日曜の昼間。結構な客で賑わう東京ビーチランドで、今現在監視員の仕事をしている。
「ハァ…」
どこもかしこもカップルカップルカップル。おめでたいもので…。
…あれから少しして、どうにか頭を冷やすことができた。冷静ではいるものの、それでも悩みは消え去りはしない。ずっと尾を引いて頭の片隅に残り続けている。
「俺も忘れられたらいいのに……あっそこ走らないでくださーい」
どうにか解決できないものだろうか。
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ここは、働いた後もしくは休憩中に施設を利用してもいいらしい。悩みを少しでも紛らわせることができるかと、それ目当てで来たと言っても過言ではない。することがあれば、それで一時的に忘れられる。解決には至らない、現実逃避だが。そして早速、こうして温泉に浸かっている。丁度自分一人しかいない。
「…ゼットさん、聞いてるか?」
『…いるでございますよ』
「また言葉遣い変だよ………前は怒鳴ったりしてすいませんでした。あのときはちょっとカッとなって」
『いやぁ全然、気にしてないから心配するな!…それで、話してくれるのか?その悩みってやつを』
「ええ、こういうのは吐き出した方がスッキリするんじゃございませんでしたっけ?ゼットさん」
……
………
「…俺は、自分自身がわからないんです。やりたいこともなく、自分の意思もない。ウルトラマンであるのだって、それはゼットさんがいるから俺じゃなくて、それで、空っぽで…俺は、俺は…」
『なるほどなぁ…。俺から言えるのは少しぐらいしかないけど、少なくとも俺から見て、ハルキはからっぽなんかじゃないぞ。自分の意思がないっていうなら、どうして俺と一体化する前の時、子供を助けたりなんかしたんだ?』
「そ、れは…」
確かに、あのときはどうして子供を助けたりしたのだろうか
『自分っていうのは、必ずしもハッキリしてなきゃいけない物でもないし、それを焦って見つけようとしたり、無理やり作ろうとするものじゃない。そういうふうに、自分でもわからないものだったりする。』
客の笑い声や叫び声、水の音まで聞こえなくなる。
『流されるのもいいんだ。そこから見つければいいんだ。やりたいことだってそうだぞ、それと一緒に見つければいい。俺も手伝うよ、一人でダメなら二人、それでもダメなら三人って。だから、焦って逆に自身を傷つけたり、深く絶望したりしないでほしい。』
俺は、自分が変わらないとだめだと、他人が介入して仕舞えばそれはもうダメなんだと思っていた。でも、それは違う。
一人で見つけようとするから何も見つからないんだ。一人では限界なことも、二人なら超えられる。そういうやつなのか
「…ありがとう、ゼットさん。俺、立ち直れた気がするよ」
『おっ、本当か!?ウルトラ安心だ!俺もいるから、協力して一緒に探していこうぜ!』
そうだ。俺はひとりじゃない、ゼットさんがいる。ここから自分を、やりたいことを探していくんだ。ともに探す、仲間として。
…
……
「…し、…しもし、もしもーし」
「…ん、は、はい?」
気持ちが整ったことで、ようやく周りの環境音が耳に入ってくる。そのときちょうど、肩をトントンと叩かれ呼びかけられていた。
「あのー。お兄さんさっきから大丈夫っすか?遠い目してブツブツ独り言言ってて……」
「…あ」
失念していた。俺の脳内で会話しているため、ゼットさんはここにいるわけではない、側から見たら一人でブツブツ話しているやつになっていた。
「あ、あぁ大丈夫です、考えてることが口から出ちゃうタイプなんで…お気になさらず…はいはい……あ」
ふと肩を叩いていた人物の方を見ると、片腕にアームカバーをつけ、頭髪が赤に染まった派手な…小柄な女児?女子?
