しあわせ   作:輝波斗

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第1話

 久しぶりに帰ってきた故郷の光景にほっとする。

 黒い宇宙に数多輝く光の中でも、エメラルドグリーンに輝く星はそうはない。

 それに、この星には彼がいる。

 とても強くて、とても優しい、憧れで目標で、誇り高い父親。

 あの大きな背中が自分を待っていると思うだけで胸が温かくなる。とはいえ、先に職務。警備隊隊長である伯父のところに報告に行って、他の伯父や叔父たちにも挨拶をして、それから帰ろう。もしかしたら、一緒に帰れるかもしれない。

 昔と比べれば、想像もできないくらいに胸が軽い。温かい。

 隊長室へ顔を出せば、「おかえり、ゼロ」と名前を呼んで迎えられる。他のウルトラ兄弟たちや仲間たちに帰ってきたと顔を見せれば、皆が「おかえり」と声をかけてくれる。それに「ただいま」と返せることがこんなにも嬉しい。

「あ、親父!」

「帰ったか、ゼロ」

 ようやく見つけた赤い姿につい声を上げて駆け寄る。

「怪我はしてないか?周りに迷惑はかけてないだろうな?」

 相変わらず、顔を合わせるたびに口うるさいものだから、ついつい言い返す。

「当たり前だろ。いつまでも子ども扱いすんなよな」

「そう言うな。心配くらい大人しくさせるものだぞ」

 そう言われてしまうと口を閉ざしてしまう。心配されるのも嬉しいのだから仕方がない。

「今度はどのくらいいられるんだ」

「ちょっと長めに。だから、ちょっとレイトたちのとこ行って……あと、後輩たちの顔も見に行こうかなって思ってるけど」

「そうか」

「あ、でもそれ以外はここにいるつもりだから。親父のハヤシ食いてぇ」

「そうか。ならハヤシライスを作るか」

 やった!と嬉しそうなゼロを、セブンも嬉しそうに見つめる。

 「ただいま」「おかえり」を繰り返す。

 レイトたちのところに帰っても「ただいま」「おかえりなさい」、仲間たちと顔を合わせればそれぞれからそれぞれに「ただいま」「おかえり」、マイティベースに戻っても「ただいま」「おかえり」、それに、故郷の、父親のもとに帰れば「帰ったか。怪我はしてないか。………おかえり」「怪我なんてしてねーって。………ただいま」

 この、決まったようなやり取りがとても心地よくて。

 この声を聞くために、どんなに厳しい戦いからでも必ず帰ると強く心を持って立てる。

 この声を失いたくなくて、死力を尽くして全力で守る。

 この宇宙に生きる全ての「ただいま」「おかえり」が絶えることのないように。

 これほどまでに、大切にしたいと、失いたくないと思える相手、場所があることがきっと“幸せ”だ。

 

 

 

 あれほどまでに強い光を、見たことがなかった。初めて星に向かって手を伸ばした。

 一つとして、手を伸ばせる命を取りこぼさないと決意して手を伸ばした。

 深い黒の、永い闇の中に現れた光の手。

 瓦礫の積もる薄暗闇で自分の声に応えた手。

 伸ばした手と伸ばされた手が互いに交わり、強く強く握り合った。

 あの時の光を、熱を、声を忘れない。

 あの時の光を、伸ばされた手を、助けたいと思った心を忘れない。

 お前がくれた名を。宇宙で最も眩い光。

 お前がくれた力を。届かない脅威と戦う力。

 お前がくれた熱を。胸を焦がす炎のような光。

 お前がくれた優しさを。相手を問わず、弱いものを守ろうとする心。

 お前がくれた覚悟を。消して諦めずに立ち向かい続ける姿。

 お前がくれた献身を。見返りもなく、俺達を守って戦う姿。

 お前がくれた声を。オレの名を呼ぶその声。

 お前がくれた言葉を。俺に意思を伝えるただ一言。

 お前たちがくれた信頼を。オレタチを仲間だと言ってくれた。

 お前たちがくれた平和を。俺達と一緒に未来を訴えてくれた。

 たとえ幾星霜の星が流れようと。

 たとえ幾星霜の時が流れようと。

 この光は、俺達のこの胸の中に。

「オレモ、イク」

「もう、[[rb:放す > 離す]]なよ」

 だから。

「俺達が行く」

 あの日掴んだ光は。

 あの日掴んだ手は。

 間違いなく、俺達が掴んだ“仕合わせ”だった。

 

