神はただ、人の人生を操るだけだ 作:俺よりあんたに必要そうだ
『念』、ハンターハンターの世界における特殊能力の呼び方。他の作品だったら……術式とかスタンドとか? まあ色々と違うところはあるけどさ。
まあ他はさておいて、念能力には大きな特徴がある。それは自由度の高さ。生まれ持っての得意不得意こそあれど、能力の内容も、それに伴う制約も自分で決めることが出来る。制約をガチガチに縛れば多分不得意な系統の力でもそれなりには使えるんじゃないかな。
だからオリジナル念能力~なんて妄想も定番だったのだけど……やはり何事にも例外というのはある物で。
一つは無意識の念能力者。作中で言うとネオンの予言かな。あれは本人も無自覚のままに作り上げた能力であって、本人が作ろうとして作ったものではない。
もう一つはツェリードニヒとかピトーみたいな、なんか出来ちゃった人達。まあある意味では無意識で作り上げた能力とも言えるのかもしれないけど、彼らは一応念能力の自覚はある。まあ要するに、念能力を作るならその仕組みまでしっかりしておこうということ。そうじゃないとなんか思ってたのと違ったり、妙に使いにくい能力になったりするから。
とはいえどうやったのか知らないけれど、幻影旅団の面々は原作でしっかり自分に適した能力を作り上げていた。どこかで念を学んだのか、それとも本能的に察したのかは分からないけど、ともかく彼らの念……というか『発』については心配いらない。
……なんて予防線を張ったあたりで察した人も居るかもしれないけれど、残念ながら私は『発』を無意識のうちに作ってしまった。産まれついての念能力者と言うと強そうな気もするけれど、その実態は気質とも興味とも無関係な発を作ってしまったアホである。まあ気質も興味も後から寄せられなくはないからいいんだけど……はい、強がりです。私もしっかり考えて作りたかったよ。
まあ私のことは置いといて、幻影旅団の面々に念を覚えさせている……のだけど、この人たち覚えるの早すぎる。三年を目安にしてるから、まあ旗揚げまでに念を覚えてもらえばいいかな~ぐらいで居たのだけど、ウボォーさんを筆頭に男どもが邪法で念を覚えさせろと大騒ぎ。そして練までは一年もかからず、人によっては発まで覚える始末。……でもまあ、作中トップレベルの才能って考えたらおかしくはないのかな。私が参考にならな過ぎて困る。
そして、サラサが死んだあの日から丁度三年後──
「旅団では……」
クロロが印象的な演説をしている。あの頭と脚のやつね。まあ実態はクロロ大好きサークルから脱せないんだけど……まあそれは今は置いておこう。
「──と、堅苦しい話はここまでにしておこうか」
「なんだよ、似合ってたぜ? クロロ!」
「からかわないでよ、ウボォーさん」
もう既に団長モードと素のモードは使い分けてるらしい。そんな事してるから解離性人格障害になるのではなかろうか。
「それじゃ、蜘蛛をデザインしていこうか。まずは……」
「まずはナンバーだろ! 俺は1番がいい」
男の子ってバカばっか(呆れ)というかあのナンバーって自己申告制で決めてたんだ。まあでもウボォーギンが11って中途半端な数字の時点で予想できたことか。年功序列なら1になるだろうし、実力順なら……どうなるんだろ。念能力者に勝ち目とか言ってる時点でズレてるらしいから分かんない。
そんな無駄な事を考えているうちに無事……無事かなぁ……? ともかくナンバー決めは終わったらしい。なんか虫食いなの凄いもにゃもにゃするんだけど、みんな平気なのかな。
「そういえばクロロ……は0でいいとして、リリィは何番にするんだ?」
「4番以外ならなんでも……?」
ヒソカに殺される人にはなりたくない……でもそれ言い出したら原作メンバーと重なる番号は全部ダメなのか……? いっそ666とかにしといた方がいい?
「リリィは俺と同じ0を背負ってもらう」
「えっ」
「クロロと同じ……ってことは、団長不在時の代理をこなす役ってこと?」
「ああ。頭が潰れても蜘蛛は動く……とはいえ、纏め役は必要だからな。それに、今後分散して動く時にも指揮が出来る人間は必要だろう」
「えっ」
そんな役目の人居なかったじゃんね。……でも実際、クロロが死んだら誰が仕切るつもりだったんだろう。そもそも頭脳担当できそうな人が居ないんだけど。シャルナークぐらい?
「まあ一応全員の念の師匠だしな」
「私も異議なし。同性の方が相談しやすいこともあるだろうし」
「マチ、お前そんなこと気にするタマか?」
「あ゛?」
「えー……」
なんだろう。本人の意思を聞かずに話を進めるのやめてもらってもいいですか?
