第十三鬼~なのはの心情・宏壱の出向~
side~なのは~
一週間前に不思議な男の子に出会った。山口宏壱くん、無理矢理なのはに名前を呼ばせた男の子。最初はちょっと苦手かなって思った。でも、すごく優しい男の子だった。
一人でいたなのはを心配してくれたんだと思う。顔にたまに出るもん、気遣うような感じが。だけどなにも聞かないの。毎日夕方に臨海公園で会ってお話をしたり、一緒に写真を撮ったり、もっと仲良くなりたくてあだ名を考えてみたり、考えたあだ名で『コウくん』って呼ぶと最初は驚いていたけどすぐ嬉しそうに「おう」って言ってくれた。すごく楽しい。
だから、お家に帰るとすごく寂しくなる。お母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも忙しいから、お父さんが目を覚ますのを『良い子』にして待っていないといけないから………。
「グスッ……グスッ」
涙が拭っても拭っても溢れてくる。もうすぐコウくんが来るのに、止めなきゃいけないのに止まらない。
「なのは?」
「あ……コウくん」
コウくんが来ちゃった。何時もなら早く来てほしいって思うのに、今日はもう少し遅く来てほしかった。
「泣いて、るのか?」
コウくんの言葉に急いで涙を拭う。
「グシュッ………な、泣いてないよ! ちょ、ちょっとホコリが目に入っただけだから!」
慌ててそう言う。こんなことでコウくんを誤魔化すことが出来ないのは分かってる。でも、コウくんは優しいから何も聞かないでくれる。ズルい、よね。
「はぁー」
コウくんが息を吐く。吐き出された息は白くなり空へと消えていく。
ギシッと音を立ててコウくんがなのはの座るベンチのすぐ横に座る。肩と肩がふれあう距離、この一週間ですごく仲良くなれたんだと思う。
「で、何で泣いてたんだ?」
「え?」
コウくんの言葉に驚く。踏み込んでこないと思ってたから。
「なのはのお家はね、喫茶店をしているの」
気づけば話し始めていた。
「ああ、前に聞いたな」
「うん。お母さんがパティシエをしてるの」
ぽつぽつ、とゆっくり、しっかりとコウくんに届くように話す。
「お父さんとお母さんが始めたお店。あ母さんの夢だったんだって、お店を持ってお父さんと一緒にやっていくのが」
コウくんはなにも言わない。ただ、なのはのことを見ていてくれるだけ。
「でも、お父さんは別のお仕事もやっていたの。内容は知らないけど、そのお仕事が最後だったって、それが終わったらお母さんと一緒にお店で働くんだよって、なのはともっと遊んでくれるって言ってたの」
また、涙が溢れてくる。膝の上に雫がどんどん落ちてスカートを濡らす。
「ヒック……でも、ヒック……でも、仕事で、ヒック……お父さんが、事故に遭っちゃって、ヒック……全然目が、ヒック……覚めなくて」
迷惑がかかるって分かってるのに、コウくんを困らせちゃダメって分かってるのに、止まらない、止められない。
「ヒック……お母さんが、ヒック……なのはが、ヒック……良い子にしていたら、ヒック……お父さんが、ヒック……早く目覚を覚ますって、ヒック……だから、ヒック……迷惑の、ヒック……かからないように、ヒック……」
もうなにも言えなくて、言葉もでなくなった。そんなとき、頭があたたかくなった。
「え?」
いつの間にかなのはの前に立っていた、コウくんがなのはの頭を撫でていた。ゆっくりと、そっと優しく、丁寧に、優しい目で、なにも言わず、それが嬉しくて、あたたかくて、だからもっと甘えたくて、コウくんの胸でまた泣いた。
「その、ごめんね?」
暫く泣いた後、また二人でベンチに座り直しお話をする。コウくんの服を、涙で濡らしちゃったことを謝る。
「別に気にしてねぇよ。それより、なのは」
「なに?」
「お前が自分のことを話してくれたんなら、俺も話さないとな」
「コウくんのこと?」
何だろう。家族のことは聞いたし、学校のことも聞いた。分からないや。
「俺はな、魔法使いなんだ」
「え?」
「正確には魔導士なんだけどな」
え?まほうつかい?えっと、魔法使い、かな?え?え?ええぇぇっ!?
