ご了承ください。
今までで一番長いです
荒神 仁side
「やめろ愛華!」
「何をですか? 偽物は黙って早く死んでください!」
ギン! ギン! ギン!
くそっ! 今の愛華と闘うのは分が悪い! どうにかして洗脳を解かなければ、殺られる!
「ちぃ…! 十拳剣、力を開放させてもらうぜ!!」
愛華から距離をとりつつ右目を覆っている黒い眼帯をとり、意識を十拳剣に集中させる。
俺は未だに使いこなせていない。だが、今は非常事態であり相手は最愛の妹だ。死なないようにしないとな。
俺は今――神剣になる!
荒神モードの最大の特徴である緋色の輝きから、クリスの髪のような深い深い青へと変わっていき、それと同時に焦っていた心が落ち着きを取り戻していく……。
激しい怒りと自分の仲間が危険に晒されたときにしか発現しない荒神モードの真逆。十拳剣に選ばれた者にしか使用できない、能力。
荒神モードが"動"なら、これは"静"だろう。
頭が冴えてきて、周囲の状況が手に取るようにわかる。
「何をしているのかわからないですが…隙だらけですよ、これで死んでください」
パンッ! と愛華がてを合わせると
俺の周りに次元が歪み、無数の妖刀が飛び出してきた!
だが、それは既に――
俺は避けたり叩き折りながら、愛華の元へと近づいていく。
「な、なんですかなんなんですか!! あなたは一体…誰なんですか!!」
愛華が叫ぶように言葉を紡いだ。
「俺は愛華の兄さんだ」
「――っ!」
飛来してくる妖刀をすべて折り、愛華の目の前に立った。
ちょうどその時、校庭が青白い光に包まれた。
愛華も俺も、その不思議な光景に目を奪われた。
そして―歌が聞こえた。
これは聖歌か? だが、悪魔であるクリスや赤龍帝が苦しんでいる様子はない。
「うぅ…なんですかこれは…! 酷く、頭が痛いです」
愛華は手に持っている魔刀を落とし、膝をついた。
何故悪魔であるクリスたちには影響がなく、愛華だけが苦しんでいるのか
少しだけ考え…すぐに思い至った。
魔刀の弱点は、聖属性の精神攻撃。
十拳剣は聖属性の武器だが、魔刀には効かなかった。それは物理攻撃であり、精神への攻撃ではなかったからだ。
だが、聖歌は違う。これは魔がつくものへの攻撃となる。
では何故悪魔であるクリス達が苦しまないか?
それは校庭が特殊な力場になっており、今俺たちがいる体育館はそれに入っていないと思う。
それで聖歌は特殊な力場にいるクリスたちには効果はなく、その力場にはいない愛華には効くというわけだ。
「痛い、痛いよぉ…。助けて、お兄ちゃん」
「――ッ! 少し、我慢してろよ」
落ちている魔刀を手に取り、十拳剣と重ねる。
すると十拳剣から鎖が出てきて魔刀に巻きつき、瘴気のようなものを魔刀から吸い取っていく。
瘴気が完全に無くなったのを確認してから、愛華に渡す。
……これで魔刀に乗っ取られたりはしないだろう、多分。
日が経ってからあの気を戻せばいい。魔刀と対話してからだけどな。
今度は、洗脳を解いてやる。昔から決まっている方法でな。
俺はもう、覚悟はできている!
