続・黒いガンダムの宇宙世紀   作:いずりょう

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第46話 接点

 年が変わってしばらくすると、A.E.との新しい窓口から最初の評価品が届いた。

 

 大げさな新型機ではない。箱の中に入っていたのは、既存の関節駆動系へ追加できる制御ユニットと、それに合わせた支持部材だった。説明書には応答性の改善と高負荷時の駆動安定化が並んでいたが、格納庫で実物を見たジョブは、取り付ける前からあまり嬉しそうな顔をしていなかった。

 

「性能を見る前に言っとくけど、これ、交換する時は周りをかなり外すぞ。付けるだけならできる。でも現場で壊れて交換となったら、普通の部品よりだいぶ時間を食う」

「A.E.にはそのまま返していいですよ。今回は褒めるための評価じゃないので」

「そうする。あと、支持部材そのものは悪くない。軽いし、固定した時の歪みも少ない。ただし専用品を増やされると在庫が面倒になる」

 

 試験用に組み込んだジム・カスタムを、最初にクリスさんが動かした。俺たちは格納庫脇のモニターで記録を見ていたが、加速と姿勢変更を何度か繰り返したところで、クリスさんから戻ってきた声は思ったより慎重だった。

 

『反応は確かに速いわ。でも、切り返した時に一度だけ入力より先へ出る感じがある。小さいけど、同じ条件でもう一回やるからログを取って』

「了解。今のところはこっちでも出てる」

 

 ジョブがすぐ記録箇所を固定する。

 

『これを「速くなりました」で終わらせるのは駄目ね。普通に動かす分には問題なくても、戦闘中に一回でも予想より動けば困るから』

 

 次にクスコさんが同じ条件で乗り、戻ってきてからクリスさんの記録と自分の感触を重ねた。

 

「私の時も似ています。ただ、入力そのものが遅れる感じではありません。動き始めは素直で、止める側に少し癖があります。補正を覚えれば乗れますけど、乗る側が合わせる前提なら評価品としてはまだ早いと思います」

「二人で同じところが出るなら、個人差ではなさそうですね」

「そうね。少なくとも、レンが乗って無理やり合わせて『使えます』で返すよりは信用できるわ」

「俺、まだ何も言ってませんよ」

「言う前に止めてるの」

 

 横で聞いていたシーマ中佐が鼻で笑った。

 

「性能が上がるって話だけならメーカーはいくらでも持ってくるさ。問題は壊れた時に同じ物をすぐ出せるか、次の型になった途端に古い部品を切られないかだよ。ガーベラみたいな面倒な機体を抱えてると、その辺は嫌でも見るようになる」

「継続供給も評価に入れますか」

「当然だろ。戦場じゃカタログの数字だけじゃ動かないよ」

 

 結局、支持部材は評価を続ける一方、制御ユニットには修正要求を付けて一度返すことになった。マウアーには試験終了予定と返却品だけを伝える。彼女は技術内容へ口を挟まず、A.E.側から指定されていた返却期限と追加ログの扱いを確認してから、こちらの回答予定を組み直した。

 

「では、制御ユニットは改修要求付きで返却、支持部材は継続評価。追加試験の費用について先方から条件が来たら、少佐とジョブ准尉へ回します」

「お願いします」

「それと、午後の会議をずらすなら今決めてください。試験が延びた分だけ予定が後ろへ押しています」

「……予定どおりで」

「分かりました」

 

 A.E.から二つ目、三つ目の案件がすぐ来たわけではない。こちらも試験だけをしている部隊ではなく、通常任務の合間へ入れられる物だけを受ける。そうして何週間か過ぎた頃、レイブンとアルビオンは民間輸送船団の護衛で月軌道外側の航路へ出ていた。

 

 護衛そのものは珍しくない。残党を名乗る連中も減ってはいたが、戦争が終わって六年も経てば、昔の旗より手持ちの武器で稼ぐ方を選ぶ集団も出てくる。今回も最初に拾った識別不明機は識別要求へ応じず、そのまま輸送船団の外側へ回ろうとしていた。警告を繰り返している最中、先頭の一機が護衛側へ射撃を始めたことで、ようやく相手の意図を疑う必要もなくなった。

