『無職転生 if ― もしシルフィが嫉妬したら ―』 作:takuya丸
素直で裏表のないエリスと、思ったことを遠慮なく口にするララ。
特に、ララの怖いもの知らずで生意気なところを出してみたかった話です。
シルフィ、エリス、ロキシーとはまた違った、ララらしい立ち回りを楽しんでもらえたらと思います。
エリスの正しさ――シルフィエットside
「寂しいなら、ルーデウスに言えばいいじゃない」
エリスは、本当に当たり前のことを言うように言った。
「……でも」
「何?」
「困らせたくないんだよ」
「なんで?」
「ルディにも色々あるから」
「でも、シルフィもルーデウスの家族でしょ?」
「……うん」
「だったら言えばいいじゃない」
エリスは、いつもこうだ。
自分が大切だと思ったことを、そのまま大切にする。
ルディに言いたいことがあれば言う。
一緒にいたければ、そう言う。
寂しければ、寂しいと言う。
それがエリスにとっては普通なのだ。
「……ボクも、エリスみたいだったらよかったのに」
「何が?」
「なんでもないよ」
「変なの」
エリスが首を傾げる。
その時。
「赤ママ」
ララが口を挟んだ。
「なによ」
「無神経」
「……は?」
「白ママが困ってるのに」
「私は普通に話してるだけよ」
「それが無神経」
「……」
エリスの眉が寄る。
「白ママは赤ママみたいにできないの」
「だから、できない理由を聞いてるんじゃない」
「それを聞くのが無神経」
エリスが黙った。
「……」
ララは、さらに続ける。
「白ママがどうしたいかじゃなくて、赤ママがどうするかで話してる」
「……」
「赤ママはパパに言えばいい。でも白ママは言いたくない」
「……」
「それだけじゃん」
エリスがララを睨む。
「……本当に生意気ね」
「よく言われる」
「褒めてないわよ」
「知ってる」
ララは平然としている。
エリスはしばらくララを睨んでいた。
でも。
何も言い返さなかった。
ロキシーが小さくため息をつく。
「ララ。少し言いすぎですよ」
「だって本当のことだし」
「……それはそうですが」
ロキシーが困った顔でボクを見る。
ボクも困ってしまう。
でも。
さっきまで胸にあった苦しさが、少しだけ違うものに変わっていた。
エリスは間違っているわけじゃない。
たぶん、言っていることは正しい。
ただ。
その正しさを、そのまま誰かに当てはめる必要はないのだ。
「……エリス」
「なに?」
「ありがとう」
「何が?」
「ううん」
ボクは首を振った。
「なんでもない」
「変なの」
エリスがまた首を傾げる。
その横で。
「ほら、やっぱり無神経」
「ララ!」
「逃げよ」
「待ちなさい!」
ララが走り出す。
エリスが追いかける。
ロキシーが頭を抱える。
「もう……」
そんな三人を見ながら。
ボクは思った。
たぶん。
ボクは、エリスみたいにはなれない。
思ったことを、そのまま言うことも。
自分の望みを、迷わず大切にすることも。
だから。
無理にエリスになる必要もないのかもしれない。
そう思えたのは。
たぶん。
ララが、エリスの正しさを遠慮なく壊してくれたからだ。
今回は、ララの個性を出してみたくて書いた話です。
エリスは思ったことを素直に言う人ですが、だからこそ時々、相手の気持ちまで考えずに踏み込んでしまう。
そこをララが遠慮なく突く。
ララ自身は深く考えているわけではなくても、思ったことをズバッと言ってしまうからこそ、エリスも言い返せなくなる。
シルフィやロキシーとは違う形で、この家族の空気を動かせるキャラクターとしてララを書いてみたかったです。
こういう何気ない家族同士のやり取りも、もう少し書いてみたいですね。