齋藤不老不死は女性です。
(マルジェラコラボで判明済み)
私が満身創痍で帰ってくると、家はまさしく大騒ぎになった。どうやら使用人に聞くと、4週間ぐらいずっと戦っていたらしい。霊圧のせいで誰も現場に近づくことも出来ず、見守ることしかできないから静観を決め込んでいた、とのこと。
4週間もぶっ続けで戦っていたつもりは全くなく、せいぜい3日くらいだと思っていたのだか……なるほど異様に腹が減っていたのはその所為らしかった。
「雨緒紀様! 一体何をなさっていたんですか!」
「ごめんごめん。少し色々あって」
「四週間で地面にクレーターが出来てますよ!?」
「砂でもかけときゃ直るだろ」
「そんな簡単な物ではありません!」
屋敷へ足を踏み入れた途端、待ち構えていた使用人達に囲まれる。誰も彼も酷い顔をしており、目の下に隈を作っている者までいる。どうやら私が思っていた以上に心配を掛けていたらしい。
「悪かったって。ほら、生きて帰ってきたんだから」
「そういう問題ではありません!」
「はいはい」
両側から肩を支えられ、そのまま半ば強制的に自室へ運ばれていく。
まあ、無理もないか。
今の私は自分で見ても酷い。着物は原形こそ留めているものの、裾から袖まであちこち裂けている。乾いた血が布へ黒く染み付き、露出した腕には数え切れないほどの傷が走っていた。
それでも傷自体は大したことがない。一番酷いのは霊圧の消耗だ。身体の中身を根こそぎ掻き出されたような倦怠感がある。普段なら無意識に行える瞬歩ですら、今や使える気がしない。
『当然じゃ。最後の黒棺、あれは加減というものを知らぬのか』
「君を倒すためにやったんだから仕方ないだろ」
『危うく妾が消し飛ぶところであったぞ』
「でも耐えたじゃないか」
『其方の半身だからの』
なんでちょっと自信満々なんだ。
天魁星のドヤ顔が頭に思い浮かんだので小さく笑いながら自室へ入ると、敷かれた布団へ座らされる。
使用人達が慌ただしく部屋を出入りし始めた。水、薬、包帯。血で固まった着物を剥がされ、傷口を濡れた布で拭われる。
「痛っ……ッ」
傷に薬が染みる痛みを紛らわすために外を見ると、開け放たれた障子の向こうには、山で戦い始めた時とは季節の色が僅かに変わった夕暮れの庭が広がっていた。
すると、廊下の向こうから使用人達のものとは違う、一定の間隔で畳を踏む、聞き慣れた足音が聞こえた。
「雨緒紀」
「……父上」
父上は部屋へ入ると、私の姿を見て僅かに眉を寄せた。
「随分と派手にやったようだな」
「……ここまで長引くとは私も思っておりませんでした、本当に申し訳ありません」
素直に頭を下げると、父上は何も言わなかった。顔を上げたら何の説教が飛んでくるかとビクビクしながら顔を上げると、父上の視線は私ではなく、私の斬魄刀へ向けられていた。
「……雨緒紀」
「はい」
「何をしていた」
短い問いだが、その意図は一瞬で分かったので私は天魁星へ手を伸ばす。
「天魁星を具現化させ、戦っておりました」
父上の目が僅かに細められる。
「屈服させるために」
「…………」
「先程終わりました。そして、卍解を修得しました」
私の言葉に、父上は微かに目を見開く。この人が驚いていると気付いた瞬間、四週間分の疲労の中に、少しだけ心地の良いものが混じった。
「……ふふ、どうです。私は死神に相応しいと思いませんか」
「お前なぁ……」
父上は呆れたように深く息を吐くと、しばらく何も言わずに私を見つめた。叱られるものと思って身構えたが、その表情は思いのほか穏やかだった。
やがて父上は私の傷だらけの姿から、傍らに置かれた天魁星へと視線を移す。ほんの僅かに目を細めたその顔には、喜びとも寂しさともつかないものが浮かんでいた。
「…………雨緒紀、今まであれこれと言って悪かった。お前を案じるあまり、随分と道を塞いでしまったようだ。だが——お前は死神になるのが良さそうだ。加えて家督もくれてやる」
就任の儀はひと月後に行う。とだけ言い残すと、父上は少し微笑んでから部屋から出ていく。
前世でも血の繋がった両親は居て、今でも彼らのことを思い出す事もある。仲は良かったし、死ぬ前にあぁすれば良かった、もっと親孝行すれば、とか、色々後悔もしている。
