殴る勇者と斬る魔王   作:輝波斗

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42.魔王城広報担当のお仕事

 一方そのコロ……頃。

 魔王のペットであるケルベロスはご機嫌で森を歩いていました。

 ケルベロスの縄張りは広い。そしてケルベロスのもふもふは可愛い。このケルベロス、基本的に自認が可愛いに全振りされていたす。明らかに甘やかされすぎです。

 そんなポチ、コロ、タマの今日のお仕事はお散歩、ではなく、近く(ケルベロスにとって)の幼稚園訪問。

 ケルベロスの鋭敏なお耳はピンッと立って、遠くではしゃぐ子どもたちの声を聞き取っています。

「おっきいわんわん来るって!」

「ふわふわかなぁ?」

「きっと、こぉーんなに大きいんだよ!!」

「なでなでできる?」

「もふぁってするの!」

 子どもたちの楽しそうな声に、コロがつられて尻尾がブンブンと振られました。

「バウッ!」

 尻尾の一振りで近くの木がなぎ倒され、ポチがコロに注意します。コロがしょぼんとした。しっぽも垂れ下がってしまいました。

 でも、ポチは気にしません。どうせコロはすぐに復活すのです。生まれたときから一緒なのだから、そのくらい分かります。

 タマは呆れたような目でコロを見て、フスンと鼻を鳴らしました。

 

 幼稚園に近づき、子どもたちの声に比例してコロのご機嫌が急浮上!

「わんわんだ!」

「うわぁ!おっきい!」

「まっくろのわんわん!」

 子どもたちが一斉に歓声を上げました。

 人間の子どもも魔族の子どもも関係ない。ただただ、いつも遊んでるお友達に大きな三つ首のわんわんが加わっただけ。

「わんわんと遊ぶ!!」

「なでなでする!」

「わんわんすごーい」

 子どもたちのはしゃぐ姿を幼稚園の先生を務める人間と魔族の大人がニコニコと見守っています。

 すると、とある子どもが大きな声を上げました。

「ちがうよ!あたまが3つあるからわんわんわんだよ!」

 ピコーン!

「ほんとだ!」

「わんわんわんだ!」

「わんわんわん!」

 目をキラキラさせた子どもたちが早く遊びたいとばかりに先生たちに目を向けた。

「はい、みんなー!静かに。今日は魔王様が、ケルベロスくんと遊んでいいよって言ってくれました。今度魔王様が来たら、皆、ちゃんとお礼言えるかな?」

 先生の言葉に、良い子のみんなは元気いっぱいに、「はーい!」とお手々を精一杯頭上に伸ばします。

「みんな偉いね!じゃあ紹介します!真ん中が一番お兄ちゃんのポチ、右が遊ぶの大好きなコロ、左がお姉さんなタマだよ、みんな、仲良くできるかなー?」

「できるよー!」

「わんわんわんと仲良くするー!」

「わんわんわん、何して遊ぶ?」

 とっても良い子なお返事で、先生たちも笑顔。人間とか魔族とか関係ありません。かわいいはなににも勝る正義なのです。

「でもタマはにゃーのおなまえだよ?」

 ふと、そんな声が聞こえました。ポチ、コロ、ときて、タマ、が子どもたちには変に聞こえたみたい。大人も変だと思ってるから大丈夫です。苦情は魔王様へどうぞ。

「にゃーにゃーにゃー?」

「わんわんにゃー?」

「わん、わん、にゃーだ!」

 わん、でポチを指差し、わん、でコロを指差し、ニャーでタマを指さします。

 ポチとコロは「わんっ!」と吠えて応えますが、タマは、うーん、と困り顔。わんわんの仲間に入りたいけど、自分から行くのもイヤ。乙女心です。たぶん違うけど。

「でもタマもわんわんだよねぇ」

「じゃあやっぱりわんわんわんだ!」

 子どもたちが一周回って戻ってくると、タマはようやく少しだけしっぽを振りました。とはいえ、1本しかない尻尾はすでにコロによってブンブン振り回されているので、その小さな揺れはポチとタマしか気づきません。

「じゃあみんな、お約束!ポチ、コロ、タマが嫌がることはしません」

「しません!」

「触るときは、触っていーい?って聞きます」

「聞きます!」

「お口や爪には気をつけます!」

「気をつけます!」

 声をそろえて復唱する子どもたち。

「みんなで仲良く遊びます!」

「みんなで仲良く遊びます!」

「はい、よくできました!みんな、怪我しないように。もし怪我したらすぐに先生に教えてね」

「はーい!」

 元気なお返事の余韻が消える前にはもうすでに子どもたちはケルベロスの足にしがみつきます。

「ひっぱっちゃダメだよ、いたいよ!」

「ポチ、いたい?ごめんね」

「コロ、あーそーぼ!」

「タマ、お昼寝する?僕ね、お昼寝したーい!」

 ケルベロスはとっても大変。だって、頭は3つ、名前も3つだけど、身体と尻尾は一つしかないのです。

 本当は尻尾をブンブン振りたいけど、子どもたちに当たったら大変。

 だから、ポチはコロから体の主導権を取り上げてその場に座ります。ポチもコロもタマも自分が可愛いことを分かっているので、座っているだけでみんな喜ぶと思っているからです。

 子どもたちはキラキラした顔で一生懸命よじ登ったりお腹あたりに体ごともふっと突っ込んできたりとやりたい放題ですが、強くて可愛いケルベロスは痛くもないし嫌でもありません。

 なんなら、時々先生たちがおやつをくれるのでお腹も大満足です。

 ちょっと前に魔王様から、「最近、ポチャッとしてきたな……」とか言われましたが、一体何のことでしょう。

 ケルベロスは魔王城に近い幼稚園や保育園に遊びに行っているだけです。おやつ美味しい。

 そしてお昼になればご飯ももらえます。大きなお肉を3つに分けて、子どもたちと一緒にいただきます。口は3つあるけどお腹は一つしかありません。

 そして子どもたちと一緒にお昼寝して、その後はまたみんなで遊びます。

 お昼を食べてお昼寝もして、元気いっぱいの子どもたちと遊ぶのはとても楽しいのです。

 帰る時間まで目一杯遊んで、魔王城のマスコットとしてのお仕事を終えます。お仕事が終われば魔王城に帰って晩御飯。

 最近は魔王様がいなくてちょっと寂しいけど、強くていい子なケルベロスは我慢できるのです。

 こうして今日も、ポチ、コロ、タマは魔王城PRマスコットとして広告塔のお仕事を完遂するのでした。




お読みいただき、ありがとうございます。
当作は、毎週水曜日21時と土曜日12時の週2回更新しています。
次回更新は水曜日の21時となっております。
またよろしくお願いします。
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