転生したら初代護廷十三隊だった件   作:宇川ゆうたろう

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時間軸一気に飛びます。




始解…だと…!?

 

 

 

 私もそろそろ見た目年齢は20歳を超えただろうか、これくらいになると、霊圧は全く成長しなくなってしまった。

 しかし、これ以上成長されても困るのは確かだ。結局、閉じるだけでは制御しきれなくなってしまったので結界術を応用して自分に纏わりつかせる事で、霊圧を御している。

 

 私は自室の鏡をちらりと見る。見た目も美少年から美青年に成長したようで、自分で見ても惚れ惚れしてしまう。

 藍緑色の髪が混じった黒髪は腰ほどまで伸び、身長も190cmは超えただろうか、前世だったら間違いなく原宿でスカウトされてしまうような風貌だ。

 

 力に関しては流石初代護廷十三隊隊長と言うべきか、とにかく何でも出来る。学んだ事は全て吸収してくれるし、鬼道もこのスペックのお陰で九十番台までできるようになった。一方、卍解は未だ出来ないままだ。彼女には精神世界で会えるが、それだけで、現実世界に出てきたことはない

 

「むかーし、師匠に言われた死神の条件はあと卍解だけか。しかしなぁ、全然出来ないんだよな」

 

 ちなみに師匠は、もう貴方に教えられる事は全て教えましたと言って実家に帰省してしまった。手紙によると、息子がなかなか気難しい奴で扱いに困っているらしい。

 

「師匠の子供か、絶対厳しく育てられるんだろうな。可哀想に」

 

 私の時ですらあれだったのだ。実の息子ともなれば、さぞ苛烈な英才教育が待っていることだろう。

 

 南無阿弥陀仏、合掌…。

 

 心の中でまだ見ぬ子供に手を合わせていると、襖の向こうから声を掛けられた。

 

「雨緒紀様、旦那様がお呼びです」

 

「父様が?」

 

 また当主教育関連での呼び出しだろうか。尸魂界の歴史だとか貴族間の関係、作法だとか、とにかく覚えることが多すぎる。前世で三十五歳まで生きていた記憶がなければ、とっくに頭がパンクしていたかもしれない。

 

「分かった、すぐ行くよ」

 

 文机に手紙を置いて父様のいる部屋へ向かう。襖を開けると、父様はいつものように背筋を伸ばして座っていた。

 

「お呼びでしょうか、父様」

 

「あぁ。座れ、雨緒紀」

 

 向かいへ腰を下ろす。父様はいつにも増してに真面目な顔で座っている。

 

「雨緒紀、1週間前にも同じ話をしたが……本日の魂葬礼祭の事は把握しているな」

 

「もちろんです」

 

 魂葬礼祭を執り行うのは、王途川家の重要な役目の一つだ。死神の身体は霊子で構成されている。通常なら死後、その霊子は尸魂界の大地へと還元される。

 

 しかし、霊威三等以上の、あまりにも強大な霊子を持つ者は、死してなお尸魂界へ還ることが出来ない。故に三等以上の霊威を持つ者が死んだ場合、死後十二年目に魂葬礼祭を執り行う。現世より虚を捕らえ、墓前にて討ち、その霊子を——地獄へ送り込む。

 

 魂葬礼祭の手順はもちろん知っているし、今日は私も家の人間として参加する予定だ。といっても、いつも通り一族の者が儀式を執り行っていくのを見るだけなのだが。しかし、何故それを改めて私に?

