ケネディを離れたアウドムラはカラバ側が使える補給地点や連絡経路を拾いながら進路を変え、必要な整備を機内で続けている。格納庫では百式とMk-IIの作業が優先され、その横ではケネディで打ち上げられなかったもう一機のリック・ディアスが固定具に繋がれていた。
アムロは開いたコクピットを下から見上げた。アポリーが使っていた機体だが、本人は別シャトルで宇宙へ戻っている。機体そのものに大きな損傷はなく、整備班も地上で使える状態に戻していた。
「こいつ、俺が使っていいのか?」
「その話ならエゥーゴにも通した。クワトロ大尉も構わないと言ってる」
隣にいたハヤトが答えたところで、格納庫の奥からクワトロ本人が歩いてきた。カミーユに殴られた頬にはもう目立つ跡は残っていない。
「機体を余らせておく余裕もない。君が使えるなら、その方がこちらも助かる」
「そういうことなら借りる」
「好きに調整して構わん。ただし、返せる程度には残しておいてくれ」
「最初から壊すつもりで乗る奴はいないだろ」
アムロが昇降索へ手を掛けると、クワトロはそれ以上何も言わず百式の方へ向かった。ハヤトも別の連絡が入ったらしく格納庫を出ていく。
コクピットへ収まって電源を入れる。全天周モニターが立ち上がり、機体各部の状態が表示された。操作系の考え方は分かるが、使い慣れた連邦系MSとは細かい部分が違う。
「右のペダルだけ少し感度を上げれるか?」
『できます。アポリー大尉の設定が残ってますが、全部初期化しますか?』
「いや、そこまではいい。まずこれで動かしてみる」
整備員へ返しながら、操縦桿を何度か動かした。初めて触る機体だからといって、全部自分向けに変えればいいわけでもない。慣れるなら実際に乗った方が早い。
ケネディから持ち帰った戦闘記録の照合も進んでいた。あの時ロベルトを落とした丸い可変機については、連邦の機体情報と照らし合わせて名前まで判明している。
『NRX-044、アッシマー。記録と外形は一致しています』
「アッシマーか」
『配備先や機数まではこちらじゃ分かりません。ただ、あの一機だけとは思わない方がいいでしょうね』
「分かった」
名前が分かったところで、戦い方まで分かるわけではない。ケネディで見たのは、飛行形態とMS形態を短い間隔で切り替えながら速度を落とさず、地上側の防衛線へ何度も入り込んでくる動きだ。その記憶だけは残しておけばいい。
アウドムラでの移動が続く中、アムロは何度かリック・ディアスを起動し、格納庫内で操作を確認した。実際に外へ出る機会が来たのは、警報が鳴った時だった。
『高速反応、後方上空から接近。二機……いえ、さらに下方にも反応があります』
格納庫の空気が一気に変わった。整備員が固定具を外し、ド・ダイ改の準備に入る。アムロがヘルメットを被っている間に、クワトロとカミーユもそれぞれ百式とMk-IIへ向かっていた。
『アムロ、出られるか?』
「問題ない。すぐにでもいける」
『私は上を見よう。下方の反応を頼めるか?』
「分かった。カミーユは?」
『僕も出ます。アウドムラの近くを見ます!』
「追い過ぎるなよ。相手の方が空じゃ速い」
『分かってます』
カミーユの返事に、少しだけ不満そうな響きが混じった。それでも言い返してくることはなく、三機は順に格納庫から外へ出た。
リック・ディアスの足がド・ダイ改へ乗る。固定を確認すると、SFSがアウドムラの脇から離れていった。地上が遥か下に広がり、その間を雲が何層にも流れている。宇宙とは違い、自分の機体だけで好きな方向へ加速できるわけではない。ド・ダイ改の向きを変えてからMS側で姿勢を合わせるまで、わずかだが間がある。
「なるほど……こっちは慣れがいるな」
正面のレーダー表示が動いた。上空から高速で降りてきた機影は、ケネディで見たアッシマーとは形が違う。細長い飛行形態のまま百式へ接近し、射撃を放った直後に機体を展開した。
『別の可変機か』
