続・黒いガンダムの宇宙世紀   作:いずりょう

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少し長めです


第50話 新しいガンダム

 翌朝、レイブンの会議室へ入ると、ジョブはもう端末を開いていた。俺が席につく頃にはシーマ中佐とクリスさん、クスコさんも揃い、マウアーは俺の横ではなく少し離れた席で今日使う資料と通信記録の準備を確認している。

 

「午後の予定はそのまま空いてます?」

「はい。今日の協議が延びても対応できます。ただし、ここで正式契約まで終わらせる予定にはしていません」

「そこまで今日やったら午後どころじゃなくなりますね」

「ですから先に言っています」

 

 昨日自分で入れた予定なのに、始まる前から仕事を増やすなと釘を刺された。

 

 通信が繋がり、画面の向こうにA.E.側の担当者と技術担当が映る。これまで何度か試験品の話をしてきた相手なので、長い挨拶はなかった。

 

『では、始めさせていただきます。まず結論から申し上げると、現行機をただちに置き換える必要がある、という提案ではありません』

 

 横でクリスさんが小さく頷いた。

 

「今の機体はまだ動いてます。更新するからって、明日から使うなと言われても困りますから」

『承知しています。今回こちらが問題としているのは、現在使えるかではなく、今後も同じ条件で維持し続けることが適切かです。性能要求だけでなく、部品供給、整備負担、構造の世代差まで含めて判断する時期に入ったと考えています』

 

 ガーベラやネティクスは特にそうだろう。まだ戦える。それと、何年先まで同じように使えるかは別の話だ。

 

 技術担当が表示を切り替えた。去年までこちらが返した評価項目が一覧になっている。反応速度や高負荷時の挙動だけではない。部品を交換した後の精度、整備に掛かった時間、壊れ方、何度も着脱した時の変化。途中からA.E.側が細かく聞き始めた部分まで含まれていた。こうやって見るとかなりの数してるんだな。

 

『いただいた評価結果は、こちらでもかなり利用価値の高いものになりました。実戦機を長期間運用しながら、整備側とパイロット側の両方から同じ試験品を見てもらえる環境は多くありません』

 

 シーマ中佐が椅子へ深く座ったまま、画面を見る。

 

「ずいぶん褒めるじゃないか。で、欲しいデータが増えたから、次も試してくれって話かい?」

『端的に言えば、その側面はあります』

 

「そこを隠さないなら話は早いね」

 

 A.E.も慈善事業じゃない。こっちもそれは最初から分かっている。向こうは試験と実運用のデータが欲しい。俺たちは次の世代の技術へ早く触れられる。問題があれば採用せず返す。それでここまで続いてきた。

 

「確認しておきたいんですが、今回の提案って、うちから連邦へ出してる正式な更新要求とは別ですよね」

 

『はい。ガルバルディβの後継、ならびにジム・カスタム系の後継については、連邦軍側の正式な要求・調達手続きが進行していると聞いています。こちらからその案件を置き換える提案ではありません』

 

 クリスさんが視線だけこちらへ向けた。

 

「じゃあ私は今日は評価側ですね」

「そういうことになりますね。クリスさんたちの次は連邦側で進める。今日ここでA.E.の機体に変える話にはしません」

『その認識で結構です。今回こちらから直接提示する評価案は、別に四件あります』

 

「四件?」

 

 聞いていたのは更新の提案があるというところまでだ。数までは知らなかった。

 

 画面が切り替わった。最初に出たのは簡単な開発分類と、その下に並ぶ四つの枠だった。

 

 MSBR  Mobile Suit BLACK RAVEN。

 

「……そのままですね」

『内部で目的が分かりやすい名称を使った結果です。販売名称を決める会議ではありませんので』

「分かりやすいのは嫌いじゃないですけど」

 

 ジョブは俺たちのやり取りを気にせず、表示された資料を読んでいた。

 

「これ、四機共通のフレームじゃないんですね」

『違います。共通する技術要素はありますが、シリーズ一種類の機体に装備だけを変えたものではありません。それぞれ評価したい設計課題が異なります』

 

「もう設計は進んでる?」

『はい。これまでの評価結果を反映し、順次開発を進めていました。今日ここで仕様を一から決めていただくものではありません』

 

 そこは俺が思っていたより先まで進んでいた。

 

