タイトルなにも思いつかなくて……許して……。
私が総隊長の元へ辿り着いた頃には、既にほぼ全員の隊長達が集結し、滅却師との乱戦を繰り広げていた。
——とは言っても、戦況はこちらの圧倒的優勢。乱戦などと呼ぶのも馬鹿らしいほど一方的で、隊長達に至っては誰一人としてまともな傷すら負っていない。
「ようやっと来たか王途川! こいつらはカスだ、塵にも満たぬ!! 強者との戦いも良いが、弱者を甚振るのも楽しいなァ!!」
「あァ齋藤、こいつァ最高だ! 見ろ、俺の毒に目ん玉が溶けやがる!! ガハハハハッ!!」
「ふふ……!」
「齋藤、執行、卯ノ花……お前ら相変わらずだな」
彼らに半ば呆れた感情を抱きながら、私も天魁星を使いながら滅却師共の首を正確に切り落としていく。
遠くを見ると逆骨と四楓院が滅却師の軍勢の中に潜り込んでは辺りを蹴散らし、戻ってくるというヒットアンドアウェイ?を繰り返していた。
「四楓院に至っては白打のみで刀すら使ってない、逆骨は殺し損ねがないようにと1人ずつ首を落としてやがる」
「おぉ弾児郎生きてたか。私はお前の刀の扱い方もだいぶ変わってると思うけどな」
「あー、これか? 俺はな、刀は逆手で持った方が力が入りやすいんだよ」
「そういうものなのか……」
右方向を見ると、昼寝ばかりの善定寺はその巨体を活かして両手に滅却師の頭を掴み、すり潰しミンチにするパワー系の戦い方を披露していた。
そういう奴らに比べたら弾次郎のやり方なんて全然可愛いものだろう。
「わ! 王途川さん、あぶなーい」
声がした方向を見ると、鹿取が薙刀型の斬魄刀を振るっており、その余波で滅却師の生首が一つこちらに飛んできていた。
が、私に直撃することは無く、私の霊圧で文字通り蒸発するように消えていく。
「……そういえばお前そういう設定あったな、俺たちゃ特に何も感じないが」
「設定って何だ、体質って言ってくれ」
霊圧制御の結界はここに来る途中に解いたので、今の私は先程に比べ動きやすくなっている。
そういえば志島はどこだろう、四番隊として治療班を担ってるはずだが、後方にはどこにもいない。
「志島はどこだ?」
「あー? 隊士はともかく、隊長が誰も負傷しないからって刀持ってあっちこっち飛び回ってるよ。隊士は治した傍から死んでいくから無駄で嫌になったって」
弾次郎が指さした方向を見ると、志島も少し楽しそうに刀を振っていた。まぁ、あいつの父親でもある師匠みたいな剣豪を相手にするのとは違って、確実に勝てる相手だからそりゃあ志島も楽しくなるか。
そうして滅却師を殲滅していると、だんだん数も少なくなり、残るは首領・ユーハバッハのみとなった。
私達は遠くでユーハバッハと相対する総隊長の方を見守る。下手に近づけば私達自身も焼かれかねないのでこの距離で、声等は聞こえないが、少しだけ言葉を交わしたように見えた。
総隊長は死体の山の上にいるユーハバッハに向かって歩みを進めていく。そうして一歩一歩と、死体を何の同情も無く踏み潰し、流刃若火に炎を滾らせながらユーハバッハに近づいていく。対してユーハバッハは、マントを翻し剣を抜かんと構えたその時。
その瞬間——死体の山が動いた。
完全に霊圧を閉じて潜んでいた雀部が這い上がり、背後からユーハバッハを突き刺す。そのまま刃を深々と押し込み、奴の身体をその場へ縫い止めた。
ユーハバッハの目が見開かれるがもう遅い。総隊長による本気の一撃を喰らわせられ、辺りは爆炎に包まれてこちらからも様子を伺えなくなる。
「………………ぇ」
……もしかしてこれで終わり?呆気なさ過ぎないか?