 

「接近機から発砲を確認。こちらへの攻撃です。現時点で所属は確認できません」

 ノエルさんが情報を絞って表示へ重ねる。

「船団側から退避要請が来ています。進路変更は可能ですが、隊列を崩すと後方二隻が遅れます」

「レイアム中尉、レイブン側は?」

「船団と速度を合わせたままなら、右へ四度まで変更できます。それ以上は最後尾との距離が開きます」

「四度でお願いします。シナプス少佐、アルビオンは外側へ出せますか」

『可能だ。ただし私の艦を船団から離せば、反対側の護衛が薄くなる。こちらは一度外へ出て接近を牽制した後、距離を開けすぎず戻す』

「それでお願いします。MS隊はバニング大尉に任せます。船団へ近づけないことを優先、逃げる相手を追う必要はありません」

 

 発進していた五機は、こちらから細かく言う前に散開した。

 

『聞いたな。コウとキースは船団から離れるな。ユウは左の外側、ライラは後ろを見ろ。撃墜を取りに行く必要はない、近づいてくる奴だけ止めろ』

『了解!』

『了解です』

『左へ出ます』

『後方を見るよ。輸送船との距離はこちらで合わせる』

 

 俺は艦橋から戦術表示を見ていた。以前なら、誰がどの敵を相手にしているかまで口を出したくなったかもしれない。今はバニング大尉の指示に合わせ、五機が船団を中心に位置を変えていくのを見ていればよかった。

 

 接近してきた側も、正面から五機まとめてぶつかるつもりはなかったらしい。外へ広がったユウ中尉へ二機が向き、その隙に別の機体が船団後方へ加速する。

 

『後ろから一機来ます。こちらで対応します』

 

 ライラ中尉が進路を切り替えた。相手の正面へただ飛び込まず、最後尾の輸送船と接近機の間へ自機を置く。相手が再び射撃へ移ろうとしたところへ一射を返し、回避を強制して接近を止めた。

 

『キース、ライラの右を見ろ。コウはそのまま船団側だ』

『了解!』

『分かりました!』

 

 キース機が横へ開いたことで、接近機はそのまま突っ込まず進路を外した。コウも追わない。以前なら取れる相手を見て前へ出たかもしれないが、今は輸送船の近くに残り、別方向から来る機体を見ている。

 

 一方で外へ出たユウ中尉も、二機を引きつけたまま距離を取りすぎなかった。

 

『少佐、左の二機はこちらを見ています。船団へ戻る動きはありません。このまま位置を維持します』

「お願いします。追わなくていいです」

『了解』

 

 アルビオンが船団外側へ姿を出すと、相手の動きはさらに鈍った。わざわざ二隻の強襲揚陸艦と五機のMSを相手にしてまで貨物を奪う理由はなかったらしい。何度か牽制を受けた後、識別不明機は一機ずつ距離を取り始めた。

 

『追うな。船団へ戻れ』

 

 バニング大尉の声が飛び、五機はそのまま追撃せず護衛位置へ戻る。こちらの損傷はなく、輸送船団にも被害はなかった。

 

「アルビオン、外側から戻ります。船団後方へ再合流予定」

「確認しました。レイブンも元の航路へ戻せます」

 

 シナプス少佐とレイアム中尉からほぼ続けて報告が入り、ノエルさんが船団側へ護衛継続を返す。結局、俺は一発も撃っていないどころかMSにも乗っていなかったが、それで任務が終わるなら、その方がいい。

 

 帰投した翌日、午前の報告を片付けていると、ノエルさんから執務室へ連絡が入った。

 

『少佐、少し確認していただきたい通信があります。通常の軍務連絡ではありません』

「送ってください」

 

 端末へ回ってきたのは、面会というより非公式協議の申し入れだった。差出人の名前を見て、指が一度止まる。

 

 ブレックス・フォーラ。

 

