神はただ、人の人生を操るだけだ   作:俺よりあんたに必要そうだ

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とりあえず企画に間に合うように投稿だけしておきます


神っていうのはただの一人称

 貴方は神を信じますか? 

 

 ──うん、俺……じゃなかった。私が悪かった。変な宗教に勧誘したりしないから少しだけ話を聞いて欲しい。

 

 日本人は無宗教が多い、なんていうけれどそれと神を信じるかどうかはイコールではないと思う。例えば神様を信じてない、なんて言っていてもお地蔵様を蹴るのに抵抗のある人は多いだろうし、御神籤で大吉が出たらなんとなく嬉しくなるだろう。

 

 まあ要は実在するかはともかく、気分の問題ということだ。なんとなく罰が当たる気がするとか、自分じゃどうすることも出来ないことを運に任せるのを神頼みと言ってみたりだとか。人の力が及ばないことの総称を神と呼んだりしている。

 

 じゃあ翻って、創作での神はどうだろうか。

 

 分かりやすく神様が味方になってくれたり、転生の舞台装置になったり……まあ色々なパターンがあるのは置いといて、実在する何かであることが多いと思う。

 

 だからまあ、創作の世界の中で生きることになったら、神頼みを現実的な手段の一つとすることも合理的な選択肢になるのではないかと、私はそう思うのだ。

 

 

 

 

 

「神様──」

 

 ゴミと捨てられた人間で構成された、まさしくゴミ溜めでも、人が集まる以上そこには社会というものが構成されるらしい。小さいところで言えば自分の縄張りを主張する腕自慢。大きいところで言えばゴミ溜めを運営している長老会。

 

 だから、というわけでもないが、前世のおかげで最低限の教養がある子供とみなされた私は、なんとか教会に拾ってもらうことが出来た。ゴミの山の中で眠らなくていいというだけで前世持ちとしては有り難い。衛生観念なんて無い方が生きやすかったのだろうが。

 

 流星街。この一言で産まれた世界のことは分かってもらえると思う。どうせならもうちょい命が軽くない世界に産まれたかった……なんて文句を言っても仕方がない。まあ正直流星街だと認識した時点で、終わりだ……って気分にはなったけどさ。

 

 そんな場所に産まれてしまったからには、第一目標はもちろん流星街からの脱出──ではなく、日々をなんとか生き延びる事。栄養失調で餓死なんて冗談じゃないし、マフィアの子供狩りに巻き込まれるのもお断り。特に今世の俺……もとい、私は女の子だから目を付けられればスナッフビデオ撮影オプション付き輪姦ツアー待ったなしだ。ロクな世界じゃなさすぎる。

 

「……食べ物がちゃんと見つかりますように。ゴミ溜めよりもゴミみたいな人間に目を付けられませんように。あとは……」

 

 とはいえまあ、子供一人に出来る事なんてたかが知れているわけで。私がしているのは徳を積んで神頼みするくらいだ。手に入れた食べ物を周りに分けたり、怪我人の手当をしたりとかね。現代日本の公衆衛生の知識が役に立って良かったよ。でも教育を受けてないからって『虫を潰した汁を傷口に塗ると治りが早くなる』レベルの迷信が広まるのはどうかと思う。まあ清潔な水がFalloutぐらい貴重だからしょうがない……のか? 

 

「あとは──」

 

「リリィ。今日もお祈り?」

 

 お祈りを邪魔された──なんて怒るほど別に情熱は持っていない。というよりこの子は私が生き延びる為に神様より重要になりそうだから優先するのはこっちだ。

 

「おかえりクロロ。……一緒にお祈りする?」

 

「オレはいいかな。やることあるし」

 

「残念」

 

 幻影旅団団長クロロ・ルシルフル……の、子供時代? 私が知ってる範囲では語られなかったけど、そりゃ作中の人間だって子供の頃はあるよね。

 

「……お墓、増えたね」

 

「ん。人攫いが増えてるみたい。クロロも外に近いところ一人で歩いちゃダメだよ?」

 

「そっか……やっぱり、ちょっとだけ祈ろうかな。……どうやるんだっけ?」

 

「決まりなんて無いよ。大事なのは気持ちだけだから」

 

