次回はユージオ中心のお話です。
料理。
それは、人の持つ三大欲求の1つである食欲を満たす為には欠かせないモノ。
お腹が減っている時は当然満たされないから不機嫌になるし、お腹がいっぱいな時は満たされてご機嫌に…つまり幸せになる。それは、とある青年たちが喋らずともいつも教えてくれることだ。
そして不思議なことに、料理は食べる者だけではなく作る物も満たしてくれる。
自分の作った料理を食べて幸せそうな笑顔を見せてくれる事に、お腹だけではなく胸もいっぱいに満たされるのだ。それは、同じ身体を通してとある彼女がいつも教えてくれることだ。
いつもそんな幸せの溢れるひと時を見ていて、感じて。彼女が不器用にもその幸せを皆の為にも掴もうとすることを責めようとする者は誰もいなかった。
………さっきまでは。
「ね、サーちゃん」
「は、はい」
「なんで私が怒ってるか分かる?」
「…?し、失敗したから?」
「失敗した事は責めないわよ!問題は過程よ!!」
喚くアリスの目の前に置かれているものは、調理過程が済んでもう火に掛かっていないはずなのに黒煙が燻っている円盤状の固形物。不思議なことに、割れた黒い固形物の中からは白いクリーム状の液体がでろりと溢れ出るように漏れていた。
「私達は何作ろうとしたんだっけ?」
「ぱ、パンケーキ」
「これは?」
「パンケーキ…です」
「どっからどう見ても…………何よコレ!?もう見た事ない物すぎて何よコレとしか言えないわよ!?」
隣で高速で首を縦に振りすぎて黒い残像を残すのは、この家で最もと言っても過言では無いくらいの食いしん坊であるはずのキリト。
しかしその食いしん坊っぷりとは真逆にキリトの皿に置かれた物体は1/8程度しか欠けておらず、その割に隣に置かれたコップの中身は近くに置かれたピッチャーごと空になっている。
「凄いぞこれ…。外殻はガッチガチで硬くて苦くて口にぶっ刺さるのに、中身が信じられないくらい液体で甘ったるくて口に外殻ごとへばりついて来て苦味と甘みと焦げの香ばしさと粉っぽさが取れないぞ」
「外殻って言われてるわよ?パンケーキに外殻とか聞いた事ある?」
「無いです」
「良かった、私とサーちゃんでパンケーキの想像図に差異が無くて」
「いやでも………うぶッ…これッ、こっ、…アリっ、ふーっ、…ぐっ……う、まっ……ッ!ッ!!っ!!!」
「ユージオもうよせ!本気の肩の震わせ方してるぞ!!これ以上はお前がもたない!!」
「ゆ、ユージオ…?そ、そんな…」
一方、この家に住むもう1人の青年のユージオは皿の上に置かれた物体の半分を
だが、相当な無理をした代償か…。彼の顔色は青を超えて真っ白になっており、『ガチャン!』と音を立てて床にフォークを落として、溢れないように片手を口に当て肩を震わせて必死に『何か』を飲み込もうとしている。
先程まで作ったアリスに向けて「これ美味しいよ!………っぷ…」と笑顔で頬張っていた姿を見せていたからこそ、尚更表情の変化が痛々しい。
「アリスに80階層で武装完全支配術の一撃貰った時より顔酷いぞお前…」
「んな事無いだろ………。キリト、み、水…を…くれ…、全部…飲みやがって…」
「ユージオ!大丈夫ですか!?」
「大丈夫……うん、気にしないで………?き、キリト、もう少しゆっくり……。…出ちゃうから」
「わ、私の料理が…ここまでの事態を?」
「…一旦、反省した?」
目の前のあまりな光景に、流石に呆然とするしかない。流石にいつも優しく穏やかな雰囲気を放っていた彼が、善意で作った自分の料理のせいで口を押さえキリトの肩を借りつつも今にも倒れそうにフラフラと外に歩く姿は相当なショックでしか無かった。
ショックのあまり、アリスの砕けてきていた言葉遣いも最初の頃のようにすっかり敬語に戻っている。
「ど、どこに原因があったのですか!?」
「全部って言いたいけど…2つくらいに絞ってあげる」
「教えて下さい、ツーベルク…私はもうこの様な悲劇を繰り返したくはありません!」
「戦争の時にしか聞かないわよそんなの」
───アリスの固い決意表明によって始まったのは、2人の反省会。
「まあ最初にバター溶かすのに強火すぎて焦がす所とか、卵割る時に力加減間違えて殻を砕くのとか、メレンゲ作ってから生地に混ぜる段階で混ぜすぎて意味無くなってるとことか、目分量で砂糖入れすぎて溶け残ってたとこは見逃すとして…」
「ふむふむ」
「まずサーちゃん、フライパンに生地入れてから何した?」
「熱素で火のついてない面を炙ることで時間短縮を図りました」
「何してるの?」
実際にサーティが神聖術の詠唱を開始した時に、ツーベルクは必死に止めていた。問題はサーティ側がこれでなんとかなるでしょう!と過信していたため聞こえなかったが。
