「ウルトラ、マン…?」
「あの青い巨人の名前、ウルトラマンZ。別の呼び名は…光の巨人とか呼ばれることもある」
ウルトラマンという単語に困惑する4名へ、超雑に説明を述べる。
「いや、それだけ言われてもわからないっすよ」
「それはそう…俺にも未知数なところはあるし少しは勘弁してくれ。怪獣が出た際、毎回これ…ゼットライザーを使って、主に三つの姿に変身して戦ってるんだ」
「えっ…あれって、あなた自身なんですか?変身とか、そういう?」
「そうそう、あれになって戦ってるから、大きいダメージとか受けるとこうなるわけ…いてて…」
痣ができている腕を見せつけながら答えると、その腕を見て青髪の少年と栗色の少女は顔を顰め、包帯を巻いた男はほうと感心したような素振りを見せる。
「俺もこっ酷くやられたけど、そっちも足グサッといかれてたよな…あれはどうなんだよ」
「そう、そうなんだよ…直そうにもどうやって直したらいいかわかんなくてよ」
「えっ…知らないの?」
「仕方ねぇだろ…!これは…人からもらったんだよ。だから詳しいことはわかんねぇんだ」
「へー…誰から?」
「はっ?え、いや……今はそんなことどうでもいいだろ!それより、あの紫色のやつについて、お前なんか知んねぇのか?」
「あいつか?…全く知らない。見たことがない…ウルトラマンの様に見えるかと思えば、機械的な見た目…なんなんだろうな」
「そうか…っておぉコラァ!暦ィ、テメどこ行ってたんだよ!!」
遠くから歩いて現れたのは、上下ジャージ姿で長めの髪をした男。確か、コッヴとの戦いの際にメダルを持っていた人物のはず
「あの人も仲間なんです」
「そうなんだ……つか、腹減ったな…痛ててて…」
傷が痛む中、目も覚めたため食事を取ろうと立ち上がった。寝て凝り固まった身体を解そうとするも、身体中が痛くてそうもいかない。
「…そうだ、一番言わなきゃいけないことを忘れてた。今日の怪獣の話なんだけ「お前達か」…あ?」
痛みの刺激かはわからないが、自分にとって一番大切なことを思い出し、話を切り出そうとしたところに鋭い声が響く。その方へ振り向くと、逆光で顔はよく見えないがスーツ姿の二人組が立っていた。
「無様な戦いをしていたのは…」
「…無様だと?」
「ナイトくん…いきなりやめてくださいよ、失礼じゃないですか…」
「いきなり出てきてなんだ、あんたら」
奇抜な髪型の男に、開口一番『無様』と言い放たれ少し頭にきた。口調を強くし、正体を問いかける
「私たちは、グリッドナイト同盟です!」
「「「「「「……」」」」」」
「い、いや…ま、名前はなんでもいいんですけど」
思ったよりふざけた名前が返ってきて、思わず言葉を失ってしまった。疑いが余計に深まり身構える
「で、なんなんだよ」
「私たちは、あらゆる怪獣の脅威から、世界を守っているものです!」
「怪獣から…世界を?」
突然現れた二人組、グリッドナイト同盟。ナイト、と呼ばれた男からもその隣の女から、対話を通して不思議な気配を感じ取った。
「そっちの銀髪……お前、あの紫色の巨人だな」
「ほう…なぜわかる?」
「気配だよ気配。…お前も自分が変身するタイプか」
「お前も、ということは…お前もそうと言うことか?」
「さぁ、どうだろうな」
言葉を発するうちにだんだんヒートアップしていき、半ば口論のような言い返しになってくる。ナイトという男からの視線がより一層鋭くなる
「ま、まぁまぁナイトくんも落ち着いて……コホン、私たちも怪獣を倒しにきたわけなので、みなさんに協力をしていただきたくですね…」
…協力を仰ぎにきた態度には些か不正解ではなかろうか。頭を冷やす暇もなく、続けて言葉を発する
「はぁ…?喧嘩売りにきたの?協力仰ぎにきたの?どっちかはっきりさせろよ」
「えぇえぇ、もう仰る通りですいません……。でも、あの怪獣を倒すためには」
「断る!」
「…ぇっ、ガウマさん…!」
協力を断るガウマを横目に、たとえ協力したとしてどうやって倒すか、どうやって中からムジナを救出できるか考えを巡らせる。それにともなって、自然と頭が冷える。