「…君、一人でここきたの?」
「え?いや、親戚とか友達と来ましたけど」
「そっか。ならはぐれたりした?どこらへんに知り合いがいるとかわかる?」
「な、なんすか急に…」
「え?迷子じゃないの?」
「なっ…失礼な!私は迷子じゃないです!ほら!あれが私の親戚です!!」
ビシッと指差す先には、いつぞやプールサイドを走っていた男を介抱する、髪が長めの男性の姿。
「センパーイ!!早くこっちきてくださいよ!迷子だと思われちゃったじゃないっすか!」
「仕方ないじゃん…。ガウマさんデカいんだし」
『ハルキ…彼ら、あのダイナゼノンに乗っていた人たちじゃないか?』
「え?うーん………あ、(ガンQの時の)」
ガンQを召喚したあの怪獣に潰されかけていた、ダイナゼノンの…なんかちっちゃいバージョンに乗っていた子…?声色も少し似ている気がするし、ガウマと呼ばれる男を介抱している方の男は、コッヴとの戦いの時にメダルを持っていた人物だった。
「ぁん?なんすかまた独り言ですか?」
「なんでもないです。…保護者の方ですか?」
「え?えー…まぁそんな感じです」
「すいません、彼女のことを迷子と勘違いしてしまって…」
「ちせが…迷子…ッw」
「笑ってんじゃないっすよセンパイ!!」
…
……
「休憩中とはいえ働いてるわけだし、見回りでもしとくか…」
ビーチランド内をトコトコと見回しながら歩く。…それにしてもカップルやら家族が多い。6月なのに気が早いことで…
「ハルキ君」
「えっ?」
ちょんちょん、と背中を触られる。背後を振り向くと、いつぞやの夜に出会った怪獣を操る連中の一人、
「ムジナさん…でしたっけ、こんにちは」
ムジナと出会った。破壊や侵略目的かと思えば、こういう施設を楽しんだりしていて、相変わらず目的がわからない
「君は誰かと来てるの?」
「いや、自分今ここで働いてるんで」
「ふーん…どこかおすすめの場所とかある?」
「え?いや自分……まぁいいや、あそこのウォータースライダーとか楽しそうですよ、あっちの流れるプールとか」
「そうなの?じゃあいこ」
…
……?
「…え?え?ム、ムジナさんこそ誰かと来てないんですか?ほら、あのいつもいる三人の…」
「あいつらはああいうの興味ないし……一人でするのもなんだから。ダメ?」
「うっ…」
怪獣を操って破壊行為をしている危険人物のはず…なのに、すごく純粋…というか子供っぽい?自由奔放?という感じ。毎度の如く調子が狂う。
「わ、わかりました……行きましょうか」
「じゃああそこのウォータースライダーから」
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「ははっ!楽しい!」
…やっぱり子供っぽい。これだけ晴れやかに笑えるのに、どうして怪獣を操って暴れさせたりするのか…1番行動理念が謎かもしれない
「次あれやろ!ね!」
「はいはい……」
前の夜に会った時は、自分と同じタイプだと思った。あの時の精神状態はおかしく、変なことを考えていた為勘違いだったのかもしれない。でももし、本当にあの時の自分と同じタイプ…同じ悩みを持っているのだとしたら、ゼットに教えられたように教えてあげたい。
「ムジナ、さん…」
「なに?どうかした?」
でも、今は楽しい時間なんだ。彼女にとっても、いつのまにか俺にとってもそうなっている。だから今は言わない。近々手遅れになる前に、いいタイミングで聞きたい。
「…そろそろお腹減りません?チュロスとかいろいろありますけど、食べます?」
「ん、いいね、食べる!」
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「ごめんね、あいつらに呼ばれちゃって…これからやること、できちゃったから」
怪獣を操る連中の一人、メガネの好青年に呼ばれてどこかへ行ったと思えば戻ってきて早々こうなった。やることというのには目処がついている
「怪獣、ですか」
「…うん。今の私はやらなきゃいけないから…」
晴れやかだった表情が一転して物悲しい表情へ一変する。その顔は、初めてあった時と酷似していて、少し前の仮説へ確信をもつ。
「あぁでも、温泉入りたいから終わったらすぐ戻ってくるし……あ、そのときはもういない?」
「怪獣倒して、すぐきますよ。俺はもう少し、ムジナさんと話してみたいです」
「……」
まただ。今度は目を開いて驚いたような表情をする。無表情に見えて意外と豊かな感情があるのか
「…ふふっ、なんか不思議」
「え?」
「これ、あげる。付き合ってもらったお礼と、帰ってきた後も付き合ってもらう約束」
なんか不思議、の真意を聞こうとしたところムジナから投げられるものに遮られる。受け取って確認してみると、それは三つのメダルだった
「これは…ウルトラメダル!…一体どうして?敵なのにこんなものを…」
三つ目のフォーム、ガンマフューチャーになるための平成三部作メダルをムジナから渡された。いつのまに持っていたのか。というより、どうして敵なのにこんなものを渡してくれるのだろう
「前にも言ったよ?私も自分がなにをしたいのかわからない、自分のことがわからないって…。でもこれだけは言っとく。私と同じ、一緒だと思ったから、それだけ」
「……また会った時に、聞かせてもらいますからね」
もらった三つのメダルを持って更衣室に戻る。見えないとはいえ流石にホルダーはしまってきた。おそらく取りに行っているころにはもう暴れ出しているかもしれない、でもいいタイミングだ。
「終わったらまたここでねー!」
これから戦うというのに、随分と呑気な感じで…。だが、完全なる敵という訳ではない証でもあるのかもしれない。もし俺と同じように、自身について囚われているのなら、俺が救われたように救いたい。
救うために、戦いたい。
正解は敵勢力から貰う、でした。拾う+もらうシチュはやったのでこういうのもありかなと。
早めに更新したいです