愛華を立ち上がらせ、前を向かせる。
「愛華、一回しか言わないからよく聞け」
虚ろな表情をした愛華がこくん、と頷いた。
「俺は…お前を家族として、兄妹として好きだ」
「………」
「だけど、今回の一件で俺はお前を失った。死にそうなくらい心が痛んだよ。まるで自分の半身が消えたような感覚だった」
「………」
「必死に探して、旧友にも手を貸してもらってプライドもかなぐり捨ててお前を探したよ」
「………」
「やっとで見つけたと思ったらお前操られているし、何回愛華の名前を呼んで兄ちゃんだと言っても偽物、偽物しか言わないしな」
「………に、い」
「すげぇショックだった。それと同時に嬉しくもあった。操られていても俺のことを覚えているのが」
「……にい、さん」
愛華を思い切り抱きしめた。
「――っ!」
「俺はもう、愛華を逃がさない。お前は俺の半身なんだ。嫁にも出さないからな!」
「…痛いです、兄さん」
愛華の方へ向くと、そこにはあの濁った瞳ではなく、澄んだ紫色の瞳をした愛華がいた。
「ッ!? 愛華お前……」
「そんな熱烈な告白されたら、どんな人だって目が覚めますよ」
くすっと笑う愛華。
「本当に私でいいんですか?」
「あぁ」
「独占欲も嫉妬も凄いんですよ? 私以外の女のところへ行くと、許しませんよ?」
「俺も同じだ。他の男の所へいくと、許さないからな」
「似たもの同士ですね、私たち」
「兄妹だからな」
はははっと笑う俺たち。
愛華は頬を赤く染め、上目遣いで言葉を紡ぐ。
「好きです、兄さん。これからも一緒にいてくれますか?」
「当たり前だ。言ったろ? 愛華は俺の半身だってな」
「そうですね、シスコン兄さん」
「うるせぇな、ブラコン愛華」
愛華の額でデコピンして、気持ちを切り替える。
「……愛華、久しぶりの大物だ」
「そうですね。相手はコカビエルですか…まぁ私たちには勝てないですけどね」
額を摩りながら自信満々に言う愛華。
さて、加勢にいくとするか。
◆◇◆
祐斗side
「悪魔として生きる。それが、主の願いであり、僕の願いでもあった。けれど、エクスカリバーへの憎悪と同志の無念を忘れるわけにはいかなかった。いや―忘れも良かったと思う。だって僕には、最高の仲間がいるから!」
クリスに一誠くん。小猫ちゃんや朱乃さん。それに主でありオカ研の部長―リアス・グレモリー。
聖剣を探しているときに思ったんだ。僕を助けてくれる仲間や友達がいる―「それだけでもう充分なのではないか?」 って。
でも同志が聖剣に復讐を願っているのなら、この魔剣を降ろすわけにはいかなかった。
――自分達の事はもう、いいんだ。キミだけでも生きてくれ。
そう。同志達は復讐なんて願っていなかったんだ!
「だけど…それだけではまだ終わらない。あの、元凶を断つまではッ!」
バルパーに指を指す。あんただけは絶対に…!
「ふん。何、研究には犠牲はつきものだ。それもわからないのか?」
……やはり、あんたは邪悪すぎる。ここで止めないと、また僕らのような人がでてもおかしくない!
ポン、と肩を叩かれ振り向くと、クリスがいた。
「行け、祐斗。聖剣よりも強い人の心を見せ付けろ!」
―クリス。
「お前はグレモリー眷属の『騎士』なんだ! 俺の仲間で、俺達の友達だ! あいつらの想いと魂を無駄にするなよ!!」
―イッセーくん。
「祐斗、やりなさい! あなたはこのリアス・グレモリーの眷属なのだから! エクスカリバーを超えなさい!!」
「そうですわ。祐斗くんならいけますわよ!」
―リアス部長、朱乃さん。
「……祐斗先輩!」
―小猫ちゃん。
「ファイトです! 祐斗さん!」
―アーシアさん。
……同志の想いと魂、そして皆の想いを込め、この魔剣は新たな高みへと昇る!!
「部長! 僕は仲間達の剣になるッ! 今こそ僕の想いに応えてくれ! 『
神器と同志の魂が混ざり合い、形を成していく。
……同志たちが教えてくれる。これは昇華だと。
神々しいオーラと禍々しいオーラを放ちながら、手元に現れたのは一振りの剣。
「――
これが悪魔の主を持ち、魔剣を振るう力と聖剣の因子となった僕の同志の想いと魂が合わさった力だッ!!
