想いの青   作:輝波斗

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おそろ☆と言ったら殴られた

「どうしてこうなった……」

 時を戻したい衝動に駆られる。シャイニングスタードライブを発動させようか。いや、でも同じことを繰り返すだけだ。後悔はしていないのだから。

 ゼロは一人、頭を抱えていた。

 ゼロ、頭を抱えてること多くね?とか思ってはいけない。

 先日、ゼロは師であるレオから贈られたマントを弟子としていつの間にか認めることになってしまったゼットに譲った。

 思った通り、というか思った以上の喜びようで、それはもう大事に手入れをしているらしい。

 怪我も少しは減ったり軽くなったりと改善が見られ、良い方向に変わっている。

 それはとてもいいことだ。譲ったことに後悔はないし、間違っていなかった。

 だが、調子に乗ってウザさが増す、という想定もまた的中していた。というか、こちらも思った以上にウザかった。

 ただでさえキラキラした目が、ゼロを前にした瞬間に8割増でギラッギラと輝き出すのだ。せいぜい5割増し程度だと思っていた。それも大概だが。

 あと、なぜかウルトラ兄弟筆頭に付き合いのあるウルトラマンたちから生温かい目を向けられる。聞いてはいないが、多分どこに行くにも青いマントをはためかせて全身で“ウルトラマンゼロの弟子”を名乗っているゼットのせいだろう。

 マントを贈る前に戻りたい。だが残念ながら、何度繰り返しても結局マントを贈る決断をするであろうことが容易に想像できてしまうあたり、師匠にさせられちまったなぁ、と感慨深くもある。

「親父が言ってた、子供が親を親にするってこういうことかぁ……」

 ゼットが弟子になったのではなく、ゼットがゼロを師匠にした、ということか。

 親子と師弟では色々違うし、そもそも望んでなった師匠という肩書ではないけれど。

 不本意だ。不本意なのだが……嫌ではない。

 そう思うたびに、絆されてるなぁ、と自分に呆れるしかない。

 もう絆されているからそれはいい。だが、やはりこのウザさはどうにかならないものか。

 しかもあの弟子、色んなところで宣伝して回っている。

 コロシアムに行ってはメビウスやタロウに。科学技術局に行ってはヒカリに。宇宙警備隊本部でも誰かしらとっ捕まえて喋っている。

「ゼロ師匠からマントをいただいちゃいまして!もうほんとに嬉しくてですね!!」

 聞いてないのに簡単に想像できる。

 エースが直々に来て礼を言われ、メビウスには「弟子が可愛いんだろう?」とからかわれ、挙句の果てには別宇宙で活躍するジードからも「ゼット、すごく喜んでたよ」とわざわざ言葉をもらう始末。ベリアロクでわざわざ飛んだらしい。マントをもらった感動を伝えるために。

 勘弁してくれ。

 誰も彼もが温かく見守ってくれるお陰でこうやって人目を忍んで星外に出ては頭を抱える羽目に陥っている。

「3回ボコるだけじゃ割に合わなかった……」

 こうなれば早く時間が過ぎて皆がスルーしてくれるようになるのを待つしかない。とんだ苦行だ。長期任務にでも出してもらおうかな……そうだ、そうしよう……

 

 

 確かに任務に出ようかなと思った。だからゾフィー隊長に掛け合って、他の隊員に混ざっての護衛任務をもらった。一般の隊員たちからは少なくともあの生暖かい目で見られることはないから大丈夫だろうと。