「おー、どうなったんだ? 流石に総隊長の一撃をあんな距離で受ければ、あいつも骨すら残っているか怪しいぞ」
弾次郎の言う通り、総隊長の刀を喰らえば血肉が残るかすら怪しい。
「……居ない、消滅したか?」
「霊圧も完全に消失したみたいだな。あー、もっと強いものかと思っていたよ……はぁ。弾児郎、残党狩りにでも行こう」
「あぁ、そうだな」
余りに呆気なさ過ぎるラスボスの退場に、半ば失望を感じながら弾次郎を残党狩りに誘う。
まぁ原作でも、ユーハバッハはこれで完全には死ななかった筈だ。とはいえ、今の私に奴がどうやって生き延びたのかまでは分からない。総隊長の一撃を受けて霊圧まで完全に消えている以上、今から闇雲に探したところで見つかるとも思えないし——何より、そこまでして原作を変える理由もない。
そうして弾児郎や他の隊長達と共に残党狩りを続けていると、戦場から滅却師の姿は見る見るうちに減っていった。
最早、卍解を使うまでもない。私達は蟻でも踏み潰すように、敗走する滅却師達を次々と殲滅していく。
そんな中、ふと妙なことに気が付いた。逃げる滅却師達の向かう先が、どいつもこいつも同じなのだ。少し様子を窺ってみれば、どうやらあちらに奴らが侵入に使った門があるらしい。
「あの辺潰したら一気に片付きそうだな」
「そうですね。あぁ、頭を失って逃げ惑う等気概無し。王途川殿、あれを」
「ん? あぁ、分かった」
厳原から言外に、飽きたから一気に殲滅してくれと言われたので、両手を翻し詠唱を始める。
「……千手の涯、届かざる闇の御手、映らざる天の射手、光を落とす道、火種を煽る風ら集いて惑うな、我が指を見よ、光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔、弓引く彼方、皎皎として消ゆ——破道の九十一
詠唱を終えた瞬間、周囲に生成された無数の光の矢が滅却師に浴びせられていき、辺り一面を焼き払う。
しかしその中で1人だけ、光の矢を剣で弾き返し、マントを翻して逃げる滅却師がいた。
「ほう、あれを弾くとは。滅却師にも中々の手馴れがいるものですなァ? 王途川殿」
「いや、手なんて抜いてないって。私も全力で放ったつもりだよ」
厳原の皮肉を受け流しながらその滅却師をよく見ると、腰ほどの長さがある金髪を揺らし、腰には長いロングソードを携えた様子が見えた。
まさかハッシュバルトか?
「ワタシがトドメを……」
「いや厳原、やめておけ」
原作が壊れるからやめてください……。なんて事は言えないので、厳原を宥める言い訳を必死に組み立てていく。
「何故? まさか同情されてるとか? ハッ、王途川殿もそろそろ——」
「大将の首は討ったんだ、あんな雑兵如きが何か出来る訳がない。そうだろう? 厳原」
「……まぁ、貴方の言うことも一理あるでしょう。しかし……」
「はいはい」
何か出来るとか言うどころか、千年後には滅茶苦茶強くなってるんだけどな…!
半ば強引に説得すると厳原が刀を収めてくれたので、とりあえず安心して小言を受け流す。そんな事をしている間にも、
これで第一次滅却師侵略も終わりか。それにしても滅却師めちゃくちゃ弱かったな、原作では隊士がバッタバッタ殺られていたからもう少し腕のあるやつが多いのかと思っていた。
「しかしまぁ、これ復旧に何日掛かるんだよ……」
「全くです」
中央を見渡すと辺り一面燃えており、どこもかしこも崩壊状態。ここは確か十三番隊地区の筈だが建物は皆燃え尽きて跡形もない。原作で総隊長が京楽春水に語っていた、「尸魂界が大変な時に現れて、もっと大変にしてしまった」というのは、あながち間違いではなかったのだろう。
それにしても、滅却師側は今回弓矢等、本来の滅却師らしい奴らが多かった。第二次滅却師侵略では確か剣を持った奴らが多かったが、武器をあれこれと変えても結局死神に負けるなんて皮肉な話だ。
それにユーハバッハも、原作では遏ウ逕ーの蠑鍋泙……で………………になって………………して……。
「………………は、?」
何かが、記憶が、おかしい。
「? どうかされましたか」
「あぁ、いや……」
厳原が一応心配したような顔をするが、すぐに興味が失せたのか私の元から離れていく。
「……黒崎一護の天鎖斬月を折った後、ユーハバッハに黒崎は力を吸収されて……、それで……阿散井恋次と、朽木ルキアが駆けつけて、? そして…………どうなったんだ?」
分からない。
いくら記憶を思い返してみても、どうやってユーハバッハを倒したかの記憶が……無くなっている!?
いや、そもそもユーハバッハは倒せていただろうか?あんなチートじみた能力の未来改変という強大な力を、黒崎はどうやって打ち負かしたのか?