「(一番有効なのはおそらく直接ムジナさんを引き剥がす方法だ。唯一思い当たる方法が、傷ついたダイナゼノン、今のゼット、あの巨人とで合体攻撃を仕掛け、そのダメージで弱ったところで……だが、そんな隙がない。ベリアルメダルとジードメダルの力強い共鳴によって大幅パワーアップしたペダニウムゼットンに、一体どうやって………ジードメダルとベリアルメダルをあいつから引き剥がせば弱体化……いや、それもどのみち隙をつかなきゃいけないか…。クソッタレ…!確実に安全に助け出す方法はメダルを引き剥がして弱体化させてから助ける方法なんだ……もし、メダルの力が助ける際に悪影響を及ぼしたりしたらたまったもんじゃない……いっそメダルごと引き剥がすか…?)…もうそれしかないか…!」
一か八かの賭けを思いつき、現実へ向き直る。自身が最善策を考えている間に交渉は決裂しかけ、二人組は去ろうとしていた。そこへ、出せる限りの大声で引き留める。
「ちょっと待ってくれ!」
……
………
「わかった。協力しよう」
「なっ…お前、信用できんのかよこんなやつら!」
こちらが放った言葉に納得いかなかったのか、詰め寄ってくる包帯の男。ペダニウムゼットンを倒すためには彼の協力も取らなければいけないため、納得させられる言葉を考える。
「現状俺達で勝てなかったんだ、今頼れるのはこいつらしかいない。勝てるかどうか、信用できるかどうかは別として、希望的観測はできるはずだ。…それともあんたには、手負いのダイナゼノンと手負いの俺とだけで、あいつを倒せる策でもあるのか?」
「……ねぇよ」
「じゃあ今は協力するしかないだろう…。信用できない怪しい言ってる場合じゃないんだ、使える手は全て使う…じゃないとあいつは止められない、被害は絶大なものになる。だから納得してくれ」
真っ直ぐ男の目を見つめ、納得させるための言葉を絞り出す。そして、あの中に人がいることは伏せることにした。この場で伝え、3体で協力したらやりやすくなる…とは考えたが、もし伝えてそのまま倒す方針にでもなったら困ると結論付けたからだ。敵対している…ましてや怪獣を操り破壊活動をしている人間をあの強敵からわざわざ命を張ってまで助けることにいい気持ちを抱くのかと悩んだ末…言わないと決めた。メダルが中にあってそれを引き剥がせば倒せる可能性があるかもしれないと知っているのは自分しかいない。引き剥がす実行役はおのずと自分になるはず
「……わかったよ!協力すればいいんだろ!」
少しの沈黙の後、頭を掻いて不貞腐れるように了承してくれた。なんとかして説得できたことに安堵する。大きい課題を一つ残して
「ありがとう、助かる。(…待って、メダル云々の説明どうしたらいいこれ)」
…
……
「まず作戦説明の前に……あの怪獣について話さなきゃいけないな。あいつの規格外の強さ、原因はあいつの体内にあるメダルが原因なんだ」
「メダル…?そんなもんで怪獣があそこまで強力になるのかよ?」
「ああ。こういうのだよ…そこの男の人は見たことあるはず」
「…というか、どうしてあの怪獣の中にとかそんなことわかるんですか?」
「そこの紫の奴が出てくる前に最後の攻撃をした時、見えたんだよ頭の中で。なんでかな」
メダルホルダーから一枚、その男に見覚えがあるであろう初代ウルトラマンのメダルを取り出す
「それ、俺が持ってたあの…!」
「そう、あの時は本当に助かった…」
案の定、メダルを指さしてリアクションする男。それに釣られ、周りのメンツもメダルを見つめる。皆、『こんなもので…?』と言った怪訝な顔をしている
「毎回これを使ってあんなデカい姿に変身してるんだ、そんなもんデカい力を秘めてるのは決まってる。こういうのが2枚、あの怪獣の中にあるんだ……厄介な事に、因縁深い関係のメダル同士が」
「因縁…?そんなものがどうメダルに関係するんですか?」
「そう思うだろ?そうなんだよ…メダル同士で共鳴しあって、あいつは理屈を超えるほどのパワーを生み出している……。さて、本題だ。この説明をしたから察しがついてるとは思うが……ダイナゼノン、グリッドナイト、そして俺で波状攻撃を仕掛け、ダメージを蓄積させたところであいつの体からメダルを引き剥がす」
「…簡単に言っているが、そんなことができるのか?」