 この世界での宗教とか分かんないし。ユダとか言ってた辺りキリスト教的な存在はあるんだろうけど、あれがどのくらい普遍的なものかも分かんないし。もしかしたらクロロが趣味で呼んだ娯楽小説とかとして聖書が存在している可能性だってある。まあ、そもそも私はキリスト教の死者の悼み方も知らないけどさ。

 

「──そうだリリィ、鑑賞室使っていい?」

 

「どうぞ。先客がいるけど……仲良くね」

 

 まあ多分心配する必要も無いだろうけど。なにせ将来一緒に幻影旅団なんてやるわけだし。あの集団で仲良く無いのヒソカぐらいでしょ多分。一応ヒソカの前任もどうでもよかったのかな? 劇場版までは分かんない。

 

「うーん……とりあえず、クロロのお勉強が上手くいきますようにとでも祈っとこうかな」

 

 あとついでに幻影旅団の旗揚げの時に私も一緒に連れて行ってくれますように。残念ながら私程度の頭ではここから出る方法なんて思いつかないのです。ハンター試験に受かれば身分証は手に入るっぽいけど、まず流星街が世界のどこにあるのかも分からない。こういうのは頭のいい人に任せるべきなのです。

 

 

 

「カタヅケ……何?」

 

「カタヅケンジャーだよ! リリィ知らないの?」

 

「全く……」

 

 何だかよく分からないけど、クロロが拾ってきたビデオに録画されてたものは当たりだったらしい。名前的に戦隊モノかな? 

 

「運よく綺麗に録画が残っててさ!」

 

「よくわかんないけどよかったね? 神の思し召しかなぁ……?」

 

「そうかも。リリィと会った後って不思議と良いことが多いんだよね」

 

 偶然だとは思うけど、本当に神様のおかげだったりしてくれないものか。もしそうならシスター服なんて着てる甲斐もあるというものなのだけど。これのせいですっかりスカートにも違和感が無くなってしまった。

 

「それでさ。実は──」

 

 クロロの話は要は演劇をやるということらしい。ビデオを翻訳してアテレコ……アフレコ? するんだって。まあ娯楽なんて無いこのゴミ溜めでは話題になりそうな気はする。子供も多いしね。

 

「どう? 今なら何色でも選べるけど」

 

「えー、私はいいかな……そんなしょんぼりする?」

 

 そして私もその吹き替えをしてくれないかというのがクロロの要件。戦隊モノって女の子いるもんだっけ? ピンクとかかな。まあ人前に出るのも嫌だしお断り……と思ったのだけど、露骨に落ち込まれると断りにくい。身体の年齢はともかく精神的にはお姉さんのつもりだし。

 

「分かったよ、裏方なら手伝ってあげるから。機械の操作とかさ」

 

「えー、それぐらいならオレも出来るし」

 

「生意気。教会開けてあげないよ?」

 

「わー! ごめんごめん!」

 

 うーん子供。ちなみに結局パクノダと、あとサラサとシーラという女の子に吹き替えを頼むことで落ち着いたらしい。幻影旅団にそんな名前の人居たっけ? キメラアント編で流星街に帰った時も別に新キャラが出た覚えも無いし。劇場版のキャラとか……? あと戦隊モノにしては女性枠多くない? 

 

 ともかく、その次の日曜日に上映会をするらしい。クロロ達も頑張るみたいだし、私も頑張らないと! ……とりあえず教会周りのお掃除に力でも入れとこうかな。神様が見てるかは知らないけどお天道様は見てるし。明日もいい日になりますように。ついでにクロロの上映会が盛り上がってくれますように。

 

 

 

 結論から言うと上映会は大成功。音声が再生されなくなるトラブルはあったけど、クロロがリアルタイムで吹き替えし始めたから問題なし……というかむしろ盛り上がったまである。流石は団長。まだ団出来てないけど。あと裏方やってたのにトラブル起こしてごめんね。

 

 それより私としては幼い幻影旅団の面々が衝撃だった。マチ、それはどういう髪型なの? 