 だがこれは聞いてない。

「師匠!よろしくお願いします!」

 青いマントを堂々と誇らしげにはためかせる、頭痛の種。

「……………あぁ……」

 ひくり、と口元が引きつった。

 宇宙商艦隊の護衛任務だ。規模が少し大きく、一人二人の護衛では手が回りきらない。だから多少人数がいるのはいい。だが、なぜこいつがいる……。

 まぁ確かに?ゼットがいない任務を、と希望した訳では無いし、この頭痛を隊長に話したりもしていないが。

「まさか任務が被るとはな……」

「俺もびっくりでございました!ウルトララッキーですな!」

 ゼロ師匠の勇姿を見れる!と、これまでも散々見てきたゼットは大喜びである。

「ゼロ師匠の助けになれるよう、師匠の弟子の俺がウルトラ頑張っちゃいますぞ!」

「…………まぁ、やる気があるのはいいことだな」

 うん……と哀愁を漂わせながら現実を受け入れる。

 仕方がない。切り替えよう。

「今回は指揮は俺じゃねぇんだから、俺より指揮官に挨拶にいけよ」

「おっと、そうでございました!じゃあ師匠も行きましょう!」

「えっ、俺も!?」

 ゼットを追っ払うために言ったのに、当たり前のようにゼロと一緒に挨拶に行くのだと疑いも迷いもしないで、さぁ!とキラキラした目で促すゼットを振り払うこともできず、結局一緒に挨拶に行くのであった。そういうところがゼットに懐かれる要因の一つだぞ、ゼロ。

「ところでお前さ……」

「はい?」

「なんで常にそれつけてんの?」

 それとはもちろん、ゼロが贈ったマント。

「ゼロ師匠にマントを頂けたという喜びと、見守ってもらってる安心感故に、ですかね!あと師匠みたいに収納できるアイテムとかないんでございますよねぇ」

「………どっちかって言うと後半が本音じゃね?」

 自分が守られていると感じていたように、ゼットも見守られていると感じているのだろうか。そう考えると、贈った側としては嬉しい。

「全部本音でありますとも!まだまだ修行中の身でありますし、ゼロ師匠の弟子ということを常に肝に銘じて、このマントに恥じぬよう精進する気持ちの表れとかそんな感じで!」