「じゃあ今日は、欲しい機体を注文する場じゃなくて、そっちが作ってる物を見て使えるか判断する場ですね」

『その通りです。必要であれば操縦系や応答、装備構成などに調整は入れます。ただし、根本から別の機体へ作り直すことを前提にはしていません』

「それなら見せてもらいましょう」

 

 四つあった枠の一番上が開いた。

 

『MSBR-01。ガーベラ・リファイン。想定評価担当はシーマ・ガラハウ中佐です』

 

「まずあたしの機体からかい」

 

 シーマ中佐が少しだけ身を乗り出した。画面に出た機体は、今のガーベラからまったく別のものへ変えたようには見えない。細部はかなり整理されているが、高速戦闘を前提にした細身の構成は残されている。

 

『EX-01Gガーベラの運用結果を基礎に、現世代の構造技術で新造した発展機です。高速・高応答の実戦機という基本思想は維持しています』

 

「そこを変えられちゃ困るね。今のが使いにくくて替えるわけじゃないんだから」

 

『承知しています。今回大きく変更したのは内部構造です』

 

 表示が外観から骨格へ切り替わった。全身を通るフレームが先にあり、その外側へ装甲や機器を取り付けていく構造になっている。俺が以前A.E.へ話した考え方が、そのままではないにしても、もう一機分の構造としてまとまっていた。

 

『ムーバブル・フレームを採用しています。機体の骨格と外装、搭載機器を従来より明確に分離したことで、整備時に必要な部分だけを外して内部へアクセスしやすくしています』

 

 ジョブがすぐに資料を拡大した。

 

「この辺、外装を外した後に駆動部まで直接入れるのか?」

『はい。現行ガーベラでは周辺部品までかなり外さなければ届かない箇所がありますが、そこは配置から見直しています。また、再組立時に外装側で機体全体の精度を取り直す範囲も減らしています』

 

「それなら整備は楽になるな。部品そのものより、外して戻すまでの手間がかなり違う」

 

 シーマ中佐は性能表より、ジョブが拡大している構造図の方を見ていた。

 

「早く直せるってことかい?」

「実物を見ないと断言はできないけど、考え方としてはそうです。中身を見るために余計なところまでばらさなくていいなら、その分は確実に減ります」

「なら悪くないね」

『新素材による軽量化とフレーム剛性の向上も進めています。運動性能についてはEX-01Gより下回らせる意図はありません』

「意図じゃなくて、実際どうなってるかは乗れば分かるさ。今のガーベラより鈍いなら、その時はそう言うよ」

『それで結構です。今回も評価結果ありきで採用を求めるものではありません』

「なら話は早い。次を見せな」

 

 A.E.側もそこでガーベラ・リファインの説明を切った。

 

『続いてMSBR-02。ネティクスII。想定評価担当はクスコ・アル少尉です』

「私ね」

 

 表示された機体を見て、クスコさんが画面へ視線を寄せる。ネティクスの単純な改修ではない。こちらもムーバブル・フレームを使った新造機だ。ただ、背中には見覚えのある大きな構造が残っていた。

 

「背中は今の機体に近いのね」

『意図的に残しています。ただし、現行機と同じ大型有線式ビットそのものではありません』

 

 背部構造だけが拡大された。

 

『新型ではこの部分をビットラックとして使用します。遠隔兵器は無線式へ変更し、ここから展開、収容する構成です。ラックとして残したのは便利なのもありますが、通常時の移動の感覚を現行機に近づける為です』

「なるほど」

 

 俺もそこで違いが分かった。見た目の系統はネティクスから大きく離れていない。それでも、今までのように機体とビットの間へ線を引く必要はなくなっている。

 

『最大の変更点はサイコミュと遠隔兵器の更新です。有線式から無線式へ移行したことで、母機との位置関係や展開方向に対する制約を減らしています』

 

 クスコさんが資料を見ながら頷く。

 

「自由に動かせる範囲はかなり広がりそうね。今まではどうしても線の長さと取り回しを考えなきゃいけなかったから」

『そこは大きな利点になると見ています。ただし、操作系そのものも更新されていますので、旧機と同じ感覚で扱えるとは考えていません』

「それはそうでしょうね。有線が無線になったから難しくなるというより、新しいサイコミュと新しいビットに私が合わせる必要があるってことでしょう?」

『はい。まさにその比較をお願いしたいと考えています』

 