「ふえぇぇぇ!??」
「うおっ!?」
コウくんの言葉の意味が分かり驚く。なのはの驚いた声にコウくんも驚く。あ、ベンチから落ちた。
「だだ、大丈夫?」
「……ああ、大丈夫だ。問題ない」
落ちたことが恥ずかしいのか、コウくんは顔を赤らめてベンチに座り直す。
「まぁ、論より証拠、だな」
そう言ってコウくんは右手の人差し指を立てる。
「ふっ」
コウくんが人差し指にふっと息を吹き掛けると、ポッと指先に火が灯る。
「ふわあぁぁ、す、凄い! 凄い!」
「こんなこともできんぞ」
コウくんが灯った火に左手をかざすと、パキパキッと音を立てて凍っていく。
「ま、俺にはこんな力がある」
そう言いながら凍った火をなのはの手の上に置く。
「冷たい」
「なのは」
「コウくん?」
凍った火をマジマジと見ていると、コウくんが真剣な顔で話しかけてきた。
「明日から俺は
「え!? 離れるって、どこかにお引っ越ししちゃうの!?」
さっきコウくんが見せてくれたことよりも驚く。
「いや、引っ越すとかじゃなくてな。家の用事で、一月ほど出掛けなくちゃならなくなった」
「あ、そうなんだ」
コウくんが居なくなるんじゃないとわかってホッと胸を撫で下ろす。
「ほえ?」
急にコウくんがなのはの両サイドに結んでいる髪の毛を握る。
「……あ、いや、悪い。なのはの感情の浮き沈みでピコピコ動くから、どうなってんのかなと思って」
「え?そうなの?」
「………自覚がないのか?」
「う、うん」
そう言ってる間もコウくんは、なのはの髪の毛を握ったり離したりを繰り返す。
「………まぁ、いいや」
小さく呟いてコウくんは手を離す。痛くは無かったけどちょっと違和感が残る。
PiPiPiPiPiPi
タイミングを見計らったように、なのはの腕から無機質な電子音が鳴る。
「あ」
「もうそんな時間か」
お別れの時間、何時もなら「またね」って手を振って笑顔で別れられる。でもそれは次があるから。だけど今日は違う。今度会えるのは1ヶ月先、それまでなのははまた一人になる。お母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもいる。でも、なのはと一緒にいてくれない。
「ふぅ~、なのは今日は家まで送る」
「え?」
なのはが顔を俯けるとコウくんがそんなことを言う。
「で、でもコウくんの家と逆方向だよ?」
「ああ、知ってる」
「迷惑になっちゃうよ?」
「それは俺が決める。なのはが決めつけることじゃない」
「でも」
「遠慮すんなよ。俺たちは友達だろ?」
「そうだけど、でも」
「デモもカカシもねぇよ!」
そう言ってコウくんは、なのはの膝裏に左手、肩に右手を回し抱き上げる。所謂お姫様だっこと言うやつだ。
「ふえぇぇぇっ!!? コ、コココ!」
「鶏の真似か?」
「違うよ! そうじゃなくて! こ、これ!」
コウくんの言葉を否定し、今の状況を問う。でもコウくんは冷静で、なんだか手慣れている感じがする。
「とりあえず道案内よろしく」
そう言って浮かび上がる。
って、えええええええぇぇぇぇぇっ!!!??