 

「なぜお前にこの話を持ちかけたのか、という顔をしているな。実は、此度の魂葬礼祭の一部をお前に任せようかと思ってな」

 

「えっ」

 

「無論、祭礼の手順そのものは一族の者が補佐する。だがお前には、別に任せたい仕事がある」

 

「……嫌な予感がする」

 

「現世へ赴き、今から一人で儀式に用いる虚を捕らえてこい」

 

「一番大変なやつだ…」

 

 なるほど、だから私を呼んだという訳か。だが私には一族の者が虚を捕らえる所を見た事はあっても、まだ死神ではないので自分で虚を捕らえた事もなければ、戦ったこともない。

 

「そう嫌な顔をするでない。数は20。無論、殺してはならんぞ」

 

「分かっていますよ、墓前で殺さなきゃ意味が無いのですよね?」

 

 私の言葉に、父様は満足そうに頷いた。私は対照的に深い溜息を吐く。

 しかしまぁ考えてみれば、虚を捕まえるだけだ。殺すなと言われると少々面倒ではあるが、二十年以上鍛えてきた成果を考えれば、そこまで難しい仕事でもない……はず。

 

「……分かりました。行ってきますね、現世」

 

 父様の前から下がり、自室へ戻る。

 

 一人でというのは少々気が重いが、仕方ない。これも死神になる第一歩だと思おう。

 私は早速自室にもどり、部屋へ入るなり、壁に立て掛けていた斬魄刀を手に取った。

 

「20体ねぇ……」

 

 一体ずつ縄で縛って持って帰るか?いや、一人だとそれは無理がある。というか、虚は縄で縛れるのだろうか?そんなことを少し考えたところで、私は手に持った斬魄刀へ視線を落とした。

 

「…よく考えたら、こういう時のための、()()()じゃないか」

 

 そうだ、私の斬魄刀は一対多数に最適の刀。使うのに此度の虚集めではこれ以上ない適役だろう。

 

 鞘から僅かに刀を抜くと、銀色の刀身に自分の顔が映る。彼女の様子を思い浮かべると、自然と口元が緩んでいく。最近は訓練でしか使っていなかったが、こんなにいい機会は他にないだろう。

 

「よし、久しぶりに働いてもらいますか。()()()に」

 

————————

 

 

 1時間後。私は地獄蝶を用いて穿界門をくぐり、現世に降り立っていた。

 

「…………」

 

 目の前には私を見つけるなり涎を垂らしている巨大な虚。その後ろにも一体いるし、更にその後ろにも二体。気配を探れば、周囲にはまだまだいるだろう。

 

「なるほど」

 

 虚というのは霊圧の高い魂に惹かれる。だったら自分の霊圧を少し漏らして歩いていれば、わざわざ探し回らなくても向こうから寄ってくるのでは、という発想をお試しで実行してみた結果——。

 

「かなり集まったね」

 

『オオオオオオオオ——!!』

 

 咆哮と共に、一番手前の虚が腕を振り下ろす。横へ跳んで躱すと、今まで立っていた場所が大きく陥没した。

 

「危ないな、こっちは殺しては駄目なんだから、少しは大人しくしてくれよ」

 

 当然、聞いてくれるはずもなく、二体目が口を大きく開く。霊圧が一点へ集まっていくのを感じ、私は思わず目を見開いた。

 

「っ、虚閃!?」

 

 赤い光が視界を埋めた直後、轟音と共に虚閃が地面を抉りながら一直線に駆け抜ける。

 

「……危な。生け捕りって大変だな」

 

 私は少し離れた場所へ瞬歩で移動し、焦げた地面を眺める。殺していいなら斬れば早々に済む話なのだが、今回は傷付け過ぎても困る。

 

「早速使うか……」

 

 仕方ないな、とばかりに鯉口を切る。刀身が僅かに覗いた瞬間、周囲の空気が変わった。

 風が止み、私から風が出ているかのような錯覚を覚えた虚達の動きが、一瞬だけ止まる。

 

「さぁ、出番だよ。——集え、天魁星

 

 私が天魁星を鞘から抜刀し天に掲げて解号を唱えると、私の霊圧からメキメキと形作られた72人の豪傑が現れる。

 巨大な盾を背負う者もいれば、弓を構えた者、鎖鎌を持つ者、果てには武器らしい武器を何一つ持たず、拳に布を巻いただけの男までいる。

 

