教会の人達と仁と戦った翌日の放課後、仁の妹である愛華の捜索を誰に任せるのかと、部長に言ったところ―
「あの荒神仁と幼馴染であるクリスに任せるつもりだったわよ? あの戦いが終わった後、使い魔と一緒に町を見たのだけれど、見つからなかったし、魔力での捜索もしかのだけれど…何も引っかからなかったの」
私にはちょっと辛いから、クリスに任せるわとのこと。
……まぁ確かに。顔も知らない他人を探し出せというもの難しすぎるしな。
俺の場合、昔少しだけ遊んだ事があるのだが、何年も前の事だ。面影は少しぐらいは残っているのと思うが、ぱっと見では絶対にわからない自信がある。
しかも…、俺の記憶が正しければ荒神愛華はずっと仁から離れなかった。
仁と一緒に砂遊びしたり、近くの公園の滑り台で遊んだりしていた。
だが必ず、仁を中心とした半径3m以内にはいた。それほどベッタリだった。
その妹が仁の元から勝手にいなくなるとは思えない。絶対に黒幕がいるはずだ。
黒幕がいるといたら、これはただ事ではすまなくなる。
そして…その黒幕は確実に俺達みたいな異形の者。"荒神"という一族は俺の荒神モードのような特異体質をほぼ全員持っていると、仁が言っていた。
それを狙って誘拐されたとも考えられる。後は、愛華が厄介な神器を持っていたとか。
仁が特異体質を持っているのなら愛華も絶対に持っていると思う。
「………どっちも持っていました!! とかだったら洒落にならんけどな」
「そうですわね……、あの方と同じ特異体質でしかも神器持ちだったのなら
「そうだよなぁ……。って、何で朱乃さんが俺の部屋に!?」
気づけば背後に朱乃さんがいた。い、いつの間に…?
「お夕食ができたので呼びにきたのですけど…、何やらブツブツと言っているのだから、近づいたのですわ」
な、なんと! 朱乃さんの気配すら感知できないほどの集中していたのか、俺は。
「そ、そうですか、ありがとうございます。では早く、下に降りましょう。小猫も待っていると思いますし」
ドキドキしてしてるのを悟られないようにしつつ、自分の部屋から出ようとしたときだった。
ぎゅっ!
「――ッッ!?!?!?」
「せっかくの二人っきりですのに…、少し気持ちいいことしませんこと?」
朱乃さんが背後から抱きつき、囁くように言う。
い、いや、そんなことよりもッ!!
背中に感じるやわらかく大きなあれはきっと――
ドクンッ!
だ、ダメだ!! こ、ここでHSSが発動したら…自分のベッドで取り返しのつかないことをするに違いないッ!!
さ、去れ! 煩悩よッ!! お前さえ消えればいいんだ!!
心の中で何かと戦っている中で、朱乃さんの攻撃は続く!
「ちょうど…クリスくんの部屋はリビングの真上。あぁ、小猫ちゃんに私の声が聞こえないか心配ですわ。――優しく、お願いしますね?」
―っ!
最後の朱乃さんの言葉で、なってしまった!!
「あっ……」
俺は朱乃さんをベッドに押し倒し、言葉を紡ぐ。
「朱乃さん…、いや
朱乃さんの朱に染まった頬に手を添えながら、言う。
「俺にまかせろ」
「……はい」
頬を朱に染めた朱乃さんは返事を一つ返し、目を瞑った。
俺は朱乃さんにキスするために、顔を近づかせる。
ドクン、ドクンと脈の打つ音が聞こえる。それが自分なのか朱乃さんなのかわからない。
目測で残り5cmまで近づいたとき――
「……クリス先輩。何をしようとしてるんですか?」
俺と朱乃さんが遅いから呼びにきたと思われる小猫が、俺の部屋の出入り口に仁王立ちしていた。
何故だろうか、背後に修羅が見えた気がした。
「さぁ何だろうか? 小猫はわかるかな?」
質問を質問で返された小猫は、一応考え…無表情だった顔が一気に赤面した!
「こ、後輩にそんなこと訊くなんて…! この! ドヘンタイ先輩!」
普段より数倍速い拳が俺に向かって飛んでくるが…。
HSS状態の俺にとっては遅く感じたので、拳を受け流した。
だが、体重をかけたパンチだったのか小猫がこっちに向かって倒れてくる。
それを支え、縦抱きにしてそのまま1階へ降りていく。
「は、離してください! ヘンタイ先輩!」
小猫がハンマーパンチをしてくるが、ぽかぽかと効果音をつけたらこんな音がするんだろうなぁと思う程、弱いパンチだった。
「折角、朱乃さんが作ってくれた夕食を早く食べないと冷めてしまう。小猫、椅子に降ろすね?」
「……はい。わかりました」
少しだけ顔の赤い小猫を椅子に降ろす。
「じゃあ俺は朱乃さんを連れてくるから。ここで待ってろよ?」
「……わかってます」
「ん。いってくるよ」
俺のベッドに目を瞑ったままの朱乃さんをやさしく起こし、一階に連れていき、みんなで一緒に夕食を食べた。
◇◆◇
夜も深まってきたころ、俺は仁と一緒に仁の妹である愛華を捜していた。
これで一週間ぐらい経つが、いまだに見つからない。
「なぁ仁。お前、妹さんがいなくなった原因を知らないんだろ?」
「そうだけど。何かわかったのか?」
期待のこもった視線を向ける仁。
「これは俺の推測だが…。お前、いなくなる前日ぐらいに何かしただろ。主に女性関連」
「……ああ。それと何が関係しているんだ?」
疑問符を浮かべる仁。あぁ、こいつもう駄目だ。鈍すぎる。
「妹さんはきっと、嫉妬しているのだと思う。今頃、仁の周りにいる女性を消していっている可能性がある」
「ッ!? そ、それは本当か!?」
「落ち着け! あくまで推測だ! もしかしたら、あの模擬戦も見られているかもしれないな」
あのとき、仁と一緒にいた女性といったらゼノヴィアとイリナだ。
教会の悪魔祓いがそう簡単にやられるとは思わないが、万が一ということもある。
それに仁のいう"荒神モード"も愛華は持っているからな。
それを考えれば、ゼノヴィアたちが危ない!
そう思ったときだった。俺の携帯の着信音が流れる。
相手は――小猫。
「………」
「………」
冷や汗が出る。よくわからないが嫌な予感がする…!
「…もしもし、小猫?」
「ク、クリス先輩! 祐斗先輩とイッセー先輩が…!」
普段の小猫とはあり得ないほどの動揺に、俺も自然と声が大きくなる!
「な、何があったッ!」
「エクスカリバーを持った神父と戦っていたんですが、いきなり小柄の女の子が現れてイッセー先輩と祐斗先輩を襲ったんです!」
もしかしたら…!
「小猫。その女の子の特徴を教えてくれないか?」
「は、はい! 小柄で祐斗先輩の魔剣と似ても似つかない雰囲気を持つ刀を持っていました。それより恐ろしいのが――まるで…底なしの闇のように淀んだ目でした」
――っ!
「仁。お前の妹をみつけたかもしれない…!」
「なんだとッ!? ドコだ! 愛華は何所にいる!!」
仁の体が少し緋色に染まってきている。
「小猫! 今何所にいるッ!?」
「……公園の近くにいます! ―ッ!? もう追いついてきた! すみません、クリス先輩! 切ります!」
ブツッ……。
「仁。公園の近くにいるそうだ。いくぞッ!」
「おう!」
俺と仁は全速力で、皆の元へ向かった。
次回は仁の妹が登場します!