SSSS.DYNAZENON『Z』   作:虎秋侑斗

5 / 7
主人公の過去+あっさり決着+遭遇です。そろそろ原作からの乖離が激しくなってくると思います。


付き纏う劣情って、なに?

「空っぽなんだよ、お前」

 

「誰かに付いて回ることしかできないやつが」

 

 

「何かしたいこととか、ないの?」

 

「進路決まってないのか?」

 

……

 

「この無能が!」

 

「お前は何がしたいんだよ」

 

………うるさい

 

好き勝手言いやがって。俺だって頑張ってんだよ…なのに、どうして。何がいけない?何をしたらいい?何をすればいい?なになら認める?

 

そんなにやりたいことがなくて悪いか?やらなきゃいけないことすらやりたいとは思えないのに。

 

 

 

 

 

そうだ、怪獣を倒さなきゃ。俺がしなきゃ、認められなきゃ。存在意義が欲しい。

 

俺は、ウルトラマンなんだから

 

━━━━━━━━

 

『…ルキ…ハルキ!!』

 

(ッ…!)

 

『大丈夫か!?』

 

暗闇に飲み込まれそうになっていたところを、ゼットの呼びかけで引き戻された。

 

嫌な記憶を見せられた。

死ぬ前の自身へ投げかけられた数々の言葉の刃。どれだけ忘れようとも、記憶の根底には深く突き刺さっている。

 

 

『ここはどうやらあいつの体内みたいだ。どこから抜け出せるか…』

 

(…上ですゼットさん。上に行けば抜け出せますよ)

 

『…ハルキ。前から思っていたがお前は…』

 

(出てからにしましょうよ。ここじゃ気分が悪い)

 

 

ここにいたら自分がどうなってしまうかわからない。気が狂いそうになるのを必死で抑えている

 

(ここはベータスマッシュのゼスティウムアッパーで一気に行きましょう)

 

 

「真っ赤に燃える、勇気の力…」

 

 

……

 

 

『お、おい…!あいつ飲み込まれちまったぞ!』

 

『じゃあ早く倒した方が…』

 

『攻撃したら中の人ごと行きません!?大丈夫すかね!?』

 

 

『…!待って、何か聞こえる』

 

 

 

 

 

『ゼスティウムアッパァァー!!!』

 

 

ガンQの身体を粉砕しながら飛び出してきたのは、赤い筋肉隆々のゼットベータスマッシュ。ガンQは叫ぶ間もなく粉々に吹き飛んだ。

 

 

『す、すごいね…』

 

ダイナレックスのなかにいる一行がその光景を見守る中、ゼットはダイナレックスへグッドを送った後空へ飛び立った。

 

 

『『『『『…N?』』』』』

 

 

━━━━━━━━

 

 

やるべきことはたくさんあるのに…やりたいことなんてない、今も見つからない。この戦いだって今や、出たから倒す、なんて風にパターン化している。

 

俺はそもそも、ウルトラマンになるような人間だったのだろうか?というか

 

 

俺って、なんなんだ

 

 

━━━━━━━━

 

夜になり、ただひたすらに、人気のない外を歩いている。ガンQとの戦いから調子がよくない。ずっと頭の中がモヤモヤしていて、自問自答を繰り返している。

 

死ぬ前から無個性で平凡だった。死んで、ウルトラマンになった。

ただ、それだけ。とってつけられた物を誇りに思うなんて、できない。それに俺は知っているから、ウルトラマンの物語を。本来なら悩んだりするところ、大丈夫だからとか知ってるからでなにも思ってこなかった。極め付けには、自分で決めたこと、あったか?ゼットに言われて、調子に乗って、そこから深く考えず戦ったりなんだり。俺は何がしたいんだろう

 

 

 

 

『…ハルキ』

 

「…なんです?ゼットさん」

 

『悩みがあるなら…話してみてくれないか?ほら、こういうのは吐き出した方がスッキリするでございますよ』

 

 

顔を見かねたのか、身を案じ寄り添うゼット。

 

「…ゼットさんはどう思う?俺を」

 

『え?そりゃ頼りにしてるよ』

 

 

「こんな俺でも?空っぽで、自分の意思もなく、ただ惰性で戦ってる俺を?自分のために戦ってるような俺を?」

 

『ハ、ハルキ…落ち着け!一旦落ち着くんだ!』

 

 

 

「これでも落ち着いてるんだ!!!!」

 

 

人気がないとはいえ、街中で出すにはよくない程声を荒げる。ハッとしてすぐさま謝罪を入れる。

 

 

「…悪い」

 

『…いや、聞き出そうとした俺も悪かった。今は、休んでくれ』

 

 

 

そこでゼットの気配は消えた。代わりに、一人の気配が現れた。

 

 

「…あなた、そんな大声出してどうしたの?」

 

声の主は、声の高さやシルエットからして女。それにしてもどこかでこの声…?

