エセ・スパイダーマンがノー・ウェイ・ホームに参戦する話 作:マッキーガイア
「フュー!!僕ら『ウェブウォーリアーズ』のドラマーゲット!この沢山のアームで見事な音色を響かせてくれぇー!!!」
「僕ら、いつの間にバンドメンバーになったの?」
自らのアームで縛られているオットーを前にそんなジョークを放つ。
オットー凄く不満な顔をしていた。
「僕がギタボでピーターが……何できる?」
「………カスタネット?」
「じゃあ、ボーカルで!僕がギターだ!」
とりあえず、配置は決まった。明日から練習始めるぞー。
……はぁ、正直つまんない冗談を無理に言ってるのは分かってる。さっきまでDr.オクトパスと会えて浮き足立っていた心はいつの間にか沈んでいた。何故かと問われればこれから何が起こるか分かっている事に起因する。
……いや…その正直、別人だって分かってはいるんだけどさ。グリーンゴブリンって存在に僕はある種トラウマを抱えているのさ。
それこそ、以前言ったグロくて暗くてお蔵入りになった過去が関係しているんだけど。まぁ、それは概要話すだけでもグロくて暗くてお蔵入りになるからグロくて暗くても良いお蔵入りにならない時に話そう。
とにかく、アイツが現れた瞬間。僕がどうなるかわからない。
十中八九ジョークは飛ばせなくなるだろうな。もしかしたら、奴が死ぬまで殴り続けるかも知れない。
まるでハザードトリガーをベルトに装着してガタガタドッコンズタンズタンやってる桐生戦兎の気分である。
あー、そろそろだ。なんてため息を吐きながら、スパイダーセンスを待つ。
「………?」
先に気付いたのはピーターだった。
何かの違和感を覚えてオットーを自らのアームで縛り上げた後に、一点を見つめ始めた。
僕もそれに続く様にその違和感を見つめ続けた。
「……っ!?」
ドォォーーーーン!!!
突如、何かが爆発して高速道路を更に混乱の渦に巻き込む。
「…ねぇ、じゃあ、あいつも僕たちのバンドメンバー?」
ピーターがそう問いかけてくる。
冷や汗、眩暈…様々な感覚が僕に流れ込んでくる。
奴だ。奴がいる。そう思うだけで、憎しみが迫り上がってくる。
だけど、ふと瞬間。それが全部消えた。
奴が現れる。爆煙から…緑色の鬼の様な仮面を纏い、手元にカボチャの形に似せた球状の爆弾を持っている。
それがグライダーで宙を見事に舞いながらこちらを睨みつけていた。
「…いや、音楽性の違いってやつでね。はっきり言ってやったよ。君とはやっていけないって。」
もう怒りも憎しみも消えていた。
爆煙から出てきたアイツを見た時にスッパリと…
あれは結局、他人であったのだ。例えグリーンゴブリンでも僕の世界のでは無い。
「……オズボーン…?」
奴の不気味な笑い声が響く中、オットーがそう呟いた。それにピーターと共に視線が向かう。
その一瞬の意識変動が命取りだった。
グライダーの急発進時の爆発音が響く。
奴との距離はそう離れていない。こちらに突っ込んでくるまでに何秒もかからないだろう。
「構えろ!!」
そう僕がピーターに促した瞬間。
ピーターの方からゲートウェイが現れて気付かぬピーターとオットーを他所に飲みこんでしまった。
「……うぇっ!?」
そうして僕も…
「ぐべっ…!?」
やぁ、みんな僕はスパイダーマン。
みんなは憧れているだろう…この煌びやかなスーパーヒーローの世界に!
ヤケになって言ってるのかって?
そう。
僕は煌びやかなスーパーヒーローとして、煌びやかじゃない石の床で寝転びながら、煌びやかじゃない悲鳴を上げてる。
つまるところ相対的に見れば全然煌びやかじゃないスーパーヒーローだけどね、僕。
でも、まぁそうだったよね。
奴と相対はするけど、即此処にゲートウェイされてたよね。本編。
忘れてた訳じゃないよ?ちょっとグリーンゴブリンが強くて……いや、なんの言い訳にもなってないよね。忘れてたよ。忘れてた…
さてと、僕が寝転んでいる横でドクターストレンジがピーターの前に現れて説明を始めてる。
此処は映画本編と変わらないし、絵面的にもピーターとストレンジの足元でうつ伏せで寝転んでる真っ赤なタイツ男がいるだけの図だし、正直誰かが書いたシーンを焼き増しするだけの作業とか辛いだけだからカットするよ。
ごめんね。これ主人公特権なの。
たまに嫌いな奴がぶん殴られる時に巻き戻しからのスロー再生でぶん殴られる瞬間の変な顔を見るのが最近の楽しみ。ウケるよ、マジあれ。
因みに具体的なカットのシーンは本編の34分36秒から37分20秒までだよ。つまりピーターが「自分で蒔いた種は自分で刈るけど…助っ人が欲しい」と言った直ぐ後になりやす。
「ふぇんふぇーふぁすふぇへぇふふぁふぁい!!」
静かになっていたサンクタムの地下でそんな声が響いた。なんの音だとばかりに2人して見渡していると、ふと足元に不思議な感触がした。
「「うわっ!?」」
2人して足元みて同じ様な悲鳴を上げる。なんだよ。まじできづいてなかったの?