今世でも両親に恵まれ、父親に自分を認めて貰えた。このことが、私のことをどれだけ満たしてくれただろうか。
「…………ふふ」
不味い、堪えようとしてもつい口元が緩んでしまう。
私が強くなりたいから先生が欲しいと言ったあの日から、磨き上げてきた力を証明して、死神になる事へ難色を示し続けた父上に自分で選んだ道を、自分の力で認めさせたのだ。
それが、卍解を手に入れたことよりも、もしかすると今の私には、ずっと嬉しかった。
「さぁ天魁星、千年は生きるからね」
『ふん、何を言うておる。妾にしてみれば千年など瞬きよ』
「ふふふ、そっか」
やっと、死神になれる。
そしてようやく、私の物語が始まる。
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始まったかと思われた私の物語は、それと同時に平穏な日々も終わりでもあった。
「……な、な、なんでお前がここに居るんだよーッッ!?!? 齋藤、不老不死ッ!!」
「何故とは何だ! お前のことはオレが推薦してやったんだぞ! 感謝しろ!!」
「エッ……そ、そうなんです? 総隊長」
「そうじゃ」
「嘘……だろ……」
私はつい頭を抱えてしまう。王途川家当主就任を済ませて、山本総隊長と約束した日に卍解習得を済ませた証明をし、ついに護廷入りかと思えばこれだ。
まぁ確かに、齋藤が初代護廷十三隊なのは最初から知っていたけれど……急に襲いかかってきた凶暴女の印象の方が強すぎて忘れてた……。
「雨緒紀、貴様は十番隊の隊長じゃ。ちなみに隊長はあと3人予定しておる」
「ほらっ、これがお前の隊長羽織だ」
「わ、ありがとう」
私は齋藤から投げられた隊長羽織を受け取り、袖を通す。何故かサイズがピッタリな所を見るに、山本総隊長は最初から2ヶ月で卍解が出来ると見込んでいたのだろうか。
「じゃあ、十一番隊の隊長は誰を予定してるんです?」
私も初代護廷十三隊のメンバーは何となくでしか覚えていない。でかおっぱいのメガネちゃんとか、猫背の爺さんとか……。名前を正確に覚えているのは王途川雨緒紀=サンと齋藤不老不死くらいだ。
「今日はそいつの勧誘に行く。既に話はつけてあるから、答えを聞くだけだがの」
その時、背後にふっと一つの気配が現れた。
足音も、衣擦れの音すらない。それでも微かに漂う、覚えのある霊圧に私は振り返ることなく口を開く。
「……四楓院か?」
「へぇ、やるじゃん王途川。先月の金印貴族会以来だね、改めて当主就任おめでとう」
「どうも。背後に立たれるのは良い気はしないから辞めてくれないかな」
「へーいへいへい」
「ん? お前ら仲いいのか?」
齋藤は私達の組み合わせが意外に見えたようで、きょとんとした顔で問う。
「仲良いも何も、お互い五大貴族だしね。幼い頃から何度か顔は合わせてんの」
「へぇー」
それにしても、なんでこいつも来たんだ?もしかして今日勧誘に行く奴が相当手強いから人数呼ばれてるのかな。
私のそんな疑問を汲み取ったかのように、山本総隊長は口を開く。
「あと、もう一人呼んでおる。五番隊隊長の——」
「——尾花弾次郎だ。志波家の分家だからお二人さんには会ったことはなくとも、噂でなら知ってるぜ」
現れたのは、茶色の髪を逆立て、後髪を結んだ太い眉ともみあげが特徴的な大柄の男。身長は190cmある私よりも少し小さいくらいだろうか。
「尾花か。よろしくな」
「こちらこそよろしく! 弾次郎でいいぜ、雨緒紀」
志波家の血が通っている事が納得の快活さ。溢れ出る陽のエネルギーに、前世で陰キャやってた私は鬼滅の刃の鬼の如く灰になりそうだった。
「さて、人数も集まった事だし行くとするか」
「そういえば総隊長、どこに行くんですか?」
私は疑問を口にする。もしかして流魂街に行くのだろうか、隊長格ともなれば強者なのは確実だ。荒くれ者の多い更木地区に行くのであれば、ここからは相当遠いので流石に骨が折れる。
「なに、下に下るだけじゃ。真央地下大監獄の最下層、第8監獄——無間にな」
王途川母は何処へ…。
新登場メンバー
二番隊隊長:四楓院千日
五番隊隊長:尾花弾次郎
六番隊隊長:齋藤不老不死