「可能性の話にはなってしまうんだがな、このゼットライザー…これは武器としても扱えるんだ。こいつを使って中から取り出す……できるかは置いておいてだけれども。必殺技用のメダルがあれば可能性は高まるんだが、残念なことに今はそれがない…」
もし、ここに『ゾフィー』『ジャック』『ウルトラの父』のメダルがあれば、『竜巻閃光斬』でペダニウムゼットンの体内に突っ込める可能性が上がったが……ないものを欲しがっても仕方がない。ここはどうにかして…
「…あっ!思い出しました!この世界にきた時、いっぱい拾ってたメダル…これだったんですね!」
スーツ姿でメガネをかけた女性が手を叩くと、キャリーケースの中を漁り始める。そしてその手に握られていたのは、なんと6枚ものメダル。
「ここに初めて来た時、近くで拾ったんです。お役に立つといいんですけど…」
「え"っ、6枚も!?俺知らなかったぞ……って、これだこれ!これがあればできるかもしれない!ナイス!!」
「そうですか!それはよかっ、わわっ」
興奮のあまり握手プラス上下にブンブンと振ってしまった。上記の3枚に加え、『コスモス』『ネクサス』『メビウス』のメダルもあった。これで『ライトニングジェネレード』も使うことができる!
「これがあればなんとかいけるかもしれない!…でも、ダイナゼノンの方はどうする?修理方法もわからないんじゃどうしようも…」
「それについてはご心配なく!みなさん、今あのロボットになることはできますか?」
「なるだけなら多分、いけると思うがよ……やるぞお前ら」
海の方へ、ダイナゼノンになるための各ユニットを4体呼び出し合体する。それを見たスーツ姿の女性は、バトンの様な機械を取り出して謎の物質を込める。
「それでは…!」
そのバトンをダイナゼノンに向けて振ると、バトンから光の粒子が破損した箇所に飛んでいきみるみる元通りになっていく。原理は全くわからず、ただ驚くばかりだった
「もう戻っていただいて大丈夫でーす!」
…
……
包帯の男がダイナゼノンを修理してくれた感謝で女性の肩を掴み、ナイトと呼ばれた男に叱責をくらったのを見た後。
「実行役は俺がやらせてもらう。メダルを引き剥がしたら即、フルパワーで技を放ってもらいたい」
「そう簡単にうまくいきますかね…?」
「上手くいかせるしかないんだ、あいつも怪獣…どんな手を使ってくるかはまだ未知なところがある。その時その時でやってくしかない…。無責任で悪いが、頼んだ」
「おう!任せとけ!えっと……そういえば名前聞いてなかったな」
「確かに…私たちも、名乗ってませんね」
「そういえば、そうだった……こほん。まずは俺から……隼西ハルキ、下の名前で呼んでくれていい」
「次は私たちですね…彼はナイトくんです、グリッドナイト。私は、二代目と申します」
「二代目って……なんの…?」
女性…『二代目』は隣の『ナイト』を指しながらそう答えた。特に、二代目という名前のインパクトに困惑する。一体なんの二代目なのか、逆に初代は誰なのか…
(グリッド…?どっかで聞いたことあるような…どこだっけな…)
「俺はガウマ、こっちは…」
「麻中蓬です」「南夢芽です」
「山中暦です」「飛鳥川ちせっす」
ダイナゼノンのメンツも次々に自己紹介をする。学生にニート、中学生…なかなかに濃いメンツである。
「よし、それじゃあ怪獣が出た時はよろしく頼む」
この言葉で、各々が解散して次の戦いへ備える。ダイナゼノン組が全員別れ、この場にはグリッドナイト同盟と自身だけが残された。
「お二人さんも、早めに休んでおきなよ」
「傷だらけのお前がそれを言うか」
「…確かに、それもそうだな。それじゃ…」
相変わらず棘のある態度のナイトからの指摘を受け、こちらも休息をとることにした。
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『…きろ、起きてくれハルキ』
「ん……ここは…?」
少し目を瞑っただけで眠りへとついてしまったらしく、呼び起こされる形で目を覚ます。その声の主は、先ほどまでコミュニケーションが取れなかったゼット。いつの間にかゼットと二人だけの真っ白な空間に横たわっていたらしい。
「ゼットさん、ここは…」
『安心してくれ、ここは特殊な空間だからここで起きていてもハルキの体には影響しない』
