ガリオン生徒概念 作:哲学の階司書補見習い
ここはいつだってドンパチやってる自由な校風が売りのゲヘナ学園。
このゲヘナには『お茶会』という文化がある。
生徒会の役割を担う万魔殿と、風紀委員会から1人ずつに招待が届き、最優先事項として参加しなければならない。
半壊したまま放置された一棟の校舎、その前に設置されたパラソル付きのテーブル。
そこである1人の生徒、
それが『お茶会』だ。
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連邦生徒会長失踪から4年前。
本来の歴史であればゲヘナの統治者は雷帝だろう。暴君にして策略家、発明家であり政治家。そんな紛れもない天才は既に舞台から姿を消すこととなる。
それはとある1人の中等部の生徒が雷帝の元を訪れた日。
「お前はこの都市の純粋な流れだろうね。永い時を経てこの学園に傷痕を遺し、其処に在った事実こそがお前を人に刻む。対して私は異物であり、観測者であり、在る可き姿に在ろうとする者。箱庭の河に匙を加え掻き混ぜるように、私はお前を不純だと断じよう」
「………………」
「嘗ての混じりものであろうとも、糸が紡がれる上ではお前も私も同じようなもの。然し安心するといい、お前の玩具は私が見守ってあげよう」
生徒は腰に差した銃を手に取り、掲げる。
雷帝の親衛隊は誰一人として動けない。息が詰まり指先は震え、まともに射撃すら出来ないだろう。
空間が軋み悲鳴をあげる。銃そのものが溶けるように形を変え、高濃度の神秘を経て純粋な熱へと変換される。
そして、黄金が爆ぜ、すべてを塵へと変えていった。
「岩は崩れ落ち、小鳥たちは癒された。新たな流れが其れらを飲み込むのか、荒れる飛沫と道を共にするか」
穏やかな笑みを浮かべると、生徒はその場を去っていった。
突如として雷帝が謎の疾走を遂げたゲヘナ。統治者が居なくなったとあれば混乱は避けられない。
恐怖の対象が居なくなり好きに暴れる者、揺らぐゲヘナを立て直そうと励む者、治安を取り戻そうとする者。
風紀委員と、トップを失った万魔殿の残メンバーは結託し、自由の余地がある新たな秩序を打ち立てることにした。
雷帝無きゲヘナは、本来よりも2年早く平穏を取り戻すことになった。
当時の風紀委員長と万魔殿臨時議長の元に手紙が届く。
内容は旧万魔殿舎前で一緒にお茶会はいかがか、というもの。
普通なら差出人も書いていない、そんな怪しい誘いに乗るわけがない。
それに旧万魔殿舎というのも、雷帝が姿を消した日に半壊し、遺物の捜索が行われて以来は倒壊の恐れありということで立ち入りを禁止している。
それでも2人は校舎前に集まった。
そこにはパラソルとテーブル、そして紅茶を飲む1人の生徒。
「よく来てくれた、遠慮せず座るといい。共に茶の薫りを楽しもう」
その生徒はコト、とティーカップをソーサーに置くと、細めた目で2人を見る。
テーブルの上には2人の分のカップと茶菓子が置かれている。
風紀委員長と議長は顔を見合わせると、周囲を警戒しながらも席に着いた。
果物を思わせる少し甘い紅茶の香りが漂う。
「お前たちは蜿々する大きな流れの傍にはいないが.導いた先に造化の産物より注がれる災禍に滅ぼされることのない家を建てることは出来るだろう。生命を騙る機械、人には眩しすぎる色、過ぎ去った入道に盲従する嵐。地獄に降る雨が途切れることはない。然し其れは今ではないのだよ」
風紀委員長と議長は困っていた。出された紅茶が良い物なのは間違いないし、茶菓子も程よい甘さとナッツの香りがマッチしたとても美味しかった。
しかし目の前の生徒が誰か分からないし、言っていることも雰囲気でしか汲み取れない。
「ふむ……お前たちは唯備える事だ。其れが後ろを歩く者達の光になる」
「お前は動かないのか。私とこいつ、風紀委員長二人がかりでも、まるで敵わないだけの力を、きっと持ってるんだろ」
議長の口から緊張の混じった声が漏れる。
人の形に抑え込まれた純粋な力か、若しくは溢れ出た高濃度の神秘か。
その生徒、ガリオンの出で立ちから、議長は力を感じ取っていた。
議長も風紀委員長も、後のヒナ達に比べれば名を持たない存在に過ぎないが故、力は強くない。しかし、名無しの中では上澄み差し支えない実力者だ。
「嗚呼、私は未だ幼い故な。舞台に上がり演ずるには、暫し時を刻む必要があるだろうね。舞台を違えど同じ地獄に在るのに変わりは無い」
ゆっくりとガリオンは立ち上がると、2人に背を向け去っていく。
「故に、私はお前達を見守ろう。柄にもなく、消えゆく雷鳴にそう零してしまったからな」
息抜きに書きます