 皆意思表明は出来ないが、こちらから指示を送れば自分で考えて行動してくれる優れもの。と言っても、元を辿れば私の霊圧から生まれた存在なのだ。喋らなくとも、私の意思はある程度伝わる。

 勿論弱点もある。彼らの力は私の十分の一に限られてしまうし、鬼道等高等技術は扱えない。扱えないが——

 

「……おぉ」

 

 私が感心している間にも、豪傑達は既に動き始めていた。弓を持った女が矢を番え、狙うはこちらへ突進してくる別の虚。放たれた矢は虚の身体には当たらず、その足元へ突き刺さった。

 

 すると、矢から伸びた霊子の縄が虚の両脚へ絡み付く。

 

『グオッ!?』

 

 盛大に転倒した虚へ、今度は鎖を持った二人が駆け寄り、その巨体をぐるぐる巻きにしていく。

 

「なるほどね」

 

 一対一の闘いならば、私自身が戦った方が良いだろう。だが対多数ともなると、七十二人がそれぞれ勝手に判断し、連携してくれる方が遥かに楽だしすぐ終わる。

 

 一人が虚の意識を引き付け、一人が足を止める。その間に別の者が背後へ回り、残った者が拘束する。これらの動作は私が細かく指示を出す必要すらない。

 

「素晴らしい。流石は私の斬魄刀だね、天魁星」

 

『当たり前であろう、妾は其方の半身じゃ』

 

「はは、それもそうだな」

 

 先程まで四方八方から聞こえていた虚の咆哮は、既に随分と少なくなっていた。

 

『ガァァァァッ!!』

 

 虚が苛立ったように腕を振り回すが、一人が正面からそれを引き付け、振り下ろされた腕を大盾で受け止める。鈍い衝撃音が響き、盾を構えた男の足元から土煙が上がった。

 しかし男はびくともしない。その隙に左右から、一人が虚の足首へ鎖を巻き付け、もう一人が反対側へ駆け抜ける。

 

『グッ——!?』

 

 鎖がぴんと張り、巨体が大きく傾く。そこへ盾を構えていた男が一歩踏み込み、思い切り虚の胸を押し込んだ。

 地響きと共にその身体が仰向けに倒れると、待ってましたとばかりに残る豪傑達が群がり、腕を、脚を、胴を霊子の縄で縛り上げていった。

 私は天魁星を肩へ担ぎながら、次々と捕縛されていく虚達を眺める。

 

「手際いいねぇ」

 

 思わず感心してしまう。別の場所では、逃げようとする虚の行く手を槍持ちの豪傑達が塞いでいた。

 槍の穂先を向けながら少しずつ追い込み、最後には待ち構えていた鎖持ちのところへ誘導する。

 

『オオオオオッ!!』

 

「あ、逃げた」

 

 虚が豪傑達の包囲を突破し、森の奥へと木々を薙ぎ倒しながら必死に逃げていった。

 

「追って」

 

 私がそう告げたその瞬間、五人ほどの豪傑が地面を蹴った。木の幹を足場に飛び、一人が虚の頭上を越える。着地と同時に振り返り、真正面から槍を突き付けた。

 

『——ッ!』

 

 虚が急停止し左右を見回すが、もう遅い。最後の悪足掻きと暴れ回り、砂埃を上げてこちらから見えなくなったので、逃げられたかな、と思った数秒後。

 舞い上がっていた砂埃が流れる。その向こうから姿を現したのは、霊子の縄で全身をぐるぐる巻きにされた虚。

 

「ははっ、20体目でおーわりっと。よし!」

 

 私は天魁星を肩に担いだまま、地獄蝶を呼び出し穿界門を開く。

 

「帰りますか!」

 

 その声に反応して、豪傑達が一斉に捕らえた虚を持ち上げ始める。

 初めての現地実践に最初は多少の面倒臭さがあったものの、自らの斬魄刀と共に戦う(果たして私が戦っていたと言えるのかは謎だが)のは中々に楽しかった。

 早く死神になりたいな、と思いながら、私は穿界門をくぐって我らが尸魂界へと帰ったのであった。

 