 現行ネティクスで何年もビットを扱ってきたクスコさんなら、旧方式との差を取るには一番いい。

 

「動きの自由度が上がるのは歓迎するわ。ただ、それで反応が過敏になったり、思った位置で止めにくくなるなら意味がない。そこは実際に使わないと分からないわね」

『評価項目にも入れています』

 

 ジョブは背部ラックの図を見たまま口を挟んだ。

 

「収容した状態の整備は? 無線にした分、ビット側の機器は増えるだろ」

『その点も評価対象です。ラックへ収容した状態での点検、個別取り外し、機体側サイコミュとの接続確認まで含めた整備手順を用意しています』

「じゃあそこも実物を見てからだな」

「ええ。私もそれでいいわ」

 

 二機目まで聞いたところで、俺は最初に表示された四つの枠を思い出した。

 

 シーマ中佐、クスコさん。あと二つ。今のRX-81RCも更新対象に入っている。それでも、残り一人が誰なのかは分からない。

 

 A.E.の担当者が三つ目の資料を開いた。

 

『では次です。MSBR-03。名称はアステリオン』

 

 機体名の下へ、想定評価担当者が表示される。マウアー・ファラオ少尉。それまで記録を取っていたマウアーの手が止まった。

 

「……私ですか?」

『はい。今回の想定評価担当はファラオ少尉です』

 

 マウアーは一度だけ俺を見た。俺も聞いていないので首を振るしかない。

 

「大佐が指定したわけではないんですよね」

「してないですよ。俺も今知りました」

「では先方にお聞きします。私を選んだ理由は?」

 

 驚いたのは一瞬だったらしい。もう声はいつもの実務的なものへ戻っている。

 

『こちらへ正式に開示されている範囲で、ファラオ少尉の操縦資格と訓練評価は確認しています。現在、特定のMSを正規担当していないことも選定理由の一つです』

 

「機体の方は?」

 

『アステリオンは、これまでいただいたジム・カスタム系の運用データ、整備評価を基礎に設計した高性能小数高価量産機です。ただし、ジム・カスタムの改修型ではありません』

 

 画面に機体全体が表示された。

 

 ガーベラ・リファインやネティクスIIのように、元になった機体の形を強く残したものではない。それでも連邦系のMSだということはすぐに分かる。極端な装備も見当たらず、構造図の方には他の二機と同じくムーバブル・フレームが使われていた。

 

『目標は、一人のパイロットに合わせた専用高性能機ではありません。高い応答性と機動性を持たせながら、正規の訓練を受けたパイロットが運用でき、整備と量産を成立させることを重視しています。いうなれば高い指揮官機ですね』

 

 クリスさんが画面を見ながら口を開く。

 

「高性能高価量産型、ですか。性能を上げれば扱いにくくなるところを、どこまで普通の機体として残せるかを見る?」

『はい。高性能だから操縦者に無理をさせる、整備側へ負担を押しつける、という構成にはしていません』

 

「それならジム・カスタムのデータを使った理由も分かりますね。あれは前世代の高価量産機といっていい」

 

 かなり優秀だ。速いし反応もいい。それでも、何か一つの特殊機能を使うために他を犠牲にした機体ではない。長く部隊で使ってきたから、A.E.側にも参考になる部分は多かったはずだ。

 

 表示が操縦席へ切り替わる。

 

『操縦系も現世代仕様へ更新しています。パノラミック・モニターとリニア・シートを採用していますが、これについても特殊な操縦方式を要求するものではありません。武装も通常のビームライフル、ビーム・サーベル、シールドを基本とし、連邦標準系の装備を運用できる構成を想定しています』

 

「専用武器ありきじゃない、と」

 

 ジョブが確認すると、技術担当が頷いた。

 

『はい。アステリオンそのものの性能を評価したいので、特別な兵装を使わなければ成立しない機体にはしていません。コストの高い量産型の次世代機という形になります』

 

 マウアーは資料を一通り確認してから、自分の端末へ何かを書き込んだ。

 

「私が乗るとしても、副官勤務からパイロット勤務へ変更するという話ではありませんよね」

「それは困ります」

 

 先に俺が答えた。

 

