エセ・スパイダーマンがノー・ウェイ・ホームに参戦する話 作:マッキーガイア
………は、…は…
ハッッックションッッ!!!
うぇぇ……グスっ…
ええっとなんだっけ。
ああ、ごめん、やり直すね。
良い子の味方、正義の味方のスパイダーマンとして僕は充実した日々を送ってる。
悪党を退治して、ジェイムソンにボコボコに罵倒されて。お婆ちゃんを助けて、ジェイムソンにボコボコに更に罵倒される。うん、充実した日々だ。
だけど、今日は………は、ハ……ハッックション!!!
……グスッ……ごめん、完全に風邪引いてる。
『スパイダーマンがウィルスをニューヨーク中に撒き散らしている!!』なんてニュースは今朝聞いた。凄いよね、僕が一回くしゃみしただけで風邪引いてるかどうか分かるんだから。
まっずいなぁ、最近は地上より空中にいる事の方が多いから風邪引いちゃったのかも…
それもこれも朝から晩までやる事多すぎるせいだ!ニューヨークの治安はどうなっているんだ!まったく。
この数ヶ月、ピーターの風当たりが弱くなり、僕の風当たりが強くなった。
ニュースでは連日ジェイムソンが僕の悪口を言いたい放題。最近はその為だけに自分の会社を振り回す始末。
この間のハロウィンは酷かった。ジェイムソンが子供に飴玉を配るって言うイベントを始めたんだけど。カメラマンとして僕が連れていかれて何を撮らさせられるのかと思ってたら、子供達とジェイムソンがスパイダーマンについて喧嘩し始めちゃって大変だった。
因みにその際の給料がたったの2ドル。
電柱に吊るして帰っちゃおうかと思ったよ。実際やろうとしてジェイムソンと二人で酷い目にあっちゃったけど。
さて、そんな僕だが。今日は風邪をひいてる。
正直辛いし、もう寝たい。
そんな状況でスパイダーマン活動なんて出来るのか
それは!
できにゃい。
「ふむ、今日は安静にしてろ。」
「大丈夫……だ……よ、ドク…」
「無理に声に出そうとするな。ただの風邪だ。」
ただいまサンクタムの一角にて僕はドクターストレンジに看病してもらっている。なんかすごい贅沢な気がしてきた。
元とは言え、すごい名医だった人だ。そんな人に診てもらえるなんて…良いのかな?
「良いも何も今のところ、君の保護者は私と言う事になる。なら、それ相応の対応をするのが世の常というものだろう。」
「なんで……地の文…読んで」
「君の場合、顔に書いてあるからな。」
そう言うとドクターは「明日にはよくなるだろうから今日は絶対に動くなよ。」と前置きをして出て行った。
さて、しょうがない。この街にはスパイダーマンが2人いる訳だし、それにドラマの方のヒーロー達も頑張ってくれるだろうし、今日は寝よう。
でも、ただ寝るのを見るだけの小説なんて読者のみんなも見たくないよね?
と言う訳で、僕のオリジンを思い出していこう。
まぁ、今話は仮面ライダーで言うところの総集編回ってやつだね。
さて始めるよ!
アクション!!
一応、言っておくけど、僕がスパイダーマンのコスプレして正義の味方ごっこを始めたのはそんな大した理由じゃないんだ。
ただクラスの女子が親の借金の形代わりにヤクザに身体を売られそうになっていたのを知ったからってだけの話だ。
その時の僕は正直、力を持て余してた。
科学館の実験コーナーで放射線を浴びた蜘蛛に噛まれて、その衝撃で前世の記憶を思い出して、自分が憧れのヒーロー、スパイダーマンと瓜二つの力を得たと知って調子に乗ったけど、今の平和な日常を捨て切れなくて、一応ノリでスパイダーマンスーツは作ったけれど、生かす気がない。そんな時期だった。
だけど、助けるべき人がいて倒すべき悪が出て来たんだ。あの時は無我夢中でとにかく助けなきゃって気持ちでスパイダースーツを着て気付いたら空をスウィングしていた。
生体ウェブの為、ウェブシューターを作らないで済んだのは幸いだった。正直、作れる気がしなかったからね。
でもスーツの素材には拘ったんだ。夏になると空調服になって、快適。
冬になるとジャンバーになって快適。
そんなスーツを目指してた。
日本の夏と冬は地獄だからね。
シルエットはゲゲゲの鬼太郎みたいな感じになったけど、正直バージョン1スーツとしては気に入ってた。
スパイダーマンってわかる部分は外さなかったからである。
そのスーツで夜の街に繰り出すと、感覚が研ぎ澄まされるのか色んな情報が入ってきた。
笑い声も泣き声も悲鳴も。
直ぐにヤクザの事務所は特定できた。東京は雑多な分、ヤクザなんて直ぐ見つかる。ソイツを締め上げて吐かせたのだ。
「コンコン、ヤ〜クザ屋さん遊びましょ。」
瞬間、ドンッと扉を破壊して人型の何かが事務所に飛び込んだ。
それは事務所にいた組員を何人か、吹き飛ばして組長の真横に激突する。
バリンっとガラスの破れる音が響いたと思ったら次の瞬間にはコンクリートがえぐれる音に変わった。
「……っ!」
組長が後ろの壁を見れば、何かが……いや誰かが埋まっている。まるで何処ぞのアニメ映画の様であった。
こいつ…何処かで見たと思ったら最近入って来たばかりの新参だ。
「なんだテメェ!」
「どこの組のもんだ!?」
若い衆が吠えている。だが組長はそれを人とは思えなかった。
見ればわかる。さっきはドアをぶち破るためにこの新米を事務所に向けてぶん投げたのだ。どんな力してるかわかったもんじゃない。
「なんの用だ?」
そう問いかけるが、その男は突飛な格好をしていた。
赤い無地のマスクに白いグラスが両目に半月形に入っている。
青いちゃんちゃんこの様な空調服にその下に赤い下地が全身を覆い隠している。
そして胸の真ん中には蜘蛛の刺繍が施されていた。
「お姫様を救いにかな。借金のカタに身体売る事になってる女の子いるでしょ?
返してよ。」
「アイツか。良い売り物になる。
返して欲しくば、それ相応の見返りを…」
瞬間、一瞬でその男は組長の前に移動すると、その机を
ドンッ!!
と破壊した。
「……初めましてで悪いんだけどさ。今日、僕あんまり機嫌良くないんだよね。早く返そうか。」
「……っ、子供の理屈だな。これは大人の取引なんだ。借金が返せなければ娘の身体を売ってその金で返す。そう言う契約なんだ」
「子供って言っても別居していてほとんど関係なかったんだよ。責任だけとらされるって理不尽じゃない?」
「知らん。そう言う契約だ。」
「へぇ、じゃあ、こっちも知らないや。」
そう言うと組長の口にウェブを放って封じた。
「大いなる力には大いなる責任が伴う。
今日は僕が責任を取り立てにきた。」
うわ、若っ。まだ一年経ってないけど。
簡単に言うとこんな事言っちゃう子だったんです。
それがこんなに立派になって……ないね。
あれから普通に組員組長全員グーで殴って泣かせて、同級生助けて…それから他にもたくさん同級生と同じ様な目にあってる子供達がいる事を知って、それを助けて回ってたって感じかな。
その頃は夜に行動するのが殆どで昼は学校で動けなかったっけ。
3年生になって自由登校に移り変わってから今の生活だ。
まぁ、その間にも色々あったけどね。
とりあえずこれが1話に言っていた。顔を隠してしなくちゃいけない複数個の用事の概要である。
後半へ〜続く。