 

 

 

 ————————

 

 

 

 

 捕らえた虚達を無事一族の人間に渡して、仕事が無くなった私は、ぼーっと儀式を眺める。今回は私が虚を殺す役割ではないので、もう私のやる事は全て完了してしまった。

 

 そういえば、成長してからこの家の蔵書を見してもらえるようになったので私も暇な時に色々閲覧していたのだが……中々この家、というか五大貴族は罪深いな、と思う。

 この世界の平和を作ってくれた霊王には、四肢や臓器、爪に至るまで利用出来るものは全て切り落とした上で封印し、三界の楔として人柱に仕立て上げ、尸魂界を守るべくして立ち上がった死神達は強すぎるばかりに尸魂界の大地に還れず地獄に落とされ、本能で這い上がろうとも我が一族に虚を以てして突き落とされる。

 その上、霊王による楔で保たれた三界はまるで薄氷を踏むようだと来た。かの藍染惣右介も立ち上がる訳だ、この世界はあまりにも脆弱すぎる。

 まぁ、私はそれらを知っていても何も行動しないし、する気もない。今世における人生の目標は原作を追うことであり、世界恒久平和などという大層な目標は、生憎持ち合わせていないのである。

 

 色々ぼーっと考えていると、いつの間にかに魂葬礼祭も終わったようで皆バラバラと散っていく。今回の死神は生前中々有名だったようで、死装束を来た死神が多い。

 

「さて、やる事ないし私も帰るか……」

 

 そういえば家に羊羹があったな、帰ったら茶でも飲みながら食べるか。そんな事を考えながら帰路につこうとしたその時。

 

「ちょっと待て、そこの王途川の長髪」

 

 呼び止められ、思わず足を止める。

 王途川家に長髪の者は何人かいるが、今この場にいるのは自分だけだ。どうやら私を呼んでいるらしい。

 振り返り、声の主へと視線を向ける。

 

「はい、何でしょう」

 

「この後、何か予定はあるか?」

 

「いえ……特に何もありませんが」

 

「そうか……では、儂と茶でも飲まんか」

 

 いきなり威厳ある死神の爺さんに話しかけられたと思ったらデートのお誘いですか。私は男など興味はないが……どうしようか。この爺さんの覇気からも分かる通り、めちゃくちゃ強いな。

 

 もしかしたら界隈では有名人なのかもしれないが、生憎私は家から殆ど出たことがない所謂箱入り息子なので外の世界の噂は入ってこない。

 

「……いいですよ、どこに行きましょう」

 

「儂の行きつけがある。付いてこい」

 

 謎のおっさんに興味湧いたし、付いてくか。

 

 

 

 

 ————————

 

 

 

 

「お前は王途川の所の息子だったな、確か……雨緒紀だったか?」

 

「父上とお知り合いなのですね」

 

「お前の父親から、お前のことは聞いておる」

 

 じいさんはそう言うと、改めてこちらへ向き直った。

 

「して、本題じゃ。儂の名は山本元柳斎重國。今、儂は死神を束ねる組織を作ろうと思うておる」

 

 一度言葉を切り、鋭い眼光が真っ直ぐに私を射抜く。

 

「そこでお前に問う。儂が作る組織——護廷隊に、名を連ねる気はないか?」

 

「…………」

 

 あまりに突然降ってきた話に、私は言葉を失った。

 

 このじいさんが、山本元柳斎重國!?