「俺付きの副官が今の仕事です。機体を一機渡されたからって、急にそっちを本職にするつもりはないです。すごく困ります」

 

 隣でマウアーが、珍しく焦る俺を微笑ましいものでも見るように、わずかに口元を緩めていた。

 

『弊社側から人事上の役割を指定する意図もありません。あくまで評価担当の提案です』

「分かりました。それなら、実機を確認してから判断します。操縦系の調整が必要なら、その段階で伝えます」

 

 マウアーらしい返事だった。仕事として何が変わるのかを確認して、それから機体を見る。

 

「しかし、マウアーまで乗るようになると本当に忙しくなるな」

「大佐が言いますか?」

「俺は前から乗ってるから別です」

「そういう問題ではありません」

 

 クリスさんが笑いを堪えながら画面へ視線を戻した。

 

「あと一機あるんでしょう?」

 

『はい。これが最後の案件です』

 

 表示が切り替わる。機体名より先に、頭部を見て分かった。

 

 ガンダムタイプだ。

 

 RX-78系の形をそのまま新しくしたようなものではない。全体に細身になり、線も鋭くなっている。それでも、初めて見る機体なのに連邦のガンダムだと迷わず分かる形をしていた。

 

『MSBR-04。アルコルガンダム。想定評価担当はレン・イズミ大佐です』

「やっぱり俺のもあるんですね」

『流石に隊長機は作らせてもらってますよ。RX-81RCの運用データは、今回の四案件の中でも特に長期間蓄積されています。アルコルは、それを次世代構造へ直接置き換えるというより、大佐の戦闘特性から必要な要素を抽出して新規設計しています』

 

 資料が展開される。

 

 ムーバブル・フレーム。高い剛性。姿勢制御と加減速への追従。センサーと射撃管制。並んでいる項目を見る限り、何か一つだけ突出させる方向ではなさそうだった。

 

『重視したのは、入力に対する応答、姿勢変更から次動作へ移るまでの速さ、加速と減速を繰り返した際の安定性です。射撃管制も精度を優先しています。一方で、近接戦闘能力も落としていません』

「なるほど」

『あとはパッケージ装備も除外しました。RX-81RCの運用を見る限りほとんど使われることがなかったようなので。』

 

 痛いところをつかれた。シンプルな装備で安定してるほうが好みなんだよな。

 

 武装表示へ切り替わる。通常のビームライフルとビーム・サーベル。それとは別に、細長いライフルが一つ表示された。

 

「これは?」

『長距離精密射撃用のロングビームライフルです。こちらではLBRと呼称しています』

「長距離用なら、火力を上げた大型砲ですか?」

『中距離火力自体は上がってますが大型ではありません。大出力のビームを広く撃ち込む兵器ではなく。拡散を抑え、距離が伸びても射撃精度と威力を維持することを重視しています』

 

 それなら用途はすぐに分かる。

 

「遠くなっても、狙ったところへ当てるための銃ですか」

『その認識で結構です。大佐の過去の射撃記録を見る限り、単純に威力を増やすより、その方が能力を生かせると判断しました。相手のレンジの外から撃ち込む意図で装弾数が多めです』

「それは使ってみたいですね」

 

 撃破する時は撃ち抜けばいい。止めたい時には武器や推進器を狙う。距離が伸びた時にそれを同じようにできるなら、使い道はいくらでもある。

 

 ジョブはもう武器の構造資料を開こうとしていたが、技術担当が別の項目を先に表示した。

 

『アルコルには、もう一つ実験装備があります』

 

 その名称が出た瞬間、俺の目が止まった。

 

 バイオセンサー

 

 知っている。記憶の中にはっきり残っている。ただの操縦補助装置として片付けていいものじゃない。パイロットの意志や感情へ反応し、時には機械の理屈だけでは説明できないところまで踏み込んでいた。とんでも装置だ。

 

「……それ、もう作ってるんですか?」

『もう?まだ試験段階ですが、搭載しています』

「どこまで解析できてます?」

 

 俺の聞き方が変わったのか、クリスさんがこちらを見た。

 

 技術担当は少し驚き間を置いた。

 

『その、完全にはできていません』

「完全には、っていうか。分からない部分があるまま機体に積んだんです?」

『そのための実験機でもあります。バイオセンサーが現時点で確認できているのは、パイロット側の意志や感応に応じて、通常の操縦入力だけでは説明できない応答変化が発生することです。ただし、発生条件も増幅量も完全には一定していません』

