オラリオのすべての冒険者が一丸となり成功させたロキファミリア救出作戦から数週間ほどたったある日、
ベルは救出作戦で何度も死にかけたことにより休養を言い渡されていた。しかしダンジョン中毒のベルからすると何もしないというのは難しいため散歩に出ていた。
大通りを歩いていると「ベルくーーん!!」大きな声で自分の呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。後ろを振り返るとヘルメス様がこちらへ走ってきているのが見えた。
「ベル君!」
「どうしたんですか?ヘルメス様」
「君にどうしても聞いてほしいお願いがあるんだ」
「お願いですか?」
「そう!ベル君にはこの紙にサインしてほしいんだ」
「これ何の紙なんですか?正直サインしたくないんですけど、、、」
「頼むよベル君何も聞かずにどうかサインしてほしいんだしてくれないと俺がアスフィに何されるかほんと―にわからないんだ、だから頼むサインしてほしい」
「いや~でもすっごく怪しいんですけど」
「ほら!この前のロキファミリア救出作戦もさ案内したり導いたりしただろ?その恩をいま返すと思ってさお願いだ」
「う、うーんそれを言われちゃうと、、、わかりましたよサインすればいいんですよねこれに」
ベルはヘルメスから紙を受け取りサインをしその紙をヘルメスに返すとヘルメスはすぐに受け取りあることを言いながら走り去っていく
「ありがとうベル君!ベル君のファミリアも招待してるからベル君も見に来てくれよ”ベル君の人生上映会”」
「ぼ、ぼくの人生上映会?ヘルメス様!?どういうことですか!?」
ベルはヘルメスを追いかけようとするがすでにいなくなっておりどうしようもなくサインをしてしまった後悔だけが残った
――上映会当日。
ヘルメス・ファミリアが用意した巨大な会場は、普段なら決して同じ場所に集まることのない者たちで埋め尽くされていた。
最前列には、ヘスティア・ファミリア。
ヘスティア、リリルカ・アーデ、春姫、リュー、そして――今回の上映会の主役、ベル・クラネル。
その向かいにはロキ・ファミリア。
ロキ、フィン、アイズ、ティオナ、レフィーヤ。
さらにフレイヤ・ファミリアからはフレイヤ、ヘディン、ヘルン、ヘイズ、ヘグニ。
ミアハ・ファミリアからミアハ、ナァーザ、ダフネ、カサンドラ。
学区からレオンとニイナ。
ギルドからエイナ。
そして最後方には、この上映会を発案したヘルメス、魔道具を製作したアスフィ、なぜかローリエが座っている。
「……」
ベルは、もう何度目か分からないほど周囲を見回した。
「やっぱり帰っちゃ駄目ですか?」
「駄目に決まってるだろう」
隣のヘスティアが即答する。
「そもそもベル君が主役なんだから」
「それが嫌なんです!」
「まあまあ」
ヘルメスが笑う。
「ベル君の人生を皆で振り返るだけじゃないか」
「その『だけ』が怖いんですよ!」
ベルが叫ぶ。
しかし、アスフィは既に魔道具を起動していた。
「始まります」
会場の照明が落ちる。
ざわめきが止まった。
巨大なスクリーンに、一つの文字が浮かび上がる。
『ベル・クラネル』
そして――。
『第一幕 オラリオ』
映像が始まった。
---
◆
最初に映ったのは、一人の少年だった。
白い髪。
赤い瞳。
今よりもずっと幼く、身体も小さい。
その少年が、一人の老人と暮らしている。
「……」
ベルは画面を見つめた。
「これ……」
隣のヘスティアがベルを見る。
「ベル君?」
「祖父ちゃん……」
ベルの声が、ほんの少しだけ小さくなる。
現在のベルにとっては、すでに遠い記憶。
だが、映像の中では鮮明だった。
老人の話を聞きながら、目を輝かせる少年。
英雄。
冒険者。
モンスター。
そして――。
美しい少女と出会い、恋をする英雄。