「これ、本物ですか?」

『今確認しています。経路が何段か挟まっているので、発信元だけ見て断定はできません。ただ、使われている認証の一部は照合できています。少なくとも、外から名前だけ借りた偽装には見えません』

「分かりました。確認を続けてください。内容は?」

『BLACK RAVENの行動について、直接確認したいことがある、とだけ』

 

 その程度なら、こちらから断る理由もない。反ティターンズ勢力が30バンチ以降の俺たちをどう見ているのかは気になっていた。前世で知っている名前だから信用する、で済ませる気はないが、話を聞かなければ今のブレックスが何を考えているのかも分からない。

 

「本人だと確認できたら受けます。非公式で構いません。ただし、こちらから何か約束する前提にはしないでください」

『了解です。確認が取れたらマウアー少尉にも回します』

 

 夕方には認証の確認が終わり、マウアーが候補日時を持ってきた。

 

「三日後の一八〇〇なら、先方の指定回線とこちらの予定が合います。ノエル准尉側で接続前の確認をしてから少佐へ回す形でどうでしょう」

「それでお願いします」

「記録範囲は?」

「通常の外部協議と同じで。残せない条件を向こうが出してきたら、その時に判断します」

「分かりました。ではその条件で返します。それと明日の午前、A.E.へ返す評価書にジョブ准尉から追記が来ています。先に確認しておいてください」

「了解です。そっちから見ます」

 

 マウアーが予定を更新している間に、俺は机の端へ送られてきた評価書を開いた。三日後の話は三日後にすればいい。今は、返すと決めた試験品の方を先に片付けることにした。

 

 三日後。指定された時刻の少し前に会議室へ入ると、シーマ中佐とシナプス少佐はすでに来ていた。

 

 最初は俺一人で受けるつもりだったが、今回聞かれるのはBLACK RAVENがこれからどう動くかという話になる可能性が高い。俺が勝手に答えて、後から二艦の乗員へ結果だけ押しつけるような内容でもなかった。

 

「ずいぶん慎重じゃないか。前にアナハイムと話した時は一人でやったんだろ?」

「今回は機体の売り買いじゃないですからね。部隊そのものの話になったら、俺だけで決めるつもりはありませんよ」

「それならいいさ。反ティターンズを名乗ってるからって、こっちへ都合のいい話だけ持ってくるとは限らないからね」

 

 シーマ中佐が椅子へ座りながら答える。その横で、シナプス少佐が回線条件の表示を確認していた。

 

「こちらは地球連邦軍の部隊だ。その前提が変わらないのであれば、話を聞くこと自体に異論はない。ただし、部隊に何かを求める話になれば、その場で曖昧な返答はしないでもらいたい」

「分かっています。軍事協力まで決めるつもりはありませんし、途中何かあればしっかり言って下さい」

 

 開始五分前にノエルさんから接続準備完了の連絡が入り、マウアーも先方から追加の条件が来ていないことだけ確認して部屋を出た。記録はこちら側で残す。先方から停止を求められれば、その時点で理由を聞いて判断することになっている。

 

 

 一八〇〇ちょうどに画面が切り替わった。

 

 映った男の顔には見覚えがあった。実際に会ったことがあるわけじゃない。それでも、ブレックス・フォーラという名前まで含めて間違えることはない。

 

『初めまして、イズミ少佐。急な申し入れを受けていただいたことに感謝する』

「こちらこそ。BLACK RAVENのレン・イズミです。こちらはシーマ・ガラハウ中佐と、エイパー・シナプス少佐です」

『お二人にも時間を取らせてしまったな』

「構いません。それで、うちの隊長に何を聞きたいんだい?」

 

 シーマ中佐が早速本題へ入れると、ブレックスは僅かに笑ってからこちらへ視線を戻した。

 

『では単刀直入に話そう。30バンチでの一件以来、君たちの部隊について調べていた』

「なるほど。その結果はいかがでした?」

『公開された映像だけでも異例だった。ティターンズの任務へ連邦軍の別部隊が正面から介入し、その後もBLACK RAVENは解体も任務停止もされず、中央直轄部隊として活動を続けている。だから確認しておきたかった。君たちは、現在のティターンズをどう見ている?』