 

 そうか。この人が……いや、待て。ということは、こうやって雨緒紀=サンも初代護廷十三隊入りしたのか。

 

 外の情報に疎すぎて、今の今まで目の前の爺さんが何者なのかすら分かっていなかった。けれど名前を聞いて改めて見れば、確かに山本元柳斎重國その人だ。

 

 雀部長次郎との回想に出てきた、若かりし頃の姿そのままじゃないか……。

 

 いや、それより問題は勧誘の方だ。

 今の私が、初代護廷十三隊に名を連ねられるほど強いとは到底思えない。卍解は習得していないし、それ以前に、私はまだ死神ですらない。

 

「護廷、隊ですか……しかし、私はそもそも死神ではない。器とは思えません」

 

「お前が死神にならない、いや、なれないのはお前の父親のせいだ。彼奴の弟は死神だったが、道半ばで死した。だから、お前を失う事を恐れて死神にさせなかった」

 

 えー、そういう……。ちょっと過保護すぎやしませんかね?

 

 千年前なのだからそういうものなのだろうと思っていた死神になる条件も、卍解習得と九十番台の鬼道発動と、原作軸視点で考えればめちゃくちゃ厳しいものだ。

 

 あんの師匠の奴…父上と図ったな……!!!

 

「だが先程彼奴を説得し、お前が死神になる事を認めた所だ。ほれ、もう懸念事項はなかろうて」

 

 な、なんという先回り……!私の懸念点を全て潰しにかかって死神にさせようとしている。死神になりたいのは事実だが、こうも逃げ場を無くされると本当にこれでいいのかという気持ちも浮かんできてしまった。

 

「さて、話は終わりだ。返事は2ヶ月後に聞くからそれまでゆっくり考えておけ。当然——」

 

 ——死神になるのなら、卍解も習得しておくのだぞ?

 

 そう言うと、もう用は済んだとばかりに山本さんは茶を一気飲みして、私の分まで支払いして出ていってしまった。

 

 一人残された私は茶をちびちびと飲みながら考える。

 どうやらあの人は私が卍解出来ない事を見抜いているようだ。にしても2ヶ月で卍解など出来るものなのか?己の半身に問うてみようものの今は腰にぶら下げていない。

 

「……やるしかないか」

 

 私も茶を飲み干して立ち上がる。父上に無理を言えば2ヶ月どこかに篭もりっぱなしの許可も出るだろう、それくらいなら家業を疎かにしても大丈夫だと思う。

 

「にしても、あの人どこで私の事を聞きつけたんだ? 何故あぁまでして、私を勧誘したんだ? 私が登場人物と大きく接触したのは齋藤が最後だし……疑問は尽きないばかりだ……」

 

 

 

 

 ————————

 

 

 

 

 

「へェックションッッ!!」

 

「どうした齋藤、風邪か?」

 

「あー? オレが風邪引くわきゃねーだろ。で、王途川の奴は勧誘出来たのか?」

 

 瀞霊廷内にある山本の元字塾にて。齋藤は饅頭を食べながら問う。

 事の発端はつい先日、齋藤が山本を襲撃した時それはもうコテンパンにされたのだが、その際山本から護廷隊の加入と死神への勧誘をされたのだ。

 

 だが齋藤の返事は

 

 『王途川っつー奴もなるならオレもなってやる』

 

 齋藤に詳細を聞けば、かつて戦いを挑んだ相手であり、中々筋が良いから将来を期待している男がいると言うではないか。オマケに知り合いの息子であり、話は度々聞いていた。

 

「あれこれと申しておったが……まぁ、いずれ死神にはなるじゃろう。二月後、ここへ顔を出すはずじゃ」

 

「ほんとか! そりゃ楽しみだな!」

 

 齋藤は嬉しそうに笑うと、残っていた饅頭をひょいと口へ放り込み、一息に飲み込んだ。そうして用は済んだとばかりに立ち上がり、ぱんぱんと着物の裾を払う。

 

「じゃ、オレも二月後にまた来るわ。じゃーな、爺さん!」

 

 言うが早いか、齋藤はひらひらと片手を振って去っていく。

 山本はその背中をしばし無言で見送った後、深々と溜息を吐いた。

 

「……儂の口添えがなければ、今頃お主は牢獄の中じゃぞ」

 

 当然、そのぼやきが本人の耳に届くことはなかったのであった。

 

 

 





pixivとかで、王途川雨緒紀さんのイラストがもっと増えますように…。

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