 そんな感じで!で台無しだ。

「贈っといて言うのもなんだが、新品でもねぇ俺のお古だぞ?」

 考えるときに、頭をよぎりはしたのだ。新品のほうがいいんじゃないか?と。ものはついでとその疑問もぶつけておく。

「レオ大師匠から贈られてこれまでゼロ師匠のことを守ってきたウルトラすごいマントをいただけるなんて感激です!」

 不満があるんじゃないか、なんてチラとでも考えた自分がアホらしい。全身全霊の喜びをそれはもうキラキラとさせながら、ゼットはゼロの不安を消し飛ばした。

「あっそ。ならいいけど」

 なんでもないように装いながら、ちょっと安心した表情を隠すように体ごと顔の向きを変える。

「んじゃあ行くか。遅れるなよ」

「はい!」

 指揮を取るリーダーの指示に従い、配置につく。

 宇宙商艦隊が動き始め、それに合わせて飛んでいく。

 遅れるものはいないか、突然の襲撃はないか、周囲を窺いながら陣形を保って進むことしばし。

 にわかに後方が騒がしくなった。

「来たか?」

 戦闘音と殺気。襲撃だ。

「師匠、助けに」

「いや、リーダーの指示がねぇ。ひとまず様子見だ」

 ゼロやゼットが飛び抜けているだけで、優秀な人員が揃っているのだ、すぐさま助けが必要ということはないだろう。

「ゼット、艦を挟んで反対側にいけ。こっちにも襲撃が来る可能性がある」

「わかりました」

 すぐさま助けがいるということもないだろうが、自分たちが固まっておくメリットもない。

 ゼロの指示に速やかに従い、ゼットはゼロとは反対側につく。

 戦闘の気配が止まない。いよいよ支援が必要かと考え始めたあたりで、今度は前方で爆炎が上がった。

「こっちじゃなくて前か」

 リーダーの指示は、と視線を巡らせるとサインが上がった。

『前後に戦力分散、迎撃』

 きた。気合を入れて、ゼットにテレパシーを飛ばす。前方のほうが爆炎が激しい。

『ゼット、お前は後方の支援、オレは前に行く』

『わかりました!』

 青いマントが翻って後方に向かっていくのを見送って前に向かう。

 乱戦だ。爆炎を上げていたのは商艦隊が有する護衛艦らしい。まだ生きている護衛艦と協力して警備隊員が奮闘しているが、戦火が収まる様子はない。

「敵は何だ……?」

 炎の間から敵の姿を見つけようと目を凝らす。

 なにか長い影が……

「宇宙竜ナース……!」

 敵影からそれと断定し、進行方向から頭を見つけ出す。

「へっ。親父に負けたロボット怪獣程度に親父の息子である俺が負けるわけにはいかねぇよな」

 護衛艦とそれを守る警備隊員を睨んで尾をしならせるナースの目の前にゼロスラッガーを走らせる。

 突如目の前に現れた小さな刃が、チラチラとしつこく走るのが気に入らないのか、ナースの注意を引いた。

 竜が咆える。

 ゼロスラッガーを自分のもとに戻すと、それを追うように一対の機械的な目がゼロを捉えた。

 こいつは引き受ける、と手で合図を送り、艦隊からナースを引き離すように注意を引きながら飛ぶ。

 ナースは注意をゼロに向け、追いつこうと円盤形態へと姿を変えて光弾を放ってくる。

 他にも敵がいるかもしれないが、とりあえず一番の大物はこいつだろう。

 器用に攻撃を避けて飛び、興味が薄れないように時折エメリウムスラッシュで敵意を煽る。

「そろそろいいか」

 程々に引き離し、艦隊を視界に入れつつすぐには攻撃が届かない距離まで到達すると、ゼロは体を反転させる。

「さぁ……ブラックホールが吹き荒れるぜ!」

 好戦的に吠え、ナースに飛びかかった。追いかけるはずだった獲物の突然の反転と反撃。動かしている者が動揺したのか、すぐに対処できないようだ。とぐろを解き、竜の姿になって対抗しようとする。

 その隙を逃さない。

 苦し紛れに振り回された竜の尾を抱え込んで体で抑え込む。

「親父ともパワー比べしたんだろ。俺ともしてくれよ!」

 にぃっと不敵に笑い、体の色を赤と金に染める。

「ストロングコロナゼロ!」

 体中の鍛え抜かれた筋肉が膨れ上がり、爆発的なパワーを生み出す。

 ぶんっと、竜の視界が揺れた。

 尻尾を抱えたゼロが、その圧倒的な力でナースを振り回し始めたのだ。

 悲鳴にすら聞こえる咆哮を上げながらナースが体をよじった。全力でゼロから逃れようとするナースから、パッと手を放す。

 すっぽ抜けるように体制を崩す宇宙の竜に、怒涛のように灼熱のエネルギーが降り注いだ。

「ガルネイト……バスター!!!」

 尾を引く断末魔を上げて、宇宙竜ナースは沈黙した。

 次、と気を抜くことなく、未だ炎の上がる艦隊に舞い戻る。

 

 その頃後方に向かったゼットは、知った顔を見て、うえっと言う顔になった。

「バロッサ星人…!」

「出たな、ウルトラマンゼット!兄弟たちの敵!」

「出たなとは失礼な。俺がお化けが何かみたいでございましょう」

 つい不満げにそう漏らせば、苛立ったようにバロッサ星人が盗んできたであろう武器を握りしめる。

「うるせぇ、今すぐおばけにでもなんでもしてやる!」

 拙い動きで武器を振り回す。なまじいい武器なものだから、適当に使っていても威力が出るのが厄介だ。

 右へ左へとブンブン音を立てて振り回される棍棒のようなその武器は中途半端に受け止めていいものではないと経験からくる勘が告げてくる。

 手を出しかねて回避に専念し、隙を探す。

 攻撃は拙いくせに、こちらに攻撃の隙を与えないのは種族の臆病故の慎重さか。

 こうしてバロッサ星人の相手をしているうちにも火の手が上がり続けている。

 早く片付けなければと焦る反面でふと気づく。

(あがった火の手が消えている…?)