 

 やっぱりそういう代物か。俺の記憶にあるものと、今A.E.が作っているものが完全に同じとは限らない。それでも、この説明を聞いてほぼ同様の物と見て間違いないだろう。

 

 クリスさんも表情を変えている。

 

「それって安全だと判断できる段階なんですか?」

『安全だと断言できる段階ではありません。通常の機体制御については従来どおり安全条件を設けていますが、バイオセンサーが介在した時の全挙動を予測できるとは申し上げられません』

「それでも俺なら載せてもどうにかなると?」

『…否定はしません』

「そこは否定してほしかったな……」

 

 シーマ中佐が横から画面を見る。

 

「あんた向けだけ急に物騒になったね」

「俺もそう思います」

『大佐を選定したのは、ニュータイプ能力だけが理由ではありません。これまでの評価で、機体限界付近でも操縦入力の再現性が高く、イレギュラーな場面にも冷静に対処でき、もし異常な応答が発生した際に自分の操作との差を切り分けられる可能性が高いと判断しています』

「つまり、俺なら使いこなせるからじゃなくて、余計なことをした時に余計なことをしたって分かりやすい?」

『かなり単純化すれば、その通りです』

 

 それならまだ納得できる。使いこなせる前提で渡されるよりはずっといい。俺だって、前世で名前を知っているだけで、この時代に作られた実物の中身まで分かるわけじゃない。

 

「バイオセンサーだけは、他の機能と分けて評価しないといけませんね。普通に動かした時のアルコルがどうなのか分からないまま、そっちの影響まで混ぜたら判断できない」

『こちらも段階評価を想定しています。詳細な試験手順については実機確認時に詰めさせてください』

「クリスさんとジョブにも見てもらいます。それで危ないってなったら、その場で止めますよ」

「当然です。レンが乗れると言っても、こっちが止めることはありますからね」

「そこは分かってます」

「ならいいです」

 

 四機分の表示が再び一つの画面へ戻った。

 

 ガーベラ・リファイン。ネティクスII。アステリオン。アルコルガンダム。

 

 まだどれも俺たちの機体になったわけではない。資料を見ただけで採用を決めるつもりもなかった。

 

「四機とも、実機を確認できる段階なんですよね?」

『はい。各案件とも実機評価へ移行できます。具体的な受け渡し方法、費用、機材の扱い、提供いただく評価データの範囲については別途条件を提示します』

「分かりました。今日ここで決めるのは、実機評価へ進むところまでにしましょう。採用するかはその後です」

 

 マウアーが止めていた記録を確認し、そのまま項目を整理する。

 

「では、A.E.側から四案件それぞれの評価条件と日程候補を受領。費用、機材の扱い、開示可能なデータ範囲は案件ごとに確認します。正式な配備や契約形態は、その後に別途判断でよろしいですか?」

「それでお願いします」

『こちらも問題ありません』

 

 ジョブが端末を閉じる前に、四機分の資料を自分の整備用区分へ振り分けた。

 

「実物が来たら、まず外から見るぞ。性能試験の前に、整備口と分解手順を確認したい」

「ガーベラはあたしも立ち会うよ」

「ネティクスIIもお願い。ラックの方は最初に見ておきたいわ」

「私は操縦系の確認からでいいですか?」

「アステリオンはそれでいいと思います。クリスさん、全体の安全評価をお願いできます?」

「もちろん。アルコルは特にね」

「そこだけ強く言われると怖いんですけど」

 

 誰も否定しなかった。

 

 通信が終わると、マウアーの端末にはもう四件分の追加作業が並んでいた。

 

「午後、空けておいて正解でしたね」

「正式契約までは今日やらないって言ってませんでした?」

「やりませんよ。今日決まった分を整理するだけです」

「それで午後が埋まるんじゃないですか」

「はい」

 

 どうやら昨日空けておいた時間は、そのまま消えるらしい。




一応アルコルガンダムの設定画っぽいものを置いておきます
こちらで設定したものをAI生成で出力したので細部に違和感があります  バックパックの差異とかアンテナの位置が少し不自然とか なのであくまでイメージとしてみてください  少し遠くからみる感じで


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