カタシロをチャットGPTくんと遊んでみた   作:真夜中更奈

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第2話

 

→「いるよ」

 

一瞬、間が空く。

 

それから声が少し明るくなった。

 

「よかった。やっぱりいたんだ」

 

声は隣の部屋から聞こえている。若い男――少年と言ってもよさそうな声だ。

 

「僕も隣の部屋に入院してるんだ」

 

「ずっとここにいるからさ、暇なんだよね。……話し相手になってよ」

 

少し人懐っこい調子で、彼は続ける。

 

「君はどうしたの? 怪我?」

 

→「記憶がない」

 

「記憶がない?」

 

隣から聞こえる声が、少し驚いたように跳ねる。

 

「……君も?」

 

「いや、僕は記憶あるんだけどさ。そこの部屋に入る患者さん、みんな『記憶がない』って言うんだよね」

 

少し考えるような沈黙。

 

「そういう人が入る部屋なのかな」

 

そして、気遣うように尋ねてくる。

 

「本当に何も覚えてない? 名前とか家とか……」

 

「何か一つくらい、覚えてることない?」

 

→「ないよ」

 

「……そっか」

 

声が少しだけ沈む。

 

けれど、すぐに明るさを取り戻した。

 

「じゃあさ、思い出すまで僕と話そうよ。何かきっかけになるかもしれないし」

 

「僕は交通事故。けっこう大きな事故だったんだ。ひどいことになっちゃってさ。それからずっとここにいる」

 

妙にあっけらかんと話す。

 

「でも、お父さんが治そうとしてくれてるんだ。ここのお医者さん、僕のお父さんなんだよ」

 

「あの人、名医なんだ。ずっと諦めないで治療してくれてる。だから僕が泣き言を言うわけにはいかないんだ」

 

少し照れたような声。

 

「治ったら、僕もお父さんみたいな医者になりたいんだ」

 

「それで、たくさんの人を助ける」

 

そして今度は、あなたに興味を向ける。

 

「……記憶がないなら、外のことも思い出せない?」

 

「何でもいいんだけどな。病院の外の話、聞きたかったんだ」

→「みんな記憶喪失というには出来すぎてるので、なにか未知の感染症の後遺症がトリガーなのではないか?」

 

「未知の感染症?」

 

隣の声が、きょとんとした調子になる。

 

「うーん……僕には分からないな。お父さんから、そういう話は聞いたことないし」

 

少し間があって。

 

「でも……確かに変だよね」

 

「その部屋に来た人が一人や二人ならともかく、僕が話した人はみんな、自分のことを覚えてなかったから」

 

少年も初めてその奇妙さを意識したらしい。

 

「……なんなんだろうね、あの部屋」

 

あなたが返事をしようとした、そのとき。

 

急激な眠気が襲ってくる。

 

「……大丈夫?」

 

瞼が重い。思考が霞む。身体に力が入らない。

 

「まだ具合悪いのかな」

 

意識が沈んでいく。

 

最後に、隣から小さな声が聞こえた。

 

「おやすみ」

 

 

そして――。

 

目を覚ます。

 

相変わらず、あの手術室だ。

 

だが。

 

視界がおかしい。

 

一瞬、世界から色が抜け落ちる。

 

白黒になったかと思えば、ざらついたようにちらつく。

 

瞬きをしても治らない。

 

そこへ扉が開き、昨日の医者が入ってくる。

 

――顔が、分からない。

 

人間が立っているのは認識できる。声を聞けば昨日の医者だと分かる。

 

なのに、顔だけがうまく像を結ばない。

 

「おはよう。具合はどうだい?」

 

医者はあなたの言葉に足を止める。

→「視界が悪い」

 

「視界が?」

 

あなたが、色が抜けたりちらついたりすること、そして彼の顔もうまく認識できないことを説明すると――医者は思ったほど慌てない。

 

「……そうか」

 

「あとで検査しよう。心配しなくても、良くなるから」

 

妙にあっさりしている。

 

「それよりも、記憶の方だ。今日も少し話をしようじゃないか」

 

昨日と同じように椅子を引き寄せる。

 

「今日は――**『テセウスの船』**という話だ」

 

「ある船があった。その船が古くなるたびに、板や帆、その他の部品を少しずつ新品へ交換していく」

 

