愚かなオロチ   作:毎日読書

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八岐大蛇ってもっと大物だと思うんですよ。原作のオロチは弱すぎた。

そこで、色々と拗らせた強敵オロチを、書きたいなぁ(願望)


人は嫌い

 私は、ただ“おでん様”の特別になりたかった。

 それだけが、私の願いだった。

 

 ***

 

 転生したのだろう、と気が付いたのは母が亡くなったときだ。

 

 私が生まれたときに、既に父は死に、母が一人で私を育てていた。女手一つで子供を育てることはただでさえ大変なはずなのに、私たちは“黒炭”の血を引くがゆえに、周囲から容赦なく差別された。

 

 暴言。暴力。侮蔑。

 幼い私にもわかるほど、世界は冷たかった。

 

 そんな生活に限界が来たのだろう。母は儚くなり、私は一人になった。

 

 もし前世の記憶がなければ、私はこれを当然と思えたのだろう。そうすれば、自分が不幸だと気が付くことはなかったのに。幸せな記憶があるからこそ、今の状況が異常だとわかってしまう。

 

 正直生きていくのはつらい。

 

 …でも、それでも、私は死にたくなかった。

 

 一度死を経験した。死にたくなかったのに、死んだ。

 だというのに、どうして死にたいと思える。私は死にたくない。死にたくないのだ。

 

 なのに、どうしてこの世界は、私に「死にたい」と思わせるのだろう。

 私は、生きたい。

 生きたいのだ。

 

 そのはずだ。

 

 ***

 

 この世界が『ワンピース』の世界であることは、わかっていた。ここが“ワノ国”であり、私が“黒炭オロチ”であるのだから。原作との違いは、私が女であることだが、まぁ些細なことだ。

 

 身寄りを失った私は、ワノ国を彷徨い、やがて自然豊かな森の傍で暮らすようになった。

黒炭であることを知られない遠い地へ行けば普通に暮らせると思ったが、幼い私に金を稼ぐ手段はなく、人と関わること自体が苦痛だった。

 

 だから、人里から離れた。

 誰も来ない森で、静かに生きることを選んだ。

 

 古びて傾いた、または倒れた墓石に囲まれた墓地の中心の、崩れかけの小さなお堂が私の住処だ。ここでの生活は前世と比べれば、決して恵まれたものではなく、このワノ国での平均的な生活と比べても決して恵まれたものではない、と確信はできた。

 

 それでも――

 人と関わらず、飢えることもないこの生活は、私にとって十分以上だった。

 

 ***

 

 その生活が変わったのは、雷鳴が轟く嵐の日だった。

 その日は、雨が強く降り、雷がゴロゴロと鳴った恐ろしい日だった。

 

 「ニキョキョキョキョキョキョ!」

 

 気味の悪い笑い声とともに、2人の老人が私を訪れに来たのだ。

 

 明らかにやばい婆さんと、琵琶を弾く緘黙な爺さんだ。

 漫画で読んだ時もやばい奴だな、特に婆さんの方は…と思っていたが、現実で会ってみると想像以上。

 

 関わりたくない。

 関わりたくないが、向こうから来てしまったのはしょうがない。

 

 彼らは言った。

 

 「見えるよ…!未来が見える…!!お前は…

 

 将軍になるよ!!

 

  」

 

 私は心底うんざりした。

 

 彼らは黒炭家の復讐を語り、恨みを吐き出し、私に同意を求めた。

 面倒ではあったが、外の海で生きながらえた者たちだ。こんな森でひきこもっている私よりは強いだろう。だから、私がやるべきことは一つ。

 

 「生まれてきたスキヤキが悪い!」

 「私ら黒炭は悪くない!」

 

 みたいに、ぼけているであろう婆さんの話にただ、肯定した。

 

 適当に話をあげてみればみれば、まぁ話ははずむもの。それほど恨みつらみがたまっていたんだろうが。

 

 さすが、しらなかった、すごいね、センスあるね、そうなんだ。

 有名な『さしすせそ』は意外と使えた。「センスあるね」は使いどころがわからなかったけど。

 

 話の中で、できればお前が男子だったら、とどこか悔しそうにつぶやいていたのは印象に残った。

 どういうことか、聞いてみると、

 