クワトロの百式がド・ダイ改を大きく傾け、ビームを外す。相手はそのまま上昇へ転じ、追わせるように高度を取った。
アムロはそちらへ機首を向けかけて、下方の反応を確認した。
「カミーユ、下だ。右後方」
雲の下から丸い機影が上がってくる。アッシマーだった。その後ろにはベースジャバーに乗ったハイザックもいる。上の可変機だけを見ていれば、アウドムラの側面へそのまま入られていた。
『見えました!』
Mk-IIが高度を落とし、ハイザックへライフルを向ける。アムロはアッシマーの方へド・ダイ改を振った。照準を重ねて一発撃つが、アッシマーはMS形態へ変わりながら機体を起こし、ビームの下を抜けた。そのまま飛行形態へ戻り、アウドムラの後方へ回ろうとする。
「速いな」
機体そのものより、変形を挟んだ時の速度の残し方が厄介だった。リック・ディアスで追おうとしても、ド・ダイ改まで含めて向きを変える間に距離を取られる。宇宙と同じ感覚で機体だけを振れば、かえって自分の姿勢を崩す。
アムロは追跡を止めた。アウドムラは旋回中で、巨大な機体がゆっくり左へ傾いている。アッシマーはその外側から後部へ回ろうとしていた。
なら、同じ軌道を追う必要はない。ド・ダイ改をアウドムラの内側へ向け、高度を少し落とす。相手を追うのではなく、巨大な輸送機を挟んで反対側へ回った。
『アムロさん?』
カミーユの声が聞こえた直後、アウドムラの尾部を抜けてアッシマーが姿を現した。ちょうど攻撃姿勢へ入ろうとしていたところだった。
アムロはライフルを二射した。一発目は外れたが、アッシマーが回避へ入ったことで機首がアウドムラから逸れる。二発目は飛行形態のすぐ脇を抜け、相手は攻撃を諦めて急上昇へ転じた。
「無理に追うな。アウドムラから離れればいい」
『はい』
返事と同時に、Mk-IIがハイザックへ射撃を重ねる。ハイザックは一機が上昇して射線から外れ、もう一機はベースジャバーを大きく振って距離を取った。カミーユはそこから先へ追わず、すぐアウドムラ側へ向き直っている。
上では百式ともう一機の可変機が交差していた。相手は直線の速さを活かして何度も高度を取り直し、そのたびに百式が迎え撃つ。クワトロも追いつこうとはせず、アウドムラへ降りる角度へ入った時だけ射撃を集中していた。
高速機が一度大きく離れたところで、アッシマーも再び高度を上げた。二機は合流するように進路を変え、ハイザックもその後を追う。
『追撃は不要だ。このままアウドムラの護衛へ戻る』
「了解」
『分かりました』
クワトロの声を聞きながら、アムロはライフルを下ろした。敵影はレーダーの端へ移り、そのまま距離を広げていった。撃墜できた機体はない。こちらも大きな損傷はないが、最初からアウドムラを落とすつもりで来ていたなら、これで終わるとも思えなかった。
格納庫へ戻ると、リック・ディアスはすぐ点検へ回された。アムロがコクピットから降りる前から整備員がド・ダイ改の接続部を確認している。
「どうでした?」
「MSの方は悪くない。ド・ダイ改込みで動かすと、どうしても一拍遅れる。そっちに合わせれば使えるよ。機体の設定は大きく変えなくていい」
「了解です。消耗した分だけ見ます」
床へ降りると、少し遅れてMk-IIも収容されてきた。カミーユはコクピットから出るなりヘルメットを抱えてこちらへ来た。
「さっき、どうしてアッシマーがあそこから出るって分かったんです?」
「分かったわけじゃない。あいつがアウドムラを狙うなら、後ろへ回ったあとに攻撃できる場所が限られる。速い機体を同じ軌道で追っても追いつけないから、先にそっちへ回っただけだ」
「でも、外してたら?」
「その時は戻る。全部当てられると思って動く方が危ないからな」
カミーユは少し考え、まだ何か聞きたそうにしたが、格納庫へ入ってきた百式へ視線を向けた。クワトロ機も損傷らしい損傷はない。相手の高速可変機も、結局最後まで仕留めきれなかったらしい。
