エセ・スパイダーマンがノー・ウェイ・ホームに参戦する話 作:マッキーガイア
多分、みんなはわかっているだろう?この小説の語り部である僕が数ヶ月前から世間を騒がすスーパーヒーロー、スパイダーマンである事を…
正直に言おう。僕がスパイダーマンになった理由、それははっきり言って"悪ふざけ"だった。
顔を隠して行動しなくちゃいけない用事が複数個あって、それにそれらしい能力が備わった。
僕は転生者で前の世界で観たスパイダーマンが大好きだったが、この世界にはスパイダーマンがいなかった。
著作権スルー!
そうなったら、まぁ、好きなヒーローのコスプレしてそれっぽい事したいと思うよね。
正直、これを始めたばかりの時は大いなる力とか伴う責任とかわかっていなかったと思う。文字だけ見て納得して、これがスパイダーマンの哲学だなんて持て囃して心に刻んだ気になって、その実その文面を覚えただけだった。
大いなる力には大いなる責任が伴う。
それを真に理解したのは身近にいた人間が死んだ時だ。
あれから変わった。世界の見方も変わった。
違う世界だと内心思っていた。僕がいる必要がない、いや、いてはならない世界だと…
だけど、今は違う。
ここが僕の世界だ。
『この3ヶ月、東京の犯罪率は大幅に低下しました。それはスパイダーマンのおかげです!』
『あの空飛ぶ悪党に騙されるな!マスクで顔を隠しながら悪党をぶん殴る?それこそ通り魔じゃないか!』
『スパイダーマンが病院に現れて子供達にエールを送っています!』
『いいか!?私には奴の二面性がわかっている!!奴が悪党を殴る時の顔を見てみろ!まるで悪魔の様な笑みを浮かべているぞ!』
『スパイダーマンこそ、私たちの隣人、親愛なる隣人です!』
『ハハっ!窓を見てみろ!奴があんたの風呂場を覗いているかもな!』
『少しでも奴に気を許してみろ!牙を剥いて襲ってくるぞ!まるで飢えた野生の獣みたいにな!』
「………なんでいつもJJJのラジオ聞いてるんだろ。僕。」
僕は今、池袋サンシャインシティビルの屋上にてそう黄昏ていた。
JJJとはジェイ・ジョナ・ジェイムソンの略である。原作で彼は新聞社デイリービューグルの編集長であり、作中1番のスパイダーマンアンチで有名である。
だが、この世界でスパイダーマンは日本のご当地ヒーロー(東京だから結構、有名だけど。)、NY出身の彼とはそもそも会う機会などないと思っていた。それに僕自身、この世界をスパイダーマン等スーパーヒーロー蔓延る世界だと微塵も思ってないしね。だが、世界はスパイダーマンいる所にJJJありと言わんばかりに登場させて来やがった。
始めてラジオにJJJの声が響いた時、死ぬほど驚いたからね。
見事な程に無駄に語彙が多い罵倒、あんなのジェイムソンしかいないだろって。
彼曰く、最近NYから引っ越して来たらしい。神様も無駄な事するよね…
『正義の味方をしたいならマスクを『警視庁から戸塚。』『戸塚です。どうぞ。』『110番が入っております。最寄りのPBよろしくお願いします。場所は高田馬場1丁目26-5番。高田馬場駅前、ドンキ・ホーテ横の路地までお願いします。暴行事件です。マル害は1〜2人。錯乱状態につき注意お願いします。』
『戸塚、了解。』
ジェイムソンのラジオが途中で途切れ、警察無線が入る。
どうやら暴行事件らしい。ますくから位置情報を調べると車で21分と出る。まぁ、スウィングで行けば10分かからないだろうが、駅前に交番がある為に多分警察の方が到着は早いだろう。
とは言え、暴行事件なので少し不安が残る。
「とりあえずで、行ってみようかな。様子見程度だけど。」
思い立てば吉日、それ以外はみな凶日とばかりに腰掛けていた柵からポンっと飛び降りた。
地上230メートルはそれなりに高い。地上で走る時はあっという間に感じるが、落ちるとなると別の長さを感じる。
そうして、風を思いっきり顔にぶつけながら
THWIP!