 

 そんな旅団の面々はクロロに説得されたのか、それとも単純に面白そうだと思ったのか、カタヅケンジャーの吹き替えに参加し始めた。そして上映会は毎週の恒例行事になって、必然私も彼らと関わる機会が増えていく。

 

「リリィ! お前お姫様役やってみねぇか!?」

 

「はいはい。いいから荷運びして。皆のお菓子になるんだから丁寧にね」

 

 ウボォーさん、それもどういう髪型なの? それはともかく、領土だとかなんだとか主張してた人が変わるものだ。時間のある時だけとはいえ、まさか子供達に配るお菓子作りまで手伝ってくれるとは。おかげで私も楽できてます。

 

「何だよつれねぇな。やってみたら楽しいぜ?」

 

「私は裏方が向いてるの」

 

 劇の練習と称してよく教会の空きスペースを使っているから、その練習風景もよく見させてもらってる。私? 機械の操作なら手伝ってるよ。あと小道具作り。

 

「まったく、折角盛り上がってるってのによぉ」

 

「まあそれは知ってるけどさ。でもそもそも人を増やすより、テープの続きを探す方が先じゃない?」

 

「そうなんだよなぁ……神様に頼んだらどうにかなんねぇのか?」

 

「便利屋さんかなんかだと思ってる? まあ、頼むだけ頼んでみてもいいけどさ」

 

 祈りは無料だからね。お賽銭とかも無いし。子供達を楽しませるっていう善行をしてる人達の要望だし徳も積めてるでしょ。私は勘定に入れていいかは微妙だけど。

 

 それにしても、こんな劇団からどうやって原作の幻影旅団になるんだろう……なんて疑問が解消されるのは、それからすぐの事だった。

 

 

 

「サラサちゃん? まだ来てないと思うけど」

 

「そっか……オレ、ちょっと探してくる!」

 

 正直に言えば、この時点で何となく察してしまった。頻発している子供の誘拐、原作の時系列では既に存在しない女の子、劇団から変質したのであろう幻影旅団。まあ、この世界が物語だと考えれば、そういう悲劇なのだろうなって。

 

 それでも、ソレを見せつけられて何とも思わない程には私も人の心を無くしては居なかったらしい。

 

 辱められた死体。死んだ後まで尊厳を貶めるような侮辱の言葉。

 

「クロロ、リリィ……お前らなら読めるだろ……! これ、なんて書いてある……!?」

 

「言わない。死んでも。知りたいなら自分で調べろ!」

 

「……一応言っておくけど、居場所とかは書いてないよ。ただ……悪趣味な言葉が並べてあるだけ」

 

 死んだ方が良い人間、なんて冗談でぐらいしか口にしたことは無かったけど、それがどんな存在なのかは今理解した。神が居るのかは分からないけれど、悪魔はどうやら実在するらしい。

 

 サラサちゃんを弔って──きっとこれで一区切りなのだろう。これがきっと、幻影旅団のオリジンだ。

 

「僕は残りの人生を悪党として生きる。世界中の人間が恐れ慄く程の──」

 

「クロロ、お前が頭なら。オレは死ぬまで付いて行くよ」

 

 だけど。私は未来を知っている。その選択の結果として、復讐者に殺されていく幻影旅団のことを。

 

「クロロ」

 

「……リリィは、反対?」

 

 なのでまあ、止めるべきなのだとは私の理性は言っている。その道の先は破滅しか待ってないんだって。

 

「まさか。悪には裁きを。復讐するは我にありってね」

 

 でも、私の感情は許すなと叫んでいる。善人には愛を、悪人には裁きを。善因善果、悪因悪果。神様がそれをしてくれないのなら。

 

「だから、その為の力の付け方を教えてあげようかなって。神様からのとっておきのヒミツだよ?」

 

 そういう力を作ればいい。何せ物語の世界で、しかも念能力という自由度の高い物がある世界だ。善行をした者が報われる、そんな能力を作ったらいい。ただ、何が善で何が悪かは私が決めさせてもらうけど。都合がいい? だったら私に裁きでも下したらいい。それが出来ないなら──

 

「大丈夫。私達ならやれる。だって、神様が付いていてくれるんだから」

 

 私は、私自身を神として信仰する事にしよう。

 

 




主人公の原作知識はアニメ範囲(選挙編まで)です。
なのでヒソカが団長と戦うところも、旅団狩りを始めることも知りません。ここちょっとご都合主義要素
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