 他の隊員たちが対処しているのかと周りを見れば、明らかに後手に回っているのが分かる。

 何かがいる。そう察した瞬間に咆哮が上がり、立ち上っていた炎が吸い込まれるように渦を巻いて消えた。

「げぇ、ベムスター……!」

 上がった炎を吸い込み、そして一般隊員や商艦隊にその炎を吹き出す宇宙怪獣。吹き出された炎は新たな炎を呼び、また新たに吹き出されるために吸い込まれている。だから火の手が前より少なかったのかとここで気づく。

 耳障りな笑い声が上がる。

「ヒャヒャヒャ!この商艦隊はオイシー運びをしてるって聞いたからな、大盤振る舞いだぜぇ!」

 艦隊を庇って戦闘不能になる隊員も見える。

 護衛艦が墜ちて行く。

「くっ……」

 護衛艦も一般隊員も、これ以上の被害は出せない。ベムスターとバロッサ星人以外にも何かがいる可能性がある中で相性に酷く左右されてしまうことにはなるが、

「変幻自在、神秘の光……!」

 意を決してガンマフューチャーへとウルトラフュージョンする。

「ガンマイリュージョン」

 パチン、と指を鳴らし、尊敬する先輩の幻影を呼び出す。

 3人の光の戦士の幻影が実体を持って、ベムスターを牽制し始める。幻影とはいえ伝説の名を持つ戦士たちだ。ひとまずは大丈夫だろう、と判断する。

 だが、ガンマフューチャーとなったゼットは筋力面が大きく落ちる。さらに棍棒の一撃を受けるわけにはいかなくなった。

 マントを翻し、しなやかな動きで回避し続ける。前の方でも爆炎が上がり続け、戦闘の激しさを伝えてくる。

 師匠を心配するなど恐れ多いが、ぜひとも背中を任せていただきたい。そのためにも、この場をまずは切り抜けなければ。

 ガンマフューチャーになって落ち着いた言動をするようになってもゼットはゼット。ブレない。 

 バロッサ星人が持っている武器ごと、ゼスティウム光線で吹き飛ばすか。いや、消耗が激しい技は控えるべきだろう。すでにガンマイリュージョンでエネルギーを分散している。

「ガンマシャッフル」

 光の欠片がバロッサ星人めがけて舞う。

 それらを振り払おうとしたのか、バロッサ星人は棍棒を振り回すが、振り回し続けた疲労のせいか、スポンと棍棒がすっぽぬけ、狙ったかのようにゼットの方に飛んでいく。

「ちょっ!?」

 意表を突かれたゼットがつい素で動揺すれば、しめたとばかりにバロッサ星人は足元の鉄片を拾ってゼットに投げつけながら次の武器を取りに移動した。次に握られたのは剣のようだ。

 バロッサ星人の動きを止めようと放たれた光の欠片たちは術者の動揺により、うまく拘束として機能せず、バロッサ星人をかすめて多少のダメージを与えるに留まった。

 飛んできた棍棒を辛うじて避けたものの、大きく体勢を崩すゼット。鉄片もなんとかマントで叩き落とすが、追撃してくる刃までは対応しきれず、切っ先が身体をかすめていく。

「ウルトラめんどうだな」

 アルファエッジかベータスマッシュならもっと楽に相手できそうではあるが、そうなるとベムスターを抑えきれない。他の隊員たちもフォローしてくれてはいるが、救援活動にも人手は必要だ。