 

 聞き方は簡単だったが、答え方次第ではいくらでも意味が変わる。

 

「組織全体を敵軍と決めているわけではありません。今もうちもティターンズも連邦軍です。ただ、30バンチでやったことを許せるとは思ってませんし、同じようなことが起きれば見なかったことにするつもりもありません」

『では、再び命令系統が衝突しても止めると?』

「状況次第です。俺には他部隊へ何でも命令できる権限はありません。でも、人を大量に殺すようなものを目の前で確認して、それでも相手の肩書だけ見て通すつもりもありませんね」

 

 ブレックスはすぐには返さなかった。

 

『君たちが反ティターンズ部隊として活動する意思がある、と受け取っても?』

「それは違います。BLACK RAVENは連邦軍の部隊です。ティターンズに反対するために存在しているわけでもありません」

 

 ここは曖昧にする必要がない。

 

「そちらが俺たちをエゥーゴへ入れたいという話なら、今の答えは断る、です。BLACK RAVENごとそちらの指揮系統へ入るつもりはありません。うちは中央直轄のまま動きます」

『そこまで性急な要求をするつもりはない。むしろ、その確認をしたかった』

 

 意外でもなかった。最初から引き抜きが目的なら、こんな回りくどい接触はしないだろう。

 

『我々にも色々な人間がいる。ティターンズの拡大を問題視している者が、全員同じ立場にいるわけでもない。君たちがそのままの立場で残るというのであれば、それも一つの手だと思っている』

「だったら話は続けられますね」

 

 そこでシーマ中佐が口を挟んだ。

 

「ただし、そっちが欲しい時だけこっちの情報を出せって話なら断るよ。30バンチでこっちが記録を残したことは知ってるんだろうけど、それを好きに使えると思われても困る」

『当然だ。我々からも情報は出す。そのための接点を作りたい』

 

 ブレックスは少し間を置き、話を続ける。

 

『特に、ティターンズが正規の命令系統から外れた動きをしていると疑われる場合だ。そちらが先に掴むこともあるだろうし、我々が先に知ることもある。互いに全てを開示する必要はない。だが、知らずに同じ場所へ入り、互いを敵と判断する事態は避けられる』

「そこは助かります」

 

 30バンチでも、事前に知っていたことと実際に確認できたことの差は大きかった。情報が一つ増えれば何でも止められるわけじゃない。それでも、何もないよりは動ける。

 

 シナプス少佐がそこで初めて話へ入った。

 

「一つ確認しておきたい。情報交換と軍事協力は別と考えてよろしいか。例えば貴方方から作戦予定を伝えられたからといって、我々が当然に艦を出すという関係にはならないと」

『その通りだ。少なくとも、今日それを要求するつもりはない』

「ならば異論はない。部隊の運用まで外部との約束で拘束されることは受け入れられないのでね」

『理解している』

 

 シナプス少佐はそれ以上広げなかった。こちらとしても、その線が確認できれば十分だった。

 

 ブレックスの視線が再び俺へ戻る。

 

『もう一つ、30バンチについて聞いておきたい。外部へ出た記録は、毒性物質と思われる試料を回収したところで終わっている。その後について、君たちは何か確認しているのか?』

 

「確認しています」

『内容を聞いても?』

「正式な分析結果ではG3ガスでした。うちだけで出した結果じゃありません。連邦側の分析機関でも同じ結果が出ています。まぁその機関と証拠は爆破されましたが」

『……やはりそうか』

 

 ブレックスの表情が僅かに変わった。

 

『その結果は中央へ?』

「提出済みです。輸送船の爆破についても報告しています。ただ、その後どう扱われたかはご存じの通りかと」

『公には何も出ていない』

「はい」

 

 ここで全記録をそのまま渡すつもりはなかった。最初に話した相手へ、保管している物を全部差し出すほど信用しているわけでもない。

 

