半月が昇る夜空の下、花畑の中心で一人の男が血濡れで倒れ伏している。肩口から脇腹にかけてほぼ真っ二つに両断された自身の身体を見て呟いた。
「・・・致命傷か。久しぶりにここまでの傷を負ったものだ」
この身になってから死ぬと分かったのはこれで二度目だ。
一度目はシーボーンと化したスカジからグレイディーア達を逃がした時。そして二度目は今、この瞬間だ。
男は自分にこの致命傷を負わせた人物を見る。
「・・・これで終わりですわ。貴方はこの悪夢から目覚めるべきなのよ。漁村から出られない貴方が、この狩人の夢に来られたのは驚きましたけれど・・・この夢はわたくしのものです。貴方がわたくしの
「・・・そのようだ。どうやら俺は
「人の身でこの場所に辿り着いた事が奇跡でないというのなら、貴方の仰る奇跡とはなんですの?」
そう言ってくる彼女に男は言った。
「・・・
そう言って男は目を閉じる。
そして女は月光の聖剣を彼の首筋へと当てた。
「・・・さようならウルピアヌス。貴方の話は面白くは無かったですけれど・・・つまらなくはなかったですわ」
「・・・フン。余計な世話だ。狩人」
その言葉を最後に男の首もとに衝撃が走る。
二度目・・・いや、三度目の死が彼に訪れた。
◇◇◇◇◇
意識はもう目覚める事はない。そう考えていた。
「・・・・ここは?」
朦朧とした意識の中、ウルピアヌスは覚醒した。
ゆっくりと身体を起こしてみるが、致命傷を負った筈の身体にはあの時の傷がどこにもない。
「・・・・・・」
どこかの廃墟にしては目新しい。
機械にコンクリート製の道路。机の上にはパソコンすらある。
「・・・旧時代のものか?」
箱型の大型パソコンにウルピアヌスは眉を顰めた。
確かこのタイプのパソコンは自分が転生者になる前に見たことがある。西暦2000年代初頭のものだろう。つまり自分が生きていた時代より少し前の時代に転生したのではないかとウルピアヌスは検討をつけた。
「とりあえず、外を見なければ分からんな」
部屋を見る限り、人の出入りの痕跡はない。多少目新しいとはいえ、廃墟は廃墟だ。廃墟になったからにはそれなりの理由があるのだろう。そう結論づけ、ウルピアヌスは外に出る。
外に出てみればそこは街が広がっていた。
だが、その街がおかしいということは百戦錬磨の彼にとって一目見て分かった。
「これほどの街の規模で人が一人もいないのはどうも気になる。それに・・・」
ウルピアヌスは遠くに見えたソレを見て眉を顰める。
「見たことのないヤツがいるな」
緑と黒の体色に顔らしき場所にはまるでコアのようなものが発光している。
シーボーンと化した人間ではない。かと言って、獣と化した人でもない。
全くの未知の存在が街を闊歩していた。
「・・・これはこの世界について調べる必要がある」
この場所はなんなのか?何故、人はいないのか?あの未知のはなんなのか?それらを知る必要がある。
ウルピアヌスは身を翻し、その場を後にした。
まず最優先事項は情報収集。道中で武器を手に入れつつ、ウルピアヌスは図書館を探しに街を散策するのだった。