「ふざけんなよ。誰もいねぇじゃん」
仕掛けを施したのち、先ほどまで食事をしていた店へと戻るとそこには誰もいなかった。わずか十数分の間にいなくなった。船長である俺を放っておいて、だ。
「決めた。ゾロ殺す」
ゾロは一応副船長的な扱いになっているのでストレスもとい理不尽な怒りではなく責任を取ってもらおう。
店員にマリモとオレンジと長鼻の行き先を聞いたところ、原作通りにカヤの屋敷へと向かったようだ。それを聞いて尚更許すわけにはいかなくなった。
町一番の大きな屋敷、現在一人娘と執事2人だけで生活している。その屋敷の持ち主であり町一番の富豪でもあるカヤは体が弱いため自室にこもることがほとんどだった。だがそんなカヤにも楽しみがあった。町の中では嘘つきとして有名なウソップが夢のある話をいつも語ってくれるのだ。
今日もウソップはカヤの部屋まで続く木に登り、あたかも本当に遭遇したかのようにとても詳しく語っていた。
「で、俺たちはでっかいパチンコで空へ逃げ出したってワケだ、ハハハハハ」
「あれ?」
話を最後まで語り終わり、空を見上げるとカヤはあることに気がついた。空から人間が降ってきたのだ。カヤの屋敷の周りには2メートルを超える柵があり、侵入することはできない。だがウソップは生垣に細工を施しているので簡単に進入することができた。だが、空から落ちてきたということは柵を越えたとしても飛ぶ理由が見つからない。
人影は合計で3つ。どうやら1人に抱きかかえられながら飛んできたようだ。
「イヤァァァァァ‼︎」
「暴れるなナミ‼︎」
「」
「うぉぉあぁぁぁぁ‼︎」
3人は空中でバランスを崩し地面へと激突した。3人とも受身を取ったので無事だが2人が着地した地点は亀裂が入っていた。
「ふぅ、成功」
「してない‼︎」
「」
ゾロとナミは何事もなかったかのように口喧嘩をし始めたがカネツグは目が虚ろで焦点が定まっていなかった。
「だ、大丈夫ですか⁉︎」
カヤが心配してそう聞くとウソップが焦って3人のことを擁護した。
「大丈夫大丈夫。あいつらは俺の噂を聞きつけて遠路はるばるやってきた新しいウソップ海賊団だ」
「違うからな。ウチの船長が船が欲しいって言ってたから代理で頼みに来ただけだ」
「君たち‼︎」
ゾロがカヤに用事を伝えていると屋敷の玄関口から1人の男が現れた。キッチリとしたオールバックの髪型に執事服、さらには正しい姿勢で歩く姿は執事の教本にでも載っていそうな姿だった。
「そこで何をしている‼︎」
「クラハドール……」
その男の名はクラハドール。カヤに使える執事のうちの1人である。
「困るねぇ。勝手に屋敷に入ってもらっては」
そう言ってメガネを手のひらで押し上げる。ウソップは何度かあったことがあるのかたじろいだ。
「そいつぁ悪かったな」
突如、遥か上空から声が聞こえてきた。
カヤの屋敷へと到着すると丁度ゾロたちが中へと忍び込もうとしているところだった。ゾロはナミとカネツグを抱きかかえ全力で跳躍した。罪状追加、ナミとカネツグにボディタッチは俺以外禁止にしよう。
ゾロは自分の脚力が上がり月歩のような足下をしっかりと踏みつける跳び方をしたためかなり上空まで上がってしまった。
辛うじて怪我することなく着地したようだが直後にクラハドールが現れた。ここであることを思いついた俺はすぐさま実行することにした。
柵の高さは2メートル強。軽い跳躍だけで飛び越えることのできる高さのため月歩を使うことなく中へと飛び込んだ。
「そいつぁ悪かったな」
「誰だ‼︎」
「俺だッ‼︎」
「「「ルフィ‼︎」」」
地面に着地する一瞬前、月歩で僅かに体を浮かせ地面に着く衝撃が0になるように調節した。
「クラハドールって言ったか?俺の名前はモンキー・D・ルフィ。海賊だ。俺の仲間が失礼したな」
「海賊か……………」
クラハドールがこちらの方を憎しみに満ちた目で睨んでくる。確かこいつは海賊のくせに海賊が嫌いとかなんとかだったはずだ。
「そう心配すんな。この街を滅ぼしてカヤの遺産を根こそぎ奪うようなマネはしないから」
その発言を聞いた途端、クラハドールは表情に出さなかったものの動揺したのがわかった。おそらく多少見聞色が使えるゾロにもわかっただろう。
「ま、不法進入だからさっさとここを出るぞ」
「了解」
「ほら、ウソップもだ」
「あ、ああ」
そうして未だ放心状態のカネツグを抱き抱えて敷地内から出て行く。男のくせに軽いなこいつ。