 しかし、そろそろ幻影たちを維持し続けるにもエネルギー量が心もとなくなってきている。

 早く片付けねばと気が逸る。その時。

「ひっ」

 という悲鳴と、ベムスターからの幻影たちをすり抜けた炎を同時に認識する。

 隠れていたらしい非戦闘員と自分を飲み込もうと迫る炎と、追い打ちをかけんとその時を狙うバロッサ星人の刃。

 自分と非戦闘員の両方を炎から守ればバロッサ星人の剣が襲ってくるだろう。バロッサ星人の剣に対応すれば炎が降ってくるだろう。

 即座に決断を下す。

 師匠にもらった大事な、守るためのマント。それを背中から離し、非戦闘員を包むようにウルトラ念力で操作する。

 そしてゼット自身はガンマスルーを使って炎をできるだけ他の場所に飛ばしつつ、その中でバロッサ星人の剣に対応する。

 直接は炎に包まれることはないものの、広がる熱のすべてを逃がすことはできない。しかも、その炎の反対側からバロッサ星人が剣を振るってくる。

 肉弾戦は苦手なガンマフューチャーで、目の前のバロッサ星人と背後の炎、ベムスターの牽制を行う幻影たちへのエネルギー配分、そして非戦闘員を守るためのマントの操作のすべてを対処する。

 全て終わったら頭痛に悩まされそうな予感がしつつ、それでもどれか一つすらやめることはできない。

 ちらりと他の隊員たちを見れば、救援活動にも余裕が出てきたのか、戦闘に加わる者たちが増えてきている。もう少し持ちこたえれば、ガンマイリュージョンは解除してもいいだろう。

 そう希望を持って再び目の前のやるべきことに集中する。

 直接当たっているわけでもないのに背中が熱い。なんとかバロッサ星人の懐に潜り込んで剣を取り落とさせようと、剣よりも剣を握る腕を防御する。一瞬の隙をつき、バロッサ星人の腹に蹴りを入れた。