「コ、ココ、コウ、コウくん! う、浮いて! これ! 浮いてるよ!」
「慌てるな。これも魔法だ」
「ま、魔法?」
下をそっと覗く。コウくんの足は既に地面を離れ、遠くに見える自動販売機の頭すらも見える高さまで来ていた。
「うわあぁぁ」
「どうだ?」
「……凄い、凄いよ!」
恐怖心はもう無かった。有るのは興奮と感動だけ。
公園の全体が見え、街の明かりも分かる。遠くの方では、海鳴駅から出てきた電車の明かりも見えた。
「で、なのはの家はどっちだ?」
キョロキョロと空から見る海鳴の街並みを見渡していると、コウくんから声がかかる。
「えっと」
なのははなにか目印がないかと探す。だって空から海鳴を見たのはじめてなんだもん。
「あ! 彼処の看板の方だよ!」
「了解」
そう言ってコウくんはなのはが指の指した方向に飛ぶ。
「凄いね、魔法って」
「……そうだな」
「なのはにも使えないかな?」
「さて、どうだろうな。そこら辺は俺には分からねぇや」
「そっか」
「ああ」
それっきり会話がなくなってしまった。無言で遠くまでよく見渡せる空を飛ぶ。
「……楽しいか?」
「うん。いいね、こういうのって。空には壁なんてなくて、どこまでも行けそうで」
海鳴に、空の先にと向けていた視線をコウくんへ向ける。コウくんは柔らかい笑みを浮かべてなのはを見ていた。
「ああ、何の隔たりもない、自由だ」
そして、楽しい時間はすぐに終わる。気が付けばなのはのお家の上で、コウくんが止まっていた。
「道場………ここ、か? なのはの家は」
「………うん」
ゆっくりと地面に降りる。
「ほら」
「……うん、ありがとう」
下ろしてくれたコウくんにお礼を言う。
「なのは」
「………なに?」
言葉を少し遅れて言う。無駄だって分かってるけど、それでも少しでも長く一緒にいたくて抵抗する。
「お前にひとつ良い魔法を教える」
「……え、魔法?」
「ああ、お前のお父さんが早く目覚めますように、ってな」
現金だと思うけどコウくんの言葉を聞いて嬉しくなる。お父さんが目を覚ますようになる魔法があるなら知りたい。
「こう手を握って念じるんだ。目を覚まして、ってな」
コウくんはなのはの手を握り、目を瞑る。するとなのはとコウくんの手が紅色に光、コウくんが手を離すと、光はなのはの手に吸い込まれるように消えた。
「え、今のは?」
「なのはに魔法を託した。名前をつけるなら『願いの魔法』だな」
「『願いの魔法』」
「ああ、なのはのお父さんの手を握って念じるんだ。それだけで良い」
光の消えた手を見る。なんとなくあたたかい感じがする。
「じゃあな、なのは。遅くなるから俺はもう帰るよ」
「あ、コウくん! また、会えるかな?」
なのはの言葉にコウくんは帰路へと向けた足を止め、言う。
「ああ、俺となのはには縁がある。一月後必ず帰ってくる。その時に会おう」
「うん!」
そう言葉を交わして、今度こそ帰っていくコウくんを見送る。
「なのは、どうしたの? 風邪引くよ。家に入ろ」
コウくんの背中が闇に溶け見えなくなった頃、玄関の扉を開けてお姉ちゃんが顔を出す。
「はーい」
お姉ちゃんの言葉に従い、お家の中に入る。
明日はお母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、なのはの4人でお父さんのお見舞い、早速コウくんから託された『願いの魔法』を使うの。早く明日にならないかな。
side out
side~宏壱~
〈よろしかったのですか?〉
なのはを家まで送り帰る途中、刃が声をかけてくる。
「あん? 何がだよ」
〈魔法のことです。管理外世界の、しかも魔法を知らぬ者に魔法を教えることは、重罪だったはずですが〉
管理局では、管理外世界の魔法を知らない現地住民に魔法を故意に教えることは、それなりに重い罪とされている。魔法の無い世界に、魔法を持ち込めば混乱は必須だからな。だが。
「それは魔法の無い世界に、だろ?」
〈確かにそうではありますが〉
「それより早く帰って、飯食って風呂入って寝んぞ。明日は早く向こうに行かなきゃなんねぇからな」
〈海への出向命令ですか?〉
「ああ、何でもリーゼが推薦したらしいな。確か………アースラ、だっけか?」