 「侍は男社会だから、男子のほうが都合がよかった。だけど、人々に迫害された黒炭の生き残りは数少ない。唯一見つけられた男子は心が壊れていて使い物にならず、あれでは傀儡が精々。わしらは既に年を取り過ぎた。どうこかに若く元気な黒炭家の者がいないかワノ国中を探して、ようやくお前を見つけたのじゃ」

 

 へー、いやそんなに頑張らなくてもいいのに。そもそもこんなところに住んでいる私を見つけるだけの元気があるなら、自分で将軍の座を簒奪すればいいじゃん。婆さんの方は能力で見た目を若く見せることなんてどうにでもなるし。そんなことに私を巻き込むなよ。

 

 確かに、ワノ国の人たちに恨みがあるかと言えば、恨んでいるし。許せるかと言えば、許せないけど、それ以上に関わりたくないという思いの方が強い。

 

 でもまぁ、はぁー。これもしょうがないか。しょうがないよなぁ。

 

 悪魔の実はくれるというのだから、もらおう。

 生きるために使えるものは使う。それが私の生存戦略。

 

 ヘビヘビの実 モデル“八岐大蛇”

 八度頸を斬られなければ、死なないその不死性は実に魅力的だった。

 

 ***

 

 悪魔の実を食べ、爺さん婆さんたちと別れた後は、白舞へと向かい、そこの大名である霜月康イエに取り入る。それが婆さんたちの計画だったが、正直そんなところ行きたくない。

 

 でも、この場所は婆さんたちにばれているから、離れたい。

 

 黒炭だからと、石を投げてくる奴らとは関わりたくない。

 でもなぁ、でもなぁ、ここも慣れればいいところで、気に入っていたんだけどなぁ。

 

 はぁ、九里に行くかぁ。

 

 九里に行くと決めた理由はただ一つ。

 あそこが真面な場所じゃないからだ。

 

 白舞を始めとした他の郷は真面だから、黒炭とばれたら、下手すれば殺される。

 だけど、九里は違う。あそこは、黒炭だろうと関係なく、隙を見せれば殺される犯罪者の根城。

 

 人の醜さを良く知っている私からすると、殺し殺されの関係の方がましに感じてしまう。

 

 前世で培った道徳心はどこかに逝ってしまった…。

 そんなことはどうでもいいや。

 

 婆さんたちには適当なことを言って、誤魔化し、九里に向かった。

 

 ゾオン系の悪魔の実を食べたからか、いつも以上に元気が有り余っており、九里にはすぐ着いた。

 

 そこからは、日々乱闘の毎日。

 

 ゾオン系のタフネスとヘビヘビの実 モデル“八岐大蛇”特有の不死性がなかったら、何度死んだことか…。

 

 あとは、覇気を使う人が少なかったのと海楼石を持っている人がいなかったのが救いだった。

 

 他の郷から逃げてきた犯罪者が多数を占める九里だが、逃亡者であるが故に、覇気が宿るような強靭な意思をもっていないのだろう。海楼石に関しても、あれは割と高級品。持ち歩くぐらいだったら、売り払ってしまうのだろう。

 

 そもそも悪魔の実を食べている人は、ごく少数。悪魔の実を見ることもなく人生を終える人もいるくらいのだから、そんなものに警戒して持つ必要性はないのだろう。

 

 どんどん強くなっていく気がした。さすがは腐っても大名の血筋。

 

 もともと、見聞色は石を投げてくる人たちから、身を守るために、身に着けていた。石は当たると、痛いし、下手な所に当たると、かなり危険だ。だから、よく相手を注目していたのだが、気が付けば特に注意しなくても、石の軌道は見切れるようになっていた。

 

 けがの功名というやつかな。武装色はまだだったが、感覚は掴めてきた。

 

 「全員殺す」という強い殺気が、強固な思いが、武装色を呼び起こす。…たぶん。

 

 そんなこんなで、気が付けば、アシュラ童子と闘っていた。

 