「……」
ティオナが首を傾げる。
「この頃から英雄に憧れてたんだ」
「は、はい」
ベルが少し照れながら答える。
「祖父ちゃんがたくさん話してくれて……」
「なるほど」
フィンが静かに頷く。
「君の原点というわけだ」
「はい」
映像の中の少年は、老人の話を真剣に聞いていた。
英雄に憧れる。
強くなりたい。
誰かを守れる人になりたい。
そんな純粋な夢。
アイズが少し微笑んだ。
「今のベルとあまり変わらないね」
アイズが画面を見る。
「ベルは、英雄になりたいって言ってくれた」
その言葉にベルは少し驚いた。
「アイズさん……覚えてたんですか?」
「うん」
アイズは頷いた。
ベルは少し恥ずかしそうに視線を落とした。
---
◆
映像が変わる。
少年が、故郷を離れる。
老人との別れ。
そして――一人でオラリオを目指す旅。
画面の中のベルは、大きな荷物を背負いながら歩いている。
「ベル様は御一人でオラリオに来たのでございますね」
春姫が呟いた。
「はい」
ベルが答える。
「祖父ちゃんから、冒険者になるならオラリオへ行けって言われていたので」
ヘスティアが少し寂しそうに画面を見る。
「この頃のベル君はまだボクとは会ってない時だね」
「そうですね」
「なんだか変な感じがするなぁ」
ヘスティアは苦笑した。
「ベル君がボクと出会う前にも、こんな時があったんだ」
映像の中で、少年が巨大な都市を目にする。
高い城壁。
多くの人々。
そして、その中心にそびえる巨大な塔。
迷宮都市オラリオ。
初めてその街を見たベルの顔には、驚きと興奮が入り混じっていた。
「……」
会場のベルも、同じ映像をじっと見ていた。
「初めて見たときのこと、覚えてる?」
エイナが尋ねる。
「はい」
ベルは頷いた。
「すごく大きくて……本当にここにダンジョンがあるんだって」
「私も、最初にギルドへ来たときのベル君を覚えてる」
エイナは懐かしそうに笑った。
「すごく緊張してたよね」
「……はい」
「今では考えられないくらい」
「エイナさん……」
「ふふ」
エイナは楽しそうだった。
---
◆
そして、映像の中のベルは冒険者としてファミリアに所属しようとする。
期待に胸を膨らませ、ファミリアを探す。
「ここからですか……」
リリが呟いた。
ベルが次々とファミリアを訪ねていく。
しかし――。
断られる。
また断られる。
さらに断られる。
「……」
現在のベルは、徐々に小さくなっていった。
ティオナが思わずベルを見る。
「えっ、アルゴノゥト君って最初こんなにいろんなファミリアから断られてたの?」
「……はい」
「いくつくらい?」
「覚えてません……」
ロキが笑う。
「そりゃ辛いなぁ」
「笑わないでくださいよぉロキ様ぁ」
「いやいや、悪い意味やないで」
ロキは笑いながらも、少し真面目な顔になる。
「でも、オラリオのファミリアって数が多いからな。新人を受け入れるところばかりやない」
フィンも頷いた。
「それに当時の君は、本当に何も持っていなかった」
「はい」
「後ろ盾もない。武器もない。能力も分からない」
フィンが画面を見る。
「そんな少年が、今ではここにいる」
ベルは黙った。
映像の中では、少年が一人で街を歩いている。
誰にも必要とされない。
夢を抱いてオラリオへ来た。
それなのに、入れてくれるファミリアがない。
徐々に日が暮れていく。
それでもベルは諦めなかった。
次のファミリアを探す。
そして断られる。
「……」
ヘスティアが画面を見ていた。
まだ、映像の中には自分がいない。
だが、その先に自分との出会いがあることを知っている。
「ベル君」
「はい?」
「この頃、すごく寂しかった?」
「……」
ベルは少し考えた。
「寂しかったと思います」
正直な答えだった。
「でも……冒険者になりたかったので」