「なんでだ……っ、何故だ……!? 最後に読んだ、BLEACHの話は確か……」
忘れもしない、最後にジャンプでBLEACHを読んだのは2016年の7月。センターカラーは銀さんがクイズハット被ってて、もうこの頃にはBLEACHは掲載順位も下から数えた方が早いくらいになってたんだ。
それが、私が最後に読んだBLEACHで……いや、しかしカラーページに、「終焉まであと〇回!!」と告知されていた筈だ。この〇は塗りつぶされていて、あと何話あるか分からない状態だった。
「丁度680話で、読んだタイトルは……
そんな事は断じてないはずだ。
私はBLEACHが連載開始してから毎週欠かさず月曜日にジャンプを買って、毎週アンケートの「おもしろかったもの」の欄にBLEACHを記入していた。そんな筋金入りのBLEACHオタクである私が最終話をみすみす見逃す等ありはしない。
「いや、待てよ……。まさか…………!」
背筋に、嫌な汗が流れる。
「…………ッ、これも、『
ユーハバッハの能力は、未来を見通し、そして自らの望むように未来を改変する力。
ならば仮に——千年後。
原作には存在しなかった私がユーハバッハとの最終決戦に参戦し、その原作知識を利用したことで、奴を倒す未来が生まれたとしたら?
当然、『全知全能』を取り戻したユーハバッハには、その未来も見える。
「…………その記憶を、潰された?」
私が原作知識を使って、奴を倒す未来。
その未来を成立させないために、ユーハバッハは私から奴の最期に関する知識そのものを奪った?
いや違うな、記憶を奪ったんじゃない。もっと根本からだ。
『私は前世で、BLEACHを680話までしか読まなかった』
そういう私が千年後の戦場に立つ未来へと、無数の
そして、その改変は千年後だけで完結するものじゃない。千年後に『
「……あぁ、成程な」
だから私は、681話以降を『忘れた』んじゃない。
最初から『読んでいない』事にされたんだ。
千年後のユーハバッハが改変した未来との辻褄を合わせるように、千年前の今この瞬間から、私の原作知識には既に穴が空いている。
「ふざけんなよ……ッ」
ならば恐らく千年後、原作知識を持った私がユーハバッハと戦うことで、奴にとって都合の悪い結末が生まれたのだろう。だから奴はその可能性を潰した。
つまるところ私を殺すでもなく、全ての原作知識を奪うでもなく、自分の敗北へと繋がる知識だけを、私の人生から抜き取った。
「……はは、未来から原作知識潰してくるとか、なんでもアリかよ『全知全能』……!」
もうユーハバッハ相手には、原作知識は完全に通用しないと考えていいのかもしれない。
いや、どうだろうな。筋金入りBLEACH好きの私の性格からして恐らく今後1000年間、黒崎一護成り代わりで敵全員倒す!俺TUEEEE!!みたいな「月島さんプレイ」はやらない筈だ。もし私が千年血戦篇に参加するならば、狙うは黒崎の活躍が間近で見れる黒崎一行の仲間ポジ。そして、原作知識を使って出来る限りユーハバッハを弱体化させ、確実に、かっこよく黒崎に倒して貰う、という立ち位置を選んだ筈だ。
「それで……恐らくその未来が潰されたと」
ユーハバッハもよくやってくれる。BLEACH世界転生がこうも厳しいとは思わなかった。
「……クッソ〜〜〜ッ、ユーハバッハ!!! あーーもう許せねェ、BLEACHの一番重要な所だろうが!!!! それなら何がなんでも、お前を!!黒崎一護で!!倒してやるからな!!!! 」
『おい雨緒紀、素が出ておるぞ。もう少し取り繕え』
私は一向に切り替えられない気持ちと共に、燃え続ける瀞霊廷を死体を踏み潰しながら歩いていく。瓦礫と死体ばかりの酷い光景だったが、それでも戦争は終わった。ならば明日からはまた日常が始まる。隊長として働いて、貴族として家を纏めて、千年後に向けてひたすら力を蓄えていこう。
「待ってろユーハバッハ。原作知識を潰した程度で安心するなよ」
正直、今日この瞬間まで、この世界に転生してユーハバッハを倒してやろうなんていう気概は1mmも生じていなかった。だがそんなものは今日で終わり。
千年後に奴が復活するというのなら、その時までに斬魄刀も鬼道も私自身も、使えるものは何だって鍛え上げてやる。そして今度こそ、
「黒崎一護がお前を斬る未来を、この手で絶ッッ対に成立させてやるからな!!!!!」
次回は本編と何ら関係のない、不老不死ちゃんとのネタ回です。