「な、なんだ。居たのかスパイダーマン。」
ドクターが僕の名前を言わない様にそうヒーロー名で呼ぶ。
その声は上擦っている。
「…居たよ、居すぎたくらいにね。まったくもう、何回も踏みつけられて…僕ちょっと傷ついたんだけど。」
「す、すまない。そういえば紹介してなかったなピーター。ピーター、スパイダーマンだ。スパイダーマン、ピーターだ。同じスパイダーマン同士仲良くしてくれ。」
「え?ドクター?知り合いなの?」
「ああ、少し前からサンクタムので居候をしている。とは言え、今回の事件、彼も関係している。」
なんか聞き逃せない事言い始めたぞ、この人。
「あの時半径10メートル圏内に彼がいたせいで、術が強化されてしまったのだ。」
「……えぇ…っと、つまり。」
「まぁ、今回の件に関して君に責任はない。ただピーター1人で失敗した時よりも……思ったより、大事になっているとだけ言っておこう。」
「……な、何が起きたんだ。」
クライスラービルの天辺の装飾を掴みながら
一瞬、空に光が走ったと思ったら夜から昼に周りが変貌していたのである。
「なんてこった…夢でも見ているのか…?」
慌てて、クライスラービルを飛び降りて、近くの建物の屋上へ立つと上から人々を覗き見る。
どうも変だ。夜から昼に変わったのに誰一人として困惑した様子を見せない。
少なくともこんな現象、スパイダーマンとて初めてである。
この不思議な現象を共感して欲しいと思っていたが、そうもうまくいかない様である。
スパイダーマンは嘆息を吐き。裏路地へ舞い降りる。赤いスーツは戦いの際、守る者がいる時に有用だが、戦いのない日常ではただただ目立つだけだ。
脱いで一般人のピーター・パーカーになってからこの現象を調べるのも遅くはない。そう考えた。
だが、マスクを外そうとした最中に、背後から声が掛かるとはその時、スパイダーマンも思っていなかったのだ。
「………ピーター…?」
慌てて、マスクを被り直して振り返る。
そこには女性がいた。
金砂の様な流れる髪を肩まで伸ばして、青い瞳をこちらに覗かしている。
とても知っている女性ではなかった。
「…ゴホン、やぁ、どこかで会ったかな?君みたいな子、僕は会ったこと無いんだけど。と言うか、今僕の名前を言ったよね?」
スパイダーマンは慌ててそう問い返していると喋ってる間に脳内で処理しきれなかった情報、つまり何故か知っている僕の本名に気付いた。
「何を言っているの?ピーター…?
私よ。グウェン・ステイシーよ。」
グウェン……知っている名だ。たしか、黒いやつに寄生されてる時にMJを見返す為だけに付き合っていた女の子の名……彼女にはひどい事をした。
だけど、こんな容姿の子では無かった筈だ。
「…グウェン…?君が…?
違う君は……グウェンじゃない。」
そう言うと、彼女は酷く傷付いた様な顔をした。
まるで目の前で希望が断たれたようなそんな……
「わかった。とりあえず君のことは信じる。僕も今、混乱しているんだ。
よくわからない事が立て続けに起きて。
君は何か知らないか?」
「…わ、私もさっき気付いて…
時計台でハリーとピーターが戦って……それで…」
「…………ハリー…?」
今は亡き親友の名が彼女から紡がれる。ハリーと僕が……戦った。
つまり、ゴブリンと僕との戦いに巻き込まれた事があると言う事か?
「待て待て待て、君は一体何歳なんだ。ハリーと僕が戦ったのはもう10年も前の事なんだぞ。」
「10年?」
「ああ、それを随分最近の様に言うじゃないか。」
「だって、私にとっては現在進行形の事よ?」
「何?」
意味がわからない。話が纏まらない、そう思っていると…ふと脳内にある考えが浮かんだ。
「マルチバース論…いや、SF映画の見過ぎだな。」
「……それよ。」
「それ?」
「さっきニュースで見たの。2人のスパイダーマンの話。しかも片方がピーター・パーカーってバレてたわ。」
「………え、つまり僕たちはそれぞれ別の時空から来た。と言う事か?」
「そう言う事よ。」
「……まったく、僕は僕のニューヨークの親愛なる隣人なのに…」
「あなたも同じ様な事言うのね。
来て、どこでもいいから図書館で資料読み漁りたい。貴方も目的は一緒でしょ?」
「…ボディーガードって事かい?」
「ええ、少しでも手掛かりは逃したく無い。」
「…もうわかったよ。」