言葉の節々から感じる、圧というか堅さ。いつものゼットとは少し違う様子で不思議に思っていると、ゼットから真面目な目線を合わせられる。
『ハルキに言わなければいけないことがあるんだ。その、不可抗力ではあるんだが……ハルキの過去を、見てしまった』
衝撃の一言だった。別に話したわけでもないし、ウルトラマンに記憶を読み取る能力なんてなかったはずなのになぜ…?驚かずにはいられなかった
「…え、いつ!?」
『それがな…あの戦いでエネルギーを使い果たしただろ?その時、ガッチリ繋がっていた俺たちが分離するはずが、ハルキの方に俺が持ってかれてしまったんだ。恐らく、その時にハルキの深層心理に触れたんだと思う』
「…つまり、正式な解除方法じゃなかったから正しく別れられず、俺の方に深く入り込んで入り込んでしまったと…」
これは盲点だった。まさか強制分離のシステムがそんなことになるケースがあるとは…。
「……どうでした?俺の過去」
『俺から見ても、あまりいいものではないな…。前に悩んでいたのも、あの過去を思い出したのが原因だってのも知った。そして極め付けには……ハルキは一度死んでいること、その世界に俺たちウルトラマンが創作物として存在していたことだ。あれはウルトラ驚いたぜ…ウルトラマンが創作物として存在する世界って言うのは噂で聞いたことはあるが、まさか、死んで別の世界に生き返るなんて普通考えられないからな』
「……」
もう全部バレてしまっているらしい、見事に。あまり他人に見せたくないものだったがもう遅く思わず頭を抱える。
『もうちょっと早く言ってくれよなぁ!そうすれば相談に乗るし…てか俺が主役のやつ、どんな感じだった!?人気なのか!?』
「気になるとこそこすか!?」
どうやらすべて杞憂になったらしい。ゼットは一ミリも過去について悪感情を抱いてはいないどころか、創作物としての自分がどんな感じなのかを聞く始末。ゼットらしいといえばらしい
「…大人気ですよ、子供大人問わず」
『うおおおマジか!!ウルトラ嬉しいぜ!!そうかそうか、人気なのか!!いい気分でございますねぇ!』
ガッツポーズを決めてウキウキのゼットを見ていると今まで悩んでいたのがバカらしく思えてきた。
「俺、昔が大っ嫌いで。ずっと一人で居て……誰にも見せたくないし2度と思い出したくもなかった」
『……』
「でもこっちに来て、ゼットさんと会ったりある人と悩みを共有したり……奇しくも、昔と向き合うことが増えて。そしたら吹っ切れるとまでは行かないけど、自分を見直すことができて。俺、自分じゃほんとになにもできなくて……弱くて……本当に、ありがとうございます」
いつの間にか、かしこまって頭を下げていた。体が勝手に動いていた
『頭を上げてくれ、ハルキ』
『お前の悩みはわかった。あれだけ言われれば、自分を見失うのも自分について囚われるのもわかる。でも、囚われても見失ってもお前は逃げなかった。あれだけの環境に取り巻かれようと、投げ出さず悩み続けた。それは強いことの証だ』
「ゼットさん…」
『ハルキは決して弱くなんかない。あの時みたいに子供を助けるのだって、怪獣と闘うのだって、普通はできないようなことなんだ。もっと自信を持ってくれよ』
ゼットの手が肩に置かれる。とても暖かい、銀色に輝く大きな手。
「…あれ、なんで……」
それだけで、自分が認められた気がして…涙が大量に溢れてくる
『お前は弱くなんかないし一人じゃない。たとえ一人じゃダメなことも、二人で一緒になら乗り越えられる、困ったら俺を遠慮なく頼ってくれ!悩んでることだって、ハルキが満足するまでとことん付き合うぜ!』
「ありがっ、とうっ…ございっ、ます…っ」
ウルトラマンは強さだけではない、とは言ったがまさかここまで実感するとは思わなかった。いっこうに涙が止まらずポタポタとこぼれ落ちていく。大袈裟かもしれないが、ここまで生きてきてこんなにハッキリと寄り添われたのは初めてかもしれない。今までの環境が最低最悪だったせいかこんな優しさを向けられた記憶がなかった。そんな最悪な過去も、今なら黒歴史として葬らず認められる…気がする。
『……ここまで泣くとは思わなかったなぁ』
救われた側の人間が、救う側に回る。いいじゃないですか