「分析記録も、それ以外の記録も残しています。ただ、今日ここで全部渡すとは言えません。必要なら何に使うのか、どこまで広げるのかを聞いてから決めます」

『それで構わない。存在が確認できただけでも大きい』

 

 シーマ中佐が横から俺を見る。

 

「あんた、それは向こうが欲しいと言った時にちゃんと条件を決めなよ。一度出した情報は戻ってこない」

「分かってます」

『ガラハウ中佐の懸念はもっともだ。我々も、情報源を不用意に潰したいわけではない』

 

 その返答だけで信用できるわけではないが、少なくとも話は通じる。

 

 そこからは、具体的に何を連絡対象にするかを詰めた。互いの作戦計画を丸ごと渡すような話にはしない。ティターンズによる民間人への攻撃や、通常の軍務では説明しづらい部隊移動を掴んだ場合、共有可能な事実だけを流す。同じ宙域で双方の部隊が活動する可能性があるなら、相互に敵と誤認しないための最低限の情報を出す。

 

 逆に、それ以上のことは案件ごとに判断する。

 

『こちらから連絡を入れたというだけで、君たちに出動義務が発生することはない。それは約束しよう』

「こっちから情報を出した場合も同じです。そちらに動けと命令するつもりはありません」

『それでいい』

 

 話がまとまりかけたところで、シーマ中佐が椅子の背へ身体を預けた。

 

「だったら一つだけ追加だ。そっちの部隊が近くにいるのに、こっちへ何も知らせずティターンズを引っ張ってくるような真似はやめてもらいたいね。事情を知らないまま挟まれるのが一番面倒だ」

『可能な限り事前に知らせる。ただし、こちらにも全てを自由に動かせる立場ではない者がいる。その点は理解してほしい』

「最初から全部できるなんて期待してないさ。できない時に、できるふりをするなって言ってるんだよ」

『覚えておこう』

 

 しばらく話した後、最初の申し入れよりも少し具体的な連絡方法を一本だけ残すことになった。常時接続でも専用回線でもない。連絡が必要になった時に認証を通し、ノエルさんたちが発信元を確認してから俺へ上げる。それだけだ。

 

 ブレックスとの通信が切れた後もしばらく三人とも席を立たなかった。

 

「まあ、思ったよりはまともだったね」

 

 最初に口を開いたのはシーマ中佐だった。

 

「だからって信用するのは別だけどさ。あっちはあっちで、ティターンズに逆らえる部隊が使えると思ってる。こっちも向こうの情報網が使える。今はそれでいいんじゃないかい」

「俺もそのくらいで考えてます」

「なら、次に何か頼まれた時に今日の話を忘れないことだね。情報交換と共同作戦は別だって自分で言ったんだから」

 

 シナプス少佐も頷く。

 

「接点を持つこと自体は有用だろう。ただ、秘密の連絡経路というものは、使っているうちに境界が曖昧になりやすい。実際に艦や人員を動かす話が出た時は、その都度改めて判断すべきだ」

「はい。そこは分けます」

 

 二人が会議室を出た後、マウアーを呼び、今日決まった範囲だけを伝えた。ブレックス准将と何を話したかを全部書き起こす必要はない。必要なのは、新しい連絡先が一つ増えたことと、それが俺への直接連絡であり、軍務上の命令系統ではないという扱いだった。

 

「では、外部連絡先として登録します。通常の軍通信とは分離、着信時はノエル准尉側で認証確認。その後、少佐へ上げる形ですね」

「お願いします。連絡が来たからって予定を全部空ける必要はありません。緊急性を見てください」

「分かりました。そこはこちらで分けます」

 

 ちょうどそこへレイアム中尉から翌日の出航予定が届いた。補給作業は予定どおり終わり、アルビオン側との発進時刻にも変更はないらしい。

 

 マウアーが新しい連絡先を登録し終える横で、俺は次の任務資料を開いた。ブレックスからまた連絡が来るのがいつになるかは分からない。来なければ、それはそれで構わない。

 

 明日になれば、また二隻を動かす仕事がある。それを先に確認しておく方が、今はずっと具体的だった。

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