エセ・スパイダーマンがノー・ウェイ・ホームに参戦する話 作:マッキーガイア
「蛸漁の専門家、スパイダーマッ!!」
でっででーでででっ!ででっででーっでぇ!!
瞬間、アームが僕の胸元に入ってくる。それをセンスで避けた。
目の前にはいつか画面で見たあのヴィランが確かにいた。巨大な4本アームを背中から自由に操作しているサングラスをかけた男。彼の名はオットー・オクタビアス。別名ドクター・オクトパス、略してドクオクとかドクとか呼ばれている。
「ごめん!誰だお前はって言われたら言わなきゃならないの忘れてた!真面目に返しちゃった僕が恥ずかしい!
もう一回最初からやってくれないかな?」
「お前はピーターにしては無駄口を叩く!偽者だという事くらいはわかるぞ!」
「偽物って事は否定しないけど、ピーターが無駄口を叩かないって事だけは否定するよ!そんなのタコ無しのタコさんウィンナーだよ!君にそっくりだよね!」
「タコさんウィンナーにタコは入っとらん!」
アームで街灯を掴み僕に向けて振り回すドクオク。
それを左に右へとまるで舞う様に避ける僕、もしかしたら、有名なダンサーになれたんじゃないか?僕って。
とは言え、ドクオク肉体の方は生身のただの人間である。隙を突いて殴るってのもやり難い。あのアームが強敵のせいで手加減ってのもやり難い。
倒す手立てはあれど、手加減できる手立てはない。正直手詰まりである。
僕1人であれば
「ちょっと!僕を無視するの酷くない!?」
瞬間、ドクオクの横腹にハイキックを入れる影が現れる。
ウェブで威力を付けたのか、ドクが思い切り吹き飛び、付近の車に衝突し、まるでタコの裏の様な跡を車に残した。
「忘れてないよ。レオタードくん。」
「それスタークさんも言ってたけど、流行ってるの?」
みなさまご存知、彼こそが主人公、ピーター・パーカーである。
彼はスタッとヒーロー着地をすると、またドクを睨みつける。
「まったく!僕の入学が掛かってるのに!たまには暇なときに来てくれないかな!」
「そうだぞ〜。土日とか大歓迎。
家族には内緒だぞ!」
黒煙を吹き出し始めた車を背後にドクオクはアームを使って立ち上がった。
「貴様ら全員、二度と口を開けなくさせてやる…。」
アームでさっきまでベッドにしていた車を力任せにベキベキべキ…と真っ二つに裂くと次の瞬間にはこちらに投げてきた。
片方はピーターに、そしてもう片方は僕に向けての物だ。
とは言え焦る必要はない。僕の身体能力だったら避けられる。まるで華麗に舞うダンサーの様に2人して鉄塊を避けると、スパイダーマンらしく着地した後に腰を屈めて構えた。
決まった!
前世からの集大成が!今、完結した!
ブチッ
そうそう、ブチっと……ん?
何の音だろうか?後ろから聞こえた様な気がする…。なんかいや〜な予感。
「いやっ!!いやぁぁーー!!!」
見ると叫び声を上げながら穴の空いた側壁から少しずつ、落ちていく黒い車が…!
どうやらさっきの鉄塊が地面に付けていた糸を切ってしまった様だ!!
「ピーターは引き続き、ドクを相手して!僕は救助へ!」
「了解!お願いスパイダーマン!!」
「君に言われたら頑張らなきゃね!」
そう言うと僕は走り出して車の救助へ向かう。しかし、それを阻もうとドクオクのアームが飛んでくるが、それをピーターが叩き落とした。
ナイス判断!
僕は親指を立てながら背中から高速道路を飛び降りた
thwippin'!!
瞬間に、片腕のウェブを高速道路に、片腕のウェブを車に貼り付けて、ピンと張る。
まるで江戸時代の処刑方法牛裂きの気分である。
拝啓、身体プラス車の重量を支えている僕の両腕へ。
君も相当人間辞めてるね!
