東方ニコレクション投稿作品集【マスターチュロス】 作:マスターチュロス
※この作品は、東方ニコレクション:2026年8月に投稿した小説です。
テーマは『秋』『まじない』『NewClassic』の三種類のうち、『秋』で投稿しています。
内容は、こいしちゃんのグルメレポートです。こいしちゃんが某グルメ漫画みたいに食べ歩きしたら……で妄想しました。
それでは。
人が行き交う里の中でも、妖怪たちは潜んでいる。身分を隠し、姿を偽り、恐ろしい爪と牙を隠して、人間たちに紛れ込んでいる。
その理由は多岐にわたるが、一番の理由は監視と牽制である。人間たちを監視し、そして他の妖怪が人里内で無闇に手を出さないように、強い妖怪たちが圧をかけることで人里の治安が守られている。
だがそんな人里の中で、白昼堂々、爪も歯も隠すことなく歩く妖怪がいた。
「お腹、空いたなぁ……」
我らがヒロイン、ハルトマンの妖怪少女、古明地こいし。
心を無くした彼女は、その無意識を操る程度の能力でぶらりゆらりと放浪し、誰にも認識されることなく、心の赴くままに歩き続けていた。だが、腹が減った。
人間を食べる妖怪もいるが、古明地こいしは元さとり妖怪。人間を食う必要はなく、里にある食事処で十分エネルギーを賄える。
「今日は秋の十五夜だから、月見うどんが食べたいなぁ……」
こいしは人里を歩き回り、うどん屋さんを探し始めた。前に姉とご飯を食べに行った時、うどんのメニューがあったはずだ。あの店に行こう。
そうしてこいしは、甘味処にたどり着いた。
「やっぱ秋といえば、お団子だよね〜〜」
こいしはそう言うと、店員に話しかける。
「すみませーん! お団子一つくださいな!」
しかし、店員は見向きもしなかった。
「もしもーし! 聞こえてますかー? お団子ー!」
こいしが真横から語りかけるも、店員は一切反応を見せない。
「あー、私、見えないんだった」
テヘッ! と、虚空に向かって舌を出すこいし。このままでは空腹に耐えきれず、餓死してしまう。そんな時だった。
団子屋の手前の席に座っていた一人の少年が、こちらを見ていた。
「キミ、私のこと見えてる?」
こいしは少年に急接近し、至近距離で瞳を見つめる。
少年は恥ずかしがりながらも、コクリと頷いた。
「やっぱり?」
こいしはチラと目線を下に向けると、三色団子が一本残っていた。
「ねぇねぇ、このお団子食べてもいーい?」
こいしに迫られ、少年は少し迷うも、お団子を差し出す。
「ひ……ひとくちだけ……」
「ありがとう!!」
そう言ってこいしは、一口で団子を全て食べきった。
「ほひほひひへへほいひい(モチモチしてておいしい)」
こいしはモグモグと団子の食感と甘味を堪能し、ゴクリと飲み干す。
「ありがとね! じゃ!」
こいしはそれだけ言い残すと、ササッと退散し、そして霞のごとく消えた。
「…………」
少年の手には、串が一本、残された。
「……っ!」
少年は血走った目で串を口に咥え、ジュポジュポとしゃぶり尽くした。
「『ある』のがいけない!! 『ある』のがいけない!!」
こうして今日も、幻想郷の平和が保たれるのであった。
完。
【あとがき】
こいしちゃんの食べ終わった団子の串をしゃぶり尽くしたい。