洗い終えた皿を水切りかごに立てエプロンの裾で手を拭きながらアリスはふと顔を上げた。
穏やかなソルスの光が降り注ぐ穏やかな空気に似つかわしく無い、キン、キンと弾けるような剣戟の音が何やら外から聞こえてくるからだ。
おかげさまで皿を洗いつつ観察していた日光浴をするキノボリウサギのつがいは音に驚き颯爽と逃げてしまった。
「全く、困ったものですね」
「まああの2人だもん。仕方ないよ」
溜息をつくようなアリスの声に同情するように投げかけられた言葉。それはまた、
凛としたどこが重厚感のある声色とは違う、明るく溌剌とした声。お転婆、そんな言葉が似合う声は呆れた様にもう片方の声の主に向けて促す。
「ほら、洗い物も終わったし
「そもそも今日の当番は私達でしょう?
「良いね~その意気!そうと決まれば動きやすい服に着替えて行くよ!」
「そんな急かさなくとも…!…ふふ、やはり貴方達幼馴染は似た者同士という事ですね」
「そう?サーちゃんも性格が違うだけで似てると思うけどなぁ」
傍から見ると一人でコロコロと声色が変わる独り言にしか見えないこの光景。だが、間違いなくそこには在るのだ。奇跡の結晶、一人の器に二人の『本物の魂』が。
アリスはエプロンを立て掛け、寝室にて普段着からセントラル・カセドラルにて剣技を磨く際に使用していた修練服を取り出し、着替える。
着替えが終わるとアリスは寝室を出て壁に掛けられた《金木犀の剣》を壁から外し、腰に構えてそのまま家を小走りで駆ける。
金木犀の剣の左隣に掛けられているはずの黒の長剣と青の長剣が金具から外され見当たらなかったのは、外でその剣の「主」達が修練に励む為に振るっているためだろう。
──だ!ユー──!
ハァッ!行く──リト!
外に近付くにつれて、剣戟と併せて聞こえてくる2人の若者達の声。
そんな外の声を聞いて我慢出来ないと言ったように扉に手を掛け、開けると共にアリスの…、ツーベルクの張り上げられた声は辺りの草地に響き渡るのだった。
「こらー!また2人だけで遊んでるわね!キリト…
これは、強固な絆を築く幼馴染3人とその戦友が…のどかな村の一角でずっと幸せに暮らす物語。