その後、戦闘記録を照合した結果、上空から来た別型機についても機体名だけは判明した。ギャプラン。アッシマーと同じく可変機ではあるが、速度の出し方も攻撃の入り方も違う。
ハヤトが持ってきた次の移動予定が格納庫の端末へ送られてきたのは、その確認が終わった頃だった。
「このまま移動を続ける。ヒッコリー側と話がついた。そこでエゥーゴの宇宙帰還組を上げる」
「クワトロとカミーユも?」
「ああ。その予定で向こうも準備してる。百式とMk-IIも宇宙へ戻す」
アムロが表示された航路を見る横で、カミーユも端末を覗き込んだ。少し離れたところではクワトロが整備員と百式の状態を確認している。敵が一度退いた以上、動けるうちに移動を続けるしかない。アウドムラは進路を変え、ヒッコリーへ向かって飛行を続けた。
ヒッコリーへ到着すると、アウドムラは発進施設から離れた位置へ降り、すぐに宇宙帰還の準備が始まった。ケネディのように大人数を一度に送り出すわけではない。今回の中心はクワトロとカミーユ、それに百式とMk-IIを宇宙へ戻すことだった。
アムロが格納庫へ入った時には、百式の搬出準備がかなり進んでいた。クワトロは整備員と確認を済ませ、必要な荷物もまとめている。一方、Mk-IIの周囲ではまだ作業が続いており、カミーユが整備員の横で端末を覗き込んでいた。
「これが終われば、二人とも宇宙か」
アムロが言うと、近くで地上側との連絡を確認していたハヤトが振り返った。
「その予定だ。アーガマ側にも連絡は通ってる。こっちは二人を上げたあと、アウドムラを動かす」
「次は?」
「補給が必要だからな。ホンコン方面で話を進めてる。ただ、まずはここを終わらせてからだ」
ハヤトはそう答えると、発進施設側から入った連絡へ意識を戻した。アムロもそれ以上聞かず、格納庫の奥にあるリック・ディアスへ目を向ける。ヒッコリーまでの戦闘で大きな損傷は出ていない。自分は地上に残る以上、当面はこの機体を使うことになる。
百式が先に運び出されるのを見送っていると、クワトロがこちらへ来た。
「君はこのままカラバと?」
「ああ。まだ少し地上でやることが残ってるからな。その後はあがるつもりだ」
「そうか」
「そっちはアーガマに戻るんだろ」
「そのためにここまで来たのでね。宇宙側も放ってはおけない」
ケネディで再会してから、二人だけでまともに話す機会はほとんどなかった。それでも、今ここで昔のことを持ち出す気にはならなかった。クワトロも同じらしく、それ以上は続けず、搬出されていく百式へ目を向ける。
「カミーユも一緒に上がるんだな」
「ああ。Mk-IIも戻す」
「そうか。なら、ここから先は俺たちでやる」
「地上のことは頼む」
クワトロが僅かに口元を緩めたところで、施設全体に警報が響いた。
格納庫にいた整備員たちの動きが一斉に変わる。アムロは反射的に外部表示へ目を向けた。管制から入った情報では、複数のMSがヒッコリーへ接近している。先ほど戦った部隊と同じ方面からだった。
『敵MS隊接近。アッシマーを確認。ハイザックも複数』
アムロはリック・ディアスへ走った。
「百式は?」
「もう帰還の準備へ入ってる。今から戻せば発進そのものが遅れる」
追いついてきたハヤトの返事に、クワトロが外を見た。
「なら私は予定を変えない。ここでまた宇宙へ戻る機会を失うわけにはいかん」
「ああ。俺が出る」
アムロが昇降索へ手を掛けた横で、別の足音が止まった。カミーユだった。
「出るなら発進施設の近くから離れるな。戻れと言ったらすぐ戻れ」
「分かりました」
クワトロもカミーユへ向き直った。
「カミーユ、発進前には必ず戻れ。シャトルの発進時刻は動かせん」
「分かってます。迎撃したらすぐ戻ります」
「よし。なら行け」
カミーユは頷き、Mk-IIへ走った。
ハヤトはすぐには答えず、格納庫の外とカミーユを見比べた。敵が来るまで長く考えている時間はない。