僕はフリード目掛けて駆け出した。
だが―
「そこですなぁ!!」
フェイクで脱したはずだけど、フリードは真後ろにいる僕に向かって聖剣を振るってくる!
「くっ!!」
ギィィィンッ!!
「へっへっへ。なんとなくわかっているのさ! あんたのう・ご・き」
まさか僕のフェイクに気づいているなんてね…。大した『はぐれ』だよ。
でも…ね。
にや、笑むと同時にエクスカリバーのオーラが聖魔剣によってかき消されていく。
得意げな表情をしていたフリードも、目の前の光景には驚きを隠せないでいた。
「ッ!? 本家本元の聖剣が、そんな剣に劣るのかよ!?」
「これが真のエクスカリバーなら勝てなかっただろうね。そのエクスカリバーでは僕達の想いや魂を断つことはできないッ!!」
「チィッ!!」
フリードは僕を押し返し、後方へ下がった。
「さすがに強いですねぇ。でも、これならどうかなぁぁぁ!!」
聖剣の先端が意志を持ったかのように動き、枝分れをして神速の速さで四方から迫ってくる!!
これは『
ギィン! ギィン! ギィン!
キミの殺気はわかりやすい。だからどんな厄介な能力を使っても、すべて防ぐことができる!
「なんでさ、なんであたらねぇんだよぉぉぉぉ! 絶対無敵最強のエクスちゃんじゃないのかよぉぉぉッ!!」
フリードの叫びとともに聖剣の先端が消える。
これは―『
でもね、いくら見えなくても――
ギィン! ギィン!
――殺気がわかりやすいから防ぐことができる。
「――ッ! ……ははぁん、な~るほど。わかったわ」
フリードは驚愕の表情になったが、また得意げな表情になった。
「…?」
何が…わかったんだ?
「あんた、俺の殺気を感じて避けていたんだろ? いやぁ~盲点だったわ。これに気づかなきゃ、俺ッちあっという間に殺られていたんだねぇ~」
「………」
まぁ気づくよね。殺気を感じ、相手の動きに反応するのは剣士として当たり前だ。
「ではでは、こっから第二ラウンドの開始といこうかねぇ!!」
フリードは『透明』と『擬態』、『天閃』の能力を使い、攻撃を仕掛けてくる! しかもさっきにみたいに分かりやすい攻撃じゃない!
「くっ!」
神速で四方から攻めてくる、見えない聖剣。
これには少しずつだけど、押されてきている…!
「オラオラァァァッ!! さっきまでの動きはどうしたんだぁぁぁ!! このままじゃあ、聖剣に斬られてお仲間さんにばいちゃしないといけなくなんぜぇぇぇッ!!」
ギンッ! ギンッ! ギィィィンッ!!
「しまッ!? ――ぐッ!?」
ヤバイ…! 聖剣の剣戟が掠ってしまった…! 体から煙が…!
激痛が体中に走るが、でもまだ、負けてはいない…!
「はあぁぁぁっ!!」
四方からくる聖剣を避け、時には受け流し、フリードに近づく。
「おおぉ! 頑張りますねぇ、悪魔さん? さっさと死にさらせやぁぁぁぁ!!」
傷口からは聖剣に斬られたせいで、煙が出てきている。このままでは、確実に負けるだろう。
「負けるわけにはいかない…! この想いを…託されたからには…!」
聖魔剣を強く握り、全力で駆け出す!
「この…さっさと死ねッ!」
四方からの攻撃。でもね、そればっかだと他の人から隙だらけじゃないのかな?