 アシュラは強かった。強かったが、それ以上に、私が食べた悪魔の実の力が強かった。

 見聞色で頸への攻撃に注意しておけば、死ぬことはなく、受けた攻撃もゾオン系特有のタフネスさで、時間はかかるが、徐々に回復していく。体力も膨大だから、長期戦もできてしまう。

 

 まさに、死にゲーの気分。死んで(私の場合は死んではないが)敵の攻撃を覚え、少しずつ敵の体力を削っていく。

 

 闘いは丸一日かかった。

 痛かったし、つらかったし、途中からは割とだるかったけど、それなりに楽しかった。

 

 前世の豊かな娯楽と比べると、こっちは闘いとか食事くらいしか私は楽しめない。正直、スマホとかと比べちゃうと、この世界の娯楽はあまりにもつまらない。

 だから、なんか戦闘狂みたいなことになった。血沸き肉躍る的な?

 

 負けたアシュラは何か言ってたが、そんなことは気にせず、私は宣言した。

 

 「ここ九里は、この私、

 

 オロチが支配する!!

 

 」

 

 と。

 

 なんか気分が挙がってて、つい魔が差したのだ…。

 

 ***

 

side:二キョキョ婆

 

 ワノ国に復讐してやる――

 その一念だけで、わしらは外海へ逃れた。

 

 あれから、もう何十年が経ったのか。

 指折り数えることすら億劫になるほど、長い、長い年月だった。

 

 若かった頃の怒りは、今も胸の奥で腐らずに残っている。

 黒炭家を踏みにじった将軍家。

 わしらを迫害し、嘲り、奪い、焼き捨てたワノ国の民。

 

 忘れられるはずがない。

 許せるはずがない。

 

 だが――

 復讐の準備が整ったと思ったときには、

 わしらは既に、老い先短い老人になっていた。

 

 皮肉なものだ。

 恨みは若き頃よりも燃え盛っているというのに、体は朽ちていく。

 

 外海で生き延びるために、わしらは多くの怪物を見てきた。

 その中でも、カイドウは別格だった。

 

 あれは“災害”だ。

 人ではない。

 怒りと暴力をそのまま形にしたような、化け物。

 

 だが、復讐には化け物が必要だった。

 ワノ国を焼き尽くすには、あれほどの力がいる。

 

 わしらはカイドウと繋がりを持ち、長い年月をかけた復讐の準備に終わりが見え始めた。

 

 だが――

 準備が整った頃には、わしらの寿命は尽きかけていた。

 

 このままでは、復讐の火は消えてしまう。

 黒炭家の恨みは、わしらの代で途絶えてしまう。

 

 それだけは、絶対に許せなかった。

 

 だから、わしらは探した。ワノ国中を、隅から隅まで。

 

 黒炭の血を引く者。恨みを継ぐ者。

 復讐の炎を燃やせる若い魂。

 

 だが、黒炭家はほぼ絶えていた。

 

 わしらが逃げた後、黒炭の名は徹底的に潰された。

 生き残りは迫害され、殺され、隠れ、消えた。

 

 唯一見つけた男子は、心が壊れていた。

 使い物にならぬ。

 あれでは傀儡にするのが精々。

 

 わしらは焦った。老いは残酷だ。

 待ってはくれぬ。

 

 黒炭の血が消える前に、どうしても“継ぐ者”を見つけねばならなかった。

 

 そして――見つけた。

 

 墓石だらけの寂れた森の奥。

 崩れかけた小堂に、ひっそりと暮らす幼い娘。

 

 黒炭の血。

 しかも、女。

 

 計画に多少の支障は出るかもしれぬ。侍社会は男が都合がよい。

 それはわしも重々承知しておる。

 

 だが――

 

 黒炭の女が将軍になるなど、これ以上の痛快があるか。

 

 二キョキョキョキョ。

 二キョキョキョキョキョ。

 

 こんなにも気分がいい日は、久しぶりじゃ。

 

 黒炭の名を踏みにじったワノ国が、黒炭の“女”に支配される。

 想像するだけで、胸が震える。老いぼれたこの体でも、まだ笑える。

 

 娘の目を見た瞬間、わしは悟った。

 

 この子は、ワノ国を恨んでいる。深く、静かに、骨の髄まで。

 