アムロのリック・ディアスが先に外へ出る。ド・ダイ改へ機体を載せると、そのまま発進施設の前方へ上がった。すぐ後からMk-IIも別のSFSで続く。遠方に、飛行形態のアッシマーが見えた。その周囲にはハイザック。さっきの交戦で見たギャプランは確認できない。
「カミーユ、ハイザックを頼む。俺はアッシマーを見る」
『はい。シャトル側へ行かせなければいいんですね』
「そうだ。撃墜しようとして離れすぎるな」
アッシマーが高度を上げた。こちらへ正面から来るのではなく、大きく外側へ回っている。発進施設の位置を確認しているようにも見えた。
アムロは追わず速度を落とした。前の戦闘で、追えば相手の得意な速度へ付き合わされることは分かっている。今回は守る場所も決まっていた。アッシマーが発進施設を狙うなら、どこかでこちらの前を通らなければならない。
先にハイザックが入ってきた。二機が左右へ分かれ、そのうち一機が地上施設へ射撃を始める。Mk-IIがすぐに割り込み、ライフルを撃ち返した。もう一機がカミーユの側面へ回るが、Mk-IIはSFSを降下させながら射線を外し、そのまま低い位置から撃ち返している。
『アムロさん、アッシマーが上へ!』
「見えてる」
アッシマーは上空で旋回し、そのまま一気に降りてきた。狙いはアムロではない。背後にある発進施設だった。リック・ディアスを前へ出し、二射する。一発は外れたが、もう一発がアッシマーの近くを通った。機体が変形し、急激に姿勢を起こす。そこで速度が僅かに落ちた。
アムロは三射目を撃った。
アッシマーは横へ機体を振り、直撃を避けた。だがそのまま施設へ突っ込むこともできず、再び飛行形態へ戻って離れていく。
「やっぱり、あそこだな」
『何がです?』
「変形した時だ。速いまま全部できるわけじゃない」
カミーユへ返しながら、アムロは相手の次の動きを追った。弱点と呼べるほど単純ではない。変形の前後でも十分に速く、狙える時間は短い。それでも飛行形態のまま自由に戦えるわけではなかった。
その時、管制から発進準備完了の連絡が入った。
『シャトル、最終段階へ入ります。発進まで残り僅か』
アムロは正面を見る。アッシマーも動きを変えた。今まで発進施設の周囲を探るように飛んでいた機体が、明確にシャトル側へ向きを変える。
「来るぞ。カミーユ、そっちはどうだ?」
『まだ二機います。でも、ここを離れるわけにはいかないでしょう』
「そのままでいい。俺がアッシマーを止める」
飛行形態のアッシマーが加速した。
アムロもド・ダイ改を前へ出す。正面から速度を競えば負ける。相手と同じ方向へ合わせるのではなく、発進施設へ向かう線へ斜めから入った。
アッシマーの射撃が先に来る。降下させ、ビームを上へ流す。リック・ディアスの足元すれすれを光が抜け、次の一発がSFSの端を削った。
警告表示が点いた。
「まだ持つな」
機体を立て直した直後、アッシマーがすぐ横を抜けていく。アムロは機首を発進施設へ向け直した。相手がもう一度シャトルを狙うなら、外へ回って戻ってくる。その間に自分が先に位置を取ればいい。
遠くでMk-IIのビームがハイザックのベースジャバーを捉えた。SFSを失った機体が高度を落とし、残った一機もカミーユへの攻撃を続けながら距離を取る。
発進施設から噴射炎が上がり始めた。
『カミーユ、聞こえるか?』
クワトロの声だった。
Mk-IIは発進施設からかなり離れている。カミーユが一瞬そちらへ向きを変えたが、残ったハイザックがその隙を狙って射撃した。Mk-IIは回避し、そのまま反撃へ入らざるを得なかった。
『今から戻ります!』
『無理だ。シャトルはもう止められん』
『でも――』
『こちらを待たせれば、また敵に狙う時間を与える。君はそこでアムロと施設を守れ』
短い沈黙のあと、カミーユの返事が返った。
『……了解』
シャトルが動き始める。アムロが上空を確認した時、アッシマーも同時に加速していた。
「やっぱり来るか」