「やがて、最初からあった部品は一つもなくなった。すべての部品が交換された船だけが残った」

 

そこで医者はあなたを見る。

 

「さて――それでもこれは、最初と同じ『テセウスの船』だと思うかい?」

 

PL;まーたはじまったよこの禅問答

→「違う」

 

医者は、あなたの即答にわずかに首を傾ける。

 

「違う、か」

 

「では聞かせてくれ」

 

視界のちらつきの向こうで、医者の輪郭がぼやけている。

 

「最初の船を構成していたものは、すべて失われている。確かにそうだ」

 

「だが、どこからを『別の船』と考える?」

 

「板を一枚交換した時点では、まだ同じ船だろうか。半分なら? 最後の一枚を交換した瞬間?」

 

少し間を置く。

 

「それとも――部品がどれだけ残っているかとは、別のところに『同じもの』である条件があると思うかい?」

 

「君が違う船だと考えた理由を、聞いてみたい」

→「少なくとも関わった人間はもう違うだろう」

 

医者は少し考え込む。

 

「……関わった人間、か」

 

「なるほど。船そのものだけを見ているわけじゃないんだね」

 

「古い板を外した人。新しい板を取り付けた人。修理を重ねながら乗り続けた人――船が変化していく過程には、人間も関わっている」

 

医者は自分の意見を確かめるように続ける。

 

「私はね。たとえ部品が全部置き換わっても、その船自身に旅をした記憶が残っているなら、同じ船だと思う」

 

「……まあ、物に記憶はないがね」

 

そこで、あなたの言葉に戻る。

 

「では――人間ならどうだろう」

 

「身体が少しずつ別のものに置き換わっていったとしても、記憶が連続しているなら、その人は同じ人間だと思う?」

 

「それとも、君が言うように――その人に関わる者との関係まで変わってしまえば、もう以前と同じではないと思うかい?」

 

医者は少し意外そうにする。

→「臓器移植ってこと?」

 

「臓器移植……そうだね。それも一つの例になる」

 

「心臓を他人のものに替えた。腎臓を替えた。手足を失って義肢になった――それだけで、その人を『別人になった』とは普通は言わないだろう」

 

少し間を置く。

 

「だが、それを繰り返していったら?」

 

「身体のほとんどが、生まれたときとは違うものになったとして。それでも記憶や人格が連続しているなら――」

 

医者はあなたに問いかける。

 

「君は、その人を同じ人だと思う?」

 

→ 「違う。記憶を失ってしまえば、もうその人間は以前の人間とは違う人間」

 

医者は、あなたの答えを聞いて黙る。

 

「……違う」

 

その言葉を、確かめるように繰り返した。

 

「記憶や人格が連続していても、身体が置き換わっていけば同じ人間とは言えない、と」

 

少しだけ興味深そうに身を乗り出す。

 

「では、どこに境界があると思う?」

 

「心臓を移植しただけなら? 義手になっただけなら? それとも――その時点でも、以前とは違う人間になっている?」

 

「君にとって、『同じ人間である』ために失ってはいけないものは何だろう?」

医者は、今度はすぐには答えなかった。

 

「……記憶か」

 

視界の向こうで、ぼやけた顔がこちらを向いている。

 

「では逆に、身体がまったく変わっていなくても――記憶をすべて失ってしまえば、その人はもう以前とは違う人間になる?」

 

その問いは、今のあなた自身にも当てはまる。

 

あなたには、自分が誰だったのかという記憶がない。

 

医者はそれ以上追及せず、やがて静かに言った。

 

「私は、記憶が残っているなら、部品が置き換わっても同じものだと思う。……どうやら、君とは少し考え方が違うらしい」

 

椅子から立ち上がる。

 

「ありがとう。今日も面白かったよ」

 

そして扉へ向かう。

 

「外来の患者を診なければならない。視界については、夜に検査しよう」

 

扉が閉まる。

 

――あなたは一人になった。

 

昨日より身体は動く。まだ重さは残っているものの、今ならベッドから降りて、手術室の中を歩けそうだ。

 

視界は相変わらず不安定だが、室内を探ることはできる。

 

少し離れたところには、温風を送るタイプらしい医療機器。

 

そして棚には、何枚かの資料が収められている。

 

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