体が中央から引き裂けなかっただけ、マシか。
そう一人ごちながら車を引き上げて両腕からのウェブ同士をくっ付けて、車へ飛び降りる。
ちょっと衝撃があったらしく、また中の人が少しまた悲鳴をあげたが、見た目はスパイダーマンなので安心したのだろう。少し悲鳴よりも息継ぎが長くなり出した。
「コンコン、助けに来ましたよ。お姫様。ごめんね、白馬はないけど、白いウェブならあるから。」
「ありがとう…ピーター…貴方とお友達のこと大学に言っておくわ」
「…ごめんだけど、僕はピーターじゃ……まぁいっか。」
ピーターの進学に貢献できるのなら勘違いくらい安請負いだ。
そう思いつつ、彼女を安全な場所まで連れて行こうと手を伸ばす。その正にその時。
スパイダーセンスが激しく鳴った。
「あー、すみません。助けに来ておいて何だけど。あともう少しだけ待っていてくれません?」
「え?どうしてかしら。」
「殴られるから。」
瞬間、まるで加減を知らないアームが僕の横腹に直撃した。
「ぐっふぅっ!?」
腹へのダメージで少し吹っ飛ぶも、途中でウェブを発射してあまり現在地からズレないようにするが、飛んできたアームが僕を掴んだ。
「虫ケラを2匹も捕まえた。」
「ごめん!負けちゃった!」
高速道路を支える柱から顔を覗かせて、そう言うドクのアームにはピーターが捕まっている。パワー負けしたのだろう。
「ざ、残念だけど、蜘蛛は虫じゃないよ!」
「貴様がいつまでその減らず口を言ってられるか、楽しみだ。」
「そんなの楽しむ柄でも無いだろうにっ!」
アームが僕とピーターの体を持ち上げて道路の裏側に叩きつける。
「ぐゔお…痛ァ…っ」
「メインディッシュは最後に残しておく主義なんだ。まず偽者から調理してやろう。」
「ゲテモノ好きにも程があるよ。」
悪態を吐いてみるが正直言って此処から逃げる方法は思い付かない。
ピーターもそれは同じ様で少し足掻いた後にダメだこりゃとばかりに項垂れた。
まぁ、手が塞いでいるから原作みたいにアームから出てきた謎の突起物でサクッとやられる可能性は無いだろう。まぁ、死に方が苦しくなるだろうけど……。
僕が死ぬのは別にいい。こんな事をしている手前、自己責任だし、納得は出来る。
だけど、僕のせいでピーターが死ぬのは絶対にダメだ。
僕がいない方が幸せに終われたなんて笑い話にもならないよ。
瞬間、ピンと来た。
確かだ。確か、原作の方ではピーターのナノテクがドクのアームに融合してそのまま制御を乗っ取っていた覚えがある。あの時は偶然だったけど、もしかしたら自分から操作できるかも!
「ピーター!!君のスーツを使えばこの状況を抜けられる!」
「僕の……スーツ…?」
「君のスーツは何で出来ている!?」
「……ナノ…そうか!」
瞬間、徐々にピーターを掴んでいるアームが赤く染まっていく。
だが、それを見たドクはむしろ感心したかの様に頬が綻んだ。
「ほぅ、ナノテクか。ピーター…君を侮っていたな。」
だが、と続けようとしてピーターを見たドクは目を見開いた。
彼は自分のマスクにあったナノボットを全部使ってドクのアームに融合させた様だった。素顔が丸見えだ。
「…何、ピーターでは無い?」
だが、それが良かったのだろう。ドクを驚かせた。
そうして、その隙がこの勝負の結果を決めた。
「……どうした…?」
自分のアームを見て、ドクは少し慄く。見れば隣でピーターが自分のスーツで何か操作している。
多分、アームとのペアリングが完了した様だ。
ピーターはするりと僕に巻きついたアームを解く。やっと自由になれた僕はウェブを高速道路に貼り付けて高速道路上に跳んで戻った。
しばらくして、ピーターもアームの操作に慣れたのだろう。車をアームで持ち上げながら、こちらに上がってきた。
「おひとり様ご案内〜。」