ゲイツのおっさんが苦虫を噛み潰したような顔で言っていたのを思い出す。
〈はい、巡航L級8番艦アースラ、リンディ・ハラオウン准将が艦長を務める艦ですね〉
「ちょっとばかし、でかい事件を追ってるって話だよな」
〈はい。幾つものが割り当てられている事件です。詳細は搭乗した際に、とのことですが。よろしかったのですか?〉
特に命令の内容を、詳しく聞いていなかったことを言ってるんだろうな。
「ああ、構わねぇよ。経験を積めるチャンスだろ?………それにオーリスが俺に橋渡しになって欲しいってんだ、美人の頼みは断れんだろ」
〈陸と海を繋ぐ橋渡し、ですか〉
「そういうこった」
〈はぁ~、仕方ありませんね〉なんてため息と独り言を呟きながらも、刃のその声音は優しいものを含んでいた。
翌日
「地上本部首都防衛隊所属・山口宏壱二等陸尉であります!」
ここは巡航L級8番艦アースラ。今現在、俺を含めた複数の出向要請された魔導士が、アースラの元々のメンバーの前で挨拶をしているところだ。
「あんな小さい子が」
「俺の息子と変わらない年だぞ」
「首都防衛隊って言えば陸のエリート部隊よね」
「しかも二等陸尉だってよ」
「そういえば去年の飛び級試験の合格者に、6歳ぐらいの男の子がいたって聞いたことがある」
「天才ってやつか」
「羨ましいねぇ」
かなり場がざわついていて、視線がほぼ俺に集中している。まぁ、就職年齢の低いミッドでも10歳未満はかなり少ないらしいからな。しかも地上のエリート部隊からの出向だ、と聞かされれば驚くのも無理はない。
「はい、山口二等陸尉ありがとうございました」
翠色の髪をポニーテールにした若い女が、柏手をひとつ打つことで自分に注意を引き場を鎮める。彼女はリンディ・ハラオウンこの艦の艦長を務めている。魔導士としても優秀らしい。
「今回皆さんが我が艦、巡航L級8番艦アースラへの出向命令が下ったのは、他でもない第27管理世界・エルピオンにある管理局に友好的で非常に優秀な局員を輩出してくれているとある部族の大量虐殺があったからです。敵対勢力は反魔法を掲げており、質量兵器の使用が確認されています。また、彼等も次元航行艦を所有しているとの情報もあります」
そこでハラオウン艦長は言葉を切り俺の方を見る。戸惑い、か? いや………どちらかと言えば、言うべきかどうか迷ってるってとこか。
「君、ここからは大人の話だ。少し席を外してくれないかい?」
見た感じでは、ハラオウン艦長よりも年を食った男が話しかけてくる。
「君、聞いているのかね」
〈やめなさい〉
聞こえてないふりをする(無視をするとも言う)ともう一度男が話しかけてくる、がそれを俺の首にかけられた十字架のネックレス、刃が遮る。
「なんだね、君は」
〈私は我が主の矛にして楯、刃と申します〉
「その刃君がなにようだね? 私は今君の主とやらと話しているんだがね」
〈我が主はあなたに話すことなどありませんよ〉
「それは君の意見だろう。君の主、山口二等陸尉からはなにも聞いていないが?」
〈………申し訳ありません、主。出過ぎた真似をしました〉
刃と男の問答を口を挟まず聞いていると、刃も少し出しゃばり過ぎたと思ったのか、俺に向けて謝ってくる。
「気にすんな刃。ハラオウン艦長も話を続けてくれて構わないっすよ」
「え? だけど」
「私は出ていけ、と言ったんだがね。子供の遊びではないのだよ」
ハラオウン艦長に続けてくれと言うが、尚も戸惑ったようにモゴモゴとするだけだ。優しいんだろうな。侮るとかじゃなくて俺を心配してるって感じだな。男の方には侮ってる、どこか俺をバカにしているような雰囲気がある。
「黙ってろや三下」
意図的に口調を関西弁に変える。ハラオウン艦長も男も、この場にいる者全てが唖然としている。
「ワレの話なんざ聞いとらんねん! どんだけ偉いんか知らんけどな、艦長の言葉をワレが取るなや!」
「き、君はいったい何を」
「黙れ
少し声に覇気を乗せて怒鳴ると、ピリピリと空気が震え振動する。男は顔面蒼白だ。周りの局員も足が震え、ハラオウン艦長も少し顔が青い。
「ハラオウン艦長」
「は、はい!」
艦長に声を掛けると背筋を伸ばす。何でだ?