 距離が生まれて、僅かに息をつく。

 背中が熱い。熱が体力を奪っていく。

 だが、ガンマビームマントを展開するにもエネルギー残量が心配だ。

 笑うバロッサ星人の顔に一発お見舞いしてやりたいが、後先考えずに突っ込める状況ではない。

 炎が途切れた。ベムスターの取り込んだぶんが切れたのだろうか。

 その一瞬の隙を取られる。なんとか凌いできたバロッサ星人の剣が、ゼットを捉えた。

「ぐぅっ……!」

 焼け付くような痛み。耳障りな笑い声。視界が揺れる。カラータイマーの聞き慣れた嫌な音がする。

 少し離れたところで動揺の声が聞こえた。揺れる視界をそちらに向ければ、今までベムスターを牽制していた3人の幻影が消えている。

 しまった、そう思うが、再度彼らを呼び出すだけのエネルギーは残っていない。

 幸い、戦闘に参加する隊員たちが増えていたこともあり、その場で互いに声を掛け合って動揺から脱する姿が見られ、安堵する。

 爆音と爆炎の熱が轟く。またベムスターが炎を吸って、吐き出す。

 隊員たちの牽制に見向きもせずゼットを狙ってくるあたり、バロッサ星人がベムスターを操っているのだろう。

 防御が間に合わない。

 本能的にカラータイマーを庇うように体を丸める。

 バサリ、となにかの音がした。熱も痛みも襲ってこない。

「へばってんじゃねぇぞ、ゼット!」

 ぁ、と安堵の息が漏れる。声だけでこれほどウルトラマンゼットに安心感を与えられる者が一体どれほどいるだろう。

「ゼロ、師匠……」

「よく持ちこたえた。でもこの程度でへばってちゃまだまだだな」

 顔を上げれば、ウルトラマンゼロが絶対的な存在感を放ちながら炎に背を向けて立っている。その背中を守るのは、青いマント。

「え、師匠!そのマント……!?」

「真っ先に反応するのそこかよ……っと」

 再び振り下ろされるバロッサ星人の狂刃をゼロがスラッガーを飛ばして弾き飛ばす。

「あの非戦闘員連れて行ってこい」

「は、はい!」

 冷静に指示を出すゼロに従って、自分のマントに包まれた非戦闘員の船員を抱えあげ、戦線を離脱する。

 バロッサ星人がなにか叫んでいたが、そんなことはどうでもいい。早く彼を安全なところにおいて、[[rb:戦場 > 師匠のところ]]へ戻らなければ。

 傷を負ってカラータイマーも鳴っているというのに、そんなことは関係ないと言わんばかりに戦火を翔ける。

 非戦闘員を他の生きている船に届け、彼を守っていたマントを気持ち丁寧に羽織り、形態をアルファエッジに変える。

 お礼もそこそこに聞き届け、再び戦いに戻るには、アルファエッジが一番速い。

「早かったな」

「はい!」

 バロッサ星人を早くも足蹴にしたゼロが戻ってきたゼットに声をかける。

「師匠!師匠!」

 ほら!と、アルファエッジのゼットは師匠にもらった自分のマントを軽く広げる。

 あ?とゼロは首を傾げる。何がしたいんだ、こいつは。

「おそろ☆ってやつですな!」

 それはもうニコニコと、ゼットはこの爆音轟く戦場でそう宣ったのだ。

「…………………」

 時が止まったかと思った。足蹴にされて足掻いていたバロッサ星人すら一瞬動きを止める。

 こんな時に何を言ってるんだ、こいつは。と。

 当のゼットはなぜか誇らしげにアルファエッジのスラッガーを掲げるかのように背筋を伸ばしてマントをパタパタさせている。

 ため息を一つ。ついでに足蹴にしていたバロッサ星人を蹴り飛ばして、ゼットの方へゼロが近づき、その頭にゲンコツを振り下ろした。

「いったぁぁぁ!!何するんですか師匠!ウルトラ酷い!」

 俺の頭凹んでない!?と赤く点滅するカラータイマーと一緒に賑やかに騒ぐ弟子を、どうしてくれようかという目で見るゼロ。再びため息をついて切り替える。

「そんだけ騒げるならまだいけるな」

「もちろんでございますよ!」

 空元気も言い切ってしまえばそれはもう強がりですらなくただの元気。師匠がいけるなと言うならいけるのだ。

「ウルトラマンゼット。背中、任せるからな」

「!!!!!は、はい!!ウルトラ光栄であります!!!」

 その言葉一つでカラータイマーの色が青に戻りそうな勢いで闘志を引き上げる。

 こんな傷ごときで悲鳴を上げている場合ではない。

(あの!ゼロ師匠が!俺に!背中を預けるって!!!)

 どうやって切り抜けようかと攻めあぐねていたのが遠い昔のようだ。テンション爆上がりのまま、バロッサ星人に対峙する。

 その様子を見て、大丈夫そうだと判断、いや、信頼して、ゼロはベムスターを相手するために飛び出した。

「バロッサ星人!悪いがすぐに片付せさせてもらいますですぞ!」

 ウッキウキな声音で勝利宣言をかまし、すっと構える。

 スピード型の肉弾戦を得意とするアルファエッジなら、バロッサ星人に遅れを取ることもない。

「ぬかせ!手負いの分際で!」

 剣を持って突っ込んでくるバロッサ星人の、突き出された剣を持っている右腕をパンっと左側に弾くと同時に、足をさばいて右側に付く。眼の前にあるのは体勢を崩したバロッサ星人の背中だ。