 

 僕はあなたから生まれた。

 僕はあなたを父さんと呼ぶ。

 あなたは僕を息子と呼ぶ。

 あなたの息子であるという事実は乗り越えなければならなかった宿命だったけれど、きっとそれだけではなかった。

 僕が僕であるために、あなたから受け継いで、[[rb:憧れ > ドンシャイン]]に育てられた光を胸に宿して[[rb:宇宙 > そら]]に立つ。

 見ていて、父さん。あなたが目指して折れてしまったこの使命を、僕が果たすよ。

 あなたが捨ててしまった、捨てざるを得なかったもの全て背負って僕は仲間たちと歩いていく。

 あなたの背中は眩しいとは言えないけれど、とても大きくてとても重い背中だから。

 その背中を追って、いつかそれを越えて僕は強くなる。

 黒い背中のあなたを超えて。

 いつかのあなたと肩を並べられるように。

 父さんと並んで戦ってみたい。親子喧嘩だってしてみたい。色んな話がしたい。

 だから、どうか安らかに。

 たった一瞬でも、あなたに触れられた。抱きしめられた。抱きしめた。その一瞬だけは、紛れもなく僕たちは親子だった。

 最後に一度だけ名前を呼んでくれた。それがどんな感情で呼ばれた名前なのかはもう知る術はないけど、いつか、分かる時が来るだろうか。

 父さんについていきたい気持ちもあったけれど、それは僕の望む道ではないから。

 じーっとしてても、どーにもならない。

 僕に背を向けたまま止まってしまった父さんに背中を向けて、僕は光の道を往く。

 今度こそ、捨てさせはしない。忘れてあげない。置いてなんて行かないからね、父さん。

 背中合わせの鏡のような、けれど、自分が死ぬまで背負って連れて行くそれは、きっと僕達の“死合わせ”。

 

 

 人を守る、街を守る、地球を守る、宇宙を守る、なんて、いつからこんなにも大きなものを背負ったのだろう。

 だけど、青い星で見つけた奇跡を、守りたいものを、宇宙にも見てしまったから。

 強く輝く光を胸に宿して、覚悟を決めてしまったから。

 ただ、宇宙の片隅で生きる一つの生物でしかなかったのに、たったひとつのこの出会いがこんなにも自分を変えた。

 どんなに強くなっても、どんな戦いを生き抜いてきた記憶よりも、あの出会いからの戦いとは意味も覚悟も違う。こんなにも胸に残って強く輝く。

 戦いなんて知らなかったのに、戦うようになって、傷つくようになっても、いつも胸の中に光の力が輝いている。

 恐怖を知った。この力でも守りきれないものがあるかもしれないと。守りたいものを背に膝が折れる恐怖を。それでも、たとえこの身が傷ついても守りたいのだと。

 戦うことを知った。自分の体ではなくても、戦う手は、足は、自分が攻撃していても痛いのだと。

 自分が戦って、傷つくのは胸の中の小さな[[rb:命 > 相棒]]。

 戦う意志があるのに、戦うのは[[rb:光の巨人 > 相棒]]。

 無力を知った。

 なぜ、彼が痛みを引き受けるのだ。そんなことは望んでいなかった。

 なぜ、彼の力を借りなければ戦えないのだ。これは自分たちの星を守る戦いなのに。

 それでも、守るために戦いたいと奮い立つ姿は同じ。

 臨む姿が、望むもので。

 彼と共にいたい、戦いたい。向いている方向は、進むべき方向は同じ。

 互いにそう思うから、自分たちの繋がりは強く、太く。彼はもう一人の自分の姿。

 でも、1人でも2人でも、大きなものを守るには届かない。

 どんなに強くなっても、ちっぽけな「1」でしかない。

 だから、手を取り合おう。

 同じ志を胸に持つ仲間たち。同じ方向を向いて、一緒に歩いていく仲間たち。

 手を取って、寄り合って。「1」を無限大に。

 小さな「1」の蛍火を、いつかあの青い星で共に見た太陽に。

 距離も(くに)も超えた絆の力で、共に見た夢を。

 そう思える出逢い(ニュージェネレーション)は、きっと、糸合わせだ。

 

 

 

仕合わせ→めぐり合わせ、運命

死合わせ→死ぬまで添い遂げる

糸合わせ→より合わせて太い糸にする

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