上昇を始めたシャトルへ向かって、アッシマーが低い位置から突き上げるように接近する。アムロはその横へ回り、ライフルを撃った。アッシマーが変形してビームを避ける。MS形態になった機体が空中で向きを変え、今度はアムロへ撃ち返してきた。
一発がリック・ディアスの肩を掠める。警告が増えたが、動きには問題ない。アムロはド・ダイ改を上昇させた。アッシマーも再び飛行形態へ移ろうとする。変形を終えれば、また距離を離される。
その直前、横からMk-IIの射撃が入った。アッシマーが反応し、機体を捻る。ビームは外れたが、変形後に取ろうとしていた進路が崩れた。
『アムロさん!』
「分かってる!」
アムロはベースジャバーを大きく傾けた。相手を追うのではなく、崩れた軌道の内側へ入る。先ほどまでなら、そのまま速度で逃げられていた距離だった。
だが今はアッシマーも姿勢を立て直している途中だ。
一発目を撃つ。ビームがアッシマーの外装を削った。機体が傾き、それでも飛行形態を維持して離れようとする。
二発目は外れた。アッシマーが上昇へ入る。アムロは照準を追わせながら、すぐには撃たなかった。急いで撃てば、またかわされる。相手は損傷したまま高度を取ろうとしているが、さっきまでと同じ加速にはなっていない。
機体がもう一度変形した。アムロはそこでトリガーを引いた。ビームがアッシマーの胴体へ入った。機体が大きく揺れ、片側から火が噴く。それでも一度は姿勢を戻しかけたが、次の瞬間には制御を失い、そのまま下方へ落ちていった。
爆発が地上近くで広がる。
アムロはすぐに視線を戻した。シャトルはすでに高度を上げ、敵の射程から離れつつある。残っていたハイザックもアッシマーが落ちたことで攻撃を続けず、距離を取り始めた。
「カミーユ、追うな」
『分かってます』
Mk-IIが発進施設の方へ戻ってくる。アムロも損傷したド・ダイ改を反転させた。
上空には、もうシャトルの小さな光しか見えなかった。
『クワトロ大尉のシャトル、上昇継続。こちらからの誘導範囲を離れます』
管制の声を聞きながら、カミーユが何も言わず上を見ている。結局、予定していた宇宙帰還には間に合わなかった。それでも発進を遅らせていれば、今の戦闘がさらに続いていた可能性は高い。
「戻ろう。Mk-IIも点検した方がいい」
『……はい』
アウドムラへ戻ったあと、格納庫ではすぐに二機の確認が始まった。リック・ディアスは肩の装甲に損傷。Mk-IIも細かな被弾跡が増えている。
ハヤトが格納庫へ来た時、カミーユはMk-IIの下で整備員と話していた。
「クワトロ大尉たちは予定通り宇宙へ向かった。百式も一緒だ。カミーユ、お前の分は向こうにも事情を伝えてある」
「すみません」
「謝ることじゃない。あそこで出なければ、シャトル自体が上がれなかったかもしれん。残ったなら残ったで、次を考えるだけだ」
カミーユは少しだけ表情を緩めた。ハヤトはそのままアムロの方へ来ると、手にしていた端末を差し出した。
「もう一つ連絡がある。レイブンが地上へ降りた」
「レンたちが?」
「ああ。向こうから地上側との連絡を取りたいと入ってる。こっちの指揮下へ入る話じゃない。接触地点と、互いに動いてる区域を確認したいそうだ」
「それなら合わせた方がいい。知らずに同じ場所へ入る方が面倒だ」
「俺もそう思う。場所は移動しながら詰める」
端末には、BLACK RAVENから送られた認証情報と連絡経路だけが表示されていた。アムロは一度目を通してからハヤトへ返した。
「アルビオンは?」
「宇宙に残るらしい。地上へ来たのはレイブンだけだ」
「そうか」
格納庫の奥では、カミーユがMk-IIの損傷箇所を整備員と確認している。百式が置かれていた場所はすでに空いていた。
しばらくしてアウドムラはヒッコリーを離れた。ハヤトは次の補給についてホンコン方面との連絡を続け、同時にレイブンとの接触地点も調整していく。
アムロは格納庫へ戻り、まだ点検中のリック・ディアスを見上げた。