「それでも?」
「はい」
ベルは画面を見る。
「夢だったので」
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◆
夜。
映像の中のベルが、街の片隅で一人座っている。
大きな街に来た。
夢だった冒険者になろうとした。
しかし、誰も自分を必要としてくれない。
その現実に、少年は俯いていた。
その姿を見て、リリが静かに呟く。
「……このときのベル様は、まだ私より弱いんですね」
「当然だよ」
ヘスティアが答える。
「まだ何も始まってないんだから」
「そうですね」
リリは画面を見つめる。
「でも……」
「ん?」
「ここから、あれほど強くなるんですよね」
「うん」
ヘスティアは頷いた。
「ここからなんだよ」
---
◆
そして――。
映像が変わった。
一人の女神が、街を歩いている。
黒い髪。
幼い身体。
神としてはあまりにも頼りなく見える姿。
「……」
ヘスティアは真剣に画面をみる。
「来た!」
ティオナが笑う。
「ヘスティア様!」
「これはヘスティアには勝てそうにないわね」
フレイヤは少し残念そうにする
「懐かしいなぁ」
ヘスティアは懐かしむ
映像の中で、ヘスティアがベルと出会う。
その場面を見て、ベルの表情も変わる。
「……」
何があっても忘れない。
自分の冒険者としての人生が始まった瞬間。
映像の中のヘスティアが、ベルに声をかける。
ベルは驚く。
神と出会った。
ファミリアを探していることを話す。
そして――。
ヘスティアがベルを受け入れる。
小さなファミリア。
眷族は一人。
拠点も立派ではない。
それでも。
ベルは初めて、オラリオで自分を受け入れてくれる場所を見つけた。
映像の中のベルが、嬉しそうに笑う。
「……」
ヘスティアは何も言わなかった。
ただ、画面を見つめている。
ベルが横を見る。
「神様?」
「……うん」
ヘスティアは笑った。
「やっぱり、あの日のベル君は可愛いね」
「やめてください……」
「ボクも嬉しかったよ」
「……」
「ベル君が来てくれて」
ヘスティアの声が、少しだけ柔らかくなる。
「ボクも、あの日から一人じゃなくなったから」
ベルは何も言わなかった。
ただ、静かに笑った。
◆
最後の映像。
オラリオの夜景。
その街の中に、小さなファミリアが生まれた。
女神と、一人の少年。
まだ何も持っていない。
まだ誰も知らない。
この少年が、これからどれだけの戦いに巻き込まれるのか。
どれほど多くの人と出会うのか。
どれほど強くなるのか。
そして――。
どれほど多くの人の人生を変えることになるのか。
誰も知らない。
スクリーンが暗くなる。
『第一話 終了』
照明が戻る。
ベルが大きく息を吐いた。
「……終わった」
「ベル君終わって安心してるところ悪いが」
「はい?」
ヘルメスが笑う。
「まだ一話だよ」
「…………」
ベルの顔が引きつった。
ヘルメスが指を鳴らす。
「次回!」
スクリーンに次のタイトルが浮かぶ。
『第二話 女神と白兎――シルとの出会い』
「ちょっと待ってください!」
ベルが立ち上がる。
「もう次なんてあるんですか!?」
「もちろん」
ヘルメスは満面の笑み。
「人生上映会だからね!」
ベルは頭を抱えた。
その横で、ヘスティアが楽しそうに笑う。
そして――。
フレイヤだけは、スクリーンに映った次のタイトルを見つめながら、誰にも聞こえない声で呟いていた。
「……シルとの出会い、ね」
その瞳には、わずかな興味が宿っていた。
まだ誰も知らない。
この少年の人生が、ここからどれほど大きく動き始めるのか。
上映会は――まだ始まったばかりだった。
正直続きを書くかはやる気次第なのでこのまま終わるかもしれません良ければ感想などいただけましたらうれしいです