「…………」
シルフィの思考が止まった。
「……そっか」
「どう思います?」
「どうって……」
――どう思うも何も。
――ボクがナナホシを好きにならないでって言えるわけないじゃん
「フィッツ先輩?」
「……ごめん。ちょっと考えてた」
⸻
ルーデウスは真剣だった。
「俺、女性との付き合い方がよくわからないんです」
「……うん」
「ナナホシって、俺と同じ日本人でしょう?」
「そうだね」
「だから話していて凄く楽しいんです」
シルフィの胸が痛む。
「昔の話もできるし、こっちの世界の人には通じない冗談も通じる」
「……うん」
「それに、俺の考えてることを理解してくれるんです」
「……うん」
「でも、ナナホシが俺をどう思ってるのかが、よくわからなくて」
シルフィは俯いた。
本当はわかっている。
ナナホシがルーデウスに対して少しずつ特別な感情を持ち始めていることを。
それを教えるわけにはいかない。
でも。
「……ルーデウス君」
「はい」
「その人のこと……好きなの?」
「……たぶん」
その瞬間。
シルフィの中で、何かが弾けた。
「たぶん?」
「はい」
「じゃあ、まだ好きって決まったわけじゃないんだね?」
「え?」
「いや……」
焦っている。
明らかに焦っている。
「だったら、もう少し考えてからでもいいんじゃないかな」
「なるほど」
「うん。焦って告白する必要なんてないよ」
――そう。
――まだ間に合う。
シルフィはそう思った。
ところが。
「でも、ナナホシに他の男が近づくと、ちょっと嫌なんですよね」
「…………」
「これって、やっぱり好きってことなんでしょうか?」
「…………たぶん」
声が震えそうになる。
「フィッツ先輩?」
「……恋愛って、難しいね」
⸻
その日の夜。
シルフィはアリエルの部屋に飛び込んだ。
「アリエル様!」
「まあ、フィッツ。どうしました?」
「ルディが!」
「ルーデウス様が?」
「ナナホシを好きかもしれないって!」
アリエルは一瞬黙った。
「……そうですか」
「しかもボクに相談してきたんです!」
「それは……」
「どうすればいいんですか!?」
「シルフィ」
「はい!」
「まず落ち着きなさい」
「無理です!」
アリエルは苦笑する。
「あなた、今まで散々『いつか正体を明かす』と言っていましたよね?」
「……」
「その『いつか』が来ただけですよ」
「でも……」
シルフィは俯く。
「怖いんです」
「何が?」
「正体を明かしたら……今のフィッツ先輩との関係までなくなってしまうかも」
アリエルは静かに答えた。
「しかし、このままでは?」
「……」
「ナナホシに取られるかもしれませんよ」
「……っ」
シルフィの顔が青ざめる。
「アリエル様……」
「シルフィ、私はあなたに幸せになってほしいのです」
アリエルは立ち上がった。
「ですから、今回は命令します」
「え?」
「次にルーデウス様から恋愛相談を受けたら――」
少しだけ笑って。
「あなた自身のことを話しなさい」
「……!」
シルフィは息を呑んだ。
そして翌日。
またルーデウスが来る。
「フィッツ先輩」
「……何?」
「昨日の続きなんですけど」
シルフィの心臓が跳ねる。
「ナナホシに、告白しようと思ってます」
「…………」
――来た。
「それで……」
ルーデウスは真剣な顔で言う。
「どういうふうに告白すればいいと思います?」
シルフィは拳を握る。
ここで言えばいい。
私はシルフィだ。
そう言えばいい。
なのに。
「…………」
口が動かない。
「フィッツ先輩?」
「……ルーデウス君」
「はい」
「その人のこと……本当に好き?」
「はい」
即答だった。
シルフィの目から、一粒だけ涙が落ちる。
「……そっか」
そして。
笑った。
「じゃあ――」
その笑顔は、フィッツ先輩のものではなかった。
幼い頃のシルフィと同じ、あの日の笑顔だった。
「ちゃんと、自分の気持ちを伝えた方がいいよ」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、「シルフィがナナホシに嫉妬するところをもっと見たい」という、かなり個人的な願望から書いてみました。
ただ、シルフィって嫉妬しても、相手を責めたりナナホシを嫌ったりするというより、まず自分の中に感情を抱え込んでしまいそうなんですよね。
だから今回は、
「ルディを応援したいシルフィ」と
「ルディを誰かに取られたくないシルフィ」
の両方が同時に存在している感じを意識してみました。
そして最後は、フィッツとしてではなく、少しだけシルフィとしてルーデウスに向き合う。
この先どうなるのかは……また別の妄想ということで。
「こんなシルフィも見てみたい」と思ってもらえたら嬉しいです。