枝分れしていた聖剣が飛んできた妖刀によって、破壊された。
「うおぉっ!? この刀…まさか愛華ちゃん?」
「私の名前を気安く呼ばないでください。私が穢れます」
声が聞こえたほうを向くと、そこにはさっきとは様子が違う荒神仁とさっきまで操られていた荒神愛華がいた。
「あ、でも兄さんは違いますよ? 兄さんは私の恋人ですからね!」
一応、正気に戻ったんだね。よかった
「オイオイオイィィィィ!! ここで増援とか洒落にならねぇぇぇぇぇ!! せっかくいいところだったのによ…何してんだよこのクソアマがぁぁぁぁ!!」
フリードが荒神愛華に向かって、聖剣を振るう。
「――温いです。こんなもの」
荒神愛華はそれをすべていなす。
「うし、今のうちだな。おい、木場祐斗。…少しだけ痛むぞ」
荒神仁は十拳剣を僕に向かって翳す。すると、聖剣にやられた傷が癒えていく。
「全快だな。これで動けるはずだ」
…すごい。アーシアさんの『
「――さて、私も奥の手をみせるかな」
そう言ったゼノヴィアは、左手に聖剣をもち、右手を宙に広げた。
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。わが声に傾けてくれ。――この刃に宿りしセイントの名において、我は解放する! こい。デュランダル!!」
彼女の右手に異空間が現れ、神々しいオーラとともにデュランダルが出現する!
…まさか、彼女がデュランダルの使い手だったとはね。教会はデュランダルの使い手を量産できる段階まできているのか?
「デュランダルだと!?」
「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!?」
バルパーはおろか、あのコカビエルさえ驚きを隠せない様子だった。
「あいにく、私はイリナや他の聖剣使いとは違って数の少ない天然ものでね。エクスカリバーは兼任しているにすぎないのだよ」
ゼノヴィアがデュランダルを構える。
エクスカリバーとデュランダルの二刀流。恐ろしいや、これは。敵にしたくない
「このデュランダルは想像以上の暴れん坊でね。何でも切り刻む。ゆえに異空間に留めとかないと危険極まりないのだ。――貴様のおかげでエクスカリバーとデュランダルの頂上決戦ができる。一太刀めで死んでくれるなよ? せいぜいエクスカリバーの性能を限界まで使いこなすことだ!」
ゼノヴィアが一気に駆け出す!
「おいおいおいおいィィィ! こんなときにそんなものはイラネェェェェ!! 四対一とかふざけているぜぇぇぇ!! でもでも、これは良いんじゃないでしょうかぁ? こいつらを殺せば僕ちんが最強だじぇぇえい!!」
殺気に満ち満ちた瞳が僕らに向ける。それと同時に見えない聖剣が僕らに向かってきているのがわかった。
……それは悪い手だ、フリード・セルゼン。ここには反則級の強さをもつ人が多いのだから。
「以外と多芸だな、エクスカリバーは」
「まぁこんなの、余裕です。兄さんの訓練に比べれば」
荒神兄妹は見えているかのように、華麗に避けていく。
「……同じ攻撃をやすやすとくらうと思うかい?」
僕も避けることができるものは避け、無理なところでは聖魔剣で弾いていく。
「あららぁ、これは完全に見切られていますなぁ…。なんなら、あのビッチから先に殺しちゃいますか!!」
枝分かれした聖剣がフリード目掛けて駆け出しているゼノヴィアに襲い掛かる!
神速で襲い掛かるそれをゼノヴィアはデュランダルでたたき切った!
バキィィン、という甲高い音が聞こえ、エクスカリバーの刃が地面に落ちる。
「……脆い。所詮は折れた聖剣。このデュランダルの敵ではない」
面白くなさそうに嘆息をつくゼノヴィア。
恐ろしい破壊力だ。デュランダルを振るった余波で地面が抉れている…!
「マジかよ…、エクスカリバーちゃんが木っ端微塵になっちゃったよぉぉッ!!??」
エクスカリバーが砕かれ、それに伴うようにフリードの殺気が弱くなっていく。
今しか…ない!
僕はフリードに一気に詰め寄る!
フリードも刃の折れたエクスカリバーで受けきろうとするが――
バキィィン、と二度目の甲高い音が響いて、デュランダルのお陰で刃のほとんどが折れていたエクスカリバーを砕き、そのままフリードを斬った。
「……完敗だよ、ちきしょう」
「――見ててくれたかい? 同志達。僕は今、エクスカリバーを越えたよ」