改変の影響が大きかった人です。
時間を少し遡る。
レイブンが地球へ降りる準備を始めるより前。ジャブローで大規模な爆発が起きた直後、カラバは地上へ降りたエゥーゴ部隊との連絡を待っていた。
ハヤトが使っている中継拠点は、ジャブローから十分に距離を取っている。ここから基地の様子が見えるわけではないし、現地へ救援部隊を送り込む予定もなかった。降下作戦へ割り込むのではなく、出てきた部隊を地上で受け取る。そのために通信要員と移動手段を前へ出している。
アムロは通信卓の脇に立ち、混線した回線から上がってくる報告を聞いていた。ハヤトは届いた情報を確認しながら、通信員へ問い返す。
「核で間違いないのか?」
「まだ正式確認は取れていません。ただ、規模から見て可能性は高いと」
「分かった。ジャブローへ近づいている連絡員には、そのまま退避を続けるよう伝えてくれ。状況確認のために戻る必要はない」
指示を受けた通信員が別の回線を開く。
爆発が起きたことは分かった。それ以上は、ほとんど分からない。基地内部にいた部隊がどれだけ逃げたのか、エゥーゴが退避できたのか、今どこにいるのか。断片的な話は入ってきても、確定したものはなかった。
アムロは壁面の地図を見た。
「ハヤト、ケネディは?」
「受け入れの準備は進めてある。向こうが出てきてさえくれれば、少なくとも降りる場所と補給は用意できる。宇宙へ戻す人間がいるなら、そっちの手配も始める」
「ジャブローからここまで来られる状態なら、か」
「ああ。そこだけは俺たちじゃどうにもならん」
ハヤトの言葉は淡々としていた。カラバが地上に拠点と人脈を持っていても、ジャブロー内部の戦闘まで代わってやれるわけではない。
今は待つしかなかった。しばらくして、通信員の一人が受話器を押さえたままハヤトを振り返った。
「ハヤトさん、エゥーゴからです。ジャブローを離脱した部隊から、カラバとの接触を求めています」
「繋いでくれ」
ハヤトがすぐ通信卓へ移る。アムロも画面の端に出た通信状態を確認した。雑音が多い。だが回線そのものは生きている。
『こちらエゥーゴ降下部隊。ジャブローから離脱した。ガルダ級超大型輸送機を確保している。カラバ側へ地上支援を要請したい』
ハヤトの表情がわずかに変わった。
「こちらカラバ、ハヤト・コバヤシです。通信を受けました。飛行を継続できますか?」
『可能だ。ただし部隊の再編と補給が必要になる。負傷者もいる』
「了解しました。ケネディ宇宙港はこちらで確保しています。受け入れ準備も進めています。現在地と進路をこちらへ送ってください。合流できる地点まで、こちらから出ます」
『分かった。データを送る』
数秒遅れて、通信卓へ位置情報が入った。
アムロが地図を見ると、アウドムラはすでにジャブローから大きく離れている。
「脱出できていたんだな」
「ああ。しかも輸送機を確保している。これなら移動も何とかなる」
ハヤトは返事をしながら、別の回線を開いた。
「ケネディへ連絡。エゥーゴ降下部隊との接触が取れた。ガルダ級超大型輸送機でそちらへ向かわせる。負傷者の受け入れと補給準備を急いでくれ。それから、こちらも合流のため出る」
『了解しました』
通信を切ると、ハヤトはアムロを見た。
「行けるか?」
「そのために来たんだ。行こう」
「ああ」
二人が乗り込んだのは、骨董品の爆撃機「B-70」。物資を運ぶためではなく、直接合流し、その後の移動を繋ぐための足だ。離陸してからも、ハヤトはケネディとエゥーゴ双方へ連絡を続けた。アムロは隣の席で受信内容を確認し、送られてきた位置を地図へ重ねる。
「エゥーゴ側の進路、このままでいいのか?」
「少し北へ振る。ケネディまで一直線に飛ばす必要はない。こっちで連絡を通している区域を使わせる」
「分かった。向こうにも送る」
アムロが修正した経路を通信員へ渡す。ハヤトはその間にも、ケネディ側の受け入れ状況を確認していた。補給、負傷者の搬送、宇宙へ戻る人員がいた場合の手配。まだ人数も必要量も分からないため、確定できない部分は残してある。
アムロが口を挟む余地はほとんどなかった。
ハヤトはもう、一年戦争の頃のように誰かの指示を待って動くパイロットではない。地上側を受け持つ人間として、必要な相手へ自分で話を通している。
「ケネディからです。医療班の待機に入れるそうです。補給については、アウドムラ側の必要量が分かり次第調整すると」
「それでいい。全部揃うまで待っていたら遅い。先に受け入れだけ固めてくれ」
ハヤトが答え、通信員がそのまま内容を返す。やがて前方の雲の切れ間に、大きな影が見え始めた。最初は地形の一部のようにも見えた。距離が縮まるにつれて輪郭がはっきりし、巨大な主翼と胴体が視界を占めていく。
「……でかいな」
「ガルダ級を近くで見るのは初めてか?」
「地上で飛んでるところを、こんな距離から見るのはな」
ジャブローからエゥーゴが持ち出したアウドムラだった。巨大な機体は高度を保ったまま飛行を続けている。周囲にはMSの機影もある。少なくとも、ジャブローから逃げ出しただけで限界という状態ではなさそうだった。
カラバ機の接近に気づいたアウドムラから通信が入る。
『カラバの航空機へ。こちらアウドムラ。確認した』
ハヤトが回線を取った。