……まあでも、要はクロロが死ななきゃいいだけだよね。原作だと除念師見つけて以降語られなかったけど、まあ多分除念には成功しただろうし、あとはクラピカの再来に気を付ければいいだけだよね。初見殺しみたいな念だし、クロロなら何とかしてくれるでしょ。できればヨークシンで何とかしたいけど。緋の目返したら許してくれないですかね。え? クルタ族虐殺するな? 止めようにも詳細も何も分かんないから……
「頼めるか? リリィ」
「んー……まあ責任者を引き受けるのも善行かなぁ……旅団の為の行動だし」
「また神様か?」
「うん。ウボォーさんも一緒にお祈りする?」
「趣味じゃねぇ」
さて、早速みんなが入れ墨を入れ始めたところで(マチがやってる。手先の器用さが凄いね)いい加減私の念の話をしようか。
産まれながらの念能力者というのがどういう扱いになるのかはよく分からなかったのだけど、私の場合は何となく自分の能力がどういうものかが頭に浮かんできた。もしかしたらそれも含めての私の念なのかも。
で、どういうものかといえば……神の存在証明、かな。ルビ? インパーフェクトプランとか? 神の不在証明にかけて。まあ能力的には全然関係ないんだけど……
簡単に言えば、善行を積めば積むほど『良いこと』が起きるというもの。徳とかご利益とか大吉を現象として引き起こす……説明すると難しいね。例えば早起きして掃除をすれば失くしものが出てきたり、人助けをした後に幸運に見舞われたり、そういう現象を念能力で持ってくる。奇跡を蓄える術式に近いかな? 私が今世で神の存在を信じているのもこれが理由である。人の運命を操作できるのなんて神様ぐらいしか思いつかないし。
善行とは何なのかという話だけど……これは完全に私の主観である。例えば飢えた人に食べ物を分けるとか、教会のお掃除とかそんな感じの分かりやすいもの。そういうことをした後は私と私が身内と認定している人に幸運が齎される。
そして、これは我ながら自分って屑なんだなと自覚してしまったことであるのだけど……世間一般で忌避されたり、法律を犯すようなことであろうと、私が善行と思えば善行になるらしい。まあ、私が私自身を信仰しているからかもしれないけど。
思考実験のようになってしまうけど、例えば荷物をひったくった人と、その人を殺して荷物を奪った人と、流れ弾で更にその強盗犯を殺してしまった人、その隙をついて仇討ちをした復讐鬼。あなたは誰が悪人で、誰が善人だと思う?
まあ全員カスだと答える人が多い気はするけど、悪人を殺すのは善行だと思う人からしたら善人だらけになる。善とか悪とか、答えが出るような問題じゃないんだよね。法律上の話とかならできるだろうけど。
ちなみに私の答えは『私に利益を齎してくれた人』です。私にとっての善行は私と身内に利益を齎すこと。どちらかと言うと身内に利益を齎すこと、が大きいかな。自分達に比べたら無関係な人間達なんて背景でしかない……なんて考え方だから幻影旅団に入ることになっちゃったんだろうなぁ……流星街で知らない人が死んでても何も思わなかったし。
ちょっと例えが分かりにくかったかな。要は仲間の為に行動したら上手くいって、私利私欲で悪行を成せば失敗すると思ってもらえたらいい。もっと言うと私が気分よく動けば旅団に利益を齎して、私利私欲に溺れれば弱くなるってこと。
……うん、自分で整理して改めて思うけど、原作までに善行をいっぱい積まなきゃだな。
♢♢♢♢♢
(これでいい。頭が……俺が死んでも蜘蛛は生き残る。これが最優先だ)
リリィという少女は、クロロ・ルシルフルから見ても不思議な少女だった。
他の幻影旅団の面々と比べればあまりにも大人しく、攫われてきた子供とでも言われた方が納得できるだろう。シスター服という服装もそれに拍車をかけている。もっとも、最近は動きやすくするためと裾に深いスリットを入れているためシスターとしては不適格だろうが。
彼女の能力を理解できたのは恐らくクロロだけだろう。なんなら彼女自身自分の能力をよく分かっていないフシがある。だが、クロロはそれでいいと思っている。
(あれは制御しない方が良い。下手にマトモな理解をしてしまえば弱まるタイプの念……もし俺が同じ念を覚えたとしても、あのような出力はされないだろうな)
幸運を齎すという不明瞭な力。しかもその条件は善行というあやふやなもの。リリィ曰く、神に恥じない行為、それこそが善行です、とのことだったが。
「リリィ」
「なぁに? クロロ」
「神とは何だと思う?」
「えー……急に何? 神様は……なんて言うんだろう、いつも私達を見守っている物、かなぁ」
「ほう?」
「人それぞれの正義、世界の大きさ、何も考える必要は無いの。だって神様はいつも私達を見守ってて……それ以上は何も出来ないんだから」
「なら存在しないのと同じじゃないのか?」
「そう思う人にとってはそうだと思うよ」
「じゃあどうして、リリィは祈っているんだ?」
「タダだから。どうせ神様なんて、頭の中から出てこれないんだし」
「そうか、ならオレも祈っておくとしようか」
「ん。そうしなさい。神の声には耳を傾けるべし。具体的には神様は甘い物が好きだよ」
「……どこかに盗みに行こうか」
「ふふ。早速ご利益だね」
そう言って笑う彼女は、神様にはとても見えなかった。