 

 

「すいません…ちょっと悩み抱えてて。すぐいなくなりますから、ご迷惑おかけしてほんとすいません」

 

 

「待って」

 

 

注意されると思い、そそくさとその場を離れようとした所止められる。そしてツカツカとこちらに歩みを進めてくる。暗闇に目も慣れ、ちょうど見える距離まで近づかれると、その顔が現わになる。この暗闇でもはっきり見える青く輝く瞳、真っ白な服装。近くで見ると、顔も整っておりスタイルもよいことが伺える。あの怪獣を操っていた一人だった。

 

 

「その腰のやつ……もしかして、あの店員さん?腰に変なのつけてたから記憶に残ってたの。ほら、覚えてない?昼間お店に行った、私と同じような服装した三人組」

 

「あ、あぁ…その節はどうも…って、腰…?!」

 

 

腰のメダルホルダーを指摘され、一気に身体中に緊張が走る。確かこれは地球人には見えない素材で作られている話のはず。なのにどうして…!

 

 

「…これが、見えるんですか?」

 

「?うん、ハッキリ見えるけど……やっぱりその柄、見覚えある。あの青い巨人の胸のマークに」

 

 

完全に相手は見えているのに加え、この柄だけでゼットと結びつけようとしている。察しがいいらしい

 

「最近ニュースとかにもなってるし、知ってるよね?青い巨人。それとその腰の物、何か関係あったりする?」

 

 

「…どうしてそんなこと聞くんですか?」

 

 

「…興味、かな。青い巨人、なんて初めて見るし、似てるものがあったら気になる」

 

 

…?先ほどから、敵意や悪意を感じない。自分たちが怪獣を操っているのを倒す者、それは敵なはず。もし正体が俺だと知ったとして、先に倒す!…とかそういうのになったりしないのか?

 

 

「…わかりました、俺からの答えを言います。…あなた方は、どうして怪獣を操るんですか?毎回デカくなって怪獣と戦うの疲れるんですよ一応。体動かすんで」

 

 

 

「!」

 

いざ返答すれば、少し目を大きく開き驚いたような表情になる。無表情だと思ったら意外と感情が出る

 

 

「…嘘、あれあなたが変身してたの?ロボットとかじゃないんだ、そんなのあるんだ」

 

「…はい?」

 

 

随分と拍子抜けだった。やっぱり…とか、ここで倒すーとか…ほんとに興味本位で、何も知らず、ほんとにただ腰のホルダーの柄が似てるってだけで?……ますます相手の素性がわからない。

 

 

「え、あれがなにとか知って…?」「ううん」

「このホルダーとあれの関係は知って…?」「ううん」

 

 

「…はぁ、イマイチよくわからない…」

 

さすがに頭を抱えた。敵であるはずの俺を、たかだか興味本位で当てるとか、俺もどうして敵であるはずの相手に喋ったのか。さすがに精神状態がよくないせいか。

 

 

「それで、どうするんですか?今戦います?」

 

「ううん、やめとく。今怪獣いないし、そんな気分じゃない」

 

 

「…聞いておきますけど、あなたの目的は?」

 

「…さぁ、私にもわかんない。ただの興味」

 

…つくづくわからない。敵なのに、どうして相手も俺も、こう真面目に話を聞くのか。

 

「…ハァァァ〜ッ」

 

「なに、ため息なんかついて」

 

「あなたのせいなんですけど…?敵なのにこうして話してるし、興味だけでここまでするし、何がしたいんですか?」

 

 

 

「…わかんない。なにがしたいとか、自分のことも」

 

「……」

 

言葉から感じ取れる感情、それには人一倍敏感だったからわかる。

 

 

俺と同じタイプ。というより今の俺とほぼ同じじゃないのかと思う、

 

「…それ、わかりますよ。自分のしたいこととか、そもそも自分のことも、わからないの…。一応聞いておきますけど、名前は?」

 

「…ムジナ。あなたは?」

 

「ムジナさんね……しっかり覚えときますよ。俺は…隼西ハルキ、ハルキで結構です」

 

 

「ハルキ君ね……。ん。時間も時間だし、それじゃ」

 

「それじゃ。また会ったら、似た者同士仲良くできますかね?敵だけど」

 

「その時の状況次第、じゃない?」

 

「それもそうですね」

 

 

 

暗闇に消えていくムジナの背を見つめる。死ぬ前と、ウルトラマンになった後。初めて、親近感と強い好奇心を覚えた。そして、この付き纏う劣情への意識が少し変わったのを感じた。

━━━━━━━━

 

 

……

 

自身たちの操る怪獣達を倒す、青い巨人。本来敵で、戦う存在なのに、その正体は自身と似たような気配を漂わせる者だった。いつもの四人に囲まれて、感じることのなかった特別な仲間意識…自分を重なる見方をしてしまった。




ガンQ登場、そして怪獣優生思想(今作のキーパーソン一人)との遭遇、闇の露呈回でした。そして次は、あの神秘の力が…?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。