神はただ、人の人生を操るだけだ 作:俺よりあんたに必要そうだ
『ここまで一度も相手に触れられすらしなかった身持ちの硬い女! だがそのエロシスター衣装はどうかと思うぞ! ルーキーのリリィ=ルシルフルだァァ!!』
「誰がエロシスターだ。エロ女神じゃいどっちかと言うと」
「それは大して違わないんじゃないかな♥」
違うし。私は別に破戒僧とかじゃないし。というかなんつー実況してんだよ。まあ女性闘士って珍しいからしょうがない……か?
『対するはKO数=死人の数! 敗北は不戦敗のみ! 休みがちな死神、ヒソカ=モロウだァァ!』
「……人気者?」
「どうかな♦皆派手な死人が見たいだけかも♥」
うーん、中世……いや、古代ローマ……? 携帯とかもあるぐらいの文明度な世界なのにね。でもまあ現代日本でも違法じゃなきゃ公開処刑とか流行ってるか。ネットリンチは流行ってたし。ま、流星街産まれとしてはこの世界の文明の恩恵はあんまり受けられてないんだけどさ。
「死ぬまではやらないからね?」
「約束はできないかな♣あんまり退屈だったら殺しちゃうかも♠」
「どうせ興が乗ったらそれはそれで壊したくなるくせに……」
「ボクのことを分かってくれてるみたいで何より♥」
審判が何やらルール説明をしているがそれは一旦どうでもいい。どうせダウンだとかなんだとか意識してる余裕無いだろうし……なんで私がこんな目に……? 全部クロロが悪い。なんだ殺人ピエロと親睦を深めろって。
「なんか腹立ってきた……八つ当たりしていい?」
「どうぞ♥レディーファーストってやつ……おっと♣」
拳が防がれる……のはまあ想定内。とりあえず『発』無しでの格闘戦を始めてみて分かったのは、純粋な肉弾戦で勝ち目は無さそうということ。強化系と相性悪いんだよ私は。
「結構動けるんだね♥でも筋力不足かな♠」
「か弱い女の子なんだからしょうがないでしょうが」
流派だとか学べる訳もなく、格闘戦は独学……つまりはウボォーとかフィンクスとかから学んでいるのである。そりゃあ肉体性能がある前提の動きになるわけで、要は身体の性能に見合っていないのである。クロロから学べ? あんな『発』が数十以上ある人の動きが参考になるわけないでしょ。片手塞がってるの前提だしクロロは。
なんとか戦いが成立してるのは私がオーラの操作に慣れているおかげ。攻防力移動、だっけ? なんか訓練が必要だったはずのそれを、私は大して意識しなくても出来る。何故かと問われれば生まれつき念に目覚めていたからかな、多分。
歩く時に足の出し方をわざわざ考えないように、息をする時に肺の動きだとか横隔膜の動きだとかを意識しないように。私にとってオーラは無意識のうちに動かせるものなのである。もしかしなくとも私は本来操作系とか放出系の方が相性良かったのでは……?
「真っ直ぐ向かってくるのは好感が持てるけど……気を付けなくっちゃ♥悪いピエロに奇術を仕掛けられちゃうよ?」
ヒソカが腕を引いて……私の身体が引っ張られる。慌てて目を『凝』らしてみれば、うっすらとしたオーラが伸びている。格闘戦中にノーモーションでそれを付けられるのは反則だと思うの。
「クリティカルヒット! ポイント──」
「ぺっ……全く、こんな綺麗な神様の顔を殴るなんて。天罰が下るよ?」
「そんなものが居るなら是非とも戦ってみたいんだけどねぇ♠」
「ふーん……じゃあ願いが叶ってよかったね」
善行には祝福を。悪行には報いを。味方に愛を。敵対者に裁きを。私の念能力は自分でも詳細を把握できないぐらい分かりにくいけど、大雑把には分かりやすい。
「καὶ γὰρ ὁ θεὸς ἡμῶν πῦρ καταναλίσκον*1」
ヒソカの使う念能力、バンジーガムはガムとゴムの性質を併せ持つ。だからこそ、私のこれは相性は悪くないはず。
変化系は相性が悪い……とはいえ強化系よりはマシ。そして『敵対者』であり『悪行を成した者』であり『異教徒(私を信仰していない、の意)』である今のヒソカに対しては制約のおかげもあって出力も上がる。
「それが君の『発』かい?」
「正確にはその派生かな。燃えて灰になってくれると有り難いんだけど」
多分神の裁き=炎っていう私の安直な思考回路故なんだと思うのだけど、私の戦闘用の『発』の使い方はこれ。自分のオーラを炎に変えて相手を焼くというシンプルなもの。まあ凝ったものなんてメモリを喰っちゃうし……そもそも産まれつきの念に私の意思は介在してないんだけど……
でも、便利ではある。オートで相手を追ってくれるし、火力も充分。ヒソカが投げてくるトランプぐらいなら私に届く前に灰に出来る。弱点は祈りを捧げてないといけないから動けなくなること? 具体的には膝をついて両手を組む必要がある。まあ炎をかいくぐられた時点で負けみたいなもんだから気にしなくていいはず。
「Ὁ δὲ Θεὸς ἡγεῖτο αὐτῶν*2──あ」
「これは、どうしたものかな……おや?」
とはいえ当然それ以外にも欠点はあって、具体的に言うと物凄く燃費が悪い。多分放出系に属してるせい。もっとオーラ総量を増やさないと駄目だね。まあ体に付けられたガムを焼けただけでも収穫でしょう。なんでヒソカは全部避けられるんですか?