 黒炭の血を引く者なら当然だが、この娘の恨みは、ただの怒りではない。

 わしらのように、老いで濁った恨みではない。若く、鋭く、純度の高い怨念だ。

 

 わしらは娘に計画を語った。

 黒炭家の復権。

 将軍家への復讐。

 ワノ国の支配。

 

 すると――

 

 娘は、まるで未来を知っているかのように、計画の穴を指摘し、より確実な修正案を出してきた。

 

 その正確さ。

 その冷静さ。

 その理解の速さ。

 

 あれは、ただの子供ではない。

 

 わしは思わず震えた。

 

 わしらが数十年かけて練った計画を、この娘は一瞬で読み解き、さらに上へと押し上げた。

 

 黒炭の血は絶えていなかった。

 

 いや――

 むしろ、わしらよりも濃く、強く、復讐にふさわしい形で残っていた。

 

 わしは確信した。

 

 この娘こそ、黒炭の怨念を継ぐ者。

 わしらの復讐を果たす者。

 ワノ国を呪い、支配し、焼き尽くす者。

 

 女であろうと関係ない。むしろ、女であることがよい。

 

 黒炭の女が将軍になる――

 それは、ワノ国への最大の侮辱。最大の復讐。

 

 二キョ。

 

 神は、黒炭を見捨てておらぬ。

 この娘を遣わしたのだ。

 

 わしらの恨みは、この子が果たす。

 

 ***

 

side:アシュラ童子

 

 始まりは、妙な噂やった。

 

 九里で、おかしな娘子が大暴れしとると。

 やけに威勢のええガキが、毎日のように誰かをぶっ倒しとるらしい、と。

 

 まぁ、そんな話は時々ある。

 どこぞの郷の大罪人が逃げてきて、九里で暴れまわるなんざ日常茶飯事や。

 

 せやけど――

 女子が名を挙げるなんざ、聞いたことがなかった。

 それで、おいどんの耳にも残ったんや。

 

 とはいえ、どうせ誰かにやられて終いやろ。

 この時は、ほんまにそう思っとった。

 

 まさか、おいどんのところまでたどり着くなんて、夢にも思わんかった。

 

 闘い始めてすぐに思った。

 

 ――想像より弱ぇ。

 

 流桜は使えるし、女にしては力もある。

 せやけど、それだけや。

 九里で名を挙げるほどの怪物には見えんかった。

 

 「なんや、初見殺しか?それとも不意打ちで勝ってきただけか?」

 

 そう思っとった。

 

 せやけど、闘いが長引くにつれて、おいどんは気づいてしもうた。

 

 こいつ――死なねぇ。

 

 普通なら、とっくの昔に死んどるはずや。

 血は流れすぎとるし、骨も折れとる。

 内臓だって潰れとるやろ。

 

 それでも、こいつは立っとる。

 息をして、殴ってきよる。

 

「妖か……?」

 

 おいどんは本気でそう思い始めた。

 

 クソまずい実を食って妖術を使えるようになった奴らがおるらしいと聞いたことがある。

 人外の姿になったり、炎を吐いたりする化け物もおると聞く。

 

 せやけど、この娘子は見た目はただの人や。炎も吐かん。

 

 ただただ、ぶん殴ってくるだけの脳筋や。

 

 せやけど――やけに元気すぎる。

 

 このままじゃ、ジリ貧や。

 そんなことはわかっとる。

 せやけど、どうにもならん。

 

 消耗戦が始まっとる。消耗が激しいのは、当然おいどんや。

 

 

 「クソが……

  おいどんは、こんな小娘に負けるんか……

  ふざけんな……!」

 

 拳を握る手が震える。怒りか、恐怖か、疲労か――

 もうわからん。

 

 ただ一つだけ、はっきりしとることがある。

 

 この娘子は、ただのガキやない。

  化け物や。

  九里を喰らいに来た、本物の怪物や。




ここまでお読みいただき、誠に感謝。

久しぶりに小説を書こうと思って、せっかくだからワンピを書こうと思い、本作を。

頑張って執筆しますので、温かく見守っていてください。
…おそらくどこかでエタるかもしれないけど。


…長く放置してしてしまった今までの作品も執筆を再開したいなぁ(まじの願望)
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