「あんま俺を舐めんとってほしいです」
「え?」
「艦長の優しさも分かります。せやけど、俺も局員なんですわ。管理局自体に忠誠があるか?言われたらそんなもんありゃしません」
その言葉に局員たちの顔が驚愕に染まる。
「せやけどな、俺を推薦してくれたリーゼらに申し訳が立たんのですよ、このままやと。艦長の優しさも分かりますけどね、俺も管理局員の端くれ、命令が下れば命を奪う覚悟くらい持ってます」
「っ!? あ、貴方どうして?」
命を奪うってところで驚いたんだろう。艦長の顔が更なる驚愕に包まれる。
「ふ、ふん! 君のような子供の覚悟などたかが知れている」
鼻で笑う男を見ることもしない。艦長の目から視線をそらさない。
「艦長。俺みたいなガキの覚悟でもここに立っとるんです。あんたの優しさで俺の誇りをバカにせんといてください。特別扱いなんか要りません」
side~リンディ~
[特別扱いなんか要りません]
艦長室で先ほど行った出向組との顔合わせ及び任務内容の説明の場が記録された映像を見返す。これで既に五度目になる。公私混同したつもりはない。どの艦の艦長でもあれぐらいの年頃の子が自分の部隊にいれば、同じことをしたはず。だけど彼はこう言った『自分を特別扱いするな』と。私には一人息子がいる。夫は7年前の事件で既に他界している。残った息子は夫の後を追うように管理局員になると言い出し、今は士官学校へ通っている。来年には卒業その後にアースラに招くつもりだ。
息子の年齢は10歳、彼、山口二等陸尉は7歳、3歳も差がある。それで無意識のうちに彼を心配してしまったんだろう。
PiPiPiPiPiPi
無機質な電子音が部屋に鳴り響く。
「何かしら? ロッテ」
音源、通信機を繋げると私の目の前に空中モニターが展開され、ロッテに顔が写し出される。
[いや~、ほら、あたしらが推薦したわけだしさ、一応様子を見ておこうって思ったんだけど……宏壱と連絡つかなくてさ、デバイスの刃も反応してくれないし、どうなってるのかなぁ、なんて]
そう言ってロッテは照れ笑いを浮かべる。
「彼なら今、魔法の適性検査を受けているわよ。デバイスの方もメンテナンスの真っ最中じゃないかしら」
[そっか、残念]
本当に残念そうね、耳が垂れてるわよ。
「貴女たちがそこまで入れ込む理由が分かったわ」
[あー、アイツなにかやらかした?]
「見てみる?」
[映像残ってるの?]
「ええ」
[じゃあ見る]
それから私たちは無言で観賞した。
[アイツらしいね]
最後まで見終わった後、ロッテがそう呟く。
「いつもこんな感じなの?」
[大体ね]
「そう」
彼はたった7年という短い月日で、どれ程の人生を歩んできたのだろうか、彼の覚悟は本物だった。目を見ればそれが分かる。
PiPiPiPiPi
通信機がまた鳴る。
「ロッテ、ごめんなさい。出ても良いかしら?」
[うん]
ロッテに一言謝り、通信機に出る。
[艦長。山口二等陸尉の適性検査が終了しました]
「分かったわ。直ぐそっちに行くわね」
通信を切りロッテに向き合う。
「そういうことだから」
[もう少ししたら宏壱の方に連絡とるよ]
「ええ、それじゃあ、また今度どこかに飲みに行きましょ」
[お、いいね。楽しみにしてるよ]
その言葉を聞き終え通信を切る。
「さて行きましょうか」
そう独り言ちて私は艦長室を出てメディカルルームへ足を向けるのだった。
side out
裏設定として、宏壱の名前はなのはがあだ名を付けやすくってコンセプトから来てます。
コウくん………良いですよね。自分の名前も短く呼べるので親近感がわきます。
あと、どうでもいいことをひとつ………あたたかいって漢字で温かいってするよりも、平仮名であたたかいってした方がなんとなく可愛くないですか?…………どうでもいいですね。
次回は少し短くなるかもです。ではでは