「はあ……気を取り直して……καὶ συγκόψουσιν τὰς μαχαίρας αὐτῶν εἰς ἄροτρα καὶ τὰς ζιβύνας αὐτῶν εἰς δρέπανα*3」
「今度は……具現化系かい? 随分と手札が多いね♥」
「待っててくれる相手にしか使えないけどね……あと、私の『発』は一つだけだよ」
毎度毎度祈りを捧げなきゃいけないから使いにくいのよ派生形は。実践向きじゃないね。集団戦なら守ってもらえるから良いんだけど……ノブナガの逆かもしれない。あっちはタイマン専門で、私は集団戦専門。一対多の方が向いてるし。
あとついでに言うと具現化系よりは変化系と言った方が合ってる。炎を大鎌の形に固めてるだけだからね。なんで鎌なのかは私も分かんない。上位存在の武器のイメージが私の貧相な想像力だとこれだったんじゃないかな……
「じゃあ、どっちが神様に愛されてるか試そうか」
「生憎、ボクは無神論者なんだよね♠」
私の戦闘スタイルは念能力頼り……というか、神頼みだ。善行によって齎される幸運を当てにして、運よく相手が隙を晒してくれたり、偶々上手いこと攻撃が当たったりすることを祈るというもの。だから純粋に技量の上回っている相手というのは私としてはかなり戦いにくい相手でして──
「怒ってるのかい?」
「べつにー? よくもまあこんな可愛い顔を平気でぼこぼこ殴れるなぁ、とか思ってませんけどぉ?」
「ボクの腕を斬り落としておいてよく言うよ☠どう責任を取ってくれるんだい?」
「い、刺青入れがてら縫合してくれそうな知り合いがいるから……」
別にあわよくば殺してしまおうとか思ってなかったし。ただ生かす価値無しと思われないように必死だっただけだし。マチなら神経も繋げるしなんとかなるでしょ……なるよね? ちょっと焦げてるかもしれないけど……まあ傷を治す念能力者とか居そうだし、天空闘技場。
「というか傷口見てニヤニヤするのやめなよ……」
「仕方ないだろう? こんな楽しい時間は久しぶりたったのさ♥」
「強いのも難儀なことで」
実際ヒソカの強さってどのぐらいなんだろうね? メルエムとかネテロとかの方が強そうだけど……採点的に十二支んよりは強いのかな……? でも十二支んの強さが分かんないしな……見た目が噛ませっぽかったしあの集団。
「それだけに残念ではあるかな♠ここでの戦いは邪魔が入りやすいからね♣」
「KO数=死人の数の人が何言ってんの……?」
審判はもっと早く止めなさいよ……って思ったけど、案外雑魚狩りに巻き込まれた犠牲者だったりするのかな。ネギトロさんとか初回は生かされてたわけだし。もしかしたら開幕即殺で止める間もなくKOだったのかもしれないね。
「だから中途半端に止められて昂りが収まってないんだよね♥今夜どうだい?」
「……ご飯までなら付き合ってあげてもいいけど」
「いいね♥良い店を知ってるんだ♠」
「あれ、素直?」
まあ有難いけども。別に汝、姦淫するなかれ。なんて思っちゃいないけど……単純に私の性的嗜好は女性なんです。ヒソカが女だったらナメクジックスしても良かったんだけど……良くないかもな……殺人ピエロだし……
ちなみに殺人ピエロオススメの店は美味しゅうございました。お酒も久しぶりに飲めたし。え、年齢確認? 神様にお酒をお供えするのは定番だし……
そして翌朝。
「おはよう、リリィ♥」
「い、犬に噛まれた……?」
目が覚めたらヒソカの部屋でした。流石に全裸ではなかったけど、私のシスター服、なんなら着ててもそういうこと出来るからアテにならない。
「ボクは犬かい?」
「噛まれたことを否定してよぉ……!」
ちなみに何も無かったそうです。ヒソカはヒソカで今片腕無いからそれどころじゃなかったとか。切り落としといて良かった〜!
「それは悪行に入らないのかい?」
「仲間だったら悪いこと! ヒソカはまだクモじゃないからセーフ! むしろ善行!」
「わかりやすい基準だね……♠実は強化系だったりしないかい?」
「真逆だよ真逆」
まあとりあえず目標は達成かな。殺人ピエロと仲良くなれた。
……この縁、使い道はありますか……? 恨むよクロロ……
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