エセ・スパイダーマンがノー・ウェイ・ホームに参戦する話 作:マッキーガイア
「ふぅーー……いいか僕!やるか僕!嫌われてるのは……ちょっと慣れてないけど、好かれていないのはいつもの事だったじゃないか。
最初の頃とか本当に酷かったし。」
嫌な思い出を思い出しつつ、何処かのビルの屋上で僕は自分自身に喝を入れていた。
あの緊急生放送から2日、今日はエセスパイダーマンとして大々的に動く事にしていた。だが、正直言って非難の声がやばい。命の危機を感じてはいるが…
「やらないと、僕の事なんか一瞬で忘れ去られてまたピーターに非難がいく。
ジェイムソンのニュースを嘘にしない為にも行かなきゃ……」
此処が何通りなのかもわからない。住所を言われても多分頭を傾げるだけだろう。まだ警察無線も受信してない。
だけど…
ビルの端に立ち、街並みを見る。
いろんな声が聞こえる。人々の笑い声も悲鳴も…
ここは僕の街じゃない。でも、困ってる人を助けない理由にはならない。例え、助けた人に嫌われていようとも…
「…ふぅ……仕事は沢山あるぞスパイダーマン。」
ゆっくりと周りを見渡して、そうしてゆっくりと沈む様にビルから飛び降りた。
THWIP!
手首からウェブを放ち、近隣のビルに貼り付けた。
「FOOOOOOOOOO!!」.
Q.もう一人のスパイダーマンについてどう思う?
『奴は人殺しだ!』
『ミステリオは正しかった!』
『もう一人のスパイダーマンは顔を晒せ!』
『僕は警察だけど、正直、新しく出た彼にはあまり良いイメージ無かったんだ。見つけたらすぐ逮捕してやろうって……
だけど、初めて直接彼を見た時、そんな気は失せたよ。本当に酷い奴ならお婆ちゃんを背負って家まで乗せて行くなんてしないよ。』
『奴は人気取りをしてるだけだ!きっと裏では悪どい事をやってるに違いない。』
『彼、不器用なのね。口で悪ぶっているつもりなのだろうけど、人が良いの見え見え。なんであんな事しているのかしら。』
『この間奴に押し倒されたんだ!!強盗が投げてきた手榴弾を少し触ろうとしただけなのに危ないって…。え、助けられたんじゃないかって?
だとしても僕は擦り傷を負った!!訴える権利はあるね。』
『奴は子供達に悪影響だ。殺人鬼でも悪人を殴れば正義なんて狂ってる。』
『少しでもやつの名を出してみろ!お前を切り刻むからな!』
『私の息子に勉強を教えてくれたの。あんなに成績が悪かったのに!
今じゃ見違える様だわ。』
『この間、ピザ盗んでるの見た!』
『彼女とデート行く時にブーメランと二人目のスパイダーマンが戦っている場面に出くわしたんだ。彼が戦ってくれたんだが、服を汚してしまってね。
そうしたらスパイダーマンがすまなそうな雰囲気を出しながら、自分の服をくれたんだ。』
『偽善者だ!』
『…………』
『彼は良い人よ。』
『………え、スパイダーマン?よくわからない。』
『知ってる知ってる。デッドプールの別バージョンだろ?』
『ちょっと痩せすぎじゃないかしら?食べているの?』
『あの糸は直接出てるの?それとも機械?ピーター・パーカーには確かそれらしい機械着いていたのだけれども、彼には見当たらないんだよね。』
『すまない、今ピザ屋にクレーム入れている所なんだ。
オイッ!どう言う事だ!?頼んだピザがぐちゃぐちゃなんだけど!』
『この間、ウェブで電車止めてたよ。』
『車も止めてたよ。』
『ほぅ、それは興味深い。では隣のホテルで、そのヒーローについて朝まで語り明かそうか』
「……はぁ…」
パソコンでインタビュー映像をまとめながら一つため息を落とす。
見れば見る程に思う。彼の印象は千差万別。酷く悪く言う人も居れば、好意的な人もあるし、なんだったらそもそも存在を知らない人までいる。最後なんかナンパの手合いにまで絡まれたし。
明日までに纏めるよう編集長に言われたけど、無理よね。
私は一人愚痴た。
ここはデイリービューグルの資料室。私は今、来週の特番で使う様の映像を編集していた。
多分使われるのは彼を悪く言うものばかりだと思うが、一応と編集長が丸投げしたのである。
「撮るのも私、編集するのも私。なら少しは給料上げてくれたって良いのに…あの編集長は…!」
愚痴も言いたくなろうものである。あの人は人を雇う事は嫌う癖にクビにするのは大好き。給料を上げるのは嫌いな癖に下げることを愛してる。そんな人格破綻者なのだ。
そう愚痴を溢しながら作業をしていると、ふと後ろの方から扉の開く音がした。
「やぁ、ベティ。編集長から小切手貰って来たんだけど…何やってんの?」
「ベン…今、秘書は休業中です。」
振り向きながらそう言うと、資料室に入って来た男、ベン・ライリーはご愁傷様とばかりに可哀想な人を見る目でこちらに視線を送った。
「また残業かい?秘書なのに。」
「社長が人を雇わないからこうなるのよ。あなたが入って数ヶ月経つけど、誰も入ってこないでしょう?」
「いや、そんな事ないよ。エディだろ?あ、あいつ辞めたんだっけ。」
「3日でね。」
「でも、後輩ではあった。」
そんな軽口を交わしながら二人してまたPCに目線を配った。
「…で、これはなに?」
「貴方が入社したと同時に出て来たもう一人のスパイダーマンのインタビュー。」
「ああ…」
「ああって、貴方がそのスクープ持って来たんじゃない。最初の頃はスパイダーマンアンチがまた増えたって戦々恐々したんだから。」
「そんなにかい?」
「編集長がやる気になって、迷惑は被ったわね。」
「それはごめん。」
彼はそう笑うと、ふと何かに興味を惹かれたのか、画面を指差した。
「これは?」
「ほぼ秘密ファイルね。今回のインタビューで彼を捕まえてね。」
「彼?」
「まぁ、貴方なら良いでしょう。」
そう呟いて、そのファイルをクリックした。
『……僕の名前はピーター・パーカー……彼に伝えて欲しい。
数ヶ月前、彼が現れた時。もしかしてまた死ぬ前にミステリオが何かやったのかと思った。
また僕を陥れる為の策かって、一回騙されてるしね。
だけど、違うってすぐに分かった。
学校の前に人が居なくなって、石も投げられなくなった。多分、彼のおかげなんだろうって気づいた。
MJとネッドは僕のアイデンティティを取られたって少し複雑そうだったけど、僕としてはなんだか久しぶりに普通の生活に戻ったみたいで少し嬉しかった。
だけど、代わりに彼が傷ついているんだろうなって思うといつも胸の奥がジンと痛くなる。
会いたいって思う。助けたいって思う。
だけど、いつもその時になると逃げられちゃうんだ。多分、彼も僕と同じ蜘蛛に噛まれてると思う。彼が近くにいれば直ぐに感じられる。それは多分彼も一緒なんだと思う。
いつも街中をスウィングしている彼を見ると人じゃないんじゃないかって思っちゃう。僕もやってる事なのに変だよね。
だけど、僕は知ってる。彼だって人間だ。
泣きたい時もあるし、笑いたい時もある。僕にはMJやネッドが居たけど、君には誰がいるんだろうか。
いないんだったら、僕が居るから。
これは僕の傷のはずだ。頼む、僕だけを残して傷付かないでくれ。