エセ・スパイダーマンがノー・ウェイ・ホームに参戦する話 作:マッキーガイア
やぁ、みんな。僕はスパイダーマン!
似非だけどね。数時間前まで僕は日本の地元から東京にかけてのご当地ヒーローだった。
だけど、頭のおかしい奴に誘拐されて今は別の世界のニューヨークにいる。だけどここは今害虫駆除中みたい、蜘蛛は益虫なのにね?
助けを求める為に今ある人の所にいる。
「……つまり、こう言う事か?……えっと、スパイダーマン?」
そう!ベネディクト・カンバー……おっと違う。偉大な魔術師、ソーサラースプリーム事、ドクター・ストレンジ!
「…違う。今はウォンがソーサラー・スプリームだ。」
地の文を読まないでよ。まったく。
ともかく、僕はとても信用たるメンバーに助けを求めていた。
「まぁ、とりあえず言える事としては……
荒唐無稽だな。」
「私もそう思う。」
ストレンジといっしょに僕の話を聞いていたウォンがそう話に割り込む。
是非も無し。
「その赤い男がどう言う了見で君をこちらの世界に引き込んだのか見当がつかないが、君のそのスマホ内の情報が君が異世界人だと言っている以上、本当の事ではあるのだろう。」
「正直驚いている。君の世界じゃ……その、ビートルズが全員存命でいまだに新曲を出しているだなんて……信じられん。」
「そもそも、私としては解散してない事自体に疑問を抱くがね。
まぁ、それは良いが……ここまでくれば察せる。私に助けを求めていると言う事は自分の世界に帰して欲しいって事だろう?
だが、すまないが無理だ。策なんて1ミリも存在しない。」
「マルチバース間の移動なんて前例がなくてな。」
「しばらくの生活の補助くらいはしてやれるが、根本的な解決は他を頼ってくれ。アベンジャーズなんてどうだ?……化学方面で助けてくれるかも。」
「とは言え、専門分野のスタークがいない以上望み薄だがな。」
そう言われ、少し不安に感じていると、ストレンジは肩を叩いてくれた。
「兎に角、諦めるな。この世界も最近は前例がない事ばかり起きている。その内、自由にマルチバース間を移動する奴も出てくるかも知れん。」
「こちらもあらゆる手は尽くそう。いくつかマルチバースに関する古書もあった筈だ。」
そう言って2人とも笑いかけてくれた。
「……それで、どうする?」
「…何をですか?」
「仕事だよ。少しはお金を作った方がいいだろう?我々はモノに対する執着がないらしくてね。住ませたり食事は用意できるが、小遣いはそんなにやれない。」
「まだ根に持っているのかストレンジ。」
「………ウォン…根になど持っていない。必要なことを言っているだけだ。」
そうして言い合いを始める二人。それを横目に考える。
実は考えていた。この世界で生活していく以上、どうしても過ぎる事情だ。
さっきまでは身分証がない以上は無理だと諦め切れていたが、もはやどうにかなりそうな今、考えなくてはならなくなった。一応、三候補ある。
ふむ、第一候補。スパイダーマンに習い賭け試合。
無しだ。誰か死ぬ。カノンイベントと勘違いされかねん。
ふむ、第二候補。MJに習い舞台俳優。
無理だ、大根演技見せるだけだ。
くそっ、じゃあ、そうだよな。
そうなっちゃうよな。最終候補ーーーー
「仕事、決めました。」
「もしもし、ジャネット!?フリーのカメラマンを雇うなんて言ったか!?……言ってない!?じゃあなんでカメラマンが面接に来ているんだ!!
何?新聞で私が写真の買取の広告を出してた!?じゃあ、コイツは写真を売りに来ただけなのか!?
……クソッタレ!とりあえず、名前を言え!」
僕は今、デイリービューグルのオフィスで例のジェイ・ジョナ・ジェイムソンの前に立っていた。正直、少し感動している。僕の世界ではまだJJJを直接拝んだ事がないので、それも当然だろうが。
ああ、本物だって感じ。
「ああ、えっと"ベン・ライリー"って言います。スパイダーマンの写真が欲しいって聞いて…」
「とりあえず出せ。」
手を伸ばして来た手に"僕の"スパイダーマンの写真を滑り下ろす。
「ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ……全部で200ドルだな。嫌だったら他へ回せ。」
「ちょ、それは…」
「うむ、これは気に入った。10ドル足してやる。次はピーター・パーカーの素顔の写真を…」
「…もしかして気付いてないんですか?」
「……何?」
僕がつぶやく様に放った言葉にジェイムソンはふと、立ち止まった。
「実は最近、巷にもう一人スパイダーマンが出る様になったって噂があるんです。模倣犯って奴でしょうか。
ほらこの写真とか見てください。」
そう言って一枚写真を取るとそこに映るスパイダーマンに向けて指を滑らせる。
「スパイダーマンのスーツはトニースターク製と聞いています。ですが、これがスターク製のスーツに見えますか?
まず、デザインが違います。ピーター・パーカーはマスクのグラスが拡大縮小するのに対してこのマスクにはその機能はなく、見たところメッシュの上にグラスを張っているだけの様に見えます。さらに…」
「まてまてまて、つまりお前はこう言いたいのか?
スパイダーマンは単独犯ではなかったと?スパイダーマンはほかにもいると?」
「ええ、更に言えばミステリオを殺したやつの正体もコイツかも。」
「何?」
「コイツは他人の立場を模倣する様なクズですよ?人を人とも思っていない可能性だってある。
もしかしたらピーター・パーカーの評判が地に落ちた今、自分こそが本物のスパイダーマンになろうとしているかも知れない。
あくまで憶測ですがね。」
そう締めると、ジェイムソンの顔が段々と真っ赤になっていく。
まるで血管から蒸気を発している様なほどの暴発具合に部屋が揺れた。
「ジャネット!!準備しろ!!緊急生放送だ!!
ライリーと言ったな!よくやった!!300ドルで買い取ってやる!!
だが、雇いはしないからな!!また撮ったらもってこい!」
そう張り裂けんほどの怒声を浴びせられると、僕は逃げる様にオフィスから逃げ去った。
まぁ、詰まるところ、僕はカメラマンになった。
僕の写真を撮って、ジェイムソンに売り、悪口書かれて僕への風当たりは強くなるだろうが、逆にピーターへの風当たりは弱くなる。こちらの世界での人気なんてカケラも興味ない僕からしたらあのピーターに役に立てると言うのなら是非も無し。
因みにベン・ライリーとは僕の偽名である。勿論、元ネタはピーター・パーカーのクローン、ベン・ライリーから来ている。
まぁ、僕がスカーレットスパイダーとか烏滸がましいにも程があるけど。