ワタシは、日向家当主、日向ヒアシだ。日向一族を預かる身だ。ワタシには双子の弟がいる。そんな弟が子供を引き取る事になった。名をヒカゲ。忍界大戦で両親を無くした子だ。まだ、物心もついていない幼子だ。弟は妻を娶ってまもないと言うのに。
心配をよそに、弟の息子は恐ろしく手間がかからなかった。あまり泣かない子だった。長老達は気味悪がったりしたが、弟夫婦は子供を可愛がっていた。
弟に実の息子ネジが生まれた。しかし弟の妻は産後の肥立ちが悪く、亡くなってしまった。もともと身体が丈夫な方ではなかったからだろうな。
弟は遺された息子二人を分け隔てなく育てた。息子達の仲も良いようだ。
ヒカゲが日向の鍛練を始めた。センスは悪くない。しかし一向に白眼を開眼しなかった。日向始まって以来の出来損ない。それがヒカゲの評価だった。弟はそれでもヒカゲを見限ったりしなかった。
それから月日が流れていく。九尾事件などと言う痛ましい事件も起こった。
九尾事件が起きた年の寒い季節にワタシにも子供が生まれた。娘だ、名をヒナタ。ワタシは嬉しかった、弟の
子供に対する気持ちが分かる気がした。
ある日、弟が人目を忍んでワタシの部屋を訪ねて来た。いままで、なかったこと。ワタシとしては嬉しかった。立場上昔みたいに、兄弟として会話も出来なかったし、弟に対する態度も宗家として振る舞ってきたからだ。
正直ワタシは弟に恨まれている。双子の兄弟なのに先に生まれたか後に生まれたかで宗家と分家に分かれてしまった。宗家とは言え、無体な事もしてきた。殺気を飛ばされたこともある。そんな弟が、何の用だろうか。
「兄さん今日は分家ではなく、一人の父親として来た。…息子はヒカゲは白眼こそ開眼しなかったが、何か大きな事を成せるだけの忍だ。…親バカだと思うかも知れないが、もしこの先、ワタシの身に何かあってヒカゲが我が儘を言ったら、叶えてやってほしい」
弟は、ヒカゲの事を語ってくれた。体術、気配の消しかた、チャクラの制御、そして呪印の事。ワタシは驚愕した、まだ幼いヒカゲがとんでもない事をやっていることを。
ワタシは楽しくなった。宗家として当主として、腹は括ったが、窮屈なこの現状に、新たな風を日向だけでなく木ノ葉の里に吹かす存在になるのではないかと。
「…分かった一つだけヒカゲの頼みを聞こう。…その代わり、ヒカゲの事はこれから定期的には報告しろ」
弟はホッした顔で頷き、部屋を去って行った。さてこれからどうなるかな?
現状は無情だ。日向のワタシの怠慢が招いた事だ。ヒナタの誘拐。ワタシは驕っていたのだ。その結果が、幼いヒカゲが命懸けで、ヒナタを取り返そうとしていた。たとえ父である、弟を守るためだったとしても。
ワタシはヒナタを誘拐されたことで冷静ではなかった。結論雲隠れの忍を討ち取ったが、それを理由に雲と木ノ葉の関係はこじれた。
ワタシは死ぬつもりだった日向の為里の為そして娘の未来の為に、が弟は自ら死を選んだ。駄目だ、幼い息子達はどうするんだ。妻もいないのだぞ。
ワタシは、生かされてしまった。弟の命を犠牲にして。ヒカゲの叫びが今でも耳に残る。何が最強何だと、今が示す時だろうと。
ヒザシの遺産は確実にヒカゲ達に行き渡るように、配慮した。ワタシが出来る数少ない事だ。本来ならば当たり前の事なのだが、日向は旧態依然としている。
ヒカゲの様子が変わった。今までも、日向の事をよく思ってないことは分かっていたが、今まで以上に修行に時間をさき、ネジとの時間を大切にし、何か機を伺っているような。
道場にヒカゲ達が乗り込んで来た。さながら道場破りだな。二人は家を出ると宣言した。
長老が分を弁えろと、秘印を結ぶが二人は平然としている。話は聞いていたが、実際に目にすると凄まじいな。本当に呪印を変えてしまった。周りがざわつく、さもありなん。
長老が激昂しヒカゲに襲い掛かる。
「八卦掌、回天」
長老が吹き飛ばされ気を失う。宗家の口伝を白眼無しで、成し遂げたか。まだまだ不格好な回天だが。
ワタシは二人が家を出るのを許した。ヒザシお前の息子はとんでもないな、大きな事を成せる、弟の言っていたことが、分かったかもしれない。約束は守ったぞヒザシ…。