「私が料理してるところ誰よりも近くで見てなかった?」
「はい、ツーベルクは本当に料理が上手で美味しくてとっても凄いなと」
「あ、ありがとう…じゃなくて!私のやつ見てたらありえない行程よね!?私いきなり神聖術とか使ってたの見たことある!?」
「こ、効率的に火が通るかなと…」
「物の見事に外側だけ爆速で焼けてたわね、中身が完璧に生になる具合に…。初めて見るからあの火の入れ方凄すぎてびっくりしちゃった」
「あ、ありがとうございます…」
「褒めてないからね?これで1つ、あともう1つなんだけど…自分で分かる?」
「………?」
ツーベルクはサーティに向かって聞いてみるが、本当に心当たりが無いらしく小首を傾げるのみ。
サーティにとって悪気が無いことや嘘をついてない事は同じ体にいるツーベルクが1番分かっている事なので、サーティが傾げた首をそのままにしてため息をつく。
「あの…1回フライパンから炎あがったの、覚えてる?」
「ああ!アレですか…ユージオとキリトが血相を変えて飛んできた時ですね」
「血相変えて飛んできてるの分かってるんじゃないの」
「いえ、あれは焦りすぎだと伝えたくて…」
「台所から大きな炎上がってたら誰でも焦るわよ」
実際いきなり過ぎて当時は凄かったのだ。
───黒煙をあげながらフライパンをガチャガチャと揺らしているアリスの様子を後ろで見守っていたキリトとユージオ。
「なあ、あれ…良いんだよな?パンケーキってあんな炒飯作る挙動しないよな?」
「ちゃー………?まあ良いんじゃないか?アリスが見てるから手は出すなって言ってたし…」
「でもなんかさっきから火事一歩手前みたいな匂いが…」
『ジェネレート・サーマル・エレメント』
「なあ、料理で絶対に聞こえてこないはずの単語聞こえてきたんだが」
「あ、アレンジじゃないか?アリス特有の…」
瞬間、キッチンが『ボウッ!』と音と共に光を放った。
原因は明らか。アリスの手元から爆炎が上がっていた。
「火事火事火事火事!!ユージオ!剣で
「青薔薇の剣は今手元に無いよ!神聖術でなんとか!」
「うるさいですよお前達、炎は酸素があるから燃えるものです。『ジェネレート・エアリアル・エレメント』…こうして風素で煙を包むようにしてやれば、炎は勝手に消えます」
とんでもない勢いで焦っている2人を尻目に、落ち着いて鎮火したフライパンを火元に戻すアリス。
「では1つ目が出来ました、皿の準備を」
「出来たって…今の炎上げてたやつで完成?」
「ええ、何やら西の帝国では料理に炎を炊き入れるようですし…。『ふらんべ?』と言いましたか、
「………」
「へぇ…アリスってどっちも物知りだなぁ」
「ふふ、ユージオには先に食べさせてあげます。疑い深いキリトは後回しですよ」
「良いのかい?…キリト、アリスはああ言ってるけど分けようか」
「いや良い、冷める前に好きなだけ食うといいユージオ君」
「本当かい?でも申し訳ないよ…」
「アリスの折角の出来たてパンケーキだぞ!食わなきゃ勿体ないだろ!」
「そ、そうか…?じゃあお言葉に甘えてお先に…」
「じゃあ俺は一旦跳ね鹿亭までひとっ走り…」
「キリト、そんな遠出をせずとも今すぐ作るので席で待ってなさい?」
「………っす」
そうして、あの地獄絵図へと繋がるのだった。
「消火は迅速で丁寧だったから良かったけど、フランベじゃないから。事故よ事故」
「そんな…!料理人になるとテラリア神様からの恵みとして勝手に炎が出てくるものかと…」
「サーちゃんってそんな抜けてる子だっけ…?パンケーキどころか家焼いてたから気をつけなさいよ…」
「気を付けます…」
「にしても本当になんで料理に火がついたかしら………。不思議ね…」
「分かりませんが…前セルカにお酒を隠し味に入れるとお料理に深みが出ると聞いて、試しに生地の牛乳半分に酒を混ぜたからかもしれませんね」
「いつの間にそんなことしてたの!?それは肉か魚料理の話よ!!!」
「そうなんですか!?」
「やり方全然違うけど、お酒使って本当にフランベしてたのね…」
最後の最後にとんでもない爆弾発言をかましたサーティ。
この事件以降、サーティはしばらくの間包丁を握る事すら許されなくなるのだった。
投資:1500発
回収:22600発
勝率:4/9
夜空で勝てなさすぎて泣きながら打った閃光でようやく勝てました。
夜空もう打ちたくないってかパチンコやめた方がいい説あります。
久々に書いたのでちょっと下手になってます、オチが退屈で申し訳ございません。
この小説が5人以上の方に評価されるまではパチンコ負けつつチマチマ小説書いて行けたらなと思ってます…泣