 間髪入れずに突き、蹴りと攻撃を食らわせる。

 ゼロ師匠とおそろ☆とかいう妄言をかました今のゼットに怖いものもなければ負ける道理もない。そんなばかな。

 救援活動は隊員たちがしてくれた。ベムスターの相手は尊敬するゼロ師匠が行ってくれた。後ろに守るべき非戦闘員もいなければ、むしろ守ってくれる師匠からのマントがある。

 これでどうやって負けろというのか。今のゼットには人間でいうところのアドレナリンが[[rb:漲 > みなぎ]]っている。

 明らかに動きが変わったゼットに、武器を振り回すだけのバロッサ星人がついていけるわけもない。

 剣が弾き飛ばされる。次の武器、と手を伸ばしている隙に。

「ゼスティウム光線!!」

 断末魔を上げる間もなく、バロッサ星人が最後に聞いたのは己の爆音だった。

 

 

「師匠!」

「お前、できるならもっと早くやれよ」

 あまりにもなスピード決着にゼロは「まじかこいつ」という目を向けてくる。

「師匠がベムスターを引き付けてくれてたお陰でございますから仕方ないのですよ!」

 それはもうキラキラと言い訳と開き直りを重ねてゼロに並ぶ。

 2枚の青いマントが色を交えて翻った。

「ほかはだいぶ片付いた。こいつを倒して商艦隊を守るぞ」

 ぽん、とゼットの肩を叩く手に光のエネルギーを乗せて送り込む。

「はい!」

 カラータイマーが点滅しているとは思えない元気な返事で何よりだ。だが過信するわけにもいかない。

 ゼロが送り込んだエネルギーで点滅が止まり、青い輝きが戻ってくる。

 礼を言う代わりに軽く頭を下げ、ベムスターを[[rb:睨 > ね]]めつける。

「行くぞ!」

「押忍!」

 相棒の口癖を借りて、師匠に後押しされて、ゼットはベムスターに挑みかかる。ゼロもゼットだけに集中されないよう、ゼロスラッガーを巧みに操り、位置取りを変えながらゼットとは反対側から攻撃を仕掛ける。

 前後から左右から仕掛けられ、ベムスターはキョトキョトとどちらに対応すべきか困惑した様子で、とりあえず正面に来たゼットに目を向ける。

 ゼットに集中しようとすればゼロが横槍を入れ、ゼロに集中しようとすればゼットから邪魔をされる。

 苛立たしげに咆哮し、状況を変えようとベムスターは上に飛び上がる。

 二人ともからベムスターが意識を外した瞬間を逃すはずもなく。

「ワイドゼロショット!」

「ゼスティウム光線!」

 二筋の光線がベムスターを貫き、爆発させる。

「やりましたね、師匠!」

 ゼットが掲げた拳に、仕方ねぇなぁとゼロも拳を合わせる。

「あー、はいはい。ほら、まだ任務途中だ。いけるか」

「当然ですとも!ゼロ師匠の弟子としてこの程度でへばるわけにはいきませんから!!」

 なんでこいつはこんなに元気なんだと首を傾げたくなりながら何度目になるかしれないため息をつく。

「師匠こそお怪我は」

「大したことねぇ」

 一言で断じる。傷はあるものの、確かに目立つようなものはない。ゼットが受けた太刀傷が一番大きい傷だろう。

「お前は商艦隊について行け。俺は周りを一回り見て敵が残ってないか確認してくる」

「え、それなら俺も」

「俺が離れてる間は任せるからな」

 ゼットの扱いに否応なしに慣れてしまったゼロの言葉に、もちろんゼットは喜んで応える。

「お任せください!!」

 弟子のあまりの扱いやすさに苦笑いしつつ、ゼロは索敵に向かう。

 残されたゼットは、艦隊の護衛に残らされた師匠からの気遣いにニコニコとご機嫌で自分と非戦闘員を守り通してくれた青いマントをふわふわ揺らす。

「ゼロ師匠の弟子になれて俺は実に幸せものですなぁ」

 弟子になったゼットと、師匠にされたゼロ。

 そうなって成長したのは果たしてどちらなのか。どちらか、ということもあるまい。

 そんなことは、二人のみぞ知る、というやつである。

 

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