手首から糸を発射した。
現場に着けば、激しい爆発音が響いていた。
まるで戦争映画を見ている様な音に驚きつつも近場のビルにひっついて様子を見る。
暴行事件と聞いていたが……様子がおかしい。明らかに発報音だ。
「何?銃声?マジ?日本だよ此処!?」
見ればドンキ前で銃を持つ何人かの男が立っている。
こんなのお巡りさんがどうにかなんて無理だろなんて思いつつ、飛び上がった。
「ぴんぽーん!ウェブの宅配便で〜す!!」
振り子の容量で糸を掴みながら空から銃を持つ暴漢に向けて糸を放つ。
放ったウェブは奴らの手に収まっていた銃に絡まり壁に張り付いた。
それを見ながら奴らの前に舞い降りると、少し睨み合う。
「そんなモノ、日本じゃ使っちゃいけないんだよ。今なら白旗振ってくれれば許してあげるけど、どうする?」
「So, you finally showed up, Spider-Man!」
「Just when I thought the location had suddenly changed—now Spider-Man?」
「His true identity has been exposed. There is nothing to fear anymore.」
「英語?場所が変わった?正体がバレてる?情報多すぎ。
でも、とりあえず僕を殴りたいみたいだし。後で話を聞いてあげるから、一回眠って貰おうか。」
「This is the end, Spider-Man!」
「はい!アクションシーンはカット!!」
「僕の勝ち!なんで負けたか明日までに考えといてください!!」
そんな事言ってるからジェイムソンに変な記事書かれちゃうんだよ。
『スパイダーマン、街中で下品な物言い。子供に悪影響か?』う〜ん、トラウマ級の黒歴史だ。
アクションシーンをカットした理由?文字数見てみればわかるよ。
「さてと、犯人はオネンネしちゃったし。一旦警察に任せて此処ら辺を調査かな。」
眠らせた犯人は横一列に並べておくと近くにいた警官に明け渡す。
話は聞いてみたいが、狂乱状態だったし、薬物をやっているかも知れない。警察に一旦任せた方が自然だろう。
「確かドンキ裏だったよな。」
歩いて路地を覗くと、普通の路地って感じだ。
あまり何か変わる様な感じてない様に感じるが…
そうして覗いていると、ふと壁に違和感を感じる。
触れようとした瞬間だった。
「あっれぇ〜、スパイディ?」
なんか嫌な予感を感じて壁に張り付いた。
なんか聞いた覚えがある声、なんかヤバ目な感じ。
嫌な予感を感じつつ、先程声が聞こえてきた方角を見ると…
「デッドプール…?」
よく見たスーツの赤い男が立っていた。
「え?ノーウェイホーム?ってか、なんで日本語話せてるの!?」
「なんの答えにもなってないけど…」
「ちょ!待って!」
『………ィリービューグルのジョナ・ジェイムソンが送ります。緊急……』
……ん…ん?ジェイムソン…?
うぅ、腰いたぁぁ……クソっ、お目覚め一発に、JJJラジオとか最高の朝だな。
明日は罵倒以外の言葉が聞きたいな。例えば今朝の朝食とか。
そういえば、今日宿題があったんだっけ。寝ちゃった?みたいだし、朝イチでやらないとまずいかも。
まず、身体を起こさないと。
「………っ、よい……しょ?」
あれ、僕の家ってこんな汚い路地裏だっけか?
あれ、僕の布団ってこんな嫌な匂いする袋だっけ?
あれ?そもそも日本の建築じゃなくなくない?
「………んんっ、、、あれ。スパイダースーツ着ぱなしだったのか。通りでJJJのラジオが至近距離で…」
首筋のスイッチが間違えて押されてしまったのだろう。起き上がってしまった瞬間に消えてしまったラジオをまた再生する。少し砂嵐の様な音が鳴った後、また繋がり始める。
『…………私が明らかにしたこの衝撃の事実でピーター・パーカーの謎が更に深まった!又の名をスパイダーマン、又の名をスパイダーメナス!だが、視聴者のみなさんご安心を!…』
「……ん?………は?……」