「さてさてさーて、なぜ勝手にいなくなったんだ?ん?」
カヤの屋敷から街へと続く道の途中でカネツグを下ろし、しばしの間作戦を考えることにした。そこで先ほどのことをゾロにのみ問い詰める。
「え?先に行くことをセロリに伝えてもらうように頼んだが?」
「は?」
先ほどセロリが俺の元へ現れたのはそのことを伝えるためだったとゾロは言っている。ナミにもたずねてみるとそれはどうやら事実らしい。
「…………………」
上を見ると月歩で浮かびながらこちらを見下ろしている影が見えた。十中八九あいつだろう。
「……………てへぺろ」
「死ね」
身体中に隠している武器の中からアンチマテリアルライフルを二丁取り出し片手ずつ持つ。通常、ボルトアクションで一発ずつしか撃てない上に反動の大きさゆえに二丁同時、ましてや立射なんてバカのやることだがゴム人間に反動は関係ない。色々と改造して速射ができるようにしているために二丁同時でも撃てるのだ。一般人が撃つと間違いなく両腕は千切れるだろうが。
「Party Timeだぞコラァ‼︎」
「………………うそん」
絶え間ない銃撃音が鳴り響くが全く当たる気配がない。全ての軌道を読むことは不可能。更に音速を超えるので見てから回避も出来ないはずだがなぜ当たらない。
「マジで止めてくんない⁉︎ヘイ、ゾロ‼︎そこのバカ止めてくれ‼︎」
「やだ」
「やだぁ⁉︎じゃあナミ‼︎」
「いやよ」
「そんなバナナ⁉︎ウソップ君‼︎ヘルプミー‼︎」
「ムリデス」
「いやぁぁぁぁぁ⁉︎カネツグさん‼︎助けてください‼︎」
「死ね」
「辛辣ッ‼︎だがそれがいい‼︎ありがとうございます‼︎」
「回転数あげまーす」
そう言って更に二丁を取り出す。そろそろ弾薬が切れそうだからさっさと終わらせたいのだが。
「お前らオレのこと嫌いだろ‼︎」
「「「「知らなかったの?」」」」
「oh……」
好機ッ‼︎奴の動きが止まった。4つの銃口から飛び出た銃弾は全て奴の額へと命中する。アンチマテリアルライフルをは対物用のため人間に当たるとかすっただけで身体が吹き飛ぶ……筈だった。
「いってぇ」
「わぁすごい(棒)」
ヘッドショットしたがどうやら覇気を展開し防御したらしい。生意気な。だが生半可な覇気では意味をなさないのだがやはりそこは4億越えの賞金首、かなりの覇気の使い手のようだ。
そのあと、散らばった薬莢を片付け、改めて作戦を練ることにした。が、少し離れたところから話し声が聞こえてきた。
「いいか、よーくこの輪を見るんだ」
そこにいたのはウソップ海賊団の3人とジャンボだかジャンゴだか忘れたがクロネコ海賊団の副船長がいた。どうやら3人に催眠術をかけようとしているらしい。
「ワン、ツー、ジャンゴ‼︎」
3人とジャンなんとかは催眠術にあっさりかかって寝てしまった。そのまま置き去りにするのもアレなので3人を担いでジャンなんとかは正座させ、首から『I’m foolish 』と書かれた札を下げておいた。
「よし」
「じゃねぇ‼︎」
「なにしてんのよあんた‼︎」
「いいぞもっとやってください」
「ちょい足りないな」
「ふふん、まだまだ甘いな」
「こいつ海賊だぞ。それもクラハドールの仲間」
「「「「なにぃ‼︎」」」」
俺とセロリ以外のみんなが驚く。確かにクラハドールが海賊だ、ということはまだ知らなかっただろうが些か驚きすぎではないだろうか。そんなことよりカネツグの驚いた顔もいい。眼福。
「ちょちょちょクラハドールが海賊⁉︎」
「うん。懸賞金1000万ベリーぐらいだったはず」
「1000万って本当ならカヤが、いや街も危ないじゃないか‼︎仲間も来ているんだろ⁉︎」
ウソップがとても焦り俺に詰め寄ってくる。こいつはよく嘘をつくが町を、カヤを大事に思う気持ちだけは本物であることには間違いない。だが焦るウソップと対照的にゾロたちは懸賞金額を聞いて胸を撫で下ろした。
「なんだ、たかが1000万程度か」
「驚いて損したわね」
「うんうん」
「お前らなんでそんなに落ち着いていられるんだよ⁉︎」
「だって、なぁ」
そう、1000万程度だったらすでに気にかける必要もない。タダでさえ素がいい奴らに初期段階から覇気と六式を叩き込み始めているのでゾロ一人でも圧勝できるだろう。俺なら覇王色1発で終わるけど。だが最大の理由は、
「オレの懸賞金4億9000万ベリーな」
「…………………ゑ?」
次回からは不定期更新になりますがそれでも必ず投稿しますので待っていてください。