「こちらハヤト・コバヤシです。これよりケネディまでの誘導を引き受けます。そちらの航行に問題は?」
『現状、飛行継続に支障はない』
「了解しました。ケネディ側には受け入れを要請済みです。負傷者がいると聞いています。到着後すぐ医療班へ回せるよう手配しています」
『助かる。こちらも機内を整理する』
ハヤトの話し方は、さっきまでアムロへ向けていたものとは違っていた。カラバ側の責任者として必要なことを確認し、決まったことだけを相手へ渡している。
アムロは地図を確認した。
「ハヤト、こっちが先に出た方がいい。送った航路へ入る」
「ああ。頼む」
操縦席へ指示が入り、カラバ機がアウドムラの側面前方へ出た。十分な距離を保ったまま、ケネディ方面へ機首を向ける。その後ろで、巨大な輸送機もゆっくりと進路を合わせた。
ハヤトがもう一度回線を開く。
「こちらが先行します。送った航路でケネディへ向かってください。地上との連絡はこちらで繋ぎます。途中で状況が変われば、こちらから知らせます」
『了解した。誘導を頼む』
通信が切れると、ハヤトはすぐ次の連絡先を呼び出した。到着してから決めるには遅いことが、まだいくつも残っている。アムロはその隣で、後方モニターに映るアウドムラを見た。エゥーゴの降下部隊が誰を乗せ、ジャブローで何を見てきたのか。詳しい話はまだ聞いていない。カラバ機が進路を保ち、その後をアウドムラがケネディへ向かっていった。
ケネディ宇宙港へ近づく頃には、アウドムラ側から必要な情報も少しずつ上がってきていた。負傷者の数、補給が必要な物資、宇宙へ戻す予定の人員。ジャブローを脱出した直後だけあって、どれもまだ整理途中だったが、ケネディ側も受け取ったものから準備を始めている。
先行したB-70が着陸すると、ハヤトは機体を降りるなり管制施設へ向かった。アムロも後を追ったが、途中で滑走路側へ目を向ける。宇宙港の一角では、すでに打ち上げ用シャトルの点検が進んでいた。
「もうシャトルまで動かしてるのか」
「ジャブローから降りてきた連中を、全員このまま地上に残すわけにもいかんからな。アーガマへ戻る人間は早めに上げたい」
歩きながら答えたハヤトは、そのまま近くの要員へ手を上げた。
「アウドムラは予定通りこちらへ入る。着陸したら負傷者を先に降ろしてくれ。補給班は向こうの担当者と直接必要量を詰めろ。シャトルの方は急がせても、安全確認は省くなよ」
「了解です」
指示を終える頃には、遠くから低い音が響き始めていた。
巨大な機影が宇宙港へ近づき、誘導に従って高度を落としていく。空を飛んでいる時でも大きかったが、地上へ降りてくるとその巨体はさらに際立った。アウドムラが滑走路へ接地し、長い距離を使って速度を落としていく。
完全に停止する前から、地上では受け入れの車両が動き始めていた。
「アムロ、俺は向こうの責任者と話をしてくる。お前はどうする?」
「俺はこっちを見てる。何か足りないなら、その時に呼んでくれ」
「分かった」
ハヤトは短く答え、アウドムラへ向かった。
アムロはその場に残り、地上要員の動きを見ていた。やがてアウドムラのハッチが開き、最初に負傷者が運び出される。その後から人員や機材が続き、宇宙港側のスタッフが行き先を振り分けていく。
戦闘を抜けてきたばかりなのは、離れていても分かった。疲れた顔の兵士もいれば、汚れたままのノーマルスーツで作業を手伝っている者もいる。それでも、基地を吹き飛ばされて命からがら逃げてきた部隊にしては混乱は少なかった。
しばらくして、MSの搬出も始まった。最初に見えたのはガンダムMk-IIだった。その近くにはリック・ディアスも見える。さらに奥から、金色のMSが姿を現した。
アムロはそちらへ目を止めた。
「……ずいぶん派手だな」
近くにいたカラバの整備員が、同じように機体を見上げる。
「百式っていうらしいですよ。エゥーゴの新型だそうで」
「百式……」
目立つ色をしている、見た目だけで判断する気はないがこんな派手なの誰が乗るんだ?アムロは少し眺めただけで視線を外した。今は機体を見物している場合でもなかった。
管制施設へ戻ると、ケネディ側の担当者がシャトルの予定を確認していた。
「打ち上げ可能になるまで、どのくらいです?」
「整備自体は進んでいます。ただ、搭乗者と積載物がまだ確定していません。エゥーゴ側と詰める必要があります」
「アウドムラから必要な人員が来たら、そのままハヤトへ回してください」
「分かりました」
そこで別のカラバ要員が入ってきた。
「アムロ少佐、ハヤトさんは?」
「アウドムラの方だと思う。何かあったのか?」
「カイ・シデンという人から、ハヤトさん宛てに連絡が届いています。本人へ直接渡してほしいと」
「カイから?」
一年戦争以来、名前を聞くこと自体はあっても、こういう形で出てくるとは思っていなかった。
「分かった。ハヤトに渡しておいてくれ」
「はい」
要員が封書を持って出ていく。
アムロはもう一度窓の外を見た。アウドムラの周囲では、まだ人と車両が行き交っている。シャトルを宇宙へ上げるなら、その準備も急がなければならない。地上へ降りたエゥーゴをどこまで送り、誰を宇宙へ戻すのか。ケネディでは、そのための作業が始まっていた。
色々変わった結果アムロさん早期にカラバに参加済